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13
光は優しくワルキューレを包み、彼女に吸い込まれるように風が渦巻いている。
彼女を見たシグルズが、ここにきて初めて表情を曇らせた。
先ほどまでの余裕で満ちた姿はない。
変化を遂げたワルキューレに対し、静かに口を開く。
「・・・まさか【覚醒】を起こすとは、目覚めるとは思わなかったよ・・・」
一呼吸し、彼女が何も言ってこないので続ける。
「【女神・ワルキューレ】」
「・・・・・・」
言われたワルキューレは、何も返さず、険しい顔つきでシグルズを見つめていた。
そして一歩前に出、片手を前に出し掌を開く。
もう片方の手は、出している手の手首辺りを握る。
徐々に掌に光が集束されていき、眩い閃光が走ったと思うと
「!?」
シグルズに向けて、黄色い光線が放たれた。
人一人を飲み込むそれは、一瞬で彼へと直撃する。
それを確認したワルキューレは、アクアの側へと寄る。
血を出し気絶している彼の背中のナイフを抜いていき、治療の光を両手より発した。
「アクア・・・死なないで!!」
そう叫び力を集中させようとした時、背後に気配が現れたのでやめる。
振り向くと、直撃したが、大して傷を負っていないシグルズが立っていた。
何かを悟ったかのように微笑し、話し始める。
「やはり完全には力を出し切れていないようだね・・・・」
汚れた服をパッパッと払う。
「その程度では、僕は倒せないよ」
そう言われ怯むかと思いきや
「貴方こそ、いい加減兄から出てきたらどうですか?」
思いがけない事を口走った。
シグルズは眉を潜め、彼女を睨み付ける。
しかしすぐに戻し、再び微笑しながら話す。
「・・・不完全な貴様相手に、わざわざ【私】自身が出るまでもない」
そういった二人しかわからない会話をかわし、少しの沈黙が流れた。
一枚の葉が地面へついた瞬間
「はっ!!」
ワルキューレが動いた。
初めに撃った光線を放つ。
シグルズはそれを上空へ飛ぶことによりかわし、そこでナイフを構えた。
彼女の真上辺りの位置で、数本のナイフを投げつける。
「くっ・・・」
真上に両手をかざし、そこより光をドーム状にし、バリアを展開。
ナイフはすべて弾かれた。
だがバリアを解くと、背後に急接近されている。
すぐさま手を構え光線を放とうとするが
「力が不完全な上に、戦闘の経験不足だね」
顎に蹴りを入れられ、後ろに倒れそうになる。
なんとかバック宙をし、体勢を立て直すが、そこに数本のナイフが迫っていた。
手を前にかざすものの、間に合わずに直撃。
「あぅ!!」
手や足、さらに腹部に刺さってしまった。
それにより膝をつき、倒れそうになる。
少しずつだが、血が溢れ出てきた。
それを哀れむような目で見つめる。
「終わりだよ、ワルキューレ」
アクアに放った時のように、数十本のナイフを両手に構えた。
しかしワルキューレは、怯えた様子もなく、今まで通りに口を開く。
「私の希望は・・・まだ終わってません」
「???」
その言葉の意味することがわからない。
そう考えていた時、彼女の周りより、初めのような激しい光が発する。
目くらまし。
視野を奪われたシグルズは、静かに目を瞑り、どこから攻撃してくるかに気配を配っていたが
「・・・逃げたか・・・」
目を開けてみると、そこにはワルキューレもアクアの姿もなかった。
血を流しながら、アクアに肩を貸し歩くワルキューレ。
眩い光を放っていたが、いつの間にかその光も小さくなっていた。
「これ以上は・・・限界ですね・・・・」
そう言い、アクアをゆっくりと地面に寝かせてあげる。
彼の背中に両手を添え、癒しの光を発生させた。
無数にあった傷が、徐々になくなっていく。
「んっ・・・」
