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サヨコの土壇場日記
夜の狭間で
夜の狭間で
最近、ママが年下男に振り回されているみたい。
今夜は同伴すると言っていたのに、「空振りでした」と笑って出勤して来た。
上野まで行って食事だけして、
同伴できなかったなんて、ママらしくもないと美緒は思う。
うっすらと赤みがさしたママの頬をみる。
まあ、ママも人間らしいということか。
どっぷりのオミズで経営(お金?)のことしか考えない人だと思っていたら、
違った面があったみたい。ママは恋をしてるんだ。
私はもうこりごりだけど、と美緒は思う。
それよりも、せっかく忘れていられた離婚の原因を、
嫌というほど思い出してしまい、臍をかんでいる。
梅雨入り前の嵐であった。
ことの起こりは、美緒が勤めるバー『美月』に、
ゆき子が入店したからだった。
年齢は同じだが、職歴の長いゆき子。
寒さがゆるんだ四月のことだ。
帰りがけにママから聞いた。
「あー、美緒ちゃん、明日からゆきちゃんという新しい子が入るから。
毎日出勤するプロの娘だからね」
「わー、よかったですね、ママ。
いつまでもバイトの子で入れ換わるのじゃ、
お客さんも嫌がってましたし」
翌日少し早めに出勤した美緒は
新しいタイムカードを用意して「ゆき」と書き入れて開店時間を待った。
ママは少し遅れて出勤するので、それまでは美緒が店を取り仕切る。
といっても、十坪の小さいバーだ。他にバイトの娘が遅い時間に入るので
ボトル棚を整理したり、箸袋に箸を入れたりの小さな用を済ますと
客待ちしながら、営業メールを送るだけだ。
掃除はチーフが1時間早く出勤して済ませてある。
「新しい子、遅いね」
美緒はグラスを磨いているチーフに声をかけた。
開店時間から、もう四十分も経っていた。
「あ、同伴だそうですよ。初日ですから」
ど素人で、この水商売に入った美緒は
売り上げで稼ぐホステスが、初日は同伴で出勤するものだということを
この時に初めて知ったのだ。
同伴で出勤すれば遅刻は問われない。
「美緒さんもそろそろ売り上げでやったらどうですか?
大分人気も出てきたことだし」
チーフにそう言われて、
「ママのお客さんに気に入って貰っているだけだし、無理、無理。
同伴だって、食事に誘われてママに許可を得てやってるだけだから。
私のほうから、同伴の営業をかけたことはまだ一度もないのよ」
携帯を弄びながら、美緒は笑った。
売り上げで働く娘の方が収入は良いのを承知のうえで。
「おはようございま~す!」
目の大きな髪の長い女が店のドアを開けて五十がらみの客と一緒に入ってきた。
「あーさん、一番奥が落ち着くよ」
女は細長い店のカウンターを過ぎて一番奥のボックスに客と一緒に座りこんだ。
「ねえ、芋焼酎のボトルある?」
女が美緒をなめるように見上げる。
美緒は男性客にお絞りを差し出して「いらっしゃいませ」と言ってから 「ございます」と、豹柄のタイトな服を着た女に告げた。
「あーさん、ゆき用のブランデーもお願い!」
ハスキーだが甘ったれた声を、美緒は初めて聞いた気がした。不思議な声。
「ブランデーはVSOPとXOがございますが……」
「入店祝いだから、XOだよね♪」
あーさんと呼ばれた客は鷹揚にうなずく。
美緒は「承知しました」と頭をさげ、ゆき子の代わりにタイムカードを押した。
チーフがカウンターに用意したボトルを運び、グラスや氷、チャームも運ぶ。
「ゆきさんですね。はじめまして、美緒です」
これがゆき子との初対面であった。
ゆき子の入店から一月が経ち、カウンターでの客待ちの時間のことである。
「あーあ、《入店祝い月間》も過ぎちゃったな~」
ゆき子の口から吐き出された紫煙に、
妙に煙たいものを感じながらも、美緒はゆきを褒めた。
「ゆきさんってすごいですよね。お客さんがいっぱいいて」
「ゆき、今日は予約はないの?」
と、ママが間から口を挟む。
「今のところ、今日は空振り~」
「そう。あ、美緒、山川さんがこの間のお客さんを連れてまたみえるって。
お連れ様が美緒を気に入られたらしいわよ。角のお席に用意しておいて」
「水間さんとか、おっしいましたよね」
「そうそう、みーさん。この頃、新しいお客様の名前がなかなか覚えられなくて。
