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小説喫茶・メル
7
シルフィーはすぐにレイミの病院へ運ばれ、ナルクと共に診て貰っている。
兵達の方は壊れたマルシアの部屋を直したり、休息したりと様々だ。
幸いにも犠牲者は出なかった。
ハルやレナスも自室で疲れを癒している。
ミハエルはカイトに礼を言うべく彼を探していたが、どこにも姿はなかった。
レナスを助けたセツナも消えている。
仕方なくメルと二人で自室で休んでいた。
「・・・もう診終わったかな?」
「う~ん・・・いくらあの二人でも早すぎないか?」
メルもミハエルも、早く彼女に会いたくてうずうずしている。
そのため彼は先程から何度もベットで寝返りをうっていた。
メルの方はカーペットの上を行ったり来たり転がっている。
「うん、もう会いに行こうよ!!」
「そうだな・・・行くか!!」
笑顔でそう言い、二人は部屋を出た。
病室、ベットに寝かされているシルフィー。
その側で立ち尽くしているレイミとナルク。
そして様子を見に来たスイとマルシア。
「聖剣の力を持ってしても・・・消滅しきれないとは……」
ナルクは呆然としていた。
信じられなかった。
これほどまでに、ヴィゾフニルの力が強大だとは。
「この子・・・どうなるんだ?」
険しい顔つきで尋ねるスイ。
それにレイミが答える。
「・・・微量で具現化して出てこない以上・・・中から完全に支配される……」
彼女の言葉に、一同は返答が出来なかった。
阻止しようとしていたことだと言うのに、もはや手遅れ。
「・・・みな・・・さん・・・・・・」
そんな空気の中、シルフィーが目を覚ました。
おずおずと口を開く。
「お願いが・・・・・・あります・・・」
彼女の力無き発言に、4人は耳を疑った。
病院の出入り口
王宮程ではないが、それなりに広い庭。
そこにミハエルとメルは足を踏み入れた。
しかし入り口を見てみると
「兄貴、マルシア、どうしたんだ?」
スイとマルシアが立っていた。
二人して、扉を塞ぐように。
メルは彼等の表情が険しいのが気になった。
そのためミハエルより一歩下がる。
「ヴィゾフニルが・・・シルフィーを支配する寸前までにある」
「!?」
スイの言った発言に、二人は驚きを隠せなかった。
「どういうことだ!?消えてなかったのか!?」
冷静さを失いつつあるミハエルの方を見、口を開く。
「・・・あの子は・・・剣と同化することを、自ら望んだ」
「なっ・・・どうして!?」
ミハエルとメル、声を揃えて叫ぶ。
「お前たちに、これ以上を迷惑はかけたくない・・・みんなを困らせたくない・・・そう言っていた」
呆気に取られた。
マルシアの声色も辛そうなので、一瞬言葉を失ったが
「・・・ふざけるなよ・・・・・・」
徐々に、怒りのようなものが溢れてくる。
「ふざんけな!!自分を犠牲にして助けようとする奴が、俺は一番嫌いなんだ!!!」
「そうだよ!!シルフィーがいなくなるなんて・・・私嫌だ!!!」
二人してそう叫び、入り口に向かう。
スイとマルシアの横を抜けようとした時
「!?」
彼等に、腕を捕まれ吹き飛ばされた。
尻餅をつき倒れこむ。
「何すんだ兄貴!?」
慌てて起き上がり怒声を上げる。
それを見ていた二人は、さらに表情を険しくし話す。
「お前等を、通すわけには行かねぇんだ」
「大人になれ、それはお前たちのワガママではないか」
容赦なく言うその姿は真剣そのもの。
病院の中に入れさす気はまったくなかった。
それにミハエルは元より、メルまでも怒りを覚える。
そして拳を握り締め、顔を下げた。
「兄貴・・・マルシア・・・・・・」
唇を噛み締め、静かに上げていき
「どけぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
敵意を剥き出しにし突っ込んだ。
右手に水の剣を纏う。
メルの方も息吹を出現させ、背中より炎の羽根を生やした。
「ったく・・・仕方ねぇガキどもだ……」
「・・・辛いのは、お前たちだけではないと言うのに・・・」
