ポルノ

大昔うら若き乙女(?)の頃、一人ヴェネッツィアに旅した時の事、駅のインフォメーションで見付けた三ツ星ホテルにチェックインし、旅の疲れを癒そうとベッドに横になった。
テレビをつける気にもなれなっかたので、ベッドサイドのチェストに手を伸ばした。
欧米等のキリスト教圏では、ホテルのチェストや机の引出しに聖書が備え付けてある事が多いので、私もその時は心休めるつもりと興味半分で聖書を読もうと思ったのである。

ところがチェストを開けると、そこには聖書ではなく一冊のポルノ雑誌が入っていたのであった。
前客の置き土産かとも思ったが、一応三ツ星ホテル、前客が旅立ったあとは部屋の清掃も行われているはずだ。
聖書を読もうという神聖な気分から、私の気持ちは全くイヤらしいものへと、いとも簡単に一転したのである。
が、素手で雑誌に触れる気にもなれず、ちょうど冬の季節、手袋持参していた為、室内で革手袋も変な光景だが、私は手袋はめてそのポルノ雑誌を開いた。
オ~ッ!モザイクも影も無しのノー・カットではないか!
お恥ずかしながら私は、興奮のまま一気に全ページを終了したのである。
これが、イタリアでのポルノ閲覧初体験であったのだが、あれから20数年の月日が流れ、その間にも様々なポルノ雑誌やポルノ・フィルムを目にする機会があった。

日本も数年前からヘアー解禁で、アンダー・ヘアーを見せたヌード写真が、普通の雑誌に掲載されているのも珍しくなくなった。
しかし、モザイク無しのポルノに関しては、まだまだ気軽にお目にかかれる状況ではない。

此処イタリアでは、書店や駅の売店・キオスクなどでもノー・カット版ポルノ雑誌が売られているし、レンタル・ビデオ店のポルノ・フィルムも当然ながらノー・カットである。
テレビで流れる映画にしても、さすが性交シーン丸出しってことはないが陰部は丸出しで、最近見た【売春婦】という映画(ポルノではない)などは、出演の男優ほぼ全員の陰部丸出しで、好みの男優のモノはよいが、いけ好かぬ男優の陰部をテレビ画面いっぱいに映し出された時にゃ
「オ~イ!やめてくれ~!」と目を伏せさせられた。
まあ、ここまで男性陰部の数々を 陳(チン)列 されると、興奮というよりは【研究】という感じである。
この映画、内容がとても興味深かったので最後まで見たのだが、終了した時にはナンだか異様な疲労感であった。

バラエティ番組では、ピチピチギャル達が裸同然の格好で踊っているし、コマーシャルでも女性のオッパイやお尻丸出しは普通である。
普段から気軽に美しい女性のオッパイなどを目にしているイタリア男達にすれば、日本のモザイク入りポルノなんぞ、幼稚園の性教育本みたいなものかもしれぬ。

以前、現イタリア人夫が来日した際、退屈しのぎにレンタルのポルノ・ビデオを2~3本借りたのだが、夫は余りの拍子抜けに「 金返せ~!」 と怒鳴り、「こんなモンで日本の男共は興奮するのかい?」と不思議がっていた。
日本には【隠す色気】や【チラリズム】というものがあり、通常では見られない物にお目にかかれた時に興奮度が増すという仕組みがまだ存在しているとの私の説明に、夫は納得できかねる様子であった。

昔から女性ヌード当たり前のイタリアのテレビだが、最近の傾向として、素晴らしい肉体美(顔もボディも)男達が、テレビの中で上半身裸になったり、彼らの逸物を想像できるようなピチピチパンツを穿いて登場、それらに歓声挙げて喜ぶ女性たち・・・という光景も多く見られるようになった。
ポルノの世界も男女同権、女性だって男性ヌードに歓喜しても何らおかしな事ではないと私は思うのだが・・・

昔、日本でよく痴漢に遭っていた私としては、今も尚痴漢大国(?)である日本の性意識に、何かしら間違いがあるのではないかと思う。
イタリアの通勤ラッシュの満員電車やバスは、日本に比較すれば少ないが、そんな中でも痴漢行為などというものはほとんど聞かれないし、痴漢目的の通り魔などの犯罪も極々わずかである。

次回は、そんな痴漢少なきイタリアで、たった1度だけ私が遭遇した痴漢について書こうと思う。


© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: