怪獣亭非日常

怪獣亭非日常

2006.11.11
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ウルトラマンメビウスで「怪獣使いの遺産」が放映されるのでその前日譚である「怪獣使いの少年」についてふりかえってみたい。
(そのため「怪獣使いと少年」の内容に最後までふれています)

「怪獣使いと少年」は大雨の中、怪獣に追われる少年の姿から始まる。
そんな少年を救ったのは地球の気候を調査にきた宇宙人、メイツ星人だった・・。
・・少年は穴をえんえんと掘り続ける。
周りの人間はそんな少年を宇宙人の子供と呼び差別し暴力を振るうのだった。
繰り返される中学生の陰惨なリンチ。
少年は念動力でそれを撃退する。
MATはそんな少年を調べ宇宙人ではないことを確認する。

しかしパニックに陥った(警察が先頭にいる)群集は「宇宙人狩り」で少年を集団で襲いその狂騒の中、金山老人を射殺する。
老人が封じ込めた怪獣は復活、郷は愚かな人々の姿に自分の目的を見失う・・。

事件が終わったあと・・・少年は円盤を掘り続ける・・・地球にさよならをいうために・・。

郷秀樹の躊躇い
本作では何故か托鉢僧の姿で現れる隊長は陰惨な少年を取り巻く状況に呟くしかない。
日本人は美しい花を作る手を持ちながらいったん刃を握るとどんな残忍極まりない行為をすることか 」・・・本作のテーマはまさにこの言葉に尽きる。

郷秀樹もまた(ウルトラマン)は金山老人がパニックの中で殺されるのをまのあたりにして
かってなことを言うな。怪獣をおびき寄せたのはあんた達だ。まるで金山さんの怒りが乗り移ったようだ・・・ 」とただ怪獣の破壊を見つめるのである・・。

花と刃と
本作の唯一の救いは少年に食パンを売る娘の姿であろう。
宇宙人の子供にパンを売ることを拒んだ母親に対し娘は雨の中少年に向かって駆け出す。

同情なんかじゃないわ。売ってあげるだけよ。だって家はパン屋だもの
とパンを差し出す。
少年はありがとうと答え、満面の笑顔を見せるのである。
そこには少年を偏見で差別し暴力で屈服させようとする人間たちの中にある「美しい花を作る手」がある・・。

地球人のために戦うウルトラマンはそこで戦いを一瞬忘れてしまうのである・・・。

ムルチとメイツ星人
今回登場する怪獣はムルチ。
メイツ星人は怪獣使いではなく念力で怪獣を封印し少年を救う。
ムルチとメイツ星人には因果関係はないのだろうが大雨の中泣くように吠え街を破壊する怪獣の姿は郷がいったように老人の怒りが乗り移ったように見える・・・。

「怪獣使いと少年」
本作はしばしば名作と呼ばれながら隠されたテーマの重さとあまりの陰湿な描写故にそう呼ぶのをためらわせる部分がある。
少年を地面に埋めるリンチ描写や集団心理で少年を襲う群衆の愚かさと恐怖。
明らかに「帰ってきたウルトラマン」という枠で描かれる物語としてはその枠を逸脱している感は否めない。
本作は完成度云々よりも作り手の生生しい感情が伝わる異色作・・なのである。

その35年後の続編「怪獣使いの遺産」はいかなる作品になるのだろうか・・・。





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最終更新日  2006.11.11 07:19:44
コメント(15) | コメントを書く


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賛否両論  
ざんぶろんぞ さん
かなり私の周囲では評判悪いです、、、
私は元の話があまり好きでないので「どうでもいいです」(「帰ってきたウルトラマン」自体は前半の方が好きなのです、しかもこの「帰マン」の回はまさに「悪夢」あるいは「ダークファンタジー」そのものなので私は「名作」扱いはしたくありません。
(まあ個人の好みですので、、、、) (2006.11.13 12:29:09)