私も年だね。美緒が覚えててくれるから助かるわ」
着物の衿元をなおしながらママが笑った。
すぐに衿元に手が行くのはママの癖だ。
それからすぐに二組の客が入ったので、
美緒は山川さんの席を担当するようにママに指示を受ける。
連れである二度目の来店の水間が、美緒の連絡先を教えろとしつこい
携帯の赤外線システムでアドレス交換していると
「お客さんにしちゃいなさい」と、ママが耳元で言った。
枝葉の客を取り込めという指示である。
その週末に水間はひとりでやって来た。
「美緒ちゃんに連絡もらったからさ」
ママが満足そうに美緒に目配せをした。
「みーさん、ゆきにもお名刺ください」
横合いからゆき子が、自分の名刺を差し出して言った。
不思議なハスキーの甘ったれ声で。
「あら、社長さんなのね。すっごーい!」
「小さな会社だよ。
それにこの辺りでは、
呼び込みの人が
通るすべての人に『社長さん』って呼びかけるみたいだな」
水間は繁華街の掟を揶揄って笑った。
明けて日曜日の夕方に美緒は駅前で水間と待ち合わせた。
日曜は店が休みだから、同伴はなりたたない。
だが、来週には店に来てもらう約束をして水間の誘いにのったのだ。
水間は東京の丸ビルへ行こうと言う。
「なに、新幹線で25分だ」
躊躇する美緒を制してさっさと切符を買ってしまった。
「上質の空間に自分の身を置くということは大事なことなんだよ」
丸ビルの中の落ち着いた懐石料理の店に連れて行かれて
一番高いコース料理を注文しようとする水間に
美緒はあわてた。
「コースならば私のはこちらにしてください」
一番安いコースを指差す。
値段の差は品数が多いだけで、質に差がないことを美緒は知っていた。
「遠慮してる?」
「食べ切れません」
「ダイエットを気にしてるの?」
「元々、食が細いから」
言いながら、美緒は小さいころの母を思い出す。
「お願いだから、もっと食べて太ってちょうだい。
あなたがガリガリだから、ご近所じゃ、私が虐待してるのじゃないかと言われてるのよ」
ふっくらとした母が、美緒に何とか食べさせようとしたものだ。
しかし、無理して食べようものなら、必ずお腹を壊してしまうのだった。
お酒が出て、料理が出てくるまでの間に
テーブルの脇に置かれた小品盆栽を水間は手にし
ランチョマットに置かれた白い和紙に陰を落とす。
「ほら、こういう楽しみ方もあるんだよ」
和紙の上にはもみじの形がくっきりと写っている。
水間は感性の鋭い人だなと美緒は思った。
「楽しみ方って、いろんな角度から見てみると幾通りもあるんだ」と言う。
すぐに料理が運ばれてきて影絵遊びは終わりになった。
「それにしても、こういう所は慣れているんだね」
水間が注意深そうなまなざしでみつめてくる。
「えっ!?」
水間が言う意味がわからない。
「いや、コース料金の差は質ではなくて品数だってことを知ってたし、
場所の雰囲気にも臆しないし」
「ああ、水商売に入って、ママのお客様に教えてもらったことばかりです」
美緒は素直に答えた。
「君がいる店は客質が良いね。ママも品がいい」
「来週、いつ来てくださいますか?」
「うん、週末だな。その方が飲み過ぎても翌日の心配がない」
ネクタイはせずに細い立て襟のベージュのブルゾンを
軽く着こなしている水間は
美緒の半袖の白いサマーセーターをほめた。
同色で付いている飾りボタンが良いと言う。
「清楚でなかなかいいね」
遊びなれた男かもしれない。
年齢は40代後半だろうか。
一人暮らしだと水間は言った。
単身赴任であっても、男たちは「一人暮らし」だという世界だから。
水商売とは、男たちの欲望の中を泳ぎきる
微妙な職業でもあると思わざるをえない。
美緒は縁なしめがねの裏側に貼りついた
水間の男の欲望について考える。
ライトが冷たくめがねに反射した。
翌日の月曜日、店の待機時間に水間にお礼のメールを入れる。
速攻でハートマークのメールが返ってきた。
「週末が待ち遠しいわ」
もう一度の返信の末尾に、美緒もハートの絵文字をつける。
実は、昨夜は気が抜けるくらいあっさりと、
マンションまでタクシーで送ってくれるという帰り方だった。
美緒を降ろすとすぐにタクシーで走り去った。
丸ビルを出て皇居方面へと歩き出した彼に、
あせった美緒だったのに。今考えれば、馬鹿な警戒をしたものだ。
帰りの東京駅と反対側?
