小説喫茶・メル

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町へ戻ったミハエル達は、少女達と共に中央の審査場へ向かった。

「この人達の手当てを頼む」

女性従業員達に、傷だらけの4人を差し出す。

傷に響かないようにゆっくりと地面に寝かせてあげる。

「わかりました。貴方達は合格したようですね」

「あぁ、おっさんに言われた」

ミハエルからそう言われると、女性はにこっと笑い

「では寝床を用意しておりますので、今日はそこでおやすみください。次の審査の内容は明日の朝お知らせします」

「わかった。それと一つ聞きたいんだが」

「なんでしょう?」

表情変えずにミハエルの言葉を黙って待つ女性。

この辺りもやはり訓練されているのであろうか。

「合格出来なかったこの子達は・・・」

「はい失格です」

ミハエルがすべて言い終わる前に、小柄な女性がそう言った。

その言葉を聞いて、メルの側にいた少女が顔を落とした。

「やっぱりそうなのか・・・」

改めてこの予選の難しさを知ったミハエルだった。



寝室と思われる部屋に、6人は集まっていた。

全員で円を描くように座っている。

床はカーペットだ。

「あんた、これからどうするつもりだ?」

自分の正面の位置に座る少女に問い掛けるミハエル。

彼等はこれからのことを踏まえた上で、彼女の事も聞いておこうと思ったのだ。

尋ねられた少女はおずおずと口を開く。

「予選で失格になってしまった以上、私はもうここでただ暮らしていくしかありません・・・」

「ここで?でもここはとてもじゃないが人が暮らせるような環境じゃない気がするが」

ミハエルはもっともと思われる意見を言う。

「確かにね、作物は育たないし、荒れ果ててる、まず人全然いないもんね」

そこにメルが付け足すように言った。

神楽も『うんうん』と言った感じで頷く。

「・・・それでもここは・・・」

少女は少し涙声で、自分の言いたい事を

「私の・・・ 生まれた場所だから・・・」

はっきりと言った。

「・・・・・・」

それを聞いた中で、不知火だけがピクっと眉をひそめた。

他の4人は心を打たれたのか、言葉が出てこない。

「・・・もしかして、あんたがバトルタワーに参加してた理由って」

「・・・・・・」

ミハエルの仮説の言葉に対して黙っている少女。

「ここを・・・昔のような花で活気の溢れたある町に戻したかったからか?」

「・・・・・・・はい・・・」

素直に頷く少女を見て、ミハエル達はまた心打たれそうになった。

こんなにも小さい女の子が、生まれた場所のために危険を侵してまで元に戻そうとしている。

そんな健気さが直に伝わってくる気分だった。

「もし元に戻れば、出ていった人達も・・・帰ってきてくれると思うから・・・」

少女は話ながら、出そうな涙を必死に耐えていた。

身なりからすれば12かそこらの女の子、辛いのも当然である。

「でも・・・」

しかし涙は非情にも

「もう・・・それは叶わない・・・」

両目より、静かに流れ落ちた。

「・・・ッ・・・」

ただそれを苦しい表情で見つめるミハエル達。

メルに至ってはもらい泣きしそうなので顔を伏せている。

そんな中

「いや、まだ叶えれるで」

ただ一人、不知火だけ表情崩さずいた。

「えっ?」

その言葉を聞いた少女は、ポカンとした様子で彼の方を見る。

「どういうことだ不知火?」

良く理解出来ない黒姫が尋ねる。

それに対して不知火は両腕を後ろで組んで話す。

「簡単なことや、俺の願いを、ここを昔のような町に戻して欲しいにすればええことや」

淡々と言う彼に驚く一同。

特に少女が一番驚いていた。

「・・・確かにそうだが、良いのか不知火?」

以前のことを思い出し問うミハエルだが

「前に言ったやろ、俺の願いは、俺にしか叶えられへん・・・」

彼にそう言われ、険しい表情で顔を伏せた。

「不知火・・・」

そんな彼を一番心配しているのはやはり神楽だった。

普段一緒にいるのに、あまり彼のことをわかっていないのではないか?

