東方見雲録

東方見雲録

2022.11.23
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カテゴリ: 科学
2022年のノーベル物理学賞は、「量子もつれ光子を用いる実験によって、ベルの不等式が破れていることを示し、量子情報分野を創始した業績」により、フランスのアラン・アスペ博士(1947-)、アメリカのジョン・F・クラウザー博士(1942-)、オーストリアのアントン・ツァイリンガー博士(1945-)に授与されました。

量子もつれは「量子力学」の不思議を全部集めて煮詰めて結晶にしたような現象です。ミクロな物体の物理法則である量子力学には、私たちの常識や直感が通用しません。それがあらわれたのが量子もつれであり、ベルの不等式です。量子もつれを制すれば、ミクロの世界が支配できて、量子コンピューターも作り放題になるでしょう。といわれています。

まず2個のミクロな粒子を作ります。それには原子を2個の破片に分裂させるとか、原子から光子を放出させるなどします(図1)。2個の粒子はあっちとこっちに飛び散ります。こっちに飛んできた方は、位置測定装置で捕まえて位置を測るか、あるいは速度測定装置で速度を測ります。





  量子もつれ状態は位置と速度以外の物理量を利用しても作ることができます。現在大人気の研究対象は「スピン」という物理量です。
 ミクロな物体の持つスピンという物理量は、これに相当するマクロな現象が存在しません。スピンの振る舞いは、見たり触れたりできる日常の物理現象と全然ちがうので、喩えやモデルやイメージで理解することがほとんどできません。

こういう説明だとどうでしょう。犬を散歩に連れ出すことを考えてみてください。連れ出す方向は、東や南、北北西など、飼い主が自由に選べます。
 ただし犬は飼い主の選んだ方向に素直について行くとは限りません。犬の機嫌によっては、正反対の方向に走っていきます(図3)。


アリスがタロを東へ散歩に連れ出そうとすると、タロは素直に東に行く場合もあれば、西へ走って行く場合もあります。ボブがジロを北西へ連れ出そうとすると、ジロは北西、または正反対の南東に走って行きます。
 タロとジロは量子もつれ状態にあり、もしも同じ方向の散歩に連れ出そうとすると、2匹の反応はそろいます(図4)。


タロが東に素直に散歩したとして、この時にジロを北に散歩に連れ出そうとすると、何が起きるでしょうか。
 ジロは50%の確率で北へ、50%の確率で南に向かいます。タロの測定結果から、ジロの測定結果は予測できなくなります。この時、行動の一致する確率は50%です。2匹がランダムに走るのと変わりません。
さてではタロを東へ、ジロを北東へ誘った場合、2匹はどう行動するでしょうか。東と北東は45°ずれています(図5)。


 この時、2匹は85%の確率で45°ずれた向き(東と北東、または西と南西)へ進み、15%の確率で135°ずれた向き(東と南西、または西と北東)へ向かいます。
 85%というのは驚くほど高い一致です。2匹が量子もつれていることを知らない人なら、あらかじめ2匹が相談して、どちらに誘われたらどう行動するかを、決めておいたのだろう、と考えるでしょう。

85%というのは驚くほど高い一致です。2匹が量子もつれていることを知らない人なら、あらかじめ2匹が相談して、どちらに誘われたらどう行動するかを、決めておいたのだろう、と考えるでしょう。
■ ベルの不等式破れたり! 
 2匹が量子もつれ状態にあるのか、それとも量子力学の原理を使わずにあらかじめ相談して行動を決めていたのか、それを判定するのが、ジョン・スチュアート・ベル(1928-1990)の提案した「ベルの不等式」です。

この場合、タロとジロの進む向きは、45°または135°ずれます。ずれが45°だったら「2匹の向きはだいたい同じ」とみなしましょう。
 この測定を多数回行なうと、2匹の向きがだいたい同じになる確率はいくらでしょうか。
 タロとジロが(量子力学を使わず)どんなプランを立てても、この確率*2
は75%より高くできません。平均して4回に1回は違った向きに走り出します。これがベルの不等式です。 一方、量子もつれ状態にあるタロとジロは、それより高い87.5%の確率でだいたい同じ向きに走り出します。違った向きに走るのは平均して8回に1回で、古典力学を使う場合の半分です。
 大した違いに思えないかもしれませんが、実はこれは恐るべき違いです。タロとジロはベルの不等式を破り、古典力学では不可能な原理で情報を共有するのです。少々不正確な表現ですが、2匹は光速を超えた速さでもう一方の散歩の向きを知るのです。

アスペ博士は、タロジロ実験を光子を用いて行ない、ベルの不等式が破れていること、この世界が量子力学の原理に従っていることを実証しました。
 ツァイリンガー博士は数多くの業績がありますが、3個の粒子の量子もつれである「GHZ状態」を考えだしたのは尊敬しちゃいます。タロとジロに加えてサブロを量子もつれさせた状態です。
 2個の粒子の量子もつれでも十分不思議なのですが、3個になるとまた飛躍的に不思議になります。タロを東へ、ジロを北へと散歩に連れ出すと、2匹の量子もつれは壊れますが、ここでサブロを散歩に連れ出すと、量子もつれが復活するのです。

引用サイト: こちら

関連日記:2022.10.04の日記  こちら





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Last updated  2023.03.14 20:50:57
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