実は同感・・なんです。  
大阪歩  さん
ざんぶろんぞさん
>かなり私の周囲では評判悪いです、、、
>私は元の話があまり好きでないので「どうでもいいです

私も好きかといわれるなら好きではないですね。
今回再見した時それを改めて感じました。
ただ良く出来た作品でも厳然とした名作でもないけれどひっかかる部分のある異色作であるのは間違いないところです。(土台名作云々も結局主観なのでどうでもいいことですが・・)

「怪獣使いの遺産」の方がどろどろした裏の意味をきっぱり捨ててすっきり普遍化させた分、非常に分かり易い・・その分「怪獣使いと少年」とは正反対の別の作品ですね。
故に「怪獣使いと少年」を強く支持する人からすると許容できないというのはわかります。
(2006.11.13 12:59:03)

「怪獣使いと少年」  
そうですか?
僕は「怪獣使いと少年」や「ノンマルトの使者」のような人間として対して何か考えさせるようなエピソードは好きです。「怪獣使いの遺産」もとても良かったと思います。
(2006.11.13 16:24:20)

Re:「怪獣使いと少年」  
大阪歩  さん
M78星雲人さん
好きとか嫌いとかは趣味嗜好、思想や考え方の違いだと思います。色んな考えがありますよね。
「怪獣使いと少年」の重いテーマ性をきちんと受け止めることもそれはそれで良いことだと思います。
「怪獣使いの遺産」も悪い話ではないですよね。 (2006.11.13 17:28:49)

あえて言えば  
ざんぶろんぞ さん
「ノンマルトの使者」と「怪獣使いと少年」はずいぶんその「テイスト」が違うという気がします、「ノンマルト、、」は視聴者に最後は「疑問と問題定義」をして「考えさせる」と言う終わり方ですが「怪獣使い、、」は最後まで地球人の悪意を「現実」として扱い「覚めない悪夢」として扱っています、これは視聴者への心の中にへの残り方が違うと思います(どちらが良くてどちらが悪いとは断定しかねます)私はウルトラシリーズに「覚めない悪夢」の様な話しは「合わない気がします」ので好きな話ではないのです、まあ嗜好の違いだとは思いますが、しかし「怪獣使いの遺産」は確かにこれから賛否の分かれる話だと思います、私としては「怪獣使いと少年」の悪夢を払う為の話として仕切りなおす切っ掛けとすれば良いかと思います(賛同者はいないかもしれませんが、、、)。 (2006.11.14 00:57:33)

Re:あえて言えば  
大阪歩  さん
ざんぶろんぞさん
「醒めない悪夢」はそういう意味で使われたのですね。

確かに本作の不快さ(悪い良いの意味ではなく)というか後に残るいやな感じはこれが現実と近いというか現実と地続きであるがゆえの不快さだからなのかもしれません。

「怪獣使いの遺産」は確かにそれを払う話・・ある種の決着をつける話にはなっていますね。
(2006.11.14 01:14:34)

「怪獣使い」について・前編  
A-chan さん
こんばんは。今回は以前からコメントを温めていた話「怪獣使いと少年」についての話題です。
私は初めてこの話を見た時、あまりの暗さに絶句しました。最初確かに少年・佐久間良の不思議さにも目が行きましたが、別に悪さをしたという訳でも無い良くんに対する不良学生達の言語を絶する凄まじいイジメに対し「何も、そこまでしなくても・・・」と陰惨なものを感じました。しかも彼らだけで無く、町ぐるみで良くんを迫害しているという・・・(汗)。
何だか、この町だけが普通と掛け離れた閉鎖空間的な印象を受けました。まるで村社会・・・(その辺が雪ん子やカオルちゃんの話と通じますね)。
後に読んだ書籍の記述から、帰りマン33話の設定は日本でいわれの無い差別を受けている人々の要素の寄せ集めである事を知り、更に絶句しました。あの異様なまでの迫害の由縁は、そこから来てたんですね・・・。

