Perfect★w-inds.

「ageha」


「アゲハ蝶だー!」
「よし、捕まえるぞ!」
「えっ、採れねぇーよ!」
「バカ。こーやって採るんだよ。あれ?」
「お前も採れてないじゃんか笑」
「よし、追いかけるぞ!」

先生「えー今日も遅刻は橘と緒方か。お前らは裏庭の掃除をするように」
冬が近づいてくる匂いがしたこの季節。なんて呼べばいいのかわからない季節が僕は好きだった。
「バカバカ、なんでいつも遅刻するの?」
顔を膨らましながら言ったのは橘慶太だ。こいつは幼稚園からの付き合いだ。
「うるさいなぁ。じゃあ先に行ってればいいじゃんか。前はなにも言わずに先に行ってたのに最近なんでずっと待ってるんだよ」
僕は慶太を見ずに言った。ちなみに僕の名前は緒方龍一。
慶「・・・龍一の遅刻を治そうって思ってさ」
龍「大きなお世話だっ」
それからしばらく沈黙が続いた。慶太は黙々とほうきを動かして掃除をしている。ちょっと僕が悪かったかも。遅刻しなければこんなことにならなかったのに。
龍「慶太、ごめんな」
慶「いいよ」
慶太はこっちを見てにこにこ笑った。
慶「ねぇ、もう今日は学校さぼっちゃおうか。どうせまた反省文でしょ?」
龍「あぁ。どうせな」
慶「行こう!」
僕と慶太はほうきも、ちりとりも放り出して走り出した。実はこれ何回もしてる。
僕と慶太は親友だ。お互い確かめ合ったこともない。でもそれは慶太も思っていることだって僕は思ってる。
僕は慶太の家に行くことにした。
慶「お茶いれてくるから待ってて」
龍「うん」
慶太の部屋は僕が前来たときよりも綺麗になっていた。でも床にはたくさんのアルバムが開いたまま置いていた。僕はアルバムに近づき、手にとって見てみた。そこには小学生のときの僕らが写っていた。アゲハ蝶を捕まえて喜んでいる写真だ。
慶「あっ・・・」
慶太が入ってきた。なぜか驚いてる。
龍「あっ、ごめん。部屋片付けてたんだな」
慶「ううん。それ、懐かしいでしょ?」
龍「うん。何年前だろ?」
慶「今高2で、それは小3だから8年前か」
龍「すごい昔に感じる」
慶「俺はそうは思わないけど」
それから2人でアルバムを見て、お茶を飲んで話をして今日は帰った。
慶太はなぜか切ない顔をしていた。

先生「じゃあ、進路希望を今書ける者は書け。書けない者は来週な」
龍「慶太は進路どうすんの?」
僕は後ろの席の慶太に声をかけた。慶太の体がびくっと動いたのがわかった。
龍「どうしたんだ?」
慶「いきなり話しかけられたから・・・びっくりしてさ」
龍「なんだよそれ笑」
慶「笑」
龍「で、なんて書いたの?」
慶「えっと・・・まだ決めてない・・・」
龍「俺も!」
慶「龍一は大学行ったら?」
龍「そんな頭ないのお前が1番わかるだろ笑」
慶「そんなことないと思うけど」
チャイムが鳴って休み時間になった。
男子はみんな集まる。
「龍一、踊って!」
みんないつもこう言う。俺はダンスが得意というか好き。
龍「いいよ!」
「じゃあそれに合わせて慶太歌ってよ!」
慶「いいよ!」
慶太も歌が好き。普通はみんな恥ずかしがって断るのに慶太は絶対断らない。みんな慶太の声が好きでいつも聴きたがる。慶太の声は普通の男より少し高くてみんな「歌手になれる」とか言っていた。
それが僕らの毎日でそれが壊れる・・・なんて考えるだけで怖かったんだ。
そして冬がやってきた。
もう冬休みに入って、僕はこたつに入ってごろごろしていた。その時、電話が鳴った。
龍「もしもし」
慶「俺だけど、今ヒマ?」
龍「ヒマだけどなに?」
慶「龍一、今こたつに入ってるだろ笑」
龍「なんでわかったんだ!?」
慶「外見てよ」
