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 久し振りに鶴を折った

 周囲を片づけ 手を洗い
 心あらためて鶴を折った

  線と線をぴたりと合わせる
  角と角をぴしりと揃える
  折り返され 折り込まれ
  思いがけなく生まれては
  瞬く間に消えていく


   時間が止まる
   止まった時間の向こうに
   白く光るガラス戸が見える
   ガラス戸を叩くかすかな雨の音が聞こえる
   雨降りの日の 故郷の家の居間が見える

   母がいて 妹がいて私がいる
   明るい窓辺で母が鶴を折っている
   赤い正方形の紙で鶴を折っている
   粉薬を入れる 赤く薄い紙の表面は
   うっすら薬の粉が残っていて


   母の掌にのっている小さな赤い折鶴
   ほのかな温かさと悲しみが
   遠い音楽のように伝わってくる


     外では雨が降っている
     窓越しに雨音を聞きながら

     線と線がぴたりと合わさる
     角と角がぴしりと揃う
     忘れられた時が戻ってくる

      赤い鶴と白い鶴は
      溶け合い 旋回し
      マーブル模様を描き始める
      一つの秘密が静かに結晶していく

      全ての線と 全ての角が
      ぴたりと合わさり 出会う瞬間
      謎は解け 真は明かされ
      大きく開かれた空間から
      奇跡のように誕生する一つの美 
      鶴
      翼を広げ 無限の彼方へ飛翔していく

       母が手を振り飛び去っていく
       居間のガラス戸が太陽のように光っている
       雨は星屑になって降り続けている
       赤い鶴 白い鶴
       次から次へと羽ばたいていく
       宇宙のマーブル模様を描きながら


2008夏 009.jpg





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最終更新日  2010年07月22日 08時25分14秒
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