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小説喫茶・メル
5
小柄な女性がそう言い頭を下げると、後ろにいる女性達も続くように頭を下げた。
「どうもおおきに」
不知火と神楽が声を揃えて言い、一同はその場を出た。
あまり時間が経っていないので、外はようやく日が昇り始めたようだ。
まばゆい光が彼等を明るく照らし出す。
町の人々も少しづつ活動し始めた。
「このまま次の町いこか、そう遠くないはずやし」
「わかった」
ミハエルは承諾し、不知火を先頭に再び彼等は町の外へ。
今度は平原のような所に出た。
かなりの広さなので、次の町は肉眼ではとても見えなかった。
だが周りにいる野生の動物の姿はころころと見える。
空には鳥も飛んでいる。
「そういえばさ」
平原を歩いている中、ミハエルがポツリと呟いた。
「どないした?」
歩きながら不知火が答える。
彼はミハエルの隣を歩いている。
その後ろにメルと神楽と黒姫が並んであるいている。
「黒姫、おまえも叶えたい願いがあるから参加してるのか?」
彼からのその問い掛けに
「・・・・・・あぁ、一応な・・・」
黒姫は視線をそらして答えた。
それを見た不知火が
「おまえらにも言ったほうが良さそうやな、黒姫、ええか?」
彼女に了承を求めた。
何かを話すようだ。
「もう仲間なのだ、話して構わぬだろう」
「ほな言うわ」
二人のやりとりに首を傾げるメルだが、ミハエルは真剣な表情で待っていた。
「黒姫はな・・・・・・記憶喪失やねん」
「えっ?」
不知火の言葉に驚くメルだが、またミハエルは真剣で表情を崩さなかった。
一種のポーカーフェイスのような彼。
そうして今度は黒姫自身が口を開く。
「何故ここにいるのか、自分が誰なのか、まったくわからんのだ・・・」
「・・・わかってるのは名前だけなのか」
「いや、名前もわからぬ」
「はっ?」
ミハエルが驚いた。
それもそのはず、皆黒姫と呼んでいるにも関わらず、名前がないというのだ。
さすがの彼もそれがわからなかった。
「この名は、不知火から名づけてもらったものだ」
彼女にそう言われ、なるほどと納得したようだったが
「なんで『黒姫』なんだ?」
そこが気になったので思わず聞いてみた。
すると不知火は待っていましたかのように
「全体的に黒っぽいやろ?で姫様みたいな雰囲気やから黒姫」
と笑って言った。
「そのまんまだな」
「そのまんまだね」
「ぐっ!!」
ミハエルとメルの言葉にグサっと刺さる不知火。
彼なりに良いネーミングだと思っていたのであろう。
「私なりにこの名は気に入っている、だから名は問題ない」
「ほれみぃ!!」
「何勝ち誇ってんだよ・・・」
自分のネーミングセンスを誉められたような気分になったようだ。
それにミハエルは呆れて返した。
「ってことは黒姫の願いって、記憶を取り戻すことなの?」
「そういうことだな」
メルの言うことをさらっと黒姫が返した。
その表情は何故か少し笑っている。
とは言っても良く見ないとわからない程度だが。
「何か記憶の手掛かりはないのか?」
「そうだな・・・あると言えば、このチョーカーぐらいか・・・」
黒姫は首から下げている十字架の物を手に取って見せた。
銀色のそれはとても神秘的な雰囲気が漂っている。
「まっ、そうは言っても今まで手掛かりらしいことはまったくなかったがな」
「うちらも出来る限りの情報を集めてねんけど・・・なんせ黒姫はここの世界の住人かどうかもわからんから・・・」
お手上げ、のような感じで沈む神楽。
その肩でリスのリオが何も気にしてないように頭をかいている。
「なるほどな・・・わかった。じゃあ俺らの方でも情報集めてみるよ」
ミハエルはそう言うと、メルの方を少し向いた。
それを確認した彼女は、自分の親指を少し噛んだ。
「出てきて!昴!!」
メルがそう叫ぶと、地面よりボーンと煙が噴出しそこから
「呼んだ~!?ご主人様!!」
小さな、小鳥のような朱雀が現れた。
「うわっ!可愛い!!」
当然のように神楽はくらいついた。
目がとろけている。
「口寄せ・・・・メルも忍者やったんか・・・」
メルが口寄せしたことにより、不知火の表情が少し暗くなった。
その目は、どこか悲しそうでもある。
「・・・・・・」
それを少し気にかけたミハエルだが、すぐに小さな朱雀、昴の方を向いた。
「昴、アラスタに戻って兄貴達に伝えてくれ」
「何を~?」
「黒姫の事だ、見た目はおまえが伝えて、唯一ある情報は銀色のチョーカーだ」
真剣な表情で言うが、とてもそれだけでは無理がありそうな内容だった。
しかし昴は
「は~い!!じゃあご主人様、行ってきま~す!!」
元気にそう叫び、その場から飛び去った。
「すまんなミハエル、メル」
少し困ったような感じで言うので
「仲間だろ、困った時はお互い様さ」
ミハエルは笑って返した。
その表情はとても柔らかく、どこか和みそうな感じであった。
「そうか・・・」
黒姫は心が安らいだのか、微笑した。
それを見ていた神楽がメルの耳元に行き、呟いた。
「ミハエルってさ・・・もしかしてモテル?」
「うんすっごく!!」
不快なことを聞かれているはずなのに、笑顔でメルは言った。
ミハエルはマルシアやカノンノをはじめ、様々な女性より好感を得ている。
この旅でもモテテいたのであろう。
しかしそれでも彼はメルを悲しませるようなことはしない。
その証拠が今の二人の状態だ。
切れることのない赤い糸、絶えることのない絆。
寿命の長い悪魔なので、それらはより強くなっていく。
「メルは、ミハエルのこと1%も疑ってないんやな・・・」
そのことがどこか羨ましく思う神楽は、チラっと不知火の方を見た。
「ん?なんや?」
「うわあっ!!」
見た瞬間彼と目が合ったので、驚いて飛び退いた。
「神楽?」
「なんでもあらへん!!そやからそんなみんといて!!」
神楽はそう叫び、すぐに不知火とは逆の方を向いた。
その行動にミハエルとメルはぷっと笑っていた。
「なんや一体・・・?」
当然不知火は訳がわからず、頭をかく。
気付いているのか気付いていないのか、彼の心中はわからなかった。
「・・・そうこう言ってるうちに着いたようだ」
黒姫に言われ、4人は我に返り前を向いた。
次の目的地である町の方を。
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