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小説喫茶・メル
1
次の日の夕方
学校が終わり、生徒達が帰っていく中
「はぁ・・・はぁ・・・」
少女、シルフィーは走っていた。
向かう先は、昨日の公園。
そこに
「おっ、きたか」
「やっほーシルフィー!!」
ミハエルとメルが待っていた。
ベンチから立ち上がり彼女を出迎える。
メルの方はブランコから飛び降りた。
運動神経の良い彼女はスタっと地面に立つ。
「おっ遅れてすいません!!」
荒い息をしながらそう叫ぶので、少しむせた。
両手を膝に置き、呼吸を整える。
「元気いっぱいだな、じゃあ始めるか」
「はい!!」
今日から始まる、ミハエルによる魔法指導。
昨日話し合った結果、毎日学校帰りにこの公園ですることになった。
毎日と言ってもお互いに都合の合う日なのだが。
メルまでいる理由は不明である。
「昨日のあれを見る限り、一番簡単な炎の維持もまだ無理みたいだな」
「はっ・・・はい・・・」
本当のことなのでしょぼんとする。
それにミハエルは少し困惑。
頬をポリポリかきながら話しを進める。
「・・・そうだな、メル」
「はにゃ?」
「見本を見せてやってくれないか?」
一人で鉄棒をしていたので、逆さまの状態だ。
だが戻ることもせず、そのまま
「ほい!」
右手より炎の塊を出現させた。
小さく燃え盛るそれは、綺麗で揺ぎ無くそこに維持されている。
「すっすごい・・・」
メルにとっては簡単だが、シルフィーからすれば凄いことであった。
この炎は朱雀のものではなく、魔力によるものである。
彼女も人並みには魔法を使える。
ただ基本戦闘スタイルが朱雀の炎なので、こうやって彼女自身の魔力を使うことはあまりない。
「やってみな」
「・・・えぇ!?いきなりですか!?」
昨日が昨日なので必要以上に驚く。
「心配するな、やりながら教えてやるからさ」
安心させるため笑いながら言う。
シルフィーは「はぁ・・・」と軽いため息をついて、言われた通りに
「すぅ~・・・・・・」
ゆっくりと、炎を手のひらに集めた。
徐々に形を整えていき、先程のメルと同じぐらいになる。
「ストップ」
「えっ?」
「それ以上は大きくしなくて良いから、そこで維持してみな」
「はっはい・・・」
不安な表情のまま、原型を留めようと集中する。
すると火は消えず、小さいが静かに揺らめいていた。
「あっ・・・消えない・・・」
小さいとは言え出来たせいか少し笑みが零れる。
「最初から無理する必要はねぇさ、自分の出来る限りでやってみる、まぁ基本かな?」
「先輩・・・」
彼の微笑みに思わず顔を赤らめるシルフィー。
「見て見てーーーーー!!!!」
メルは鉄棒の上に立ち、そこで両手に巨大な炎を作っていた。
まるで小さな太陽のように、それを頭で何度もリフティングする。
「・・・・・・私もあれぐらい出来るでしょうか?」
「・・・あっいやまぁ・・・あいつは気にしなくて良い……」
心の中で「空気読め…」と思ったミハエルだった。
日が沈み、夜になった。
アラスタ王宮の夕食は毎日7時に行われる。
ミハエル達は勿論のこと、兵達も皆食堂へと集まってくる。
たくさんある席、その内の一つ、10人近くは座れる円となったテーブルに3人はいた。
「すっすみません・・・夕食頂いちゃって……」
初めての場に緊張しているシルフィー。
ミハエル達の誘いあって、彼女は今晩泊まることになったのだ。
隣に座っている彼は腕を後ろで組んでもたれている。
「気にしなくて良いぜ、これだけの人数じゃ一人二人増えようがまったく影響ないからな」
まったくその通り、100人以上入れる食堂。
100人前のご飯。
ここまでになると正確な量にはならない。
「たくさんあるから遠慮なく食べてね」
両手に皿を持ったルミスがやってきた。
エプロンをしているが、着ている服が巫女服なのでマッチしているかは微妙な所だ。
そんな姿を見たシルフィーは
「・・・妹さんですか?」
思わずそう聞いてしまった。
しかしこの反応は当たり前である。
成長したミハエルと見比べると、確かにルミスの方が幼く見える。
「いや・・・俺の母さん……」
「・・・・・・えぇーーーーー!?」
食堂中に響き渡る声。
言われたルミスの方は
「・・・ずっと若いのも考えようかも……」
複雑な気分だった。
若く見られるのは嬉しい、可愛く見られるの当然嬉しい。
だが母親らしく見られないのは微妙だった。
今更のことだが内心妙な気分。
「なんだ今の声は?」
「マルシア」
キリっとした表情でメルの隣に座るマルシア。
もう日も落ちたと言うのに髪はさらさらでとても綺麗だ。
「マルシア先輩!!」
「なっ・・・なんだいきなり?」
いきなり手を握られたので、少し引いてしまう。
「噂に名高い学園委員長・・・近くで見るとより素敵に見えます!!」
シルフィーも女の子のため、学園一美女のマルシアに憧れるのも無理はない。
目がキラキラと輝きとろけている。
「あっありがとう・・・すまぬが手を離してもらえぬか・・・?」
「あっすみません!!」
慌てて手を話しお辞儀する。
そしてご機嫌のまま自分の席へと戻った。
「相変わらず男性からも女性からもモテますねマルシアさん」
「べっ別に特別なことをしているわけではないのだがな……」
隣にいるケスティからの言葉に、少し照れながら流す。
そのさらに隣ではレイミが笑っていた。
その間テーブルには料理が次々に置かれていき、ほぼ埋め尽くされる。
ルミスや、後からきたハル達も席に着き。
一同手を合わせる。
「では、頂きます」
レナスの掛け声により、皆も続き箸を取り始めた。
「・・・・・・」
ミハエルやメルが隣でおかずを取っていく中、シルフィーは料理を呆然と見つめていた。
「食べないの?」
それを見ていたルミスが尋ねる。
これらはすべて彼女が作ったものなので気になったのだろうか。
「あっいえ!ただなんというか・・・お城なのに・・・・・・私が普段食べてるものと変わらないなぁ~と思いまして……」
「・・・豪華のが良かったのか?」
ミハエルの問いかけに
「ちっ違います!!少し驚いただけです!!」
慌てて返した。
しかし彼女が驚くのも無理はないだろう。
テーブルに置かれている料理は、肉じゃが、焼き魚、玉子豆腐、味噌汁など、一般的なものばかりだった。
見た目だけなら普通の家庭となんら変わらないだろう。
だが
「くぅ~・・・やっぱルミス様のご飯は最高だぜ!!」
「母ちゃんの味思い出すよな~、ホント美味過ぎる!」
「一日の元気が一気に戻ってくるみたいだ!!」
兵達は絶賛していた。
中央に置かれているおかわりエリアに群がる。
それに呆気に取られたが、一口、ジャガイモを食べた。
「・・・美味しい……」
その言葉に、一同は笑った。
シルフィーはスイッチが入ったのか、よほどお腹が空いていたのか、それからメル並にたくさん食べたという。
ルミスは満足気に微笑んでいた。
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