その気持ちが彼女を余計に辛い気持ちにさせる。

「ほな、そゆことでええかお嬢ちゃん?」

確認するように尋ねる不知火。

いつものおかしな彼の顔に戻っている。

「本当に・・・良いのですか?」

「ええんや、こういった境遇も何かの縁や」

「じゃ・・・じゃあ・・・・」

「決まりやな」

そう言って、不知火は部屋を一人で出ていった。

「・・・・・・」

それを追うようにミハエルも部屋を出る。

そして残された女性陣は

「・・・お腹空いたね、何か食べよう!!」

暗い雰囲気を打破すべく、メルが元気良く立ち上がった。




外は日が沈み、すっかり暗くなっていた。

何もない荒地の町、その中の一本の木と呼べないような棒に背もたれて、不知火がいた。

「おまえ、やっぱり優しいやつなんだな」

そこへミハエルがやってきた。

「やっぱりってなんやねん、俺はいつでも誰に対しても優しいっちゅーねん」

「ふっ・・・」

不知火のいつもの口調に思わず吹き出すミハエル。

そして彼の隣に、同じように木にもたれかかった。

「・・・話してくれとは言わないけど、誰かに話すだけで楽になることもあるんだぜ」

彼のその遠回しの発言に

「相変わらず鋭いな~ミハエルは」

不知火は少し苦笑した。

しかしすぐに表情を戻す。

「俺の願いは・・・おまえのような純粋なもんでなければ、あの子のような凄くええことでもない・・・」

「・・・・・・」

不知火の言葉を黙って聞くミハエル。

頭で何も考えようともせずに。

「ちっぽけで、しょーもないことや・・・」

やや伏せていた顔を上げ、話を続ける。

「それでも・・・絶対に叶えなあかん願いや・・・・・・そやないと・・・みんな・・・」

そこまで言い

「おまえには、 いつか全部話すかもな・・・」

不知火は逃げるように、ミハエルの元から去った。

夜の風が冷たく彼を襲う。

「・・・・・・不知火・・・」

去った方向を見つめるミハエル。

そこに

「ミハエルか」

「黒姫・・・」

黒く長い髪をなびかせた黒姫がやってきた。

「おまえも不知火が気になったのか?」

「いやそれもあるが、夜はいつもこうして外に出るものでな」

「なんでまた?」

さすがの彼も女性の心は上手く読めないようだ。

ただ、またそのようなことを考えた自分に少し嫌気がした。

やはり考え過ぎの癖はなかなか治らない。

「(・・・マルシアの癖移っちまったかな・・・)」

「夜というものは」

彼女の声で我に返る。

「人の脳裏の感覚を敏感にさせる、それによって、記憶が戻りやすくなると思ってな」

そう言いながら、周りの荒地を見つめる黒姫。

メルや神楽とは違う女性らしさを見せる彼女に、ミハエルは少し見惚れた。

「・・・やっぱり、記憶が戻らないのって・・・苦しいか?」

「最初はそう思っていた・・・だが・・・」

決して辛そうな素振りを見せない表情を、ミハエルへと向ける。

「辛いことには慣れた・・・おまえもそうであろう?」

「・・・・・・そうかもな・・・」

黒姫からの問い掛けに対して、微笑して答える。

「俺の母さんが良く言う事なんだけどさ」

「・・・??」

「大切な記憶は、どんなことがあっても決して忘れないもの、頭に出てこなくても、心にちゃんと残ってる・・・ってな」

「・・・・・・」

言葉を失う黒姫。

このような事を聞いたのは初めてなのであろう。

「黒姫の記憶も、頭に出てこないだけで、心にはちゃんとあると思うぜ」

笑顔で言うその表情に

「・・・ふっ・・・ありがとうミハエル・・・」

思わず気が緩み、笑顔を返した。

そうして間もなく、二人と不知火は寝室へと戻った。
















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