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2005年09月12日
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カテゴリ: その他
 今では伊豆の天城峠に築かれたトンネルにも新旧の2つがある。ロマンを誘う天城峠越えはむろん旧道のほう。

 わたしが天城峠を越えたのは、古いトンネルが開通して今年でちょうど百年というその真ん中あたり。おおざっぱに半世紀前のことである。そしてその越え方はサイクリングでだった。20歳の大学生。

 川端康成の「伊豆の踊子」は、トンネルを北から南に抜けた。「伊豆の踊子」の発表が1926年だから、トンネルができて20年ほどのことである。踊り子を追う「私」は、20歳の旧制高等学校の学生。

 松本清張が1958年に著した「天城越え」に登場する「私」は、16歳の少年。「私」と酌婦「ハナ」、そして「土工」は峠の近くで出会う。トンネルを南から北に向かった。

 わたしは、「旧制高校」の学生のように、一人旅だったわけでない。1つ年下のS君と一緒だった。しかしそのS君は60を前にして、肝臓癌で逝ってしまった。彼は天城峠越えをどう記憶していたのだろう。

 われわれの天城峠越えの前日は下田温泉に泊まった。どういう経過だったか覚えていないが、宿の女将と値段の交渉をした。おそらく500円くらいに落ち着いたと思う。女将の顔は想い出せない、しかし穏やかに、外の水道で足を洗えと言った。当時の国道は大部分、砂利道だったのだから、「踊り子」の旅と同じ。

 下田温泉でも下田街道でも、「踊り子」にも「ハナ」にも出会わなかった。翌日は海沿いの河津から、ひたすら河津川を詰めていった。湯ヶ野温泉を経て道は傾斜を増す。谷はしだいに下になり、うっそうとした緑が谷を埋めていた。耳を澄ましても河津七滝の音は聞こえない。噴き出す汗と疲労で、風景がボーッとした。

 石で造られた天城トンネル。天井から落ちる冷たい水滴が快い。自転車から降り、明るい出口を目指して歩いた。旧制高校生の「私」は下田に向かって、青春のときめきに胸を躍らせ、母親の不義から家出した16歳の「私」は、修善寺に向かって、どろどろした情熱をたぎらせた。サイクリングをするわたしとSはどうだったのか。

 急登から解放されたわたしたちは、トンネルの出口に「下りの快感」を想った。小説にはならなくとも、それも青春の一つの形だったのだろう。







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最終更新日  2008年02月24日 11時11分37秒
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