暖冬傾向で、ゴルフ場の予約が多い!
100万ポイント山分け!1日5回検索で1ポイントもらえる
>>
人気記事ランキング
ブログを作成
楽天市場
056418
HOME
|
DIARY
|
PROFILE
【フォローする】
【ログイン】
~RO Novels~ 第五章 信頼のゲフェン編 突入
第三章~モロク編~
Ragnarok Memories
第三章 ~孤高のモロク編~
一節:~砂漠の都市・モロク~
サンサンと輝く太陽が、どこまでも続く砂の大地をジリジリと照らしている。丈の高い草木は見当たらず、水も無く、ただ永遠に砂の大地が続く。ほんの50m先も、地面から発生する熱によって、グラグラと揺らめいでいた。蜃気楼も発生しそうである。その中を四人の人間がノロノロと歩いていた――ソレーユたちである。
「ちきしょう!熱い!!」
ニケは滝のように流れる汗を手でぬぐいながら、太陽をにらみつけた。
「熱いって言うなよ…余計……熱く感じる。」
そう言ったソレーユであったが、言葉に覇気が感じられない。彼もまた大汗をかいていた。
「まったく!だらしないわね。」
ただ、ルナとオワゾーネだけは、汗をかいてはいるものの、若干涼しげな感じをかもし出していた。その証拠に足取りも軽い。
「これも修行の一環という事で~。」
能天気な声が二人の男に突き刺さるようにその場に響いた。二人はムっとした顔になったが、その気も汗と共にすぐに出て行ってしまい、怒る気にもなれなかった。
(あの野郎……贔屓なんかしやがって……)
ソレーユとニケはお互いにそう思った。実は、女二人が涼しげなのにはわけがあった。それは30分前ほど――
「なんて熱いのよ……」
ルナは滝のように流れる汗を手でぬぐいながら、太陽をにらみつけた。
「熱いって言わないほうがぁ…余計熱くなっちゃいます~……」
そう言ったオワゾーネであったが、言葉にいつもの元気は感じられない。彼女もまた大汗をかいていた。
「おいおい。まだ砂漠に入って20分も経ってないぞ?」
若干汗はかいているものの、ニケは涼しげであった。その証拠に足取りも軽い。
「俺もまだ大丈夫。」
何ともないソレーユの言葉が二人の少女に突き刺さるようにその場に響いた。二人はニケとソレーユにムっとした顔になったが、その気も汗と共にすぐに蒸発した。と、その時。
「おい!あれ人じゃないか?」
ニケが指差す方向には、遠くで熱気で揺らめいてはいるが、間違いなく人間の形をしたものがいた。それは徐々に一行に近づいてくる。
「俺を呼んでる君がいる~たとえこんな砂漠でも~俺を待つ人いるはずさ~ラブトルネ~ド~♪」
変な唄を歌いながらクルクルと回って近づいてきたのは、頭に黒くてスイートな帽子をかぶって、目にはサングラス、口には花びらを銜えている白いシャツ一枚に青いジーンズの男であった。二十歳ぐらいであろうか。彼の後ろには屋台のようなものがくっついている。どうやら商人のようだ。
男はソレーユたちの前までノンストップで回り続けた。一行が生暖かい視線を投げかけていると、不意にその男は立ち止まり、ソレーユとニケの方を見た。
「いやっはー、熱いかい~?でも、俺様は熱くないのさ~。なぜだかわかるか~い?わからないよね~。実はー……」
聞いてもいないのに男は勝手に話を進め、後ろのカートをあさりはじめ、そしてアイスのようなものを出した。
「じゃじゃーん!これぞ究極のアイス!『ハワードアイス』なのだ~!聞いて驚け!なんとこのアイスは60℃でも溶けない!しかも、一度食べたら約30分、体を正常な体温に近づけてくれるんだー!今ならハワード特製ソースをつけてなんと驚きの10000z!砂漠を渡りきるには必須なこのアイス!さぁどうよ?!」
「そんな怪しげなもの10000zも出して買うわけないだろ……」
そういうもニケは唾をごくりと飲み込んだ。男が極まりの悪い顔をしたが「っは?!」と叫んで、急にルナとオワゾーネの方を向いた。そして、今までふざけた態度をとっていたが、背筋をピンと伸ばし、第二ボタンまで開けられていたシャツをきちんと着なおす。
「ここで出会ったのはなにか運命的なものを感じます、モドワルセル。お二方とも、いや実にお美しい!今晩はどちらへ?」
「えっと…着く事ができればモロクで宿をとりたいと思っています。」
この状況でモロクに行く以外にあるのかと思いつつ、暑い中、さらにむさ苦しい男がでてきたので、少しルナの言葉には棘があった。しかし、そんな事を気にも掛けず、男はまた大げさなリアクションをとる。
「おお!なんと!これは運命の神ノルン三姉妹の悪戯であろうか!いや、私めも全く以ってモロクへ向かう途中なのであります、モドワルセル。」
そう言って男は再びカートをあさり、二つのアイスを出して、ルナとオワゾーネに渡した。
「えぇ~?いいんですかぁ?」
「買わないわよ。」
二人の反応にニヤリと笑って首を大きく横に振った。
「このハワード、間違っても美しき女性から代金などもらう事などしませぬ!どうぞ、少ないですが私めのほんの気持ちでございます。」