迎え撃つスイとマルシアは、腰に下げてある愛刀を抜く。
ミハエルは兄目掛けて剣を振り下ろした。
ギーンと防ぎ、水の剣と黒い刀がぶつかり合う。
「あいつは俺の大事な弟子・・・友達だ!!!」
「・・・だったら・・・その友達の願いを聞いてやるのも師匠の務めじゃないのかよ?」
頭に血が上っているミハエルと違い、スイは落ち着いて返している。
この辺りが二人の違いだろうか。
「せっかく友達になれたのに・・・・・・もうお別れなんて嫌だよ!!」
「私だって辛い・・・だが・・・彼女が選んだ答えだ!私達がどうこう言えることではなかろう!?」
大人なマルシアだが、スイのように冷静ではいられなかった。
メルの炎の刀を弾き、一歩後退する。
兄、姉に押されている二人は
「はぁあああああああああ!!!!」
さらなる力を解放していく。
ミハエルの周りには水が、メルには炎が溢れ出てくる。
それらは徐々に姿作っていく。
【海王竜・リヴァイアサン】
【飛刀・朱雀】
海の化身と、朱雀の姿に。
「おいおい・・・マジかよ・・・・・・」
「お前たちそこまで・・・・・・」
さすがのスイとマルシアも呆気に取られていた。
彼等の本気の想いに。
二人はそれぞれ突撃しようと前に重心を込めた。
その時、バーンと病院の天井を突き破り、光の柱が天に向かって出現する。
それが何を表しているかすぐにわかったミハエルとメルは
「シルフィー!!!」
叫び、病院内へと入った。
「・・・・・・」
スイとマルシアは無言で何もしなかった。
静かに愛刀をしまい、その場に座り込む。
そして中では
「シルフィー!!」
彼女の元へ駆け寄り、体を抱き起こす。
シルフィーはぐったりとしており、目を閉じている。
「・・・・・・」
ナルクとレイミは何も言わず、部屋を出た。
病室に残された3人。
シルフィーからは白い光が出ている。
「ミハエル・・・先輩・・・」
目を開け、ミハエルとメルの姿を確認する。
「しっかりしてシルフィー!!剣なんかに負けちゃだめだよ!!」
メルの方は既に涙を流し、必死に叫んでいた。
ミハエルももらい泣きしそうだが耐えている。
「メル・・・ごめんね・・・・・・」
謝り、ミハエルへと視線を移す。
いつの間にか彼は落ち着いていた。
先程までの怒りはなく、ただ泣きそうな表情で彼女を見ている。
「先輩・・・・私・・・魔法・・・ちゃんと出来て・・・ましたよね?」
「・・・馬鹿野郎・・・・・・あんなの・・・まだまだ下手くそだ・・・」
彼はそう言うがシルフィーは
「だから・・・もっと練習だ・・・明日からでも・・・すぐに練習……」
それが本心でないことは、わかっていた。
現に彼は
「先輩・・・ご指導・・・・ありがとうございました・・・」
泣いていた。
ボロボロと、体を震えさせながら泣いていた。
一滴一滴の雫が、彼女の頬へと落ちていく。
「・・・私・・・幸せでした・・・・先輩とメル・・・レナスさん達に出会えて・・・」
シルフィーは泣かなかった。
泣けば二人を余計に悲しませてしまう。
彼女の心は強い。
だからこそこの決断を選んだのだ。
「大好きだから・・・先輩達が・・・大好きだから・・・・・・だから」
一呼吸し、続ける。
「これは今までの・・・恩返しです」
シルフィーの体が、足元から消えていく。
「先輩・・・」
「・・・?」
涙のため声が出ない。
「この剣を・・・一人ぼっちにしないで・・・ください・・・ね・・・」
その言葉、意味がわからなかったが
「私と同じだった・・・この子を……」
「!?」
わかった。
何故彼女がヴィゾフニルに選ばれ、共鳴したのか。
だからこそ言える
「・・・わかった・・・・約束する・・・」
決意をしたように。
それを聞いたシルフィーは、静かに微笑みそして
「大好きです・・・・・・先輩」
消えた。
彼の腕より、煙のように消えた。
そしてその腕に
「・・・・・・シルフィー・・・」
一本の剣が、添えられていた。
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