0.5
部屋の中で、私はひとりつぶやいた。
これはもうどうしようもない。
思考は散り散りになるばかりで、一向にまとまる気配が無い。
ならば、もう終わりにしてしまおう。
そう思い、私はパソコンの電源を落とした。
強制終了。
データは全部飛んだだろうか？
細かい終了の段階を踏んで
これ以上カロリーを消費するのは避けたかった。
しかたない
そう
しかたない、しかたない。
カロリーを消費しないなら、全部どうでも良いわ。
ものを口にするのが昔から嫌いで、食べるたび、なんだかとても自分が汚れた存在なのだと思った。
しかしまぁ、生物として生きていく以上養分を摂取をしなくてはいけなくて
思春期は拒食なんてしてみたが、
パワフルすぎるくらいパワフルで、親ばかが行き過ぎているわが母は、そんなこと許してくれなかった。
今思えば、限界まで口に食べ物を詰め込んで塞いでしまうのは、虐待なんじゃないだろうか？
そんなこんなで、私は成人して家を出るまできっちり3色食べていた。
だけど
今は、母の思いを踏みにじって１日０．５食生活。
素晴らしきかな、一人暮らし！
そして、こうして家で、栄養不足で回らない頭を酷使して、持ち帰った仕事をしているのですよ。
え？
私はちゃんと自立した社会人ですよ？
人とは面倒なもので、親から解放されて、めくるめく断食ライフを！と思っていたのに
仕事があるのです。
仕事
仕事
仕事
ああ、私は食欲こそ乏しいものの、娯楽に対する欲求は人一倍強くて
それを満たすには、お金が必要で。
つまり、私はお金を得るために、やむなく食べて、カロリーを消費して
0.5食を、食べて。
あ
あ
カロリーメイト
スポーツドリンク お土産のクッキー 飲み会で食べたお刺身に酒
おにぎり
サラダ 水 水 水 水 水 水 水 水
この一週間で食べたものは全部お金に変わるから食べたわけで。
昼休みの時間。
私の狭い世界では、異質、は許されないから
普通に暮らすために、これだけは外せず
もっと減らしたい欲求を押さえつけて、食べて
いたんだけどなぁ
そんな努力も、友人から見れば1食未満
つまり0.5食に過ぎないらしく
努力もむなしく、私は会社でういていますー！
なんてなぁ
あー
あー
「あー」
あーあ
つめたい板張りの床に横たわると、体がやけに重たく感じた。
ダイエットを考えなくてはいけないかしら？
なんて馬鹿なことを考えてみる。
「ふふっ」
長年の勘が、体のＳＯＳを感じた。
あああ、面倒だなぁ！
次、目を覚ますときは病院か天国かと思うと
少し
憂鬱な
気分
に
な
り
ま
し
た
。
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