その瞬間、今までムスっとした態度をとっていたルナの顔が輝いた。
「ありがとうー、ハワードさん!」
ペロリと一口食べると、二人は至極の時を共有するかのように、顔を合わせて満面の笑みを浮かべた。
「おいしぃ~。」
「ほんと、体の体温が下がっていく感じがするわ。」
「ルナー、一口くれー!」
ニケはルナに飛びつこうとする……が、その瞬間ニケに物凄い勢いの拳が加えられた。「ゴフッ!」とその場に倒れるニケ。犯人はハワードであった。
「てめぇらにはやらん!金がなきゃモロクで水でも飲んでろ!」
それから爆発しそうなニケをソレーユがなだめた。そんな事もお構いなしに、ハワードはルナとオワゾーネが食べ終わるまで、二人をうっとりとした目で見つめていた。二人にあげようと思っていたルナだが、その状況ではそれができず、しぶしぶ自分のアイスを食べきる。
「ごちそうさまでした。」
「とってもおいしかったよぉ~。ありがとぅ~。」
ボーっとしていたのか、はっとなってハワードが背筋を伸ばした。
「いえいえ。これも何かの縁。さて……」
そう言って、カートを整理し始めるハワード。
「私めも商人であります。ここでお二方と一緒にずっとこれからの将来について語り合いたいのですが、モロクに早く帰らねばならないのです。それでは…」
泣く泣くハワードはカートを引いて西に向かっていった。それを何ともいえない表情で見送る一行。その時、急にハワードが振り返り、付け足すように大声を上げた。
「もし、宿をとるのでしたら、モロク一時の方向にあります『蜥蜴亭』へ行き、後はハワードの紹介だと言えばわかるでしょう。では。」
そして今度こそ、彼は見えなくなるまで歩いて消えていった――
彼らの言う贔屓とは、こういうわけである。さすがにニケにもソレーユにも限界が近づいてきていた。しかし、気候も安定してきたので、もうそろそろ着くのであろう。
「み、水……」
ニケが倒れそうになったその時、ソレーユが彼方を指差し急に叫んだ。
「おい、あれ!モロクじゃないか?」
三人が見ると、確かに、500メートルほど先、太陽の光に遮られながらもうっすらと長い壁のようなものが見え、そのさらに後ろには小さな丸い建物の上の部分を確認できる。
「おお、本当だ!よし、急ぐぞ!!」
さっきまでフラフラだったニケだが、町を見るなり体から力が湧き、軽快に町へ向かった。みなもそれに続く。時は気がつけば夕方、ソレーユたちを後ろから見守っていた太陽は、いつしかソレーユたちの向かう方向へと移動していた。そして、燃えるような太陽をバックに美しく栄えるモロクの町へと、一行は向かっていった。"無法都市"へと――
二節:~蜥蜴亭~
一行は日が沈む前にどうにかモロクの門へ着くことができた。星がまばらに空を装飾し始める中、ソレーユたちはモロクの門番のところへ向かう。
門の隣に小さな関門があり、そこに門番はいた。鋼の軽量化された鎧の上に砂漠の砂のような色をしたローブを羽織っている40歳ぐらいの男だ。しかし、様子がおかしい。いや……おかしいのではないのか、その男はソレーユたちが通りかかっても何も言わなかった。ただ、無言で彼らを見ているのか見ていないのかもわからないような瞳を一応向けてはいる。
「おい、関門があんのに審査はねぇのか。」
見かねたニケが男の方へ歩いて話をしに行った。すると急に男がニケになにやらモゾモゾと小さな声で語りはじめた。それを聞いたニケは2,3度頷き、ルナたちのところへ戻ってきた。
「門番さんは何て?」
「この町へ入るのは自由だが、死んでも文句は言うな、だとよ。それを言うためだけにいるらしいぜ、あのおっさん。」
ヘラヘラと笑いながらニケが言うと、ソレーユは体をびくんと痙攣させた。
「死んでも……?」
「モロクは~、あんまりいい噂聞かないですからねぇ……」
オワゾーネも眉をひそめる。
とりあえず町の中に入ってみた。そこは広場のようになっていて中央の大きな屋敷がよく見えるし、人がまばらではあるがいる。しかし、その顔は揃いもそろって悪人面であった。ある者は黒髭を蓄え、またある者は顔に大きな切り傷を刻んでいる。彼らは町の住人なのだろうが、ソレーユたちが来ると一瞬殺気めいた視線を投げかけ、ヒソヒソと近くにいた者同士で話していた。
「なんだ、感じ悪い町だな!」
ニケが彼らに聞こえるように悪態をつくが完全に無視された。
「いいわよ、ニケ。ハワードさんの言っていた蜥蜴亭に行きましょ。」
夕日も徐々に落ち寒くなる中、ルナがニケをひっぱりながら一時の方向へ向かう。
しばらく通りを歩いていると、ハワードの言ったとおり、「蜥蜴亭」があった。レンガを固めて作った三階建ての比較的大きな宿で、ドアには「悪人大歓迎」という紙が貼ってある。それを見て、ルナ、ソレーユは躊躇したが、ニケが「ふん!」と鼻息を鳴らしてドアを開けた。
チャリンチャリンとドアにつけられていた鈴が鳴り、それと同時に酒臭い香りがどっと外へ流れた。中はたくさんの例の悪人面たちがテーブルというテーブルに座り、酒を飲み交わし、ギャンブルを楽しんでいた。ダンサーの格好をした女たちは前に設けられたステージの上で踊りを踊っている。どうやらここは酒場のようだ。しかし、鈴の音と共に一気に中の雰囲気が変わった。