僕はこたつから出て外を見た。すると、雪がいっぱい降っていて町が真っ白になっていた。
龍「すごいな・・・」
慶「外出て、遊ぼうぜ!」
僕は外に出て、慶太とよく遊ぶ空き地に行った。
慶「なにとろとろ歩いてるんだよ!笑」
龍「うるさい!笑」
僕と慶太は子供みたいにはしゃいだ。時がたつのも忘れるくらいに。
慶「あぁ~疲れた!」
龍「ほんとだな!」
僕らは雪の上で思いっきり寝転がった。
慶「進路希望なんて書いたの?」
龍「就職」
慶「えっ?なんで?」
龍「う~ん。それしかないし。したいこともないし」
慶「ダンスでやっていけると思うよ」
龍「やめてくれよ。俺はもう諦めたし」
慶「なんで!?なんで諦めるの?」
龍「うるさい!!俺は趣味程度しかできないんだよ!!そういうお前はどうなんだよ!?」
慶「・・・俺は・・・歌手になるために東京に行く」
世界が急に暗くなったような気がした。
龍「・・・東京?」
慶「そうだよ。もう決めたんだ。絶対歌手になるって」
龍「学校は?」
慶「向こうの学校に行く」
龍「もうデビューは決まってるのか?」
慶「まだだけど、向こうでレッスンしたり事務所に入ったりしないといけないし」
龍「・・・」
慶太の顔がよく見れない。慶太はこんなに違うかった?怖い。僕だけが置いていかれる。
龍「へぇ~そっか」
慶「えっ?」
龍「じゃあ俺もう帰るわ」
慶「ちょっと待てよ!それだけかよ!」
龍「うん」
慶「龍一の気持ちよくわかったよ!」
慶太は後ろを向いてすたすた歩いて行った。
始業式の朝、慶太は僕を迎えに来なかった。
慶「それでさぁ~」
教室に入ると慶太がいた。隣にいるのは千葉涼平。
千葉と慶太はあまり仲がよくなかったはず。でも、2人は楽しそうだ。
千葉は頭がよくて、運動神経がよくて、女子からすごく人気がある。慶太も人気あるけど。
涼「ねぇ、緒方くん来たよ」
慶「あんな奴知らない」
思いっきり言われてしまった。慶太が悪いんだ。東京に行くとか言うから。そりゃ、応援したいよ。でも応援したら慶太は頑張るだろ?
慶「涼平、行こう。もっと話がしたいよ」
涼「う・・・うん」
慶太は千葉を引っ張っていった。
「龍一、慶太は?」
龍「千葉とどっか行った」
「千葉?あいつも不思議な奴だよな」
慶太、なんで千葉なんだ?僕の代わりなんていくらでもいるのかと思うと悔しかった。
次の日の昼休み。僕はみんなから離れて食べることにした。いつも隣にいた慶太はもういない。それがこれからはもう当たり前になってしまう。寂しいとしかいいようがないこの気持ちに苛立ちを感じた。
しばらくすると千葉が僕のところに来た。
涼「慶太、もう春で東京行くって」
龍「えっ?」
春?もうすぐじゃないか。僕に焦りがでる。
涼「このままで緒方くんはいいの?」
龍「いいのって言ったって慶太があんなんだったらどうすることもない」
涼「慶太は・・・」
龍「慶太、慶太うるさいんだよ!お前らはお前らで仲良くしてろよ!」
涼「そうだよな。俺は慶太とはほんとうにわかり合える友達だから」
龍「そうかよ!」
涼「じゃあね」
千葉は行ってしまった。千葉が向かうところには慶太がいた。
それから1週間が過ぎた。
僕は慶太とあれから口をきいていない。でも、慶太が今日の夜僕の家に来るらしい。お別れを言いに。
母「龍一、慶ちゃん来るんだから片付けなさい」
龍「うん」
母「慶ちゃんはすごいわね。歌手になるために東京なんて」
龍「そうだな」
母「ちゃんと挨拶しなさいよ」
母さんはそう言って料理の用意をし始めた。
そして夜。
母「慶ちゃん、いらっしゃい」
慶「おじゃまします」
母「ほら、龍一、ちゃんと挨拶して」
龍「おう」
