不惑過ぎても惑いっ放し
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約3カ月かけて読み終わりました。『幸福な食卓』に続いて、映像化作品を見てから読んだのですが、このパターンなかなか良いかも。と言うのも、まず予備知識なしで映像を見る。次に原作を読むと、最初見ただけでは分からなかった登場人物の心の動き等が理解出来ます。映像ではただ黙っているだけのシーンも、本ならば主人公の独白で表記されますからね。そしてもう一度映像を見れば、なるほど、そういうことを考えていたのか、といったことがよく分かり、ひとつの作品で3度楽しむことが可能です。『夜のピクニック』は北高鍛錬歩行祭の出来事を綴った作品で、スタートからゴールまで80キロ歩き通す行事の、わずか24時間のことがメインに綴られています。400頁以上もある大作です。多少歩行距離は違いますが、作者の出身校の茨城県立水戸第一高等学校の行事「歩く会」をモチーフにしています。それにしても24時間で80キロの歩行って凄いですよね。朝8時から夜中2時まで60キロ歩いて、3時間程度の仮眠の後20キロを歩く、しかも最初は走る、まさに人間離れした行事です。もし私ならば60キロ歩いて寝たりしたら、3時間後どころか13時間後でないと目が開かないでしょう。近隣で例えると、東京から茅ヶ崎まで歩いて来て、3時間仮眠して厚木市まで歩く、ちょっと想像つかないです。この本や映画を評して、「自分の高校にもこんな行事があったら思い出深かったのに」といった論調をよく目にしました。私も一瞬そう思いかけましたが、もし本当にそんな行事があったら、「ったく!交通機関の発達した現代に、何でこんなくだらないことしなきゃならないんだ!」と不満タラタラだったでしょう。この作品の珠玉の一言。映画のキャッチコピーにも使われた、『みんなで夜歩く。ただそれだけなのに、どうしてこんなに特別なんだろう』これもとっても良いのですが、ラスト近くの主人公、甲田貴子の心の呟きが特に気に入りました。『歩行祭が終わる。(中略)何かが終わる。みんな終わる。頭の中で、ぐるぐるいろんな場面がいっぱい回っているが、混乱して言葉にならない。だけど、と貴子は呟く。何かの終わりは、いつだって何かの始まりなのだ』ここまでこの作品を読み終えれば、多分この文章の素晴らしさがよく分かるでしょう。さて、次なる作品はぐんと古くなりますが、筒井康隆著『時をかける少女』にしてみました。過去何度も映像化されている作品ですが、私の様に40代前半位に人にとっては、大林宣彦監督作品、原田知世主演の角川映画がもっとも印象に残っているのではないでしょうか。この映画のイメージが強過ぎて、この小説は広島県尾道市や竹原市が舞台にしか思えないのですが、決してそうではないんですよね。原作と読み比べれば大林マジックの素晴らしさもよく分かるでしょう。この作品で重要なポイントとなる「ラベンダーのかおり」、公開当時の高校1年生の頃は「いったいどんな香りなんだろう?」と興味津々でしたね。今ではよく分かりますよ。
2009.06.13
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