みなシーンとして、また例のヒソヒソ話を始める。
「ここはガキの来るところじゃないんだよ。」
ふと冷たい声が酒場の奥から聞こえた。声の主はカウンターらしきところから出てきた。身長は2mもあろうか、横幅もかなりあり、相撲取りのような風体の女である。髪はギザギザのザンバラ。目は赤い瞳でソレーユたちを睨み、顔にあるいくつもの古傷がその人生を物語っていた。年は40ほど。その瞬間、酒場の人々が盛り上がる。
「そうだそうだ!」
「サマンサ!もっと言ってやれー!」
「食っちまえー!」
その声援にサマンサと呼ばれたその女はニヤリと厭らしい笑いを浮かべ、右腕でガッツポーズした。
「まぁ、用件を聞こうじゃないか。殺し?護衛?ガキは帰って寝な。」
またどっと歓声が上がる。
「なんだと!」
ニケが前へ出るが、いつもは大きいニケもサマンサを前にすると小さく見えた。
「やめて、ニケ!」
仲介にすかさずルナが入る。そして、ルナはサマンサの前でペコリとお辞儀をした。今度は酒場が嘲笑する。
「私たち、砂漠でハワードという人にここを紹介されました。」
その瞬間、再び静寂が酒場を飲み込んだ。みな徐々に顔に驚きが満ちてくる。サマンサも同じで、大きな口をこれでもかと言わんばかりにさらに大きく開けていた。
「なんだって!」
酒場の客の一人がそう叫んだ。それでスイッチが入ったかのように、酒場は元の活気を得る。みながみな「ハワード、ハワード」と話始めた。サマンサはルナの肩をがっちりとつかんで揺さぶり、真剣な顔で尋ねた。
「あの子は――ハワードはモロクに戻ると言ってたかい?!」
かなり興奮している。揺さぶられて目を回しそうになりながら、ルナが大きく「うんうん」と頷いた。それを聞いてますます興奮するサマンサ。
「なんてこったい!!」
そして、勢い良く扉を開けて外に出た。しかし、またすぐに顔だけ酒場に戻す。
「あんたら、ちょいとそこで待ってな!」
ソレーユたちにそう言うと、今度は酒場の人間に顔を向けた。
「いいかい、お前たち!この子たちと店のモンには手を出すんじゃないよ!」
「おうよ!」
客たちはそれに頷き、また再びハワードの話を始めた。それを聞いてサマンサは外に出て行った。
「なんつうか……」
ニケが頭をボリボリとかく。
「あいつすげぇ有名人なんだな。この町の。」
三節:~巡礼の首都・グラストヘイム~
小鳥の囀りがする……ここには木々が生い茂り、綺麗な川が辺りいったいを流れていた。道を白金の鎧を着た兵士や、一般の人々が往来している。そして、その中心に黒光りする美しい壮大な城があった。そう……ここは巡礼の中心地・グラストヘイムだ。城の一番高い所には女性のブロンズ像が立っていて、その隣に剣に絡みつく対になった二匹の龍の紋章が入っている旗が高々と掲げられていた。グラストヘイム王族の印だ。
そして、城の中のとある一室、玉座の間にて、二人の赤いマント、一人の青いマントを羽織った者が立てひざを付いていた。赤いマントの男の一人はやはりゼルバード。もう一人はゼルバードよりも少し痩せていて小さめの眼鏡を掛けている若い男であった。青いマントの方は、華奢な体をかなりの重量の鎧で身を包んだこちらも若い、女であった。
真っ赤に燃えるような髪を長く伸ばして後ろで縛っている。喉元には十字架のアクセサリーが掲げられていた。
「ゼルバードさん、あなたが行ったすぐ後に、また町が消えましたネ。」
立てひざをついたまま眼鏡の騎士がゼルバードを睨みつける。ゼルバードも目を細めて男を見つめ返した。
「ジゲーヴィ、言っている意味がよくわからないのだが。」
「イズルードに、アルデバラン……あなたの行った町は偶然にもよくロード・オブ・デスに襲撃されています、という意味デスヨ。」
それを聞いてゼルバードは軽く笑った。
「そうだね、僕が行った町はなぜか次々と壊される。だけど、僕は何もやっちゃいないさ。」
「およしなさい、お二人とも。恐れ多くもイモルタリテ陛下の御前ですよ。」
横から青マントの女がピシャリと杭を刺す。ジゲーヴィは顔を背け、チッと舌を鳴らした。
「さすが、エルウェちゃん、よくわかっていらっしゃる。」
「……」
茶化したゼルバードを完全に無視してエルウェは前を向いたまま黙々と立てひざを突き続けた。
「ディノを失った事がそんなに悲しいのデスカ?」
ジゲーヴィが嘲笑すると、途端にエルウェが立ち上がった。
「あなたがきちんとディノを助けてくれていたら!彼は生きて今もここにいるのよ!!」
「やめいっ!」
殴りかかる勢いのエルウェに一喝する声が玉座でこだまする。声の主は玉座の後ろからすっと現れた。金色の髪が片目を覆うほど伸びていて、そちらの目を白い仮面で隠している。歳は30ほど。驚いたエルウェは苦い顔をしながらも元にもどった。男はかまわず三人をにらみつける。
「ディノが亡くなってからというもの、お前たちは非常に仲が悪くなったな。…それはよい。だが!ここが玉座であることを忘れるな!」
