読書の部屋からこんにちは!

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2009.09.16
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カテゴリ: 小説
並外れたぶす。
だけど、優しくて純で無邪気な、愛すべき少女、きりこの物語です。
前半は、ぶす。ぶす。ぶす。
ぶす加減ばかりを強調していて、ちょっと退屈してしまったくらいぶすでした。
両親の愛情に包まれて、無菌状態で育ったきりこが、クラスの友達からぶすだってことを指摘されたときから、やっと、物語が動き始めます。
引きこもり、拒食、過食、そして予知夢から、きりこの本当の活躍が始まります。


活躍し始めてからのきりこは、相変わらずのぶすながら、お姫様のようなドレスを着て、お姫様のようにふるまう。それは、したいことをするのだ。これが自分なのだという、決然としたものがあって、なかなかかっこいいのです。
要は、人間は容れ物(外見)じゃない。でも、外見を否定する必要もない。
「うちは容れ物も、中身も込みで、うちなんや。」というきりこの一言が、この小説の主題ですね。



きっと若い人にも、人気があるだろうなと思います。
ただ、難を言うと、主題はあまりはっきり言葉にして言わないほうがいいんじゃないかな。
読み手一人ひとりの感性で、主題を自ら感じ取るところが、文学のいいところではないのかな?
そういう意味では、主題の押し付けになりそうな危うい感じもありました。


ところで、この本、きりこを心から愛し信頼している猫の、語りで書かれています。
猫の視点からの人間の評価もまた、おもしろかった。
ほんとのところ、猫がどんなふうに人間を見ているかは、分からないけどね。
「我輩は猫である」の猫は、この猫にくらべると、ずっと人間臭いですね。


きりこについて





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Last updated  2009.09.16 18:23:36
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Re:「きりこについて」 西加奈子(09/16)  
ミシェル・デマルケ さん
「主題はあまりはっきり言葉にして言わないほうが・・」は、すごい鋭いというか深いお言葉ですね。
たしかに、「アカラサマ」ではなく「暗に匂わす」って感じがうまい作品に出会うと、それを書いた先生を尊敬したくなりますよ。

あ、でも、語り手は猫なんでしょ? ニャンコが主題をはっきり言い切るってんなら、それは許されませんか? ・・・という問題じゃないか、にゃははは。

えっと、西加奈子先生の代表作ってナンでしたっけ? (2009.09.16 19:53:54)

Re[1]:「きりこについて」 西加奈子(09/16)  
ミシェル・デマルケさん
>「主題はあまりはっきり言葉にして言わないほうが・・」は、すごい鋭いというか深いお言葉ですね。

読み上手、レビュー上手のミシェルさんに言っていただくと、とってもうれしいです。
私の好きな村上春樹といい、宮本輝、小川洋子、みーんな、主題は読み手が自分で探す、人それぞれの主題がある。という作風なんですよね。読んだ後、いろいろ感じたり考えたりできるところが、楽しいのです。

>あ、でも、語り手は猫なんでしょ? ニャンコが主題をはっきり言い切るってんなら、それは許されませんか? ・・・という問題じゃないか、にゃははは。

この猫、名前はラムセス2世。知性的で誇り高く、きっと私の書いた感想文なんてフン!と鼻で笑っていることでしょう。 (2009.09.18 22:07:36)

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