「無伴奏シャコンヌ」



言葉だけが言葉ではない。
文字に書かれ得る言葉だけが言葉ではなく、文字に書かれる事は永久に無くとも存在し、受け取る側の心に直接響いて来る言葉がある。

音楽が、その一つである。
この映画は極端に台詞が少ない。
だが、主人公が奏でるヴァイオリンの音の一つ一つが、無言の言葉としてこちらに伝わってくる。
それは聴く者の頭の中を空っぽにさせ思考を停止させてしまう。
その音は皮膚から直に肌の下へと、魂へと染み込んでいき、心を震わせる。

そんな音の連なりからなる演奏に貫かれた映像。
無駄の無い構成。研ぎ澄まされた台詞と演技。

この映画を語るに適当な言葉は私には見つからない。
ただ、私の聴いた無言の言葉をあなたにも聴いて感じて欲しい。
この映画の魂が奏でる音をあなたの魂でも受けとってほしい。
あらゆる思考を停止させるこの感動をあなたにも味わって頂きたい。
そう思わせる映画である。


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