「…」
三人は黙ってそれを聞いた。ゼルバードをも従えていることから、この男の地位の高さが伺える。
「そんなに怒鳴り散らすな、アンディスよ。」
「陛下!」
一人の老人が玉座に入ってきた。白い顎鬚をこれでもかと言うほど伸ばしていて、顔の半分が覆われている。体には金の鎧とマントを纏い、おそらくかなり高齢であろうが、頭の上の金王冠はその栄華を保持していた。この男こそ、現グラストヘイム王"不死鳥のイモルタリテ"である。
「その方たち三人を呼んだのは理由があったからである。こんな時以外にお前たちが面会する機会などないだろう。」
そう言ってゆっくりと玉座に腰を下ろした。四人はいつになく恐縮してイモルタリテに立てひざの忠誠を誓っている。
「楽にせい。三人とも長旅で疲れているじゃろう。」
イモルタリテは優しい少しダミがかった声で四人に言った。
「まずはゼルバード。世界を駆ける忙しい身であるが、よくぞ参った。」
そう言われると、ゼルバードが小さくお辞儀をする。
「ジゲーヴィ。オーク村周辺地域防衛の長官であるお前さんにとって、ここまで来るのは億劫だったじゃろう。」
「イイエ。王宮からの、しかも国王自らの勅書とあっては、重い腰を上げずにはいられませんヨ。」
ジゲーヴィは冷ややかな笑いをした。それをイモルタリテは睨むような表情で見つめ返す。そして、隣のエルウェに目を移した。
「エルウェ。シュバルツバルト共和国との共生会議はどうじゃね?お主も忙しい身であろう。」
「はっ。何ゆえ頭の固い連中でして…しかし、この聖騎士・エルウェの面目にかけても必ずや従えてみせます。」
静かに淡々と話すエルウェの話を聞くと、イモルタリテはおっとりとした顔になった。
「こらこら。従えるとは物騒な事を言うでない。」
エルウェが唇を強くかみ締めたのを見て、ジゲーヴィがふっと嘲笑する。それをまたイモルタリテが睨みつけ、再び三人に目を向けた。
「お前たちを呼んだのは他でもない。あの無法都市モロクに過去の盗賊団”ギャングスターパラダイス”のメンバーがおるという有力な情報を耳にしてな。奴らの犯した過去の犯罪の取り締まりをするという名目ができるのじゃが……これを機にモロクを平定し、砂漠唯一の安全な町にしたいのじゃ。近くに精霊様がおられるじゃろう?巡礼者が安心してモロクに行けるようにしたいのじゃ。」
「お言葉ですが陛下。」
エルウェが待ったをかける。イモルタリテは純粋な眼差しで不思議な顔をした。
「モロクには数千という盗賊団が暖簾を連ねるようにひしめき合い、我々の戦力を以ってしても簡単には平定できないと思われます。それに、モロク周辺はジゲーヴィ殿の管轄下ではないですか。」
それを聞いたジゲーヴィは先ほどまでの冷淡な顔を変え、目をぎょっとさせてエルウェの横顔をにらみ付けた。エルウェはそれを無視している。
「何を怖がってるんだ、君たちは。」
突然ゼルバードが笑い出した。彼の笑い声が玉座にこだまする。
「僕たち三人の力を以ってして抑えられない物などありはしないさ。確かに……ディノ君がいた時と比べれば、確実に戦力は落ちているがね。それでもそこらへんのチンピラに負けるほど弱くはないさ。」
「ウム。」
その意見にイモルタリテも深く頷いた。
「巡礼の乱れは今に始まった事ではないが、これ以上事を大きくしてしまえば、我々も心が痛む。世界を救わんとする巡礼者たちをせめて安全な旅で行かせてやりたいのじゃ。」
それを聞いた四人は言葉無くしばし沈黙した。
「陛下の言うとおりだ。さあ、みんな、すぐに出発の準備にとりかかろう。」
こうして、グラストヘイムは慌しく進行準備を進め、一同モロクへと向かっていった……
四節:~ハワードの当惑~
「ハワードが?がははは!そうだろうそうだろう。あのクソガキは昔から女の尻おっかけまわしてたからな。」
グラストヘイムの侵攻など夢にも思わず、サマンサが飛び出してから約一時間……ソレーユたちは酒場の客たちと話をしていた。見た目は怖い人ばかりだが、話してみるとみな優しく、彼らは水やつまみをくれた。
「ほんと、頭くるやろうだったぜ。」
ニケが水をごくごく飲みながらそう言い、ソレーユも頷いた。それを聞いて酒場が笑いの渦に飲み込まれる。
「ハワードは昔から悪ガキだったからな。金盗んでは女に貢いで、未成年で酒を飲んでは喧嘩してたぜ。」
50歳ぐらいの禿げた男は大きく笑った。
「にしても……」
そして男はオワゾーネを品定めするような目で見た。
「昔は見境がなかったが……こんなべっぴんさんに声かけるとは、あのガキもでかくなったもんだ。」
ひゃひゃひゃと下品な笑いをたてる。周りも頷いた。
「ぇー、わたしですかぁ?そんな事ないですよぉ。」
彼女はいつもの笑顔で答えた。
「こっちの女子もまぁまぁだが、色気が出るには後2,3年かのぅ。」
今度は別の七十ほどの爺さんがルナを見る。それを聞いて顔を真っ赤にするルナ。確かに、オワゾーネは弓を使っているからであろう、全身をしなやかな薄い筋肉がついていて19相応の体つきをしていた。しかし、ルナはオワゾーネと一つしか変わらないにもかかわらず、体は少し痩せていて若干貧弱に見える。5ぐらいはさば読めそうであった。