慶「こんばんは、龍一」
慶太は母さんと父さんに大歓迎された。僕と慶太は目も合わせない。
母「じゃあ、慶ちゃんちょっと龍一の部屋に行っててくれる?」
龍「えっ?」
慶「はい」
気まずいまま慶太は僕の部屋に入ってきた。
慶「久しぶりーこの部屋」
龍「そっか」
僕は慶太を見ることができなかった。慶太は千葉に夢の話をしてる?僕も謝って慶太と夢の話がしたい。でも怖い。
慶「俺、春になったらすぐに東京行くから」
龍「そっか」
慶「龍一には興味ないことだろうけど」
この言葉にちょっとムカっとしてしまった。
龍「どうせ、俺はお前みたいに夢とか決まってないよ!」
慶「えっ?」
龍「東京に千葉みたいな友達いればいいなぁ」
慶「なんだよそれ。いやみかよ」
龍「お前と千葉は親友なんだろ?」
慶「もういい!」
慶太は部屋を出て行ってしまった。僕はもうリビングに行くことはなく、部屋にずっとこもっていた。
気付くと僕は寝ていたらしく、もう慶太は帰ったらしい。
こんな気持ちのまま、僕は慶太を見送れない。でも、どうすればいいのかわからなかった。
あれから慶太と僕は全く話をしなくなった。明日こそは明日こそはと思っていると春が来てしまった。
春休みが明日から始まる。今日は終業式だ。
でも慶太の姿はなかった。すると担任が教室に入ってきた。
先生「橘、入って」
みんな「慶太どうしたんだろ?」
慶「えっと・・・」
先生「橘は明日から東京に行くから転校することになった」
みんなが騒ぎ出す。僕もびっくりしてしまった。明日?そんなことって・・・
慶「俺、東京に行って絶対歌手になる。みんな、応援してください。今まで仲良くしてくれてありがとう」
慶太は深く頭を下げて礼をした。
それからクラスのみんなで明日慶太を見送ろうという話になった。慶太は顔を真っ赤にして「いいよ」と言っていた。
僕だけが一言も発言をせずただ慶太を見つめていた。
その夜、僕は眠れなかった。慶太に「頑張れ」って言いたい。でも言えない。きっと僕らはもう会えないから。
慶太の旅立ちの日。
ホームにはうちのクラス全員が集まった。
「慶太、頑張れよ。CDでたらメールしろよ!絶対買うから!」
慶「ありがとう」
慶太はみんなに囲まれて、握手を交わし、笑いあってた。
それなのに僕だけは端っこでそれを見てるだけだった。慶太は僕が来てることさえもわからないのか?
涼「緒方くん慶太のとこ行かないの?」
千葉がいきなり声をかけてきた。
龍「行かない」
涼「最後なんだよ?」
龍「だから?」
涼「緒方くんもっと素直になるべきだよ」
龍「うるさい」
涼「慶太がいつも言ってた。緒方くんの口癖はうるさいだって」
龍「えっ?」
涼「慶太も不安だったんだよ。君に自分の夢はぐらかされて」
龍「・・・」
涼「慶太も素直じゃないけど緒方くんのほうがもっと素直じゃない!」
龍「どうせ・・・あいつは俺がいなくても・・・」
涼「いい加減にしなよ!!」
千葉が怒鳴った。周りが驚いてこっちを見てた。
龍「千葉?」
涼「慶太には緒方くんが必要なんだよ!僕と慶太は親友になれなかった・・・慶太はほんとに緒方くんのこと親友だと思ってる」
龍「そんなの俺だって!」
涼「なら、ちゃんと話してあげなよ」
千葉はそっと微笑んだ。初めてこいつの笑顔を見た。そして初めてこいつをいい奴だと思った。
今、やっとわかった。慶太と一緒に歌ってた意味。僕がほんとにしたいこと。
龍「慶太!」
慶「龍一・・・」
龍「今までごめん!」
慶「・・・」
龍「慶太だけが大人になってて俺だけが置いてかれそうで怖かったんだ」
慶「うん」
龍「でも今はちゃんと頑張れって言える」
慶「覚えてる?アゲハ蝶を捕まえた日のこと」
龍「あぁ」
慶「あのとき、俺らは約束した」
龍「なにを?」
慶「たとえ、離れたって親友だって」
そんなことを覚えてる慶太に僕は目の前がかすんだ。
慶「もう、時間だ」
龍「頑張れよ」
慶「おう」
慶太は新幹線に乗った。慶太は窓から手を振って笑ってた。僕も手を振る。
中には泣き出す奴もいた。千葉と慶太は手を振り合って笑ってた。
新幹線がゆっくり動き出す。
そのときに慶太と目が合った。慶太はみんなには無邪気に笑ってたけど僕には優しく笑った。僕は泣きそうになって新幹線と一緒に僕も走った。
龍「慶太ぁー!俺、ダンス頑張る!」
聞こえてないかもしれない、けど慶太は泣いていた。
龍「いつかお前の後ろで踊るから!」
慶太は窓にぴったりくっついて口をぱくぱくさせていた。僕はすぐにわかった。慶太がなにを言っていたか。
「離れたって親友でいようね」
あのアゲハ蝶を追いかけた夏。あのアゲハ蝶を捕まえたように慶太は絶対夢を捕まえられる。だって僕の大事な親友だからだ。
新幹線が見えなくなるころまで僕はホームで立っていた。そして慶太がよく歌ってた歌を口笛にして吹いた。さよならは言いたくないから。どこまで意地を張ってるのかと言いたくなる。でも涙が止まらなかった。
そして高校の卒業式。
龍「明日が出発だな」
涼「うん。明日慶太迎えに来てくれるって」
僕は慶太が東京に行ってから毎日ダンスの練習をした。涼平と一緒に。あれから僕たちは仲良くなった。
涼平と慶太はレッスンが一緒のところだったらしい。それで2人は仲良くなったらしい。
涼平は僕のことを龍一と呼んでくれ、僕も涼平と呼ぶようになった。
龍「早く終わらないかなぁ~」
涼「焦るなって笑」
卒業式が終わった。
僕らは走って、家まで帰ろうとした。そのときに慶太とよく遊んだ空き地の前を通った。
龍「涼平!ちょっと待って!」
涼「なに?」
龍「ここで話さない?」
涼「いいよ」
ここの空き地で慶太に東京に行くと言われた。あの言葉が僕の運命を大きくかえた。
龍「涼平、慶太が東京に行く前に僕と慶太は親友になれなかったって言ってたよな」
涼「あぁ・・・言ったねぇ・・・」
龍「それ、違う」
涼「どういうこと?」
龍「涼平は俺と慶太の親友だから」
涼「嬉しい」
龍「じゃあ帰ろうぜ!」
明日にはもう来れない町をゆっくり歩く。すると曲が流れてきた。
涼「これって・・・」
龍「慶太の新曲だ!」
そう、慶太はあれから歌手になった。慶太はあの高い声と優しい声で人気になった。そして今は新曲を発表してる。
涼「やっぱり慶太はすごい」
龍「俺たちもなるだろ!慶太のように」
涼「うん!」
そして僕らは走り出した。
明日、僕たちは東京に旅立つ。ダンサーになるために。慶太の後ろでいつか踊れるように。
あのアゲハ蝶を捕まえたように夢を捕まえた慶太。僕も慶太のように夢を捕まえたい。
慶「僕の新曲、どうだったでしょうか?この曲は僕の親友のために歌いました」
そして旅立ちの日。
龍「涼平遅い・・・」
涼平を待ってるときにアゲハ蝶が飛んでいた。まるで僕を励ますかのように・・・
★END★




○あとがき○
やっと終わったー笑笑
どうでしたか??
なんか思い通りの「ageha」じゃないーという方いっぱいいたんじゃないでしょうか??
あくまでこれは一例ということで・・・逃←逃げるな。
1度、agehaを聴いて読んでみてください!
感想をBBSによろしくお願いしますm(_ _)m
「読んだ」とかだけでもいいので!!


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