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小説喫茶・メル
劇場版
アラスタ王宮はとても広い。
一階には食堂や大浴場。
稽古をするための道場と少し大きめの庭もある。
二階はミハエル達王族の寝室が主。
三階は兵達の寝室であるが、自宅から通うことも出来るので、一種の寮的もの。
そして、地下
玉座からいける地下には、三大神器が収められていた祭壇がある。
だがもう一つ、大浴場の側の階段からいける地下が存在する。
それが倉庫だ。
あまり使いそうにない武具や、祭りなどで使う用具が保管されている。
その奥、厳重そうな箱があった。
宝箱のように見えるそれには、何重にも鎖が巻かれている。
魔除けなのか【封】と書いてあるお札まで貼ってある。
その箱が
「・・・・・・」
ピクッと動いた。
夕刻、18時程
「ちょっと遅くなっちまったかな?」
城下町を一人歩くミハエルの姿があった。
片手には大量の本が抱えられている。
日が沈みかけているせいか、町人達は皆家へと帰る者が多い。
「図書館はやっぱ良いな、落ち着いて静かに勉強が出来る上に、たくさんの本が助かる」
学校を卒業した彼だが、今もこのように勉強している。
一つの夢に向かって。
満足気な表情で歩いていると
「ミ~ハ~エ~ル~!!!」
背後より、明るく幼い声が聞こえた。
それが誰かすぐにわかったので、ヒョイっと体をそらす。
すると
「ふぎゃ!!」
一人の少女が勢い良く目の前で転んだ。
マンガのように顔面からいったので、とても絵になる。
だが少女は痛みなど気にせず立ち上がる。
「ひど~い!どうして避けるの!?」
ミハエルのパートナー?藤林メルである。
頬をプクっと膨らまし言うその姿は、彼と同じ年には見えなかった。
幼い、身長が低いのでそれが一層に増す。
若干汚れた服、特に赤いスカートをパタパタはたく。
それを見ていたミハエルは
「悪い、つい反射的に」
軽く流すように謝った。
いつものことなのだろうか、スタスタと歩き始める。
「彼女が飛び込んできてるんだから、受け止めるのが普通でしょ!?」
「兄貴の観点で言うな・・・俺はそういうタイプじゃない」
彼の兄、スイは根っからの女好きである。
そのため女性に抱きつくなど彼にとっては当たり前のこと。
その度に頬を赤らめていたレイミの姿が思い浮かんだミハエルだった。
「しかしこんな頻繁に来てて良いのか?カムルさん寂しがるんじゃ?」
メルとカムルは住んでいる世界が違う。
異界の門より簡単に行き来は出来るので、いっそアラスタに住めばと思う所だが、そうも行かないのが事実。
彼女等が住んでいる世界には、彼女の母親、藤林すずを始めとする数々の英雄達のお墓がある。
ミハエルやメルは悪魔なので寿命が果てしなく長い。
だがすずやロイドは人間、その為皆寿命で亡くなったのだ。
だからこそ、誰かがあの世界にいなければならない。
彼女等の墓が荒らされぬように。
「今日はパパも来てるんだよ!!」
「カムルさんも?珍しいな」
普段メルは週5ペースでアラスタに来ているが、カムルが来る事は珍しい。
それが不思議なミハエル。
二人は横に並び城へと向かっている。
そんな時、近くの公園に差し掛かった。
「ん?」
ミハエルはふと視線を公園にやる。
それに釣られてメルも向いた。
そこでは
「すぅ~・・・・・・はっ!!」
一人の少女が、両手を前に出し、そこより小さな炎を出していた。
野球ボール程の大きさのそれは、静かに燃えている。
次の瞬間
「あっ!!」
ボンと、弾け飛んだ。
炎は虚しく消え去り、少女は顔を塞ぎこむ。
「魔法の練習か?」
気になったので尋ねるミハエル。
その声に反応し、少女は顔を上げた。
「あっはい・・・・・・ってミハエル先輩!?」
顔を見た途端、少女は腰を抜かしそうになる。
ミハエル達王族は学校で有名である。
マルシアが学院委員をしていたせいかもあるが、皆全校生徒に顔を知られている。
元々かっこいい上に、勉強やスポーツも出来るので知られないはずがなかった。
彼を先輩と言ったので、少女は察するに12か13そこらだろう。
メルと同じで幼く可愛らしい顔をしており、背も低い。
一つ気がかりなのは、着ている服。
季節は冬、それなのに上のコートは所々破けており、スカートも汚れが目立つ。
どうみても今ついたものには見えなかった。
メルもスカートだがハイソックスを履いている。
だが少女は靴下すら履いていない。
そのため
「・・・寒くないのか?」
思わず聞いてしまう。
「いやぁ~・・・寒さには慣れてまずから・・・くしゅ……」
言った途端くしゃみをしたので、頬をポリポリかくミハエル。
少女は赤面して顔を伏せた。
「もしかして寒いから炎を起こしてたの?」
「いっいえ・・・・・・私・・・クラスで成績最下位なんです・・・だから少しでもみんなに追いつけるように、こうやって練習してるんですが……」
上手くいかない、上げかけていた顔を再び下げる。
エデン学院では、基礎勉学、運動学、魔法学を主に教えている。
小・中等部ではそれがほとんどで、高等部になると応用から専門に分かれる。
「特にこの魔法が苦手で・・・何度やっても上手くいかないんです……」
しょんぼりした表情で言うので、ミハエルはどう言おうか悩んでいた。
そして一つの結論に辿り着いた時
「じゃあさ!ミハエルに教えてもらいなよ!!」
言われた、自分が考えていた事を。
何百年と一緒にいれば、自然と思考まで似るものなのか。
それが妙な気分だった。
「えっ!?先輩に!?」
「そうそう!だってミハエル超優等生なんでしょ?」
「・・・優等生かどうかはともかく・・・俺でよきゃ少し教えられるけど?コツとか」
困ってる人を放っておけない、そんな二人の咄嗟の答えだった。
少女はそれが嬉しいのか
「じゃあお願いしますね!ミハエル先生!!」
彼の手を握り飛び跳ねた。
「せっ・・・先生はやめてくれ・・・」
「照れ屋だねミハエル」
今度はミハエルが顔を伏せる。
それを隣でメルが笑っていた。
「あっと、そういや名前は?」
今更だが聞いていなかったことに気付く。
少女も「あっ」と言った感じで口を開き、姿勢を正した。
「私はシルフィー、シルフィー・クライと言います」
【劇場版ワールドオブマナ・悲剣と少女の協奏曲】
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