おしゃれ手紙

2020.06.26
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カテゴリ: 父の麦わら帽子
今から60年近く前に私は中学生になった。

中学生になると、紺のサージのセーラー服に白いタイと襞スカートの制服になった。

夜寝る前に、次の日にはくために、スカートの襞を整える作業があった。

それを寝押しとよんでいた.
当時、アイロンなどなかったので、布団の下に敷いて襞を整えなければならなかったのだ。

先日、向田邦子の「夜中の薔薇」というエッセイにそれが載っていた。

スカートは紺サージである。
慎重に前と後ろの襞(ひだ)を整え、そろそろと、整えた襞を乱さぬように敷布団をのせなくてはならない。
(略)
あれは当時の女学生の夜の儀式であった。
朝、目が覚めると、一番先に布団をめくって、スカートを調べた。
寝相が悪かったせいだろう、襞に二本筋がついていることもある。
おかしな具合に折れ曲がっていることも多かった。
「ああ、どうしよう」
朝から気持ちが潰れた。
たかがスカートの襞の一本や二本と思うのは、いま、大人になってからの気持ちである。
あの頃は、それが何かの目安だったのであろう。
向田邦子の「夜中の薔薇」襞(ひだ)

私が中学生になる1年くらい前から、父は出稼ぎに行っていたとはいえ、岡山で百姓をしていた父と母は、どうやって私のセーラー服の代金を工面したのだろう?
当時の家の状態からすれば決して安いものではなかったろう・・・。
だからだろうか、私が中学2年生になった夏、百姓に見切りをつけ、一家で兵庫県竜野市に引っ越した。

また上もセーラー服ではなく、ジャケットが多い。

どの家庭にもアイロンはあるだろうから、寝押しをする必要はないだろう。
それ以前に、襞がとれないような加工だってしているのかもしれない。

ズボンの折り目を整えるためにも寝押しをしたが、今の人達には、「寝押し」は死語になっているのかも知れない。
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Last updated  2020.06.26 00:21:49
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