海洋冒険小説の家

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   (3)

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 しかし、南海丸の大砲の威力はすごいものだった。この縦射で敵船のたかい船べりを吹き飛ばし、船首から船尾まで砲弾の通ったあとは死人の山を築き、大砲もなにもかもが破壊されていた。
 そして、ゆっくりと太い大柱が倒れるのが見えた。敵船からは通り過ぎる南海丸に大砲が二発と、火縄銃の鉛弾が五、六発追いかけてきた。そのうちの一発が、助左衛門の南蛮胴丸に「カーン」という響きと、へこみを作った。十蔵がびっくりした顔をして助左衛門の顔を覗き込んだ。敵の大砲の弾が船腹の真ん中あたりにドスンとめりこんで南海丸を振動させた。もう一発は舷側に当たり、千切れた沢山の木片となって三、四人の水夫を吹き飛ばした。敵の破壊された船は行き脚を落とし、集団の泣き叫ぶ声が風に乗って南海丸に届いた。しかし、まだ、戦いは続いているのだ。次はわが身かもしれない。敵に情け容赦はいらないのだ。
 助左衛門は南海丸を回頭させて敵船に追いつき、今度は左舷の全砲を放って、息の根を止めた。敵船は上甲板には帆柱も帆も何も残っていなかった。少年水夫たちは、船底から火薬を運び、すばしっこいリス(栗鼠)のように働いた。上甲板に巻き起こる歓声に、大きな感動のうねりが身を包んだ。俺たちも役にたっているんだ、という戦闘集団・南海丸との一体感。次郎丸や三吉たち少年水夫は薄暗い船底に下りながらそう感じていた。
 数十隻の敵船は三隻だけが大船で、あとは二、三十人乗りの小船ばかりではあったが、勇敢なあらくれ者を乗せており、そのうちの何隻かは南海丸に突撃を敢行した。縄に付けた鉤爪を投げて船縁に引っ掛け、登ってくる。そのうちぐずぐずしているとあちこちから、命知らずのものたちがやってくるだろう。河内の六兵衛は鉄砲組頭の高田の将監(しょうげん)とともに鉄砲隊の二十人を引き連れ、すばやく配置させた。その後ろには弓組頭の尾藤主水佑(もんどのすけ)の弓隊、槍組頭の小町の源左の槍隊が控える。
                        (続く)




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