「あ、あの……それでサマンサさんとハワードさんはどういう関係なんですか?」
話題を変えようと必死になるルナ。それを周りはニヤニヤと笑いながら聞いていたが、先ほどの男が語りだした。
「ハワードは……捨て子だったんだ。それを17年ぐらい前にサマンサが拾って、自分の子供みたいに育てたのさ。」
「おじさんもハワードを昔から知っているんですか?」
それを聞いて遠い目になる男。
「思い出すと遠いがな。昔はサマンサと俺、そしてもう一人の奴と一緒に盗賊をやってたのさ。結構有名だったんだぜ?盗賊団"ギャングスターパラダイス"って聞きゃぁ泣く子も黙るってもんだ!」
そして男はいきり立って拳を上げた。
「お、シュレンの奴がまた三人盗賊団の話してるぞ!」
周りに自然と人が集まる。どうやらこの話は有名なもののようだ。シュレンはテーブルの上に上がり、両手を広げた。
「俺たちは!最凶だった!!ロード・オブ・デスによって乱される混沌の社会の中、物資を運ぶ運送者を中心に襲いまくり、富を築いた!」
おおおおっと歓声があがる。
「そして俺たちは!辺境の町、砂漠にあると聞く幻の町モロクの秘宝の話を聞いた!!」
「古代都市の名残・黄金がたくさん取れるってデマの話だろ?!」
周りにいた男の一人がわはははと声を上げた。それを聞いて聴衆も爆笑する。
「そのとおりだ!俺たちは不覚にもその話を信じ、砂漠を渡り始めた!そして俺たちはあのクソガキに出会った!そう!ハワードに!」
そこまで言って一呼吸置くシュレン。
「正直驚いたぜ!信じられるか?大人でもきついのに、5歳ぐらいのガキが一人で砂漠を渡ってたんだぜ?俺たちの姿を見るなりそのガキは寄ってきて俺たちに言った!『水!』と!そしてハワードは倒れた!がはははは!」
「そしてだ!驚くのはここからよ!俺がそのガキを起こそうと思って近寄って、そんでもって抱きかかえようとしたその時!スルリと何かがポケットから抜ける感触がした!変だと思ってハワードを見てみると、この野郎、俺のポケットに入ってた水筒を抜き出して水を飲んでやがった!!なぁみんな!ありえるか!?たった5歳のガキが盗賊のポケットからモノを盗み出したんだぜ?!これはまさに天賦の才を感じずにはいられなかった!そして、ハワードはこんな話をした!」
「"この先にあるモロクに宝なんかねぇ。あるのは廃れた無法の町さ!"ってな!」
シュレンは、再びがはははと豪快に笑った。酒場の人々も「まったくその通りだ」と口々にそう言う。
「まぁ……」
決まりの悪い顔でにやけるシュレン。そして彼はふうとため息をついて席に着いた。どうやら熱演はここまでのようだ。
「とりあえず、こんなガキの言うことを信じなかった俺たちだがな、モロクに連れて行ってやるってんでついて行ったわけよ。さっきも言ったが当時俺たちは最強だったからな。どんな罠をハワードが用意してようと乗り切る自信があった。まぁ、すんなりモロクへ連れて行ってくれたんだけどよ。だがな……」
そう言って酒を一口仰いだ。酒場も急に静まり返る。さっきまでの活気が嘘のようだ。
「シュレンさん?」
ルナが声を掛けるがシュレンは反応しない。ただ目を、杯を持つ右手に焦点を合わせて静まっていた。その体は微かに震えてる。
「そこで俺たちが見たのは凄まじい光景だった。」
「?!」
それを聞いていたソレーユたちも凍りついた。
「無法都市……ハワードの言ったとおりそんな言葉がぴったりだった。町の大通りには死体の山、あちこちでいざこざが起きては、誰かの悲鳴。可愛い顔した女子供が悪魔の心を持ったみてぇに瀕死
の人間にたかって物を奪いその肉を切って喰らってやがった。もちろん、俺たちにもその刃が向けられたぜ。むしろよそ者で、しかも大量の物資を持ってたからな、一番狙われたんだ。でもよ、その時ハワードが"こっち!こっち!"って俺たちの手を引っ張るんだ。俺たち三人はあいつに付いて走り回った。裏路地をいくつも通り、そして行き着いたのは誰もいない小さな塔の上だった。そして…」
ゴクリとソレーユたちが息を飲んだ時、急に店のドアがチャリンチャリンという音を立てて開いた。シュレンの話に夢中になっていた全員が一瞬で静まり、ドアのほうを見た。
「ホラっ!モロクに来た時は絶対ここに寄れって言ったでしょうが!」
「わかった、わかったって!引っ張るなよ、おばさん!」
入ってきたのはサマンサとそれに連れられてまごまごしているハワードであった。それを見た酒場の人々は大笑いして暖かく二人を迎え入れる。
「よう!ハワード!!元気だったか!」
「しばらく見ないうちにでかくなったな!」
「お生憎様だが、こうして元気でやってるぜ…って!?」
酒場でばつの悪い顔をしていたハワードだが、視界にルナとオワゾーネが目に入ると一転、乱れた服を綺麗に着こなし、立てひざをついて彼女たちの近くに座った。
