みなが仙人のおぼえがき

みなが仙人のおぼえがき

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カテゴリ

未分類

(0)

花・植物

(1307)

うちの園芸

(589)

蝶・昆虫

(69)

宇宙

(22)

環境

(15)

日本酒・酒類

(118)

食品

(21)

瀬戸内海

(45)

(11)

大学

(17)

その他

(168)

カレンダー

バックナンバー

2025年11月
2025年10月
2025年09月
2025年08月
2025年07月
2025年06月
2025年05月
2025年04月
2025年03月
2025年02月

コメント新着

snowrun29 @ Re:苔の写真(12/15) 苔も緑緑してていい感じですよね。 しかし…
みなが仙人 @ Re[1]:ドウダンツツジの紅葉(11/09) snowrun29さん >見事な赤ですね~☆ >ベ…
snowrun29 @ Re:ドウダンツツジの紅葉(11/09) 見事な赤ですね~☆ ベニドウダンなら解る…
みなが仙人 @ Re[1]:コブシの果実(10/17) vabimariさん >こんばんは >こぶしの木…
vabimari @ Re:コブシの果実(10/17) こんばんは こぶしの木は遠くに見るだけで…
みなが仙人 @ Re[1]:キンモクセイの香りが降る(10/01) snowrun29さん >おぉ~満開ですね。 す…
snowrun29 @ Re:キンモクセイの香りが降る(10/01) おぉ~満開ですね。 良い香りがこちらまで…
みなが仙人 @ Re[1]:ヒガンバナの花〜一枚の写真(09/27) vabimariさん >こんばんは >彼岸花は北…
vabimari @ Re:ヒガンバナの花〜一枚の写真(09/27) こんばんは 彼岸花は北海道では見ることが…
みなが仙人 @ Re[1]:タネからのエーデルワイス(06/01) vabimariさん >こんばんは >ず~っと長…
2005年09月12日
XML
カテゴリ: その他
 今では伊豆の天城峠に築かれたトンネルにも新旧の2つがある。ロマンを誘う天城峠越えはむろん旧道のほう。

 わたしが天城峠を越えたのは、古いトンネルが開通して今年でちょうど百年というその真ん中あたり。おおざっぱに半世紀前のことである。そしてその越え方はサイクリングでだった。20歳の大学生。

 川端康成の「伊豆の踊子」は、トンネルを北から南に抜けた。「伊豆の踊子」の発表が1926年だから、トンネルができて20年ほどのことである。踊り子を追う「私」は、20歳の旧制高等学校の学生。

 松本清張が1958年に著した「天城越え」に登場する「私」は、16歳の少年。「私」と酌婦「ハナ」、そして「土工」は峠の近くで出会う。トンネルを南から北に向かった。

 わたしは、「旧制高校」の学生のように、一人旅だったわけでない。1つ年下のS君と一緒だった。しかしそのS君は60を前にして、肝臓癌で逝ってしまった。彼は天城峠越えをどう記憶していたのだろう。

 われわれの天城峠越えの前日は下田温泉に泊まった。どういう経過だったか覚えていないが、宿の女将と値段の交渉をした。おそらく500円くらいに落ち着いたと思う。女将の顔は想い出せない、しかし穏やかに、外の水道で足を洗えと言った。当時の国道は大部分、砂利道だったのだから、「踊り子」の旅と同じ。

 下田温泉でも下田街道でも、「踊り子」にも「ハナ」にも出会わなかった。翌日は海沿いの河津から、ひたすら河津川を詰めていった。湯ヶ野温泉を経て道は傾斜を増す。谷はしだいに下になり、うっそうとした緑が谷を埋めていた。耳を澄ましても河津七滝の音は聞こえない。噴き出す汗と疲労で、風景がボーッとした。

 石で造られた天城トンネル。天井から落ちる冷たい水滴が快い。自転車から降り、明るい出口を目指して歩いた。旧制高校生の「私」は下田に向かって、青春のときめきに胸を躍らせ、母親の不義から家出した16歳の「私」は、修善寺に向かって、どろどろした情熱をたぎらせた。サイクリングをするわたしとSはどうだったのか。

 急登から解放されたわたしたちは、トンネルの出口に「下りの快感」を想った。小説にはならなくとも、それも青春の一つの形だったのだろう。







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2008年02月24日 11時11分37秒
コメント(4) | コメントを書く
[その他] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


いいお話ですね。  
snowrun29  さん
こんにちは。
仙人さんの青春時代のいいお話ですね。
その「ハナ」が登場する落ち?(sorry!)も含めて。

その当時でもちゃんとした宿で500円は凄いでしょう?
うちの息子もチャリで日本を片道くらいは走破してて
夜は駅寝かバス停寝か公園や神社でのテント。
お風呂代だけは毎日ケチらずに(苦笑)

仙人さんもお友達も息子も、若いからこその貴重な時間と体験ですね。
親はハラハラですがそういう時間が持てて本当に羨しいです。 (2005年09月12日 12時57分38秒)

Re:わたしの天城越え(09/12)  
さくらコポ  さん
っで?
その続きが知りたい...

そこに青春ありき?? (2005年09月12日 14時39分42秒)

Re:いいお話ですね。(09/12)  
みなが仙人  さん
snowrun29さん>
「落ち」をほめて?いただいてよかったです。
この部分は、どうするか迷ったところ。女性にも、男性にも、イメージが鮮明すぎるかも?
しかし、長い時間を経るうちに、「天城越え」と重なってきてしまって・・ (2005年09月12日 16時45分28秒)

Re[1]:わたしの天城越え(09/12)  
みなが仙人  さん
さくらコポさん>
3人の「私」を十分に対比させる手腕はありません。
ノーベル賞作家の作品に、松本清張の傑作作品・・
ノンフィクションのような、フィクションのような・・
(2005年09月12日 17時04分54秒)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: