Studio Life『トーマの心臓』観劇報告
2006年6月4日 紀伊国屋ホールにて
主な配役
ユーリ:山本芳樹 オスカー:高根研一 エーリク:松本慎也 レドヴィ:林勇輔 アンテ:吉田隆太 バッカス:船戸慎士 サイフリート:舟見和利 他(Seeleチーム)
*ストーリー*
ドイツのギムナジウム(高等中学校)シュロッターベッツ。冬の終わりの土曜日。一人の少年が陸橋から落ちて死んだ。トーマ・ヴェルナー。シュロッターベッツでも人気者だった彼の死は、雪に足をとられた、不幸な事故だった。そして月曜日。成績優秀・品行方正な委員長、ユーリの元に一通の手紙が届く。
『ユリスモールへ さいごに これが僕の愛 これが僕の心臓の音 君には分かっているはず』
それは、トーマからユーリに宛てた遺書だった。その半月後に現れた転入生のエーリク。彼はトーマに生き写しだった。
トーマがあの品行方正なユーリを堕とせるか・・・茶番劇の裏にあった、トーマの本当の心と、心を閉ざしたユーリの苦悩。彼を常に見つめて、その心の扉が開くのを、じっと待っているオスカー。そして少しずつ、ユーリに惹かれていくエーリク・・・。多感な少年たちの、それぞれの想いの行方は・・・・
*感想*
これも、ほんとに、原作を読んで下さい。ほんとに素敵だから。ギムナジウムと言うのは、寄宿制の男子校だったりするのですね。その学校と寄宿舎とを舞台に、それぞれの大切な人に対する愛情と苦悩と、そして信仰心とが混ざり合う、フクザツなお話です。男子校にありがちというか、まあ、少年同士が遊びの延長みたいな恋愛(厳密には、違うけど)感情を交わしたりする、それでもいやらしくなくて、清らかな感じもする、そんなストーリー。
私はこの原作が本当に大好きで、読むたびになんだかじんわりと涙が出ます。号泣、とかじゃなくて、じんわり(笑)この舞台化ということで、機会があったら是非観たいと思っていました。
ユーリ:山本芳樹さん
神経質そうな、張り詰めた糸のようなユーリです。ちょっと、私のユーリのイメージとは違うんですけど、あのフクザツな心理状態をよく演じていらしたと思います。下級生や上級生にも注目される、『素敵』な生徒、と言う設定なのですが、・・・微妙に根暗路線でちょっと残念。動作があまりにも女の子っぽくなっていたのも、ちょっと気になったかな。
オスカー:高根研一さん
おお、オスカーだ、って感じ。ユーリたちと同じ学年でも、事情でひとつ年上、と言う、兄貴分。実は微妙にワルな所もありつつ(煙草すってたりとか、お酒持ってたりとか)でもユーリのよき理解者であろうとする役どころ。原作でも『のっぽ』と言われているのですが、他の出演者より大きくて、兄貴分な風格がありました。私情でもうしわけありあませんが、かっこいいです。かっこいいんですけど、もうちょっと砕けたところがあってもいいかな、と言う印象は受けました。・・・でもかっこいいんだけどね←わかったから(汗)
エーリク:松本慎也さん
トーマに生き写しの転入生。可愛い容姿からは想像も出来ない、わがままで短気で・・・要するに子供。子供の素直さと直感で、少しずつユーリの心の隙間に入り込んでいく役。いやさ、可愛いさ~(*^^*)でも、もうちょっと、集団生活を知らないが故の型破りなところとか、観たかったかな。物語終盤、ユーリに言う台詞
「僕の翼じゃダメ?片羽根、君にあげる・・・両羽根だっていい。僕は要らない」
・・・名言です。これが、トーマが自分の身を犠牲にしても、ユーリにあげたかったもの、と、ユーリが気づく重要な台詞です。ユーリに気づかせるだけの表現力。良かったですけど、ちょっと物足りない感はありますかね?まあ、あくまでも私の主観ですけど。
一応、メインキャストはこんな感じ。脇を固めるクラスメイトとかも、連帯感があってよかったんじゃないかな。ワタクシ個人的にびっくりしたのが、舟見さんのサイフリート。実はサイフリートって、ユーリが心を閉ざす原因を作った張本人、すっごく悪い人なんですね。悪魔主義でサディストで。舟見さんて、前回『OZ』を観に行ったとき・・・ヒロインのフィリシア、されていたんですよね・・・・危ない人になっていましたが、サイフリートの方が、良かったかな。余談ですが『OZ』でヒーローのムトーをしていた岩崎大さんも、サイフリートにキャスティングされており・・・観たい・・・ちなみに今日は、ユーリのお母さん(女役もするんですね)をされていました。
使われる曲は、ほとんどグノーのアヴェ・マリア。シンプルなセット。それでも、原作を読んだときの、なんともいえない切なさは、感じることが出来ました。もう一度、原作を読み返したくなりました。