「おお、これはこれは…いつぞやの砂漠でお会いした美しいお二方ではありませんか!私めを覚えてらっしゃるでしょうか?アイス商人のハワードでございま…ゴフッ!」
彼が言い切るか言い切らないかのうちに、後ろのサマンサが頭を強く殴った。再び酒場が笑いの渦にのまれる。
「いいかげんにおし!まったく…あんたももう20過ぎだろ?その女たらしの癖はいつになったら治るんだい!?」
「フッ…おばさん。恋の病とは永遠の病なん…ゴフッ!」
再び殴られるハワード。その光景にソレーユたちは噴出してしまった。
「まぁ、とりあえず…」
そう言ってサマンサは、すねた顔のハワードを大きな手で撫でる。酒場の笑い声もいささか小さくなった。
「ハワードがモロクを飛び出して約10年。こうして無事にここに戻ってくる事ができたのも幸運。来る日も来る日もモロクの精霊"オシリス"様にお祈りした甲斐があったってもんだ。」
いつの間にかサマンサの目には薄っすらと涙が浮かんでいた。その涙はとても綺麗で、堀の深い顔に澄み透るように彼女の頬を伝った。しかし、すぐに彼女はその涙を拭き、前の活気ある女へと戻る。
「さぁさぁみんな!今日はあたしの奢りだ!好きなだけ飲み食いしな!!杯を交わしながらハワードの旅話でも聞こうじゃないかい?朝まで寝るんじゃないよ!!」
そう言って手元のハワードをグイっと前に押し出し、足早に厨房へと入っていった。それをハワードは複雑な表情で見つめている。しかし、その顔に喜びが大きく溢れているのは言うまでもない。
「ハワード!旅の話を聞かせてくれよ!俺はこの町から一歩も外に出たことがねぇんだ。」
「私にも聞かせてよー!子供に話してやるんだい。」
そんな言葉がいくつもいくつも彼の周りを飛び交った。ハワードは照れながらも、酒場の人々に旅の話をし始めた。その光景を見てニケはなぜか、前まで持っていた彼への不信感を完全に拭い去る事ができた。ソレーユもルナもオワゾーネもそう思ったに違いない。町の人々にこんなに好かれて愛されて…彼らはハワードと自らを重ね合わせて、帰る場所があるハワードを心から羨んだ。そして涙腺からこみ上げてくるものを必死に抑えて、彼の冒険たんに耳を傾けた。ほんのちょっぴりの羨ましさを、彼の子供のような横顔に合わせて……
それから数時間、まん丸の月はすでに南中を迎え、徐々に西へと落ちて行く中、モロクの「蜥蜴亭」ではハワードの話す冒険たんをみなが真剣に聞いていた。次々と厨房から運ばれてくるサマンサの手料理に舌鼓を打ちながら、ソレーユたちもそうしている。そしていつの間にか話の中心はルナたちのユミルの旅になっていった。
「ほうほう、それでこんな偏狭の町にやって来たってわけか。」
シュレンが顔を仄かに赤くして頷く。
「私たちの他にも巡礼者は来ないんですか?」
当然巡礼の町ならば巡礼者の数人は見かけるだろうと思っていたルナにとって、彼らがユミルの旅に対し新鮮な印象を受けた事はとても驚かされる事であった。
「昔は何人も見かけたがなあ。あれはいいカモだったぜ。…っと、最近はめっきり見なくなった。」
少しニヤけたシュレンに一同がしらけた目で見たため、彼はすぐに弁解してその場を取り繕った。
「オシリス様は町から東に出たピラミッドの中の奥におるんじゃろ?危険じゃから護衛を連れて行ったほうがいいぞえ。」
シュレンの隣の70ほどの爺が心細そうに言う。
「おおう、そうだそうだ。あそこは危険だし、なににせよ道が迷路のようだからな。ピラミッドの地理に詳しい護衛は必須だな。」
そう相槌を打つシュレン。と、そこへハワードが話に割り込んできた。
「それなら、私の古き友人に良い護衛がおります。名をバーネットといい、なにせ無口な男で盲目ですが、その力は100人力、無音移動を得意とするアサシンであります。彼を明日訪ねましょう、美しきあなた方の護衛となるように頼んでみますよ。」
そう言ってルナとオワゾーネの手を取り、ほの赤くなった顔を近づけ、誓いのキスをした。途端にニケが先ほどまで忘れていた彼への不信感を呼び覚ます。
「てめぇ、なれなれしく触りやがって!!」
「おやおや、それは嫉妬かい、ニケ君?確かにルックスでは僕のほうが勝ってはいるが。女性を振り向かせるならそのツンツンの頭をよーく働かせて何か自分にしかできない事を探すんだな。」
「な、俺が嫉妬するわけねえだろ!黙って聞いてりゃいい気になりやがって!」
「ニケー!やめなよ!」
今にも殴りだしそうなニケを必死に抑えるソレーユ。そんな彼を見て、再びハワードは嘲笑した。
「君も君だね、ソレーユと言ったか。男には彼のように頭にきたら喧嘩するしか脳のない人間もいるのさ。それをなぜ止めるんだい?彼が哀れだろう?彼はもともと…」
その言葉にソレーユも頭に血が上り、いっそ殴ってやろうかと思ったその時、不意にハワードの横から強烈なビンタが飛ぶ。
「バチンッ!」
凄まじい音で、それは意気揚々と騒いでいた酒場を一瞬にして凍らせる力を持っていた。――それはルナのものであった。
「ル、ルナ様…?」
