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小説喫茶・メル
3
時折流れてくる土埃(ついぼこり)が、たまに目をかすめる。
「しっかし長いな、後どれくらいだ?」
「まだ半分も行ってへんで、3分の1行ってたらええぐらいやな」
ミハエルは先程から両手を後ろで組んでだるそうにしている。
その隣で運転している不知火は特に変わった様子はなく、ただ前を見つめている。
「鉄板焼きって言ったらやきそばでしょ!?」
「なにゆうてんねん!鉄板焼きゆうたらお好み焼きや!!」
後部座席では女性陣の、特にメルと神楽の会話が耐えなかった。
「アリアはどっち派!?」
「黒姫は!?」
メルと神楽がそれぞれ聞く。
それに対して
「えっ・・・えっと・・・」
「どちらも好きだな私は」
おろおろするアリアに、はっきりと言う黒姫。
実はもう日が暮れかけているのだ。
つまり途中の休憩を挟んでいても、メル達はずっと話しているのだ。
「ふぅ~・・・暇だ・・・」
さすがのミハエルもここまで何もないと逆に疲れるのであろう。
不知火とたまに少しの会話をするが、すぐにメル達が乱入してきて彼女達の会話になってしまう。
そんな彼を救うように
「今日はこの辺でキャンプしよか」
不知火が車を止めた。
それを聞いたミハエルは
「よし、セトラ・・・じゃなかった、テントの準備は任せろ!!」
一気に元気が出、車から飛び降りた。
ちなみにセトラはミハエルの世界の言葉でテントを表すものなので、間違ってはいない。
「ミハエル元気やな~、よっぽど暇やったんやな」
「たぶんおまえらのせいでもあるで・・・」
ミハエルが一人テキパキとテントを組み立てるのを見て、不知火は少し可哀想に思った。
「じゃ、テントは男どもに任せて、私らはご飯作ろっか」
メルはそう言うと車より、大きな袋を取り出した。
中にはたくさんの食料が詰め込まれていた。
約一日程度の道のりだが、6人ともなるとやはりかなりの量がいる。
その上、調理するための少しの用具も必要になる。
それらを、普段料理している彼女の計算結果がこれだ。
「今日のメニューはと・・・」
そうして各々作業に取り掛かった。
しばらくして、気がつくとすっかり夜になっていた。
夜風が良い具合に6人を癒してくれる。
「今日のご飯はオムライスだよ~!」
メルと神楽が、ミハエルが立てておいたテーブルに皿を並べていく。
ふんわり膨らんだ卵から、食をそそる匂いが漂う。
お皿の端に、通常の半分程度の大きさのジャガバターが添えてあった。
「ソースはお好みでお願いします」
アリアも慣れた手付きでテーブルに、ケチャップとデミグラスソースを置いた。
「美味そうやなぁ!食べてえぇか!?」
真っ先に席につき、置かれているスプーンを持つ不知火。
その隣にミハエルがゆっくりと座った。
「良いよ~」
紙コップにお茶を注ぎながら、メルがそう言った。
それを聞いた途端
「いただきま~す!!」
不知火はオムライスに食らいついた。
「さて、俺も食うか」
ミハエルもスプーンを持ち食べようとする。
そこに
「もらい!!」
不知火がミハエルの皿より、ジャガバターをさらい取った。
「なにしてんだてめーーーーー!!」
当然ミハエルが不知火にがっつりついた。
彼の皿からはジャガバターが綺麗さっぱりなくなっている。
「吐け!俺のジャガバター返せ!!」
「ぐえっ!ミファヘル・・・くるしー・・・」
「あっあのミハエルさん・・・まだありますから・・・」
いつも以上におろおろした様子でミハエルを止めようとなだめるアリア。
「ごめんなぁ~、不知火良く人の物取る癖あるから~」
そう言いながら不知火の隣に座り、自分の分を食べ始める神楽。
さらにその隣に黒姫、アリアと座り、メルはミハエルの隣にいき、円となった。
夜らしく一同のすぐ近くでは、焚き火が燃えている。
そしてそこより少し離れた所にテントがあった。
「ったくおまえは・・・」
ようやく不知火の首より手を離し、席につくミハエル。
「そない怒らんでもえぇや~ん・・・これめちゃ美味いんやから」
言いながら今度は神楽の皿へとスプーンを伸ばしていく。
「リオ~」
カプ
「いたぁ!!」
神楽の皿のすぐ側で、ジャガイモを頬張っていたリオが、不知火の指に噛み付いた。
それにより思わず飛び跳ねた不知火。
「まだまだ甘いで~不知火」
パクっと笑顔で一口頬張りながら言う。
その光景を見てアリアは笑っていた。
「ん?これ作ったの誰だ?」
ようやくオムライスを口に入れたミハエルは、いつもと味が違うことに気がついた。
いつも食べている味、メルが作る物と違うのである。
「オムライス作ったのは黒姫だよ~」
パクパク食べながらメルがそう言うと
「えっ・・・?黒姫が?」
ミハエルは何故か変な顔になった。
「どうした?私が作るのは変か?」
「あっいや・・・俺の姉が料理下手だからつい・・・」
マルシアの作る料理を知っているミハエルにとって、お姉さんが作る料理に違和感を感じているようだ。
そんな中、ようやく落ち着いて食べていた不知火が
「・・・こんだけ料理美味いってことは、黒姫実は結婚しとるんとちゃうか?」
平然と、さらっとそう言った。
「はい!?んなアホな!?」
思わず吹き出しそうになった神楽は、激しくツッコンだ。
アリアも驚いた表情になっている。
「いやでもそうかもしれないぞ、見た感じいい年だし、なんか雰囲気的にも貫禄があるしな」
ミハエルも不知火の疑問に賛成だった。
一方肝心の黒姫は
「ふむ・・・案外そうなのかもしれぬな」
落ち着いて、普段と変わらぬ表情で言った。
彼女はあまり慌てることはないようだ。
特に照れた様子もない。
「ってことは、今頃旦那さんは必死に黒姫のこと探してるかもね」
励ましのつもりでメルが言ったので
「それだと嬉しい限りだな」
黒姫の表情が少し緩んだ。
ここまで言われるとさすがに照れるのか。
「ふぅ~・・・食った食った」
話している間にミハエルは食べ終えていた。
そうして後片付けに向かった。
深夜、月の光が暗い荒野を明るく照らす中
「・・・・・・よっと・・・」
車の後部座席で寝ていたミハエルが起き上がった。
その前の運転席では不知火が寝ている。
テントには女性陣が入っているようだ。
「ゆっくり・・・と」
車から飛び降り、一人その場から離れていく。
しばらく歩いたところで
「ここなら遠慮なく出てきて良いぞ」
誰もいないはずの場所で、そう言った。
すると
「おっかしいな~・・・気配ちゃんと消せてたと思うんだが」
岩陰より、一人の男が出てきた。
少し冷える荒野の夜に似合わぬ、タンクトップのような格好をしており、ミハエルより背が高く、同じ金色の短髪が風にさらされている。
肩に大きな剣のような物を担いでいる。
「本当に消してたのか?闘気がビリビリ感じられたぜ」
その男を前にして、ミハエルは相変わらず落ち着いた様子で話す。
「へぇ~・・・ってことはおまえも、やる気満々か?」
男のその言葉を聞き
「確かめるか?」
ミハエルは二ッと笑った。
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