少し騒ぐ胸を沈めながら、美緒はついて歩いた。
「ユーターンして、一人で新幹線で帰るべき?」と、考えながら。
皇居の前の通りに出ると、水間はさっとタクシーに手を上げた。
そして高速に乗って送ってくれただけである。
タクシーの中の水間は、ほとんど運転手さんと昨今の景気の会話をしていた。
その話をゆき子にしたら、
「馬鹿ね、あんたに興味がなくなっただけかもしれない」と笑われる。
「ホステスなら、もう少し色気で相手の気をひかないと。バッカだ~」
笑い伏すゆき子に、チーフが困ったような笑顔をみせた。
金曜日にメールをしたが、水間からの返信がなかった。
週末にと約束をしたのに。
突然に来てくれるのかと期待もしたが、それもなかった。
「明日かな?」
そう思った帰りがけに、ゆき子が唐突に言った。
「ママ、明日、水間さんと同伴するから。もう彼は私のお客さん!」
ママとチーフが怪訝な顔をした。
「じゃあね、おっ疲れさ~ん」
と、帰ろうとしたゆき子を「ちょい、待ち」と止めたのはママだった。
「ゆき、次の週の来店を約束に
美緒が日曜日にみーさんと付き合ったのを知ってたよね」
「だって、食事しただけじゃん。あま~い!
私は、みーさんの会社のホームページから彼に連絡をとって
毎日メールをし合っていたのよ。毎日よ。
何にも努力しないその子といっしょにしないで!
美緒はみーさんの会社がどんな会社かも知らないでしょ?
ホームページも見たことないんじゃないの」
「ゆきちゃんの一本勝ちだな」
チーフがぼそりとつぶやいた。
「ふん、その子に任してたら、ママ、お客さんを他の店に取られてしまうよ。
ちゃんとうちの店に呼ぶんだから文句ないでしょっ」
憤然としてドアから出て行くゆき子を見送って
「仕事は甘くないよ」とチーフが美緒をなだめる。
「お勉強したわね」とママもつぶやく。
だが、美緒は別のことを思い出して青ざめた。
やっと、お終いに出来たあの嫌な記憶を。
親友に夫を寝取られて離婚したあのときの
おぞましさを恐ろしいほどいっぱい思い出してしまった。
私って、そういうぼんやりなんだ……
帰途、雨が途中で降り出したというのに
持っていた折りたたみの傘も開かずにただ濡れた。
追い越していくタクシーが怪訝そうに徐行するにもかかわらず。
三週続けて土曜日には必ず水間と同伴をしていたゆき子だったが
四週目は定時に一人で出勤してきた。
「あら、みーさんはもう帰ったの?」
遅れて出勤して来たママが伝票を見ながら、とぼけて言った。
「マ~マ、テクニックよ。毎週だったら飽きられるじゃん。
たまに無視するのも手なの。
そういうの、ママもさんざんやったと思うけど?」
ゆき子は、こってりと塗ったマスカラの先から流すような目線をママに送った。
「そ、そうね……」
衿元に手をやるママ。
カウンターには気まずい沈黙が横切っていく。
月曜日に美緒はパソコンを開き、水間のホームページに初めて入ってみた。
そして『社長のひとりごと』というブログに、
あたり障りのないコメントを入れた。
うまくいくだろうか。物欲しげに見られないだろうか。
「ゆきさんじゃなくて、やっぱり『澪』さんとお話がしたいです」
美緒の携帯のメールに水間から久しぶりの連絡が入った。
本名の『澪』でブログにコメントを入れたからだった。
後日、同伴のために会った時、水間はこう言のだ。
「ゆきさんは僕じゃなくて、僕のお金が好きなんだ。
だからゆきさんじゃなくて、澪さんともっとお話がしたい・・・」
どくんと美緒の胸が鳴る。
結局は目的がゆきと同じ自分の身に、ぐさぐさと水間の声がささってくる。
これから、この仕事で、私はいったいどこまで流れていくのやら。
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