PLUTOからの便り

PLUTOからの便り

2022/02/19
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テーマ: 創作童話(818)
カテゴリ: カテゴリ未分類


闘うだけの気力はありません。退路を探すために周りを見渡します。

 すると上空から白いものがパラパラと舞い降りました。シティ・フィールド

の殺気を感じた天がその空気を冷ますかのように、雪を降らしたのかも

しれません。クリサーラの澄み透る声が球場内に響き渡ります。

「一塁側のネズミたち、ダッグアウトまでの一本道を作っておあげなさい。

ダッグアウトの中も空っぽにして、そこのロボット・ネズミを帰しましょう。

もう無益な闘いは終わりです。グラッチは死んでいませんから安心して

ください。あなた方の社長は不死身です。これからもこの地区だけでなく

全米中のネズミ族を束ねる勇敢なボスです。あなたたちは、こんなボスを

持ったことを誇りにして生きてください。あなたの子供や孫、その孫たち

にずっとずっと言い聞かせるのです。ニューヨークにいるグラッチ・マウスの

名前を忘れないために」

 クリサーラの声が途絶えると、グランド全面を覆い隠したネズミたちです

が、一塁側だけ細い道ができました。その道にネズミは一匹もいないから、

隠しチューは多少、おどおどしながら歩きだします。

 周りを囲んだネズミから強力な殺気を感じ、それを振り切るように

ダッグアウトに走り込むと、そのままロッカールームから一直線に外へ

出る階段に向かいました。

 そのとき、球場内からネズミたちの大歓声が響きます。グラッチが地表に

降ろされると、自分の意思で起き上がり、4本の足でグランドに立ったのです。

 なにか言葉を発しようとしますが、その前に「グラッチ、グラッチ」の

歓声がこだまし、地面を向いたままの汚れた顔には、大粒の涙がきらめいて

います。降り注ぐ白い精霊たちがグラッチの顔を隠してくれました。

 その光景を見届けたクリサーラは、外野席の上空からフェンスを越えて

一般道路へひらりひらりと降ります。ようやく生田緑地の動物たちが

球場に到着し中に入ろうとするので、優しく声をかけました。

「怪物のネズミはすでに退散しました。あの歓声はグラッチ・マウスさんの

部下たちが勝どきの声を上げているのです。みなさんが駆け付けたのは、

無駄ではありません。その気持ちがグラッチさんに大きな勇気を与えたの

です。さあ、一緒に帰りましょう」

 ことの詳細を知らない動物たち、クリサーラが言うのを信用しています

から、そのままユーターンして来た道を戻りました。大粒の雪が生き物たち

の肩や背中に降り注ぎシンシンとした音と、サクサクの足音が寒空に

響いています。

     つづく





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最終更新日  2022/02/19 10:58:52 AM
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Re:「カメぱっぱ」海底人との闘い・最終章(549)(02/19)  
雪が降ってきて、一篇の詩のような情景ですねえ。
隠しチューのこころも雪のように真っ白になるといいですねえ。
(2022/02/19 11:53:21 AM)

Re:「カメぱっぱ」海底人との闘い・最終章(549)(02/19)  
ビヨンヌ  さん
こんにちは。
一件落着!という感じですか。良かった良かった。グラッチマウスも生きていたんですね。社長という呼び方が何か面白いです。これだけ皆を束ねて引っ張っていく親分とかボスとか、そんなニュアンスですが……。こういう自然発生的な感情にAIは敗北したんでしょうね。さて親玉・ボントスとなると、そこら辺の事情は如何なるものか??? (2022/02/19 02:03:33 PM)

Re[1]:「カメぱっぱ」海底人との闘い・最終章(549)(02/19)  
pluto2103  さん
せいやんせいやんさんへ

今の世界情勢は、きな臭くなってきました。小国を取り囲んだ
大国が自分の要求が通らないと、軍事力を行使する脅かしの構図
です。つくづく思うのは、正義は力の差で証明されることです。
正しいことを言っても力のある者には通用しません。

海底王国の王、ボントスが次から次へと人類を混乱させる策を
練って作戦を実行しますが、今のところ、いずれも失敗に
終わっています。
人間を支配したくても海底人の数やクリサーラたちの抵抗で
成功していません。

人間を完全に奴隷化してその労力を確保しようとする企みは
ボントスが最初から考えていることです。

月や火星に基地を作り宇宙に進出する計画は、順調に進んで
いるようですが、このあとどうなるのか、お楽しみに。 (2022/02/19 03:56:21 PM)

Re[1]:「カメぱっぱ」海底人との闘い・最終章(549)(02/19)  
pluto2103  さん
ビヨンヌさんへ

SF小説ではAIが人間を支配して反抗する者を抹殺するものが
多いです。しかし賢いAIが感情を持ち冷静に政治を行えば
人間よりも失敗は少ないはずです。

今回のコロナ対策を見ると・・・政治家の無能さをつくづく
しらされました。やることが後手で国民の命を多数殺して
いるのです。小国のリーダー(一部の国)たちの確固たる
政策とリーダーシップの発揮、それに従う国民たち。
東日本大震災などで政治家も国民も変化し、緊急事態時の
対応も以前に比べて早く上手くいくのかと思っていましたが、
・・・相変わらず、遅く、諸外国に比べると、どうしようも
ないのです。

ボントス対人類と動物連合の闘いは、これからも続きますが
はたして結果はどうなるのか?

正直、作者もわかりません。 (2022/02/19 04:16:52 PM)

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