それにより、気絶していたアクアが静かに目を覚ます。
「目が・・・覚めましたか?」
「ワル・・・キューレ?」
「はい、私です」
姿と口調が少し違うので戸惑うが、彼女の手より発せられている光が、本物だと感じられた。
意識がほぼ完全に目覚めていき、驚く。
「おまえ・・・血が・・・」
自分の傷は治っていくが、彼女はどんどん血を流している。
しかし彼女はそんなことを気にせずに、治療を続けている。
「大丈夫です・・・貴方は、絶対に死なせません・・・・」
その言葉の意味が、子供のアクアにも理解出来た。
「ワルキューレ、おまえまさか・・・」
「・・・はい・・・私の体は、もう限界にきています…」
「だったら!!」
治療をやめろ、そう叫びたかったが、起き上がり彼女の顔を見た瞬間、それが言えなかった。
すべてを覚悟して、決意している表情。
皮肉にも、その姿は今まで以上に美しく、綺麗だった。
「アクア、貴方は私の希望です・・・・私に初めてここまで、真剣に接してくれた貴方なら・・・」
一瞬フラっとなるが、保ち続ける。
「兄を・・・この戦いを止められるはずです」
自分の想い。
自分の願い。
それを託されていることを、アクアにはわかった。
だがそれと同時に
「ごめん・・・俺・・・」
悔しさが溢れ出てくる。
「ワルキューレを・・・・守れ・・・なかった…」
あの時、グラディウスとサリアに言われた通り、城で大人しくしていれば。
自分にもっと力があれば。
後悔ばかりが、彼を襲った。
しかしワルキューレは
「そんなこと・・・ありません」
微笑んでくれた。
「貴方は、兄に対して絶望し壊れかけていた、私の【心】を守ってくれた」
「・・・・・・」
「どんな時でも諦めずに、勇気をくれた」
涙が止まらない。
「それに私は、これからも生き続ける・・・」
悔しさからか嬉しさからか、どちらとも言えない涙が。
治療を終えたワルキューレは、ゆっくりとアクアを抱きしめる。
「貴方の中で・・・力となって」
抱きしめ返そうと手をかけた時、彼女の体が消えていく。
綺麗な光となって、アクアの体に注がれていく。
「アクア・・・・・・ありがとう」
その言葉を最後に、彼女の声、体は消えた。
ただ一人、呆然と残されたアクアの元に、誰かがやってくる。
当然それは、彼等をここまで追いやった人物。
「ワルキューレは・・・死んだか」
皇帝シグルズ。
しかしアクアは、顔を上げずに硬直していた。
逃げることも、戦うこともせずに。
そんな彼に向けて、シグルズは手に持つ数十本のナイフを、一斉に投げつけた。
わずか数秒。
キンキンキンと、弾かれたような音が鳴り、シグルズだけなくアクアも驚く。
そして、下げていた顔をようやく上げる。
「貴様の相手はこの僕だ」
そこには、懐かしい顔ぶれがあった。
黒い綺麗な髪とマントが靡き、静かに立つその姿。
「アクア、今は逃げて生きよう・・・・・・ワルキューレの想いを、無駄にしないために」
桃色の髪が可愛らしい顔にあっており、小柄に似合わず大きな剣を持っている少女。
「アクアは任せたぞ、カノンノ」
「うん、気をつけてリオン」
最後の助っ人、リオン・マグナス、カノンノ・イアハート、到着。
スキット:【託された二人】
ロイド「頼んだぞ、リオン、カノンノ」
リオン「良いのか、僕は加減するつもりはないぞ?」
ロイド「それぐらいで丁度良いんだ、今回の世界は・・・」
カノンノ「着いたら一度連絡するね、リフィルさん達の容態も気になるし」
ロイド「あぁ、頼む」
リオン「カノンノ、修行中にアクアがへばっても、甘やかすなよ」
カノンノ「大丈夫だよ・・・アクアは、強いから」
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