ハワードが信じられないという顔でルナの顔を見つめる。ルナは最初下を向いていたが、やがて前を向くとその顔は赤く火照り、多少ではあるが涙が浮かんでいた。今までに見せた事もない悲しみと怒りの満ちた顔であった。
「あなたって人は……」
そう言ってルナはその場でハワードを睨みつける。
「そんな言い方しかできないんですか?!私は、たまにドジで不器用な所もあるけど……いつも頼りになるニケが大好きよ。どんな時だって私の事を第一に思ってくれている。
ニケをそんな風に言う人は私が許さない…!」
そしてワナワナと震える手を握り締め、唇をきゅっと噛み、再びハワードを一喝するように睨みつけた。
「ルナ……」
その言葉にニケは何ともいえない恥じらいにも似た感覚を覚える。ニケの方を向き、ルナが軽くウインクした。
「明日は早いし、みんなもう寝ましょ。サマンサさんが私たち用の部屋を2階に用意してくれてるって。じゃあ、シュレンさんにみなさん、お休みなさい。」
「お、おやすみ。」
未だ氷が張ったような静けさから解放されない酒場を通り、ルナを先頭に4人は酒場の奥へと消えていった。そして、酒場に残されたハワードは苦い顔をしている。
「……」
彼はヒリヒリする顔をゆっくりと擦りながら立ち尽くしていた。そして、ふと思ったかのように、酒場から逃げるように出て行った。
「お、おいハワード!」
「行かせてあげな。」
シュレンが追いかけようとしたのを酒場の奥から出てきたサマンサは止めた。
「あれがあの子にとってもいい薬になるだろうよ。どれだけ能力や美しさを持っていても、けして得ることのできないあの子の本当に望む物……見つけられるかもしれないだろ。」
静かにサマンサがそう言うと、シュレンは少し不思議がったが、すぐにその精悍な顔を笑わせた。
「お前も本当に母親だねえ。」
そしてモロクの夜は更けて行く――
五節:~通称"煉獄のカタール"~
翌朝一行はすっかり酔い潰れてしまってしんとなっている酒場(ハワードもいなかった)で、早めのサマンサの朝食を取り、早速ピラミッドに行くことにした。何でもモロク市長は元ギャングスターパラダイスのメンバー(三人目)らしく、サマンサが話をつけてくれるからそのまま聖地に入って良いという事のようだ。
ソレーユたちは簡単に身の回りを整え酒場から出た。眩しい太陽が容赦なく地面を照りつけ、そこらじゅうで砂埃やつむじ風が起きている。人気はあまりない。
「本当に、いろいろありがとうございました。」
言ってルナは丁寧にサマンサにお辞儀した。サマンサも赤い瞳を優しく輝かせて不器用にお辞儀する。
「まあ、久しぶりに楽しい夜だったよ。あと……」
急に顔を曇らせるサマンサ。
「昨日の事、あの子の事許してあげてくれよ。本当は悪い子じゃないんだ。でもなんてか…素直じゃないんだよ。」
それを聞いてルナはにっこりと笑って首をこくりと縦に振った。
「はい。私も昨日は言いすぎました。ではハワードさんや酒場のみなさんによろしく。」
こうして一行は蜥蜴亭を後にし、モロクの聖地・ピラミッドへと向かっていった――
人通りも少なく、朝の砂漠はかなり快適だった。太陽もまだ高くなく、時折吹く風はほのかに涼しい。
「砂漠もいいもんだなあ。」
ニケが欠伸をしながら回りを見渡した。すると後方からソレーユたちに向かって手を振る人影が見えた。……ハワードだ。彼は手を振りながら徐々に近づき、息を切らせながら一行の前に立った。
「はぁ…はぁ……ま、待ってくれ。」
肩で息をして呼吸を整えると、ハワードは今度はきちんと立ちあがり、そして深々と頭を下げた。
「昨日は…ニケ君にソレーユ君、済まなかった。それとルナ様にオワゾーネ様、申し訳ございませんでした。」
不器用ではあるが、誠意の篭った声でそう一言ずつだけ言った。他に言葉が見つからなかったのだろう。彼の顔は真剣そのものだった。
「おま……?!」
ニケが何か言おうとしたのを止め、ルナははにかんだ笑顔で答えた。
「ええ、私も昨日は言いすぎました。」
その言葉に若干顔を柔らかくするハワード。そして、彼はピラミッドへと続く道の端にある小さな家を指差した。
「あそこに昨日お話しましたバーネットという腕の立つ男がいます。今朝彼に護衛兼案内役としてついて来てくるよう説得しておきました。」
「それでハワードは朝いなかったの?」
ソレーユが聞き返すと、ハワードは素直に顔を縦に振った。
「ただ……」
「昨日も話したが、無口というかなんというか……あんまり好意的ではないがな。」
「てめぇ、なんで女と男で話し方が違うんだ!」
再び殴りかかろうとするニケをまたルナが抑えた。
「まあまあ、ハワードさんらしいじゃない。ね、オワゾーネ。」
「そうですよぉ~。」
二人がそう言うと、ハワードも笑った。
「さぁさぁ!待たせるとあいつも気分が悪いだろうから行きましょう!」
ハワードの言葉に誘われ、一行は彼の指す家に向かう――
ギィィィィ…重く古い扉が開くような音とともにドアを開けると、中からかび臭い匂いがぷんと匂ってきた。
「うぅ……ひどい匂い……」
たまらず鼻を押さえる。
「む?――バーネット、どこにいる?」
部屋の奥に入っていくハワード。と、その時!
