小説喫茶・メル

小説喫茶・メル



周りのネオンの光が暗い夜を明るく照らしてくれている。

今夜は三日月のようだ。

そんな夜に5人は立った。

「さてと、近くやから今日中にいこか」

道を知っているのか、不知火は西の出口へ向かって歩いていく。

「そうだな」

その後にミハエルも続き、メルや神楽も続いた。

街の外は街道となっており、少し車も走っている。

脇には叢(くさむら)などが生い茂っており、若干不気味でもある。

その先、100メートル程先にここより少し小さめの町が見える。

距離が距離なのでそこにはすぐに着いた。



バトルタウン

周りには宿屋、レストラン、観光目的を狙った土産屋など様々な店がある。

中央にはいかにもバトルタワーに関係ありそうなサーカスのようなドームがある。

「とりあえず今日はもう遅いし、宿で寝よか」

不知火に言われ、一同は宿屋へ向かった。

中に入るとフロントがまずあり、そこに不知火が向かう。

メルは異世界の宿を観察するようにキョロキョロしている。

それが気になったのか神楽も同じように、置き物や作りを見ている。

ミハエルと黒姫はただ立って待っていた。

「ほい、部屋の鍵」

一本の鍵を神楽に渡し、部屋へ行くため階段を上がる。

「飯が欲しいんやったら下でもらえるわ」

神楽達にそう言い

男性陣、女性陣とそれぞれ分かれて部屋に入った。

ミハエル、不知火の部屋

中はベットが二つに1メートル程の机、奥に窓があるだけとシンプルなものだった。

ミハエルは特に荷物はないのですぐにベットに座った。

「手際良いんだな」

不知火が軽々と事を進めるので少し感心するミハエル。

「まっ、ここには結構おるしな」

彼が言う こことはこの世界の事であろう。

荷物であるポーチを置き、ベットに寝転がった。



メル、神楽、黒姫の部屋

「うにゃ~・・・・眠い・・・・」

真っ先にベットに寝転がるメル。先程まで寝ていたにも関わらず眠そうだ。

「ありゃ・・・ベット二つかぁ・・・・」

ミハエル達の部屋と同じなのでベットは二つしかない、それに髪をくしゃくしゃして悩む神楽。

にも関わらずメルは既に一つ独占している。

「それなら私は窓際で寝るとしよう」

黒姫はそう言うと窓際に腰掛け、窓にもたれかかった。

「ごめんなぁ黒姫」

こういうことが前にもあったのだろうか、神楽は遠慮もせず承諾した。

そしてベットに座り、不知火とお揃いに思えるポーチを開けた。

「出てき」

彼女が言うと、ポーチから一匹のリスが顔を出した。

茶に黒いラインがかかった一般的な姿である。

くしくしと両手で顔をかいている。

「おぉ可愛い!!!」

ダウンしていた体をすぐに起こし、神楽のリスの眼前に飛びついた。

「リオって言うねん、よろしゅうな」

神楽はリオの頭を少し押し、お辞儀させた。

それを終わるとリオは神楽の頭に一瞬で登った。

頭の上にリス、とても絵になる光景である。

「うわぁ~良いなぁ~・・・・」

とろけた目でリオを見つめている。

「そやメル」

「ん?何?」

とろけた目を戻し、ベットにぴょこんと座る。

その仕草に黒姫が少し苦笑したが、二人は当然気付かなかった。

「ミハエルのこと好きなん?」

「うん大好き!!!」

「・・・・・・」

メルが即答したので言葉に詰まる神楽。

もう少し照れるなりすると思っていたのであろう。

「だっ・・・大胆な子やな自分・・・」

やっと出た言葉は当然呆れたものだった。

また黒姫が苦笑したのは当然気付いていない。

「そういう神楽は不知火のこと好きなの!?」

馴染んだおかげか『さん』づけはやめたようだ。

ちゃかすようではなく笑って返す。

「うっうちは!!・・・・・・えっと・・・」

聞き返されるのは予想していたが、いざ言われると物凄く照れが襲ってくる。

顔を真っ赤にし、顔を少し伏せた。

だがすぐに落ち着いた。

「不知火はな・・・」

語るように静かに口開く。

「うちの・・・・・・恩人やねん・・・」

「・・・・恩人?」

含みのあるその言葉に対して聞き返す。

「うち・・・・・・捨て子やってん」

「えっ!?」

神楽の少し悲しそうな声で言った言葉に思わず驚く。

黒姫も眠ろうとしている目を開けた。

ただ開けただけでその場から動いたわけではないが。

「ちっちゃい頃に、両親に山に捨てられたみたいでな・・・」

「なっ!?なんて親なの!?」

「・・・理由はわからへん・・・でもただ一つわかることは」

神楽の表情が泣きそうになる。

「うちは・・・・・・ 実の両親に愛されてなかったってことや・・・

泣きそうだが、神楽は涙を流さなかった。

「そんな・・・・まだ小さい子供を・・・・・・山に捨てるなんて・・・」

メルからしたらとても信じられなかった。

すず、カムルという両親、それに加えレナスやハル達にも愛されてきた彼女にとって、親が子を愛さない意味がわからなかった。

「・・・まっ、言うてもその後は山の動物達に育てられたから大丈夫やってんけどな」

「はい!?」

最初の驚きと別の驚きを見せる。

単純に考えれば動物に育てられるなど普通ありえない。

だがリオの懐きようから、完全に信じられないわけでもなかった。

「それからしばらくして、うちが15歳の時」

神楽は現在16、つまり1年ほど前であろう。

「うちの育て親だった熊が猟師に襲われてな、もうあかんと思った時に・・・」

「不知火が助けてくれたんだ・・・」

「・・・そゆことや」

声のトーンが低くなり、しばらくの沈黙。

「それで、今に至るわけや」

「ん・・・まあ最後適当だけどなんとかわかったよ・・・」

メルは納得はしたが、まだわからない個所があるのが少し不服だった。

だが辛い過去をこれ以上聞くのは気が退けたのでやめておいた。

ここまで話してくれただけで十分だとも思ったのだ。

「うちの親を助けてくれた、その上うちを広い世界に連れていってくれた。だから・・・・・・」

神楽はキリっとした顔を上げた。

うちはずっと不知火の隣におる、それがうちのすべてや

「あっ・・・・・・」

神楽の言葉に共感出来ることを感じ、メルは少し笑った。

そして黒姫も苦笑し、再び目を閉じた。



ミハエル、不知火の部屋


「なあミハエル」

ベットに寝転がりながら、隣で寝ているミハエルに話しかける。

「なんだ?」

動かずただ返す。

二人とも疲れているのか動こうとしない。

「もし願いが叶うんやったら、おまえ何を願う?」

「・・・・・・そうだなぁ・・・」

一瞬考えたが

「もっと・・・・・・強い奴とたくさん戦いたいな」

すぐに答えが出た。

この答えはさすがハルの息子である。

「強い奴か・・・・・・純粋でえぇな」

何故か不知火の表情は少し暗かった。

声もどこか小さい。

「そういうおまえはどうなんだ不知火?」

聞かれたので当然のように聞き返すミハエル。

そんな彼に対して

「俺か・・・・・・」

不知火はさらに暗くなった感じで口を開く。

「俺の願いは・・・・・・」

そこまで言って彼の脳裏に



「母さん!!!」



一つの光景が蘇った。

「・・・・・・・・・」

すぐに振りほどき、右手を天井に向かって伸ばす。

俺の願いは・・・・・・俺にしか叶えられへん・・・

どこか含みのあるその言葉に

「・・・・・・そうか・・・」

ミハエルは深く追求せず返した。

そうして間もなく二人は眠りについた。










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