ぷりもな日々

ぷりもな日々

手術


吐きまくって胃の中はからっぽ、そんな状態で、下剤をかけられお腹は痛いし、上から下からトイレ通いが続く、そして浣腸だ。私の体の消化管の管という管はすっからかんになっていた。

手術当日、予定は午後からだったが朝から点滴に繋がれた。そして全なく不運な事に生理が始まってしまった。昼頃に、母とおばが連れ立ってやってきた。あと1時間で手術という時に肩に術前注射を打たれる。恐怖が和らぐ為のものらしい。少し頭がぼうっとなったが別段意識レベルが下がったという自覚は感じられなかった。

すでにパジャマから病院の手術着に着替えている。体から流れ出す血液の暖かい流れを感じていた。
ストレッチャーを持ってナースが迎えに来た。
「さあ時間ですよ。行きましょう。」
ベッドからストレッチャーに移って3階のオペ室に運ばれていく。3階には術中の患者家族用の控え室があってオペが終わるまでそこで待つ事が出来る様になっていた。

オペ室の出入り口まで送りに来てくれた母とおばに手を上げて「行って来ます。」と明るく云った。ふたりは口々に頑張ってねと言う。オペ室に入るとベルトコンベアみたいなものに乗せられて手術台に移った。術前注射が効いているのか何も恐怖は感じない。不思議な事に吐き気も収まっていた。

執刀医がそこに居た。S医師ではなかった。初めて見る顔だ。「あんた誰よ。」と思ったが、今更もうどうしようもなかった。普通病院は初対面の医師に手術させるのか。そんなの有り?少し動揺した。しかし「お願いします。」との医師の言葉になす術はなかった。

麻酔は腰椎麻酔で行われた。卵巣一個とるだけなのだ。手術自体は大したものではない。ドクターやナースの声が聞こえる。意識はあった。一瞬すーっと意識レベルが下がった。自分でも解った。ナースの声が遠くに聞こえる。
「血圧80です。」外回りのナースのひとりが頬をぴたぴた叩いて耳元で声をかけてくる。「大丈夫ですかぁ?」
意識がすっと元に戻った。何事もなくオペはすすみ、そして終わった。
終わったと解った時、健気にも私はこう云ったものだ。

「ありがとうございました。」


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