小説喫茶・メル

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マラソン当日。

多くの生徒がスタート場所である、校門前に集まっている。

アクアとフレアもおり、少し離れた所では

「アヤメちゃん!頑張ろうね!!」

「うん・・・・・・今年こそ、完走してみせる」

コノハ達4人もいた。

各々準備運動をし、スタートラインのつく。

パーンとピストルの音が鳴り響き、皆一斉に走り出した。






しばらくして、半分程の生徒達がゴールしていく。

「ふぅ~・・・さすがに疲れましたわ…」

クローバはなんとかゴールラインを越え、地面に座り込んだ。

息を整えているところに

「お疲れ様」

一足先にゴールしていたスイレンがやってきた。

片手に持つボトルに入った水を差し出す。

「ありがとうございますスイレンさん・・・私もうヘトヘトですわ・・・」

蓋を開け、一気に水を流し込む。

スイレンは隣に座り、同じように飲み始めた。

そこに

「スイレン!クローバ!!」

小走りで少し険しい表情のアクアがやってくる。

すぐ後ろではよれよれのフレアがおり、兄の背中にもたれ込んだ。

「どうしたのアクア?」

「コノハ見なかったか!?あいついつも先にゴールしてるのに・・・いないんだよ」

彼の言葉に、スイレンとクローバの表情が曇る。

それに疑問を思うアクアに、今にも倒れそうなフレア。

彼はひとまず妹を抱えてあげ、スイレン達の返事を待つ。

「あの子なら・・・・・・アヤメちゃんと一緒よ」

「えっ・・・?」







学園より少し離れた所にある、小さな山。

そこの頂上が折り返し地点となっており、コノハとアヤメはようやくそこを通過した。

下りに差し掛かった時

「あう!!」

アヤメがつまづきこけた。

「アヤメちゃん!?」

慌てて後ろを振り向き、彼女の元へ行く。

体を支え起こしてあげると、アヤメは息を切らし、胸を押えつけていた。

「はぁ・・・・・・はぁ・・・けほっけほっ!!」

(・・・ダメ・・・・・・もうこれ以上は…)

限界

それを感じたコノハは、おずおずと彼女に話しかける。

「アヤメちゃん・・・もうリタイ…」

「諦めない…」

言い切る前にそう言われ、言葉に詰まった。

アヤメは息を切らし胸を押さえながら、立ち上がろうと片手を膝へ置く。

「ッ・・・アヤメちゃん、無理しちゃダメだよ…」

ここまで走らせたのは自分の責任でもあると感じているせいか、なんとか彼女を止めようと声を出す。

体を支えながら、背中をさすってあげる。

複雑な思いのコノハに対し

「・・・コノハちゃんは・・・・・・」

アヤメは静かに呟いた。

「最後まで・・・・・・シードさん達を諦めなかった・・・」

少し落ち着いてきたのか、あまり間をおかず話続ける。

「物凄い力を持つ古代兵器相手にも、諦めずに戦って・・・倒した…」

「アヤメ・・・ちゃん・・・」

なんと言ったらと考えている彼女に、アヤメはさらに言い放つ。

「【諦めなければ、人はなんだって出来る】・・・・・・この言葉、コノハちゃんがいたから、信じれるようになったんだよ」

辛い体で無理して微笑むその姿を見、コノハは心打たれた。

アヤメはゆっくりと立ち上がり、そっと彼女から離れる。

「だから・・・私も最後まで、諦めない…」

静かに、一歩ずつ足を進め、再び走り始めた。







リタイアした生徒も含め、全員がゴールしたと思われていた頃

「あっ!見えた!!」

アクアが、遠くからゆっくりだが、走ってくるアヤメとコノハを発見した。

アヤメの方はよれよれで、コノハはその側でいつでも支えられるように走っている。

そして、大勢の生徒が出迎える中、二人はようやくゴールに辿り着いた。

「アヤメちゃん!!」

「アヤメさん!!」

スイレンとクローバが、倒れ込むアヤメに慌てて駆けつける。

二人して抱え、水の入ったボトルの蓋を開けた。

「待って、まずは呼吸を整えるのが先よ」

体力が戻ったフレアがそう言い、医者の卵なりの対応を始めた。







レイミの医務室にて

「どうしてこんな無茶をさせたの!?」

彼女は目の前で俯いている、自分の娘に対し大声で叫んだ。

珍しく本気で怒っているように見える。

近くで聞いているスイは、何も言わず黙っている。

後ろにあるベッドでは、アヤメが眠っていた。

「ごめんな・・・さい…」

「待ってレイミ、今回の事は・・・僕にも責任があ…」

「エミルさんは黙っててください」

なんとかコノハをフォローしようと思ったエミルだが、厳しい声で言われ黙り込む。

「この子は貴方のように、体が丈夫じゃないのよ・・・・・・今回の事で、障害が残ったらどうするつもりだったの…?」

「・・・・・・」

何も言い返せず、ただ聞く。

だがしばらくして、静かに口を開く。

「止めようと・・・・・・思った…」

彼女が話し始めたので、今度はレイミが聞く側になった。

「もうダメだって、これ以上走らせたら・・・大変なことになるって・・・・・・」

「だったら…」

「だけど・・・」

コノハの声が、涙を含んだ声に変わる。

「さいごまで・・・・・・はじぃりぎぃるっていう・・・アヤメちゃんのおぼぉいを・・・・・・どめるなんてでぎない…」

両手で顔を押さえ、その場に泣き崩れた。

その姿に「ッ!!」と拳を握り締めるエミル。

自分の責任もあると感じているからだ。

スイの方は顔を伏せ、変わらず何も言わない。

「・・・コノハ…」

レイミは表情を穏やかに戻し、白衣のポケットよりハンカチを取り出した。

それを彼女に与えようとした時

「コノハ・・・ちゃん」

ベッドで眠っていた、アヤメが目を覚ました。

上体だけ起こし、毛布を取る。

「アヤメちゃん…」

コノハは体操着で涙を拭き、アヤメの側へ行く。

「ごめんね・・・・・・アヤメちゃん・・・」

「ううん、大丈夫だよ」

一眠りして落ち着いたのか、なんとか話せている。

そしてコノハの手を握り

「コノハちゃんがいたから・・・私は初めて完走出来た・・・・・・だから、ありがとうコノハちゃん♪」

いつもの笑顔で微笑んだ。

コノハはそれに再び心打たれ、涙がさらに溢れ出る。

「アヤメちゃぁあああああああああん!!!!」

彼女に抱きつき、大声で泣いた。

そんなコノハをアヤメもゆっくりと抱き返す。

離れた所で見ていたエミルも、良かったと胸を撫で下ろす。

「コノハ・・・良い友達を持ったな」

スイはレイミの肩をポンと叩き、部屋を出て行くように促した。

彼女も「そうね…」と言い、静かに椅子より立ち上がる。

一方病室の外では

「コノハさまぁああああああ~アヤメさぁああああん!!!」

クローバがもらい泣きをしていた。


















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