「きゃあ~!」
急にオワゾーネが叫んだ。びっくりしてみなが振り返ると、喉元に剣のようなものを突きつけられたオワゾーネがいつもの顔で立っていた。そして、その後ろには目隠しをつけた一人の男が無言のままいた。
「……」
「脅かすなよ、バーネット。」
バーネットの突きつけたカタールをオワゾーネの喉元から押し上げ、ハワードはぽんと肩に手を置いた。
「こいつがバーネットだ。通称"煉獄のカタール"。無愛想だが悪いやつではない。腕は折り紙つきだぜ?」
彼はソレーユたちがおどおどと頭をペコリと下げるのを品定めするようにじっと見つめている。そして、ため息交じりに口を開いた。
「フェイヨンの精霊を屈服させたと聞くからどんな豪傑かと思いきや、子供子供子供……加えてあの無用心さ。お前たちではオシリスに会うことすらできん……」
その冷たい氷柱のような言葉が一行にグサリと突き刺さる。悔しいが言い返せない雰囲気をかもし出しているバーネット。これが威厳というものだろう。
「おいおい、バーネット。話が違うぞ。」
「俺は無駄な努力はしない主義でね。他を当たりたまえ。」
そう言って近くにあったいすに腰を下ろした。
「……」
「…私とニケは故郷を焼かれ、ここまでやって来ました。」
すると不意にルナが語りだした。真剣にバーネットを見つめると、彼は何も言わない代わりに次の言葉を待った。
「そこで私はソレーユに出会い、オワゾーネに出会い、たくさんの人からたくさんの勇気をもらいました。」
「……」
「だから……」
そこまで言って言葉を切るルナ。そしてもう一度バーネットを真剣に見つめた。
「だから何としてもこの旅を成功させなくちゃいけないんです。だから……」
それを聞いてバーネットはしばらく腕を組んで考える素振りをしていたが、ふっと両手のカタールをシャキンと鳴らせて立ち上がった。
「……いいか。俺がやるのは仕事の範囲だけだ。お前の言う勇気とやらを見せてもらおう。骨は拾ってやる。」
「はい!」
彼はそれ以上何も言わなかった。彼はただ無言のまま町から北西の方向にあるピラミッドに向かって歩いていく。それを追いかけるように、ハワードを加えた一行は歩き出す――
ジャンル別一覧
出産・子育て
ファッション
美容・コスメ
健康・ダイエット
生活・インテリア
料理・食べ物
ドリンク・お酒
ペット
趣味・ゲーム
映画・TV
音楽
読書・コミック
旅行・海外情報
園芸
スポーツ
アウトドア・釣り
車・バイク
パソコン・家電
そのほか
すべてのジャンル
人気のクチコミテーマ
REDSTONE
グランドフィナーレ〜♪
(2025-05-18 20:25:57)
気になる売れ筋おもちゃ・ホビー・ゲ…
【[2025] 09月の新作】 ○ ‐ 千葉…
(2025-11-22 20:32:53)
フィギュア好き集まれ~
バック・トゥ・ザ・フューチャー プ…
(2025-11-23 22:28:41)
© Rakuten Group, Inc.
X
共有
Facebook
Twitter
Google +
LinkedIn
Email
Mobilize
your Site
スマートフォン版を閲覧
|
PC版を閲覧
人気ブログランキングへ
無料自動相互リンク
にほんブログ村 女磨き
LOHAS風なアイテム・グッズ
みんなが注目のトレンド情報とは・・・?
So-netトレンドブログ
Livedoor Blog a
Livedoor Blog b
Livedoor Blog c
楽天ブログ
JUGEMブログ
Excitブログ
Seesaaブログ
Seesaaブログ
Googleブログ
なにこれオシャレ?トレンドアイテム情報
みんなの通販市場
無料のオファーでコツコツ稼ぐ方法
無料オファーのアフィリエイトで稼げるASP
ホーム
Hsc
人気ブログランキングへ
その他
Share by: