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「よろこび」 形のない何かを探し求めることの 心もとなさが 風のようにからだを吹き抜ける日 決まったように 一冊の本を開いている 何年も 繰りかえし読んだ本 水色の紙の表紙はくたびれて ページを繰れば 共感のこもった太い鉛筆のライン 余白に残る気忙しそうな書き込み かつて そこで何かをみつけたらしい わたしの熱いこころの痕跡も いまは どこかよそよそしくて それよりも この 胸の底からフツフツと湧き上がる 思いがけないよろこびを ただそれだけを ゆっくりと ゆっくりと こころが咀嚼して ああ、わたしはいま勉強している・・・ からだの 深い 深いところからあふれ出す 泉のような この幸福 学ぶことの充足を 学校では気づかなかったけれど 時を経た、いま わたしは机のまえにきちんと腰かけて 日々変わらず用意される 暖かい食事をいただくように 静かにそれを味わっている ↑よろしければクリックして下さい。 いつもご協力ありがとうございます。 *~*~☆~THANK YOU!!~☆~*~*
2007年07月31日
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「一本の樹」 ふと 一本の樹のことを思い出した 或る もの静かな哲学者が 日記のなかで語っていた あの丘のうえの樹のことを 幼い日の窓辺から いつも 彼が眺め 親しんできた あの大きな樹のことを 「遥かに行くことは 遠くから自分に還って来ることなのだ」 (*) そう言って ある日 彼は 遠く異国に旅立っていったのだ なつかしい一本の樹のもとに ふたたび還って来るために・・・ 異国の灰色の空の下で 彼はひとり オルガンを弾いた その音色は 素朴であたたかく 樹のぬくもりがあった ふたたび故郷の地を踏むことはなかったけれど 一本の樹のもとに還って来ることの 絶え間ない試みのなかで 彼の生は いつも あの樹とともに在ったのではないだろうか 彼の心のなかに すでに あの樹は真っ直ぐに立っていて 彼をいつも見護っていたのではないだろうか あの歌曲のなかで詠われる ひとりの若者の 孤独な冬の道行きが いつも はるかな大樹の懐にいだかれていたように・・・ はるかな丘のうえにも この身の内にも 真っ直ぐに立っている 一本の樹 それは これからの旅路の指針であり 故郷の家のともし火なのだから 安心して わたしも旅に出ようと思う そして、遠くから ふたたびわたしに還って来ようと思う その時 はじめて わたしは 空に向かって伸びる大樹を見あげ 光を浴びる その姿を感じ その声の語るところを聴くのだろう (*)森有正『バビロンの流れのほとりにて』 より引用させて頂きました。 ↑よろしければクリックして下さい。 いつもご協力ありがとうございます。 *~*~☆~THANK YOU!!~☆~*~*
2007年07月26日
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「あたらしく生まれる君の詩」 一. おはよう、君 窓をあければ 春のやわらかな風 君の長い旅の疲れを そっと癒してくれる 哀しみ追いかけて 霧のなか どうか戻っていかないで 春のやさしい光に照らされて 今、全てがひとつに解けあった おはよう、君 あたらしく窓をあける時 あざやかな花たち 風にゆれて 広い世界が 君にむかって微笑んでいる 二. 目覚めよう、君 扉をあければ 夏の一陣の風 君のたいせつな帽子を 吹き飛ばしていった 思い出追いかけて 森のなか どうか戻っていかないで 夏のまぶしい光に照らされて 今、全てがひとつに解けあった 目覚めよう、君 あたらしく扉をあけるとき はるかな雲の城 青空にそびえ 未知の世界が 君にむかって拓かれていく 三. 旅立とう、君 耳を澄ませば 秋の静けさ 君の郷愁ねむる胸に 虫の音がせつなく響く 故郷(ふるさと)追いかけて 時計のなか どうか戻っていかないで 秋のあたたかい光に照らされて 今、全てがひとつに解けあった 旅立とう、君 あたらしく耳を澄ますとき すすきゆれる野原 銀色に輝いて 懐かしき世界が 君にむかって呼びかけている 四. 飛び込もう、君 心をひらけば 冬の旅人たち 君とおなじ道のりを ともに連れ立ち歩んでいる 孤独追いかけて 夜のなか どうか戻っていかないで 冬の透明な光に照らされて 今、全てがひとつに解けあった 飛び込もう、君 あたらしく心をひらくとき 降りつもる雪の ほのかな暖かさ 円居(まどい)の世界が 君にむかって光の輪なげかける 五. おはよう、君 窓をあければ ふたたびの春 君の果てしない旅も すべて終わった 名残り追いかけて 夢のなか どうか戻っていかないで めぐる季節の輝きのなかで 今、全てが君のもとに還ってきた おはよう、君 あたらしく窓をあける時 今までの旅の道のりに 花は咲き 小川ながれて 待ち望んでいた世界に 君は暖かくつつまれ生きている↑よろしければクリックして下さい。 いつもご協力ありがとうございます。 *~*~☆~THANK YOU!!~☆~*~*
2007年07月23日
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「からだに煙突」 頭の中の引出しが 梅雨の湿気を たっぷり吸ったか ギシギシいって閉めづらい 考えることが 重っ苦しいのは そのせいなのかもしれない 風通しのわるい頭に からだは愛想を尽かし 何やらグズッているので わたしは扉をあけて 外へ出かける 駄々っ子ふたり 渋々あやして ゆっくり歩いていけば 家の塀から 淡雪のような百日紅 ふんわり顔をのぞかせている やあ、きみ! 今年も咲いたね・・・ と、見あげて声をかければ 頭とからだ まっすぐ伸びて わたしは一本のちいさな煙突 すずしい風が吹き抜けて 頭の中の引出しは カタン、と乾いた音で閉まる 急に静かになった 頭 少々ばつが悪そうに 何ごとも無かったように 澄まして 百日紅を見あげている ↑よろしければクリックして下さい。 いつもご協力ありがとうございます。 *~*~☆~THANK YOU!!~☆~*~*
2007年07月19日
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「クレヨン小僧」 ちびたクレヨン ぎゅっと握って 腹ばいになり ぐいぐい描いて 力いっぱい塗りつぶす クレヨンが ポキンと折れても 気にならない 目のまえは 広い紙の草原 好きなところへ 思いつくまま 子犬みたいに どんどん駆ける 流れる空気 吸って吐いて 胸は歌う トクトクよろこび 心臓はおどる ポッポと沸き立ち 血は駆けめぐる 時間を追い越し 自分を追い越し 丸い紙の地球のうえ 機関車みたいに シュッシュと走る 子供のときの 6色クレヨン 26個のKeyのうえで 今日も跳ね飛び踊っている 時間を忘れて 自分を忘れて 詩さえも忘れて パソコン画面の草原を クレヨン握った やんちゃな小僧 息はずませて 駆けていく ↑よろしければクリックして下さい。 いつもご協力ありがとうございます。 *~*~☆~THANK YOU!!~☆~*~*
2007年07月17日
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「喪失」 空の青さを言葉にするとき 空に溶け込んでいた無数の青は 失われていく 風の心地よさを言葉にするとき 風と一緒に揺れていた心は 忘れ去られていく 光り輝く木々の緑を言葉にするとき 木々がそこに在ることの感謝は 粗末にされていく 空と 風と 木々の緑と そして わたしと 共に在ることの静かな喜びで 世界は満たされていたのに 言葉というパレットを広げ ペンという絵筆を走らせ 詩という絵が その姿を現わしてくるほどに 空の青さも 風の心地よさも 輝く木々の緑も そして わたし自身も 世界からこぼれ落ちていく ただ共に在ることだけで 満ち足りていた 瑞々しい心が 少しずつ萎れていく 生みだすことの喜びには いつも 失われていくことの痛みが 裏打ちされているはずなのに 言葉によって 形を与えられ 光り輝きながら 生まれてくるものの 眩しさが 言葉によって 切り離され こぼれ落ち 葬り去られていくものの 哀しみを 覆い隠してしまう 書けば書くほど かけがえのないものを ボロボロと落としていっている 自覚も無いままに わたしは 言葉だけを追いかけて どんどんと 独りぼっちになってはいないだろうか・・・↑よろしければクリックして下さい。 いつもご協力ありがとうございます。 *~*~☆~THANK YOU!!~☆~*~*
2007年07月14日
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「畏怖」 何も知らない 目の前しか見ない 無知で身勝手な子供 人間のわたし 公園へ出かけ 樹々を見上げ まぶしく輝く緑の葉を見ては 単純によろこび 風に散る黄金色の葉を見ては もの想いに耽っていた たった百年足らずの生のなか いったいどんな大層なことを 考えられるというのだろう 幼い人間の その場限りのよろこびも感傷も 樹々たちには関心のないこと 自らが生かされる 自然という名の 苛酷な環境のなかで 樹々たちは瞬間瞬間を必死で生きる 隣の若木を倒してでも 自らの子の生命を奪ってでも 生き延びる道を懸命に探す 樹々たちは長い時間のなかで待つ 容赦ない雪の重みの下で 折れそうになりながらも 幼い木は百年先のことを考えている 樹々たちは自らにどっしりと腰を据える 