架空世界の放浪者ランドの「冒険日記」

五輪書に学ぶ「“勝つ”ということ」




「五輪書」は、生涯、60数度に及ぶ真剣勝負に、一度として敗れることの無かった、剣聖・宮本武蔵の代表的著作である。その不敗の哲学を後世に伝える「五輪書」は、いかにして場を支配し、敵を支配し、己を支配するかを説く兵法実践の書である。強さ、弱さ、ためらい、含みなど人間心理を隅々まで見透かし、100%の確立で「勝つ」ことを目指す。

「五輪書」で武蔵が述べているのは、己一個の悟りを開くことでもなく、衆生を直接救済することでもない。ただ、「勝つこと」が、武蔵の到達した真理なのだ。混迷を続けるヘルマーシュ大陸において、ひとり正しく生きることは難しい。武蔵のいう「勝つこと」の意味を、「五輪書」を読むことによって、今一度考え直してみることが必要なのかもしれない。

「五輪書」は、兵法を「地・水・火・風・空」の5つに分け、それぞれの利点を説明してある。

地の巻には、兵法の道の概略と武蔵が開いた「二天一流」の見解が記されている。
通りいっぺんの剣術だけをやっていても、まことの道は得られない。大より小を知り、浅きより深きにいたる道と言うものだ。このまっすぐな道を地固めするという意味合いが込めてある。

水の巻には、水のあり方を理想として、「二天一流」の具体的な道理についての見解が記されている。
通りいっぺんだけの剣術と兵法の理の違いをしっかり見分けて、一人の敵に自由自在に勝てるようになれば、世界中の敵に勝てる。人に勝つという心は、一人に対するも千万の敵に対するも同じだ。大将たるものの兵法は、小さな部分から大きな全体を見通すこと。このようなことは、細かに書きつくせない。一をもって万を知ることが、兵法の利であると説く。

火の巻には、個人・集団、それぞれの戦い方についての見解が記されている。
戦いの道は、一対一の戦いの場合も、万対万の戦いの場合も、本質的には変わらない。大きく全体的な視野で、逆に小さく詳細な視点で、物事を見極めなければならない。
一見大きなところは見えやすく、小さなところは見えにくく感じるかもしれない。ところが仔細をみれば、大人数の場合動きが遅く、すばやい方向転換がしにくい。個人の場合は心一つですぐ変化するので捉えにくい。この両様の難しさを良く考えなければならない。火の巻でとりあげているのは、緊急時の対応法なので、日々鍛錬、習熟して合戦時も日常どおりの平常心を保てるようになることが兵法のツボだ。

風の巻には、「二天一流」と世の中の兵法、他流派の比較検討について記されている。
他を知らずして、己を知ることはできない。どんな道、どんなことをやるにしても、邪道というものがある。日々その道に精通していても、本心が道に適っていないとき、自分は正しいと信じていようが、まことの道とはいえない。まことの道を究めなければ、ちょっとした心の歪みで、進むにつれ大きく道を外れてしまうものだ。心しなければならない。

空の巻には、兵法の「道」について精神論的なことがらが記されている。
極意に到達するとは、極意から解き放たれること、兵法の道に自在の境地を得ることだ。自然と並外れた力を得て、その時がくれば、その間を悟り、自然に剣を出し、自然に敵に当たる。


特に、地の巻には、この「五輪書」を学ぼうとする者に以下の9つの鉄則があると説く。

第一に、邪に陥らないと信じること
第二に、道の鍛錬をすること
第三に、広く諸芸にふれること
第四に、諸学問に通じること
第五に、物事の利害損失を認識すること
第六に、物・人を見る目、鑑識眼を養うこと
第七に、目に見えない部分を悟って知ること
第八に、些細なことにも注意を払うこと
第九に、役に立たないことはやらないこと

以上の原則を心に留めて、兵法の道を鍛錬すべきである。この道は正統を重んじ、広い視野で追求してゆかなければ、兵法の達人になることは出来ないと説いている。


© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: