西岸中部カイルア・コナ空港への飛行は、この東岸中部の都市ヒロからはマウイ島方向へ戻る形となるので、島の主峰マウナ・ケアとマウナ・ロア(4170㍍)の間を抜けるのかと思った。しかし気流の関係からか、真に美しい海岸線を縁取るかのようにグルッと北周りで半周するコースだった。それでも所要時間は僅か25分。この大きなハワイ島でもジェット機なら1時間足らずで一周できる事になる。当然のようでもあるが、車で回れば走り続けても一日がかりでは難しかろうと思え、飛行機の便利さが今更ながら身に染みた。 月の表面のように凹凸した黒い溶岩流の荒々しい原野を切り開いたカイルア・コナ空港は、殆んど黒っぽい木造平屋建ての現地風の建物で、その独特な野性味が気に入った。ただ町へはタクシーかレンタカーを利用するしか手立てがない。どちらにしようかと迷ったが、結局、幸の体調を考え、余り遠走りも出来まいとタクシーでコナベイへ向かう。料金はチップも含めて22㌦だった。 宿泊先は、人気が高く予約無しでは殆んど無理とガイドブックにあった「KONA BEI HOTEL UNCCLE-BILLY’S」が取れた。まずは最初の飛び込みだったが、オフシーズンが幸いしてか一発でOK ! 部屋代は枕銭の2ドルまで含めて57㌦。宿泊棟は美しい植え込みや小道を挟んだオフィス・レストラン棟を中心にして扇形に配置されていた。エレベーターも有ったので、部屋は二階だったが荷物の出し入れも楽だった。ベランダ付のツインルームで諸設備も完備。ムードもサービスも申し分無しの宿であった。
「KONA BEI HOTEL UNCCLE-BILLY’S」での夜が明けた。幸が起きる前にソッと部屋を出て、朝の散歩に出かけた。昨日潜水艦に乗りに出かけたのとは逆の、南に向かう宿舎前の道を少し行くと、海岸へ斜めに下る緑の芝生の中の道があった。静かな磯辺に出ると波打ち際に建つホテルの裏手伝いに小道が続いていて、美しい朝の海を見ながら更に南へと歩む。目を少しづつ右へ移していくと、やや突き出しているコナベイ沿いの地点に、白く美しい巨船のような建物が見える。昨日会場から特に目立った建物だった。高級リゾートホテルらしいが、もし出来るなら幸の体調次第で早い昼食を此処で済ませるのも良かろうと、現地まで行ってみることにした。 途中、磯辺の小道は先ほどの海岸沿いの道に合流していて、あちらこちらに小さなスナックが点在していた。店先の海を臨むテラスは、テーブルに座り軽い朝食を済ます人々で賑わっていた。幸の好きそうなサラダでも朝食用に買って帰ってやろうと探したが、何処の店もケーキのようなパン類とか、アイスクリームやジュースやコーヒーと言った類のものばかりだった。どうやら朝食にサラダを食べるのは日本人だけなのかも知れない。 例の白い建物に着く。洒落た高級ホテル「ROYAL KONA RESORT」と、レストラン「KONA HILTON LUAU」がそれだった。泉水を巡らせた木々の緑濃い庭が美しく。夜の豪華な食事をとりながらのルアウ・ショーは、ハワイ島No.1だと聞いた。ディナー以外は泊り客が主らしく昼の予約は叶わなかった。昨夜来て見たかったと残念に思いながら引き返す。 先ほど立ち寄ったスナックの一つで休憩、冷たいコナコーヒーで喉を潤してから宿に戻る。まだ腹の具合が本調子で無いという幸だったが、少しでも食べないと力が付かないからと激励。持参したカップヌードルや昨夜余りのサンドイッチを並べ、買ってきたコナコーヒーを淹れ遅い朝食とした。