千年の生の果てが 虫に喰い荒らされる無残な姿だとしても 無言のままそこに在り 風雪に晒される 畏怖 とは こういうことなのか 偶然つけたテレビの画面に 次々と映し出される 巨樹たち 悠久の時の流れをひたすら生きる その姿が 無言でわたしに迫ってくる 在りすぎるほど そこに在って どんな言葉をつかって表現しても そのゴツゴツした 傷だらけの太い幹に 小石のように空しく当たり わたしの狭い額に 跳ね返ってきてしまうだろう ちいさな子供 人間のわたし オモチャの言葉を 咄嗟にごくりと飲み込んで 何者かに大きく胸を掴まれたようになり 黙ってテレビの前に座り続けていた ~テレビ番組「巨樹」にふれて~ ↑ご参考までに・・・。 クリックしてみて下さい。 写真: 岡本太郎の大壁画「明日の神話」(東京都現代美術館にて公開中)の部分を 撮影したものです。↑よろしければクリックして下さい。 いつもご協力ありがとうございます。 *~*~☆~THANK YOU!!~☆~*~*
2007年07月10日
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「ありふれた日々に」 雨あがり からだの中にひろがる 水色の空 眼を閉ざし 沈黙にいだかれ こころを鎮める ひととき そっと 耳を澄ませば 聴きなれた 雀たちのさえずりは とても美しい ありふれた日々は もしかすると 奇跡 天国のなかに 生かされて わたしは それに気づかない↑よろしければクリックして下さい。 いつもご協力ありがとうございます。 *~*~☆~THANK YOU!!~☆~*~*
2007年07月09日
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「春風の時間の恋人たち」 暗闇に浮かぶスクリーンに ひとつの扉がひらかれて 春風の時間がはじまる うつくしい言葉と 淡い歌声が流れゆく街 恋人たちは ゆれる木漏れ日のなかで 微笑み合い 抱き合い 接吻して 軽やかな花びらになって 風に舞い 出会い 別れ そして巡り会う やわらかな日差しゆれる街角 恋人たちの さわやかな笑い声が ソーダ水の泡のように わたしの皮膚のうえで弾けて わたしは恋をする 空に 木々に 風に ゆれる木漏れ日に 夏のまぶしい小道に 扉の向こうの恋人たちが 残していった 春風の時間 今もわたしの胸に 生き生きと流れ セメントのような言葉の飛び交う 灰色の街のなかで ちいさく澄んだせせらぎの音を 奏でている *春風の時間へおでかけください。。。 ↑よろしければクリックして下さい。 いつもご協力ありがとうございます。 *~*~☆~THANK YOU!!~☆~*~*
2007年07月05日
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「Tシャツを洗う」 遠い北の国 湖を望む丘に 短い夏が訪れる頃 わたしたちは 銀色に輝く湖を眺めながら たくさんのTシャツを洗濯した 一年分の汚れたTシャツを それぞれがたくさん持ち寄るから 洗濯は毎年大変だった 北の国の涼やかな風に吹かれながら わたしたちは ひたすらTシャツを洗い続けて やがて 真っ白に輝くTシャツが 洗濯ロープにズラリと並び どこまでも広い青空の下で 万国旗のように 誇らしげに風に翻るのだった それから わたしたちは 並んで丘の上に立ち 白く輝くTシャツが 無数の白い鳥となって 青空に飛翔し ゆっくりと旋回しながら 何処ともなく消えてゆくのを 黙って見送るのだった * 今年も あの遠い北の国に 短い夏がやってくる わたしは今日もひとり 都会の中の小さな部屋で 着古した小さなTシャツを洗濯する あの銀色に輝く湖の さざ波が ひたひたと 使い古しの小さな盥の中に寄せてくる 個性的なTシャツを作ることも それを着て町へ出かけることも 興味がなくて わたしは黙ってひたすら洗う あの丘の上の空の青さを思い出しながら 何十年 ・・・いや もしかすると何百年 着続けた 汚し続けた 数え切れないわたしのTシャツは もう真っ白には戻らないかもしれないけれど それでもわたしは洗い続ける 次から次へと出てくる わたしの汚れたTシャツを 次から次へと洗濯して パリッと糊をきかせて 物干し竿いっぱいに干して 旗のように風に翻るさまを ひととき 見つめる やがて小さな白い鳥たちが 青空に舞い上がり 消えていく あの湖を望む丘に飛んでいってくれたら良いけれど・・・ そう案じながらも さっさと次の洗濯にとりかかる↑よろしければクリックして下さい。 いつもご協力ありがとうございます。 *~*~☆~THANK YOU!!~☆~*~*
2007年07月02日
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