月下美人の語り草

月下美人の語り草

らぐなlock 第17話


飛行艇の甲板には旗の色を少し濃くしたような色の長い髪をした男、そして青白い顔の目つきの鋭い男(こちらは銀の長髪である)が立っていた。

水色の長い髪の男「もうすぐリキュアだ。ディス、降りる準備は済んでいるか?」
ディス「あぁ。どうせ別に大した荷物は持ってきてないしな。」

このディスと呼ばれた男、青白い顔をしているからといって決して船酔いしているわけではない。
この肌は元からのようだ。おそらく魔族の血が何割か混ざっているのであろう。
なにも珍しいことではない。この世界に様々な種族が存在している以上、お互いが惹かれあうのに不思議はない。
そして彼らはお互いの種族の特徴を引き継ぐ為、得てして強力な力を持って生まれることが多い。
彼もおそらくは大きな潜在能力を秘めていることだろう。

ディス「しかしシュウ。俺なんかで本当に良かったのか?他にも適任者がいただろうに・・。」
シュウ「はは。何も共闘前の挨拶にウチの主力を連れて行く必要はあるまい。それにお前にもリュシスがどういう国なのか見ておく必要があると思ってな。」

温和な表情をさらに緩ませながら、シュウは悪戯っぽい目でディスを見る。
ディスはその顔を見て首をすくませる。

ディス「まぁ俺も興味はあるがな・・・。あそこにはどんな強者がいるのかにな・・・。」

ディスは進行方向に見えてきたリキュアに目を向けてそう呟いた。


アイラ「いてててて・・・。やっぱり上級はまだちょっとキツイなぁ・・・。」

今日も訓練に出かけていたアイラ。
いつもなら中級で発勁の練習をしているのだが、今日は上級に挑戦してみたのだ。
まだ早いのでは?と思ったのだが戦ってみると危なげながらもなかなか戦えてはいた。
まぁそれもオーディンやヤマタノオロチが出てくるまでは、の話だったのだが。
流石に手も足も出ず、ボロボロになりながらも逃げ帰ってきたわけである。
発勁が使えればいくらかは違ったろうが・・・。

「・・・なんだ?今日はまた随分とズタボロじゃないか・・・。」

後ろから掛けられた声にアイラは振り向いた。

アイラ「うるさいわねぇ、ほっといてよ・・・って銀狼さんじゃない。」

そこには銀狼の姿があった。
銀狼はアイラの姿を見て呆れているようだ。苦笑をしつつ言葉を返す。

銀狼「随分頑張ってるようだな。」
アイラ「まぁね。開戦も近いし、やるだけやっとかないと同盟国に笑われそうだからね・・・。」
銀狼「そうか。そういえばその同盟国の使者と今日会うぞ。アイラも会うか?」

アイラはその言葉に驚いた。

アイラ「へっ?いつ?」
「今だったりします。」
アイラ「うへゃぁッ!?」

真後ろすぐ近くから声が聞こえ、思わず間抜けな悲鳴を上げてのけぞるアイラ。
そこには二人の男の姿があった。
一人は水色の長い髪で温和な表情。もう一人は長い銀髪で青白い肌をしており、眼はギラギラと鋭い。

シュウ「これは失礼。驚かせてしまったようですね。」
銀狼「おぉ、シュウ殿よくぞ来られた。長旅お疲れでしょう。」
シュウ「いえいえ、距離があるわりに飛行艇で1分ですから。大したことはありませんよ、リュシス王。」
銀狼「はは・・まぁそれもそうですな。・・・おや?そちらの青年は・・?」

銀狼はシュウの傍らにいる銀髪の青年に気づいた。

シュウ「あぁ、初めてお会いしますね。ちょっと前に我が国に入国したディスといいます。」
ディス「初めましてリュシス王。お会いできて光栄です。」

紹介され頭を下げるディス。言葉とうらはらに再び上げたその顔は、今にも挑み掛かりそうな程鋭く尖った視線を放っていた。
銀狼はその視線を受け止め、にやりと笑ってみせた。

銀狼「これはこれは・・・先が楽しみな人材を手に入れましたな。」
シュウ「ふふ・・そうでしょう?」

明らかに不遜な態度をみせるディスを咎めるでもなく、シュウは不適な笑みを浮かべている。
銀狼は怒りを感じることもなく楽しんでいるようですらある。
・・・どうやら同盟国といえども親交が深いわけではなく、目的が同じであるが故に共闘の関係にあるだけのようだ。
目的を違えればすぐにでも衝突し合うだろう。

銀狼「そうそう、こちらも先が楽しみな人材が手に入りましてね。・・・アイラ。」
アイラ「・・・ふぇ?・・・・・わっ、私ぃ!?」

3人の視線がアイラに注がれる。
アイラは意外だったのか、まともにうろたえる。
シュウとディスは『コイツが・・・?』という目で見ている。
それも仕方なかろう。今のアイラはボロボロの姿だ。
誰がどう見たって強いようには見えない。

アイラ「ぎ、銀狼さん・・このタイミングで冗談はヤメテ^^;」
銀狼「冗談ではないぞ?事実を言っているだけだ。」
アイラ「だ、だってこの二人・・目が怖・・・」

銀狼の言葉の真偽を確かめようとしているのか、シュウとディスはアイラを真剣な表情で見ている。
一方アイラは引きつった笑顔で二人を見返している。
(ぅぅ・・参ったなぁ・・・。)
アイラは『とほほ・・』といった感じだ。

シュウ「・・・なるほど。戦場での活躍、楽しみにしていますよ。」

ニコリと微笑み、再び銀狼に向き直った。
ディスもそれに習いアイラから視線をはずす。

銀狼「ではそろそろ本題に参りますか。すでに準備しておりますのでこちらへどうぞ。」
シュウ「わかりました。ディス、行くぞ。」
ディス「・・・あぁ。」

銀狼は二人を連れ立って官邸へと向かった。
三人を見送ったアイラはとたんに力が抜けその場にへたり込んだ。
全身から冷や汗がドッと噴き出してくる。

アイラ「はぁぁぁぁ~・・・・疲れたぁ・・・。」

ふむ。見てる分には面白かったがな。

アイラ「アンタねぇ・・・。・・・もういい。今日は寝るわ。」

疲れた顔して起き上がり、フラフラと宿へと歩いていった。


アイラと別れた三人は官邸へと続く道を歩いている。
銀狼が先頭を歩き、その後ろを3m程離れてシュウとディスがついていくという形だ。
銀狼に聞こえないよう、シュウはディスに小声で話しかけた。

シュウ「ディス。さっきの娘・・・どう感じた?」
ディス「・・・わからん。」
シュウ「読めなかったか。」
ディス「あぁ。強い力は感じられなかった。しかし何故か気になる・・どうもハッキリせんな。」
シュウ「・・・クク。そこまでわかれば大したものだ。」
ディス「・・・なんだ?」
シュウ「フフ・・・開戦後が楽しみだな・・・。」

シュウはディスの疑問には答えず含み笑いのまま歩き出した。
はぐらかされたディスは疑問符を浮かべたままシュウの後を追った。


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