小説喫茶・メル

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数年前

帝国の皇帝シグルズは、国民皆より慕われており、人望が厚い。

当時、四天王という存在はなく、側近のラファエルと共に、毎日民のために行動していた。

そんな彼に、毎日のように付きまとっている人物が一人。

「兄上~!!おやつの時間なのじゃ~!!」

シグルズの妹であり、女神の一人、ワルキューレ。

彼女は両手にケーキの乗った皿を持ち、兄の元へと走ってくる。

「ワルキューレ、悪いけど僕はこれから、町へと行かな…」

「嫌なのじゃ!!おやつは一人で食べても美味しくないのじゃ!!」

駄々をこねる妹に、ポリポリと頭をかき困った。

なんと言おうと考えていた時、側にいるラファエルが口を出す。

「大丈夫ですよシグルズ様、少しの間なら、私が話をつけておきますから」

そう言い、ワルキューレの元へいき、頭を撫でた。

「すまないねラファエル・・・それじゃあ頼むよ」

シグルズからの返事を聞き、ラファエルは手を離し去っていく。

ワルキューレはそんな彼に笑顔で手を振っていた。

そして兄と共に、おやつを食べるために部屋へと入っていく。





「兄上、お仕事の半分ぐらい、ラファエルに任せたらどうなのじゃ?」

城には当然のように、ワルキューレと同年代の子供はいない。

そのため彼女は、兄がいない時はほとんど一人で遊んでいた。

「そうも行かないよ、僕は一応、この国の王なんだから…」

「王なんてラファエルに譲るのじゃ!!あやつなら、兄上も全てを任せられるじゃろ?」

「そりゃ~・・・確かにラファエルなら、大丈夫そうだけど…」

複雑な気持ちになりつつ、ショートケーキの上にある、いちごにフォークを刺す。

「でも、僕は父上からこの国を任されたんだ、だから・・・・・・その責務は果たさないと」

そう言われ、さすがのワルキューレも、これ以上言えば兄を困らせると気づいた。

ため息をつき、諦めたように顔を伏せる。

「・・・わかったのじゃ・・・・・・」

とぼとぼと、静かに一人で部屋を出ていこうとした。

「ワルキューレ」

「???」

「明日、仕事が早く終わったら、どこかに出掛けようか」

その言葉に、パァーと笑顔になるワルキューレ。

ベターと兄に抱きついた。





自分のわがままが、兄を困らせているのはわかっている。

しかしそれでも、一人でいるのは辛いし寂しい。

それをわかっているのか、シグルズもワルキューレのために、こうしてたまに無理をして一緒にいてくれる。

普段の何気ない幸せを感じている彼女だが、それも長くは続かなかった。






いつものように、兄に少しわがままを聞いてもらおうと、部屋を尋ねた時

「なっ!?本気ですかシグルズ様!?」

ドア越しより、ラファエルの叫び声が聞こえたので、開けようとしたのを止めた。

そっとドアに耳を傾け、中の話を聞く。

「本気だよラファエル、僕がこんなつまらない冗談を言うと思うのかい?」

「ッ・・・しかし…」

「・・・僕に意見するの?」

ラファエルはぐっと言葉を飲みこみ、頭を下げ一歩下がった。

そしてドアへと向かってくるのがわかったので、慌てて隠れるワルキューレ。

出てきた彼の表情を見てみると、とても険しく、いつも兄の側にいる彼の顔ではなかった。

恐る恐る、兄のいる部屋へと入る。

「あっ・・・兄上?」

何があったのか、それだけを聞こうと尋ねたが

「なんだい・・・・・・ワルキューレ?」

彼に目を合わされた瞬間、背筋が凍りつきそうになった。

パッと目を反らし、顔を伏せる。

「いっいえ・・・なんでも・・・・・・ないのじゃ…」

逃げるように、ドアへと走っていった。

その際に思う。

(いつもの兄上ではない・・・・・・一体・・・どうしたと言うのじゃ!?)

頭がパニックになり、急ぎ足で自分の部屋へと向かった。






それからあまり間を置かず、ウェルギリウスとの戦争は始まった。

あの時兄がラファエルに出した指示は、向こうの使者を殺せという命令だったと、後になって気づく。

それからの兄は、誰も近づけず、一人でいることが多くなった。

当然、ワルキューレもほとんど話をしたことがない。

そして、彼女が12歳になった日、意を決して、兄の行動を探った。

城の地下にある祭壇にて、驚愕する。

「やはり・・・あれは兄上ではない…」

気づかれぬよう、正面の出入り口ではなく、自分の部屋へと向かう。

「わらわが・・・・・・わらわがなんとかしなければ!!」

部屋に着き、窓を開けた。

ローブの裾を持ち上げ、またいでいく。

「兄上、待っているのじゃ!!」

窓から飛び降り、着地に失敗するが、すぐに立ち上がり走った。






この数時間後、ワルキューレはアクアと出会う。

それが、自分と彼の運命を、大きく変えることも知らずに…


















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