小説喫茶・メル

小説喫茶・メル



街の入り口には看板があり、そこにはラストタウンと書かれてあった。

これはこの街が予選最後の場所だからであろうか。

「(ってことはここもバトルカンパニーが・・・)」

占拠している、ミハエルはそう思った。

街の中はとても広く、まず中央の噴水広場へ向かった。

そこより辺りを見渡すと、いかにも高級そうに見える飲食店やお土産屋さん、さらにはエステと書かれた店や、トレーニングジムなど、かなり賑やかなものだ。

当然人も大勢おり、朝早いというのに皆忙しそうだ。

「さてと、ほな早速審査場に」

場所を知っているのか、足を進めようとする不知火だが

「ねぇ神楽!!あれ美味しそう!!」

「ホンマやな!いこか!!」

「アリア!黒姫も!!」

「へっ・・・あっはい」

「ふっ・・・」

女性陣は風のようにその場から消えた。

「・・・・・・」

呆然と立ちすくむ不知火。

そんな彼の肩をミハエルがポンと叩いた。

「まっ、慌てる必要はないし、観光も良いんじゃないか?」

「・・・・・・ふぅ~・・・まぁええか・・・」

諦めたのか、軽くため息をついた。

「俺等も行こうぜ」

ミハエルに言われ、二人もその場を後にした。



レストランの他に、軽食専門の屋台の姿も見かける。

「はいおまちどうさま」

メル達はそんな中の一つ、リンゴ飴の店にいた。

割り箸のような木の棒に刺されたリンゴの飴を人数分受け取り、皆に配る。

そしてまず神楽が軽くぺロっと舐めた。

「かぁ~、やっぱ美味いなぁこれ!」

「はい♪」

アリアも笑顔でペロペロと舐めている。

黒姫も少しずつ、その美味しさを味わっているようだ。

「はむ!!」

しかしメルは、激しく飴を噛み

「おばちゃんもう一つ!!」

おかわりを頼みに言った。

「食べんのはや!!」

まだ舐めている段階だというのにメルの異常なまでの食べるスピード。

黒姫はそんなメルに苦笑し、アリアは呆気に取られていた。

「よっしゃー!次いってみよう!!」

新たにもらったリンゴ飴を持ち、完全に食べ歩きを楽しんでいるメルだった。




一方その頃男性陣は、喫茶店のようなところにきていた。

オープンテラスと思われる個所に座っている。

そこからは街の様子が良く見える高さだった。

「はぁ~・・・何が悲しくて朝っぱらから男二人で喫茶店でコーヒー飲んでるんやろ・・・」

目の前にあるカップに注がれたホットコーヒーを見つめながら、ため息をついて言った。

彼等の周りには親子連れや、カップルの姿も見かける。

「なんだ、神楽と二人っきりのが良かったか?」

ちゃかすように言うミハエルだが

「そんなんとちゃうて・・・」

不知火はあっさり返した。

照れた様子もないので、本心なのだろうか。

「・・・なあ不知火、おまえ神楽の事どう思ってるんだ?」

ミハエルからの、少し真剣と思われる問い掛けに不知火は特に微動だにしなかった。

「・・・・・・そうやな~・・・」




「神楽さんは不知火さんが好きなのですか?」

「ブーーーーーーー!!」

真顔でアリアにそう言われ、神楽は口に含んでいたオレンジジュースを吐き出した。

当然それにより周りの人は驚き、何事かとメル達の方を見た。

「・・・大丈夫?」

凄いリアクションでむせているため、背中をさすってあげるメル。

黒姫は相変わらず落ち着いて、まだ飴を舐めていた。

「アッ・・・アリア・・・・・・自分ストレートに聞いてくるんやな・・・」

ようやく落ち着き、口の周りのジュースを拭く。

「ごっ・・・ごめんなさい・・・」

普段のようなおろおろしたアリアになった。

その幼く可愛い仕草に、近くを歩いていた何人かの少年が見惚れた。

「でまあ・・・その・・・・・・好きって聞かれると・・・好きなんかなぁ~・・・」

徐々に小さい声になるので、最後の方は独り言にしか聞こえない。

「なんていうかな・・・」

しかし今度は一定の声で、話始める。

「メルと黒姫にもゆうたんやけど、不知火はうちの恩人やし、うちにいろんな世界を見せてくれた・・・」

「・・・・・・」

前に話してもらった内容を再び聞くのを、どこか申し訳なく思うメル。

「まだ出会って1年ぐらいやけど・・・うちは不知火の側にずっといたい・・・・・・やっぱり・・・好きやからかな・・・」

そんな健気な彼女の言葉を聞き

「・・・素敵ですね・・・とっても」

アリアは心を打たれた。

そして黒姫は険しい顔つきで黙っており、メルの方も同じような感じであった。

「それじゃあ」

アリアは視点をメルへと移した。

「メルさんはミハエルさんが好きですか?」

「うん!だ~いすき!!」

神楽と違い、即答したメルを見て

「ふぁ~・・・そっ・・・そうですか・・・・・・」

逆に驚かされたアリアだった。

「ホンマメルが羨ましいわ・・・」

神楽は心底そう思っていた。





「腐れ縁みたいに最初は思とったけど・・・今では神楽が隣におるのが当たり前になっとるからな・・・」

カップの中のコーヒーを見つめながら、不知火はそう言った。

その声は普段の明るいものではなく、暗い雰囲気の彼だ。

「・・・・・・」

それをミハエルはコーヒーを飲みながら黙って聞く。

「そやけど・・・」

不知火の声のトーンがさらに低くなった。

「どうせなら・・・もっと昔から出会いたかった・・・・・・」

「・・・・・・どういう意味だ?」

カップを置き、下を向いている彼に尋ねる。

「ミハエル」

「なんだ?」

不知火は下げていた顔をようやく上げた。

「運命って、ホンマに変えられると思うか?」

いつも見ている、明るくも暗くもないその表情からは、寂しさのようなものを感じた。

それに驚きながらも、真剣な顔つきで口を開く。

「・・・そりゃ・・・変えれるんじゃないか?」

住んでいた環境が環境なので、その手のことを疑ったことはないミハエルだが

「変えた先に待ってる未来は・・・自分が望んだものになるんか?」

不知火の、彼のとてつもない含みがこもった言葉を聞き、複雑になった。

「・・・・・・」

答えることなく、ただ彼の話を聞く。

「どんだけ変えても、どんだけ抗っても・・・結局は終わりのない螺旋階段を回り続けてるだけ・・・そんな気がするんや・・・」

「・・・不知火・・・おまえ・・・・・・」

そこまで言って、次に何を言えば良いかわからなかった。

「救いの手が・・・・・・ まやかしってのも良くある話やで・・・」

不知火はコーヒーを飲み干し、席を立った。

そして一人先に、出口へと向かった。

「・・・・・・どこの世界でも・・・辛い思いをするのは俺達子供ばかりなのかな・・・母さん・・・」
















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