町の人々の良くんに対する宇宙人疑惑は、得体の知れない者に対する偏見によるものが大きいですが、事態を更に大きくしたのは3人の不良学生ではないでしょうか?
最初彼らは、噂から興味本位で良くんにちょっかいを出してきましたが、真空投げを食らわされてからは良くんを本気で「宇宙人」として過激なまでのリンチを加えました。
不良達には良くんがこちらが何もしない限り危害を加えたりしないという事は分っていたと思います。真空投げをかましはしても、、それ以上の事はしませんでしたから。
でも、力で物事を牛耳る事に「強さ」や「偉さ」を感じている彼らにとって、底知れない大きな力を持った良くんの存在は疎ましかったのでしょう。徹底的な迫害を決行します。ましてや、相手が得体の知れない者であれば殺戮も辞さない。現に自転車で轢こうとした所業など殺人行為です。郷隊員に良くんを宇宙人として殺す事も要求してましたし・・・。 (2007.05.20 01:05:36)

「怪獣使い」について・前編2  
A-chan さん
コメント続き
不良達の悪意は、郷隊員が良くんの身元調べに行っている間にも炸裂します。
良くんが何もしないのをいい事に、お粥をひっくり返すは、踏みつけるは、挙句の果てに犬をけしかけるは・・・。
他人に攻撃的では無い良くんの善意や良心を嘲笑い、愚弄するかのような所業に、私は今でも憤りを感じます。一体、彼らはどのような育て方をされたのやら・・・。
まあ、子は親を見て育つと言いますから、彼らの親がどのようなものか安易に想像がつきますが・・・。

そして、その後の犬の爆殺事件が引き金になって、良くんは窮地に立たされる事になるんですよね・・・。
http://homepage3.nifty.com/a-world/ (2007.05.20 01:08:34)

「怪獣使い」について・kou編  
A-chan さん
それから、しばしば郷隊員は調査の後、良くんの無実を町の人々に証明したのかどうかが取り上げられますが、彼は当然、町にはちゃんと連絡したと思います。良くんの潔白も彼の匿っている善良な宇宙人の事も。
連絡が届いてなかったと仮定しても、怪獣の専門家であるMATの隊員が何の警戒も無く少年と接している事から、彼が宇宙人であろうと無かろうと危険な存在では無い事ぐらい察しても良さそうなものです。
それでも町の人々が暴挙に走った原因、考えられるのは例の不良達が「あのMATの隊員は宇宙人に肩入れしているから信用できない」とでも吹き込んだのかもしれません(良くんが宇宙人という根拠に犬のバラバラ死体を警察に持って行くでもした際に、警官に言った可能性があります)。
地球の守りである防衛チームの隊員が、危険な宇宙人に肩入れして何になるというのでしょう?得体の知れない者に対する偏見と恐怖で理性を無くした人々には、宇宙人のみならず同じ地球人でさえ信じる事ができないのです。

郷隊員も、町の人々の理性の無さがこれ程と分っていれば、良くんも老人も基地へ連れ帰って保護していたかもしれませんが、常識人の彼にしてみれば、あくまでも人々の理性と良心を信じていたのでしょう。一概に郷隊員を責める事はできないと思います。 (2007.05.21 22:04:20)

「怪獣使い」について・後編2  
A-chan さん
コメント続き
そして事態は悲しい結果を迎える訳ですが、私は最後に一言、良くんに言いたいです。
貴方は嫌な現実から逃避するつもりですか?確かに地球には、嫌な人や無理解な人がたくさんいます。でも世の中には、そんな現実の中でも強く生きている人も多くいます。その人達には貴方のように逃げ出す術がありません。貴方は、その人達の事をどう思われますか?
人間社会で幸せになれなかった雪ん子の魂は山へ帰ってしまいましたが、貴方にはまだ世の中の人々と接するチャンスがあります。世の中には、あのパン屋のお姉さんのように貴方を受け入れ理解してくれる人がいるはずです。どうか希望を捨てず、人間を信じて前向きに生きて下さい。

