月下美人の語り草

月下美人の語り草

らぐなlock 第27話 完結


南の方から吹いてくる風からは春の香りが感じられるようだ。
だんだん暖かな陽気になってきてちょっと気を抜いただけで・・・すぴー・・・。

アイラ「ちょ、ちょっと!何やってんのよっ!!」

・・・ハッ!?ね、寝てない!寝てないぞ、私はっ!!
ヨダレをふきふき。必死に証拠隠滅を図る。
・・・む?アイラはこっちを見ていないな。さっきのは一体誰に言ったのだ?

エン「何って・・・銀狼さんが風邪引いたみたいだから、おかゆでも作ってあげようかなって・・・。」
アイラ「私が作ったのがあるでしょうが!」
エン「あんなの食べたら風邪が悪化するでしょう?」
アイラ「なんですってぇッ!?失礼にも程があるわよ!」
犬「私はアイラさんのおかゆ食べたいです♪」
アイラ「ほら見なさいw犬ちゃんは食べたがってるじゃないの♪」
zero「うはwwwアイラちゃんが作ったのを食べたいなんて正気を疑っちゃオゴォッ!?」

アイラの裏拳を顔面に喰らい昏倒するzero。

エン「・・・はい、どうぞ。」

犬は喜びしっぽフリフリ。エンから差し出されたアイラ作のおかゆをガツガツと食べ始めた。
・・・が、すぐに『ビクンッ!』と震えたかと思うと口から泡を吹いて倒れた!
ピクピクと痙攣しているし、眼は逝っちゃってるね。
つんつん、と犬をつつくJupiterが愛らしい。ちっとも心配そうな顔をしていないが。
これには二人も意外だったようだ。そりゃそうだよな・・・。

アイラ「・・・あれぇ?おっかしいなぁ・・・。」
エン「・・・どうやら悪化どころかとどめを差しそうね。」
アイラ「いや、ほら。犬じゃダメでも狼なら大丈夫かもしれないし・・・。」
エン「いや同じ哺乳類だし・・・。蜘蛛だったら大丈夫かもよ?」

言って二人は今まで傍観を決め込んでいた空野蜘蛛を見た。獲物でも見るかのような目つきで。
蜘蛛はビクッとしてゆっくり振り返った。顔は青ざめている。

空野蜘蛛「ぼ、僕、バイトにいかなきゃ。。(汗)」
アイラ「食べないなんて」
エン「言わないわよね?」

二人に詰め寄られますます顔色がおかしくなる。元国王とはとても思えない。

空野蜘蛛「い・・・い・・・いやだぁぁぁぁぁあああああぁああああッッッ!!!」

脱兎の如く逃げ出す蜘蛛。まぁ当然だが。

アイラ「あっ!逃げた!!」
エン「ふふ・・この私から逃げきれると思ってるの!?」

後を追うエン。さすがヘルヘイム軍最速の武将。あっという間に追いついた。
後ろから蹴りを入れられ、まともに顔からぶっ倒れる蜘蛛。

空野蜘蛛「イデッ!!うぅ。。あ!銀狼さん、助けてー!!(泣)」

タイミングよく目の前を通りかかる銀狼。
しかしその状況を見て全てを把握したのか、ダッシュで逃げ出した!

銀狼「・・・許せ、蜘蛛。お前の死は無駄にはしない・・・。」
空野蜘蛛「『許せ』じゃねー!!お前のせいで僕はこんな目に。。って、やめてくれーーー!!(泣)」

問答無用で蜘蛛の口に殺人おかゆを流し込むエン。
また一人の戦士が逝ってしまったか・・・。
なんというか・・これがリュシスの日常になりつつあるな。
端から見れば異常なのだが、本人たちはこれで楽しんでいるようだ。
まぁ毎回死と隣り合わせの被害者たちにしてみれば、たまったものではないだろうがな。

ヘルヘイムが亡国となってから1ヶ月が経とうとしていた。
戦争が終結してからヴァルハラの街はディストピア国領地となった。
ヘルヘイム国にいた武将たちはというと、ご覧の通りリュシスにほとんどが仕官されたようだ。
ヴァルハラで育った者も多いと聞いているが、『母国がなくなったのだから』と心機一転。リキュアへ引越ししてきてすでに馴染んでいる。
色黒の大男、須佐之男も奥さんと共にリキュアへの引越しが完了している。
そういえば引越しで顔を見せた時、アイラにやられていない筈の顔面にも痣が見られたが・・おそらく奥さんにやられたのだろう。頭が上がらないという噂だし。

ディストピアはというと、戦争後沈黙を守っているがそろそろ新しい国を建国しようという動きがあるらしい。
おそらくこの世界に存在する国の中で一番栄えていないAqua国を潰し、その上に建国しようというのだろう。
まぁあそこは王が姿を消した為か、人が寄り付かなくなる一方だからな。
それで世界が栄えることになるのならその方が良いだろう。


思えば今日までに様々なことがあった・・・。
戦いに傷つくこともあれば、友との語らいに心和ませる時もあった。
時には思い通りにいかず、悔しい思いをしたこともあったろう。
だがそれは、この世界に存在する全ての者が等しく体験するものだ。
もちろん物事の価値や感じ方は人それぞれだが、この世界を楽しめるだけのものは十分与えられている。

アイラ「そうね・・・。結局は自分の考え方や行動一つでどうにでもなるってことよね・・・。」

ふふ・・そうだな。お前も最初はこの世界から逃げようとしていたしな。

アイラ「『らぐなlock』・・『ラグナロクからは逃げられない』だっけ?w今でもそれは思ってるよww」

何!?Σ( ̄□ ̄;)そ、そうなのか・・・!?

アイラ「ふふw意味は違ってきたけどね♪」

・・・?どういうことだ?

アイラ「ふふ・・ハマっちゃって逃げられないってことwこれだけの仲間に出会っちゃったら面白くってさ♪」

そう言って彼女は『仲間』の元へと駆け出していった。

くく・・そういうことかwそれなら同じ想いを持つ者が多数いることだろう。
なんといってもこの世界そのものが、その『想い』で出来ているのだからな。
これからこの世界で起こるのは楽しいことばかりではないだろう。
だがそれでもこの世界に居続ける事ができたなら・・・本当の意味で『仲間』がいるということなのかもしれない。
彼女の物語はこれからも続くだろうが・・これから先は私が語るべきではない。彼女自身が語るものだ。
これまで彼女の物語を見てきた方々にもきっと語るべき物語はあるはず。
それをより良い形にしていけるよう、貴方自身の『仲間』と共に作っていっていただきたい。
そうすればきっと貴方にとっても、そして『仲間』にとっても素晴らしい時間を共有することができるはずだから・・・。

・・・ではまた旅に出るとするか。新たな物語の主人公を探す旅に。
それでは諸君、また逢おう!


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