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単衣をお着替えになっても香りはあやしく、
意外なほど中君の身に染みているのでした。
『これほど香るとは、きっと何かあったに違いない』
と、お問い詰めになるのですが、中君にとってはひどく辛く
身の置き所もない心地がなさいます。
「私はあなたさまを特に大切に思っておりますのに、
あなたさまの方が私に背くなど、卑しい身分の者がすることですよ。
あなたのお心が離れるほど長く六条院におりましたでしょうか。
情けないことをなさるのですね」
と、ひどく恨めし気におっしゃって、
お返事もできない中君のことが憎らしく、
「また人に なれける袖の移り香を 我が身に染めて 恨みつるかな
その移り香を私は身に染みて恨んでいるのですよ)」
女君はあまりに責められてお返事のしようもなく、
「みなれぬる 中の衣と頼みしを かばかりにてや かけ離れなむ
(日ごろ親しんだ仲でいらっしゃるあなたさまを頼みにしておりますのに、
このようなことで別れることになるのでしょうか?)」
とお返事してお泣きになるご様子がひどく可憐ですので、
『中納言が好きになるのも無理はない』
と気がもめて、思わず宮もほろほろと涙をこぼしていらっしゃいますのも、
好色なお心のせいなのでございましょうか。
どんな過ちがあったとしても、
とても恨み通せないほど可愛らしく
いじらしいご様子の中君でいらっしゃいますので、
一方ではなだめすかして中君のご機嫌をとっていらっしゃるのでした。