追記:まあ、私が言わなくても「怪獣使いの遺産」で、良くんらしい青年が語った宇宙船を掘り出す理由が「地球とメイツ星を繋ぐ架け橋になる為」に変わっていたのは、何か良くんの心に変化が生じる出来事があったのかもしれませんね。
http://homepage3.nifty.com/a-world/ (2007.05.21 22:06:44)

Re:「怪獣使い」について・後編2(11/11)  
大阪歩  さん
A-chanさん
「怪獣使いと少年」は作者が一番言いたかった現実にある差別問題が反映された作品であるので安易にハッピーエンドを迎えることができなかった作品だと思います。
続編の「怪獣使いの遺産」は私的には決して悪い作品とは思わないのですがその辺の重さを抜きにしている点で批判を受けたのではないかと思っています。
↓以前紹介したコレあたりが上手くその辺をクリアしている続編ではないかと思うのですがどうなんでしょうか。
http://serimoe.web.fc2.com/orebankaijyuutukai001.htm (2007.05.21 22:44:23)

もう1つの「怪獣使いの遺産」感想  
A-chan さん
こんばんは。お久し振りです。
紹介して頂いたサイト、興味深く拝見させて頂きました。差別される良くんやメイツ星人の心理だけで無く、差別していた町の人々の心理も取り上げている所が斬新な作風ですね。あの警官が後に良くんを育てる事になったという設定も意外でした。
確かに差別されるのは悲惨だけど、差別したくて差別する者はいない。「怪獣使いの遺産」でも、差別の問題をもう少し深く描いて欲しかったですね。
http://homepage3.nifty.com/a-world/ (2007.06.03 21:24:26)

Re:もう1つの「怪獣使いの遺産」感想(11/11)  
大阪歩  さん
A-chanさん
怪獣使いはむしろこっちの形で観たかった・・。
こういうかたちでウルトラの別の可能性を考えるのも楽しいです。
同じ方の書かれたもうひとつの作品、プロテ星人登場編も別な意味でいい話でした。 (2007.06.05 00:05:48)

Re:「怪獣使いと少年」・・・「怪獣使いの遺産」を観る前に(11/11)  
怒りの同調〜ムルチからゾアムルチへ〜そしてソフビについて さん
僕はこの作品を中2のときDVDで見ました(レンタル)。なんともやるせない感じの終わりですよね。
「金山十郎」のことなんですが、祖父に聞いてみると、「金山」や「十郎」という名前が、実際に在日韓国人や在日朝鮮人につけられていたそうです。劇中同様、開発地の外れに住んでいたそうです。
話の内容もバリバリ差別ですよね。
ムルチの鳴き声も、町の人々や警察官に悲しんでいる十郎さん本人のような声です(当時のソフビがキングマイマイの腕というのも悲しい。まぁそれでも遊べるけど。)。この回で集団心理の恐ろしさが分かりました。そして約30年後。メイツ星人ビオがゾアムルチを使って攻撃。ですが、ハッピーエンドになってよかったです。2013年、ゾアムルチがソフビ化され、即決。やっぱりカッコいいなぁ。これを書きながら眺めてます。オーブのときマガジャッパに変えられたので、再登場はないのかな?
追記:僕のいとこの友達が、巨大魚怪獣(きょだいうおかいじゅう)と呼んでますが、(きょだいぎょ)じゃないでしょうか。分かる方教えて下さい。 (2023.11.29 12:11:24)

Re:「怪獣使いと少年」・・・「怪獣使いの遺産」を観る前に(11/11)  
怒りの同調〜ムルチからゾアムルチへ〜そしてソフビについて さん
「名作」だと思います。
教材として使っている学校もあるので。 (2023.11.29 12:15:00)

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