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小説喫茶・メル
5
街の入り口には看板があり、そこにはラストタウンと書かれてあった。
これはこの街が予選最後の場所だからであろうか。
「(ってことはここもバトルカンパニーが・・・)」
占拠している、ミハエルはそう思った。
街の中はとても広く、まず中央の噴水広場へ向かった。
そこより辺りを見渡すと、いかにも高級そうに見える飲食店やお土産屋さん、さらにはエステと書かれた店や、トレーニングジムなど、かなり賑やかなものだ。
当然人も大勢おり、朝早いというのに皆忙しそうだ。
「さてと、ほな早速審査場に」
場所を知っているのか、足を進めようとする不知火だが
「ねぇ神楽!!あれ美味しそう!!」
「ホンマやな!いこか!!」
「アリア!黒姫も!!」
「へっ・・・あっはい」
「ふっ・・・」
女性陣は風のようにその場から消えた。
「・・・・・・」
呆然と立ちすくむ不知火。
そんな彼の肩をミハエルがポンと叩いた。
「まっ、慌てる必要はないし、観光も良いんじゃないか?」
「・・・・・・ふぅ~・・・まぁええか・・・」
諦めたのか、軽くため息をついた。
「俺等も行こうぜ」
ミハエルに言われ、二人もその場を後にした。
レストランの他に、軽食専門の屋台の姿も見かける。
「はいおまちどうさま」
メル達はそんな中の一つ、リンゴ飴の店にいた。
割り箸のような木の棒に刺されたリンゴの飴を人数分受け取り、皆に配る。
そしてまず神楽が軽くぺロっと舐めた。
「かぁ~、やっぱ美味いなぁこれ!」
「はい♪」
アリアも笑顔でペロペロと舐めている。
黒姫も少しずつ、その美味しさを味わっているようだ。
「はむ!!」
しかしメルは、激しく飴を噛み
「おばちゃんもう一つ!!」
おかわりを頼みに言った。
「食べんのはや!!」
まだ舐めている段階だというのにメルの異常なまでの食べるスピード。
黒姫はそんなメルに苦笑し、アリアは呆気に取られていた。
「よっしゃー!次いってみよう!!」
新たにもらったリンゴ飴を持ち、完全に食べ歩きを楽しんでいるメルだった。
一方その頃男性陣は、喫茶店のようなところにきていた。
オープンテラスと思われる個所に座っている。
そこからは街の様子が良く見える高さだった。
「はぁ~・・・何が悲しくて朝っぱらから男二人で喫茶店でコーヒー飲んでるんやろ・・・」
目の前にあるカップに注がれたホットコーヒーを見つめながら、ため息をついて言った。
彼等の周りには親子連れや、カップルの姿も見かける。
「なんだ、神楽と二人っきりのが良かったか?」
ちゃかすように言うミハエルだが
「そんなんとちゃうて・・・」
不知火はあっさり返した。
照れた様子もないので、本心なのだろうか。
「・・・なあ不知火、おまえ神楽の事どう思ってるんだ?」
ミハエルからの、少し真剣と思われる問い掛けに不知火は特に微動だにしなかった。
「・・・・・・そうやな~・・・」
「神楽さんは不知火さんが好きなのですか?」
「ブーーーーーーー!!」
真顔でアリアにそう言われ、神楽は口に含んでいたオレンジジュースを吐き出した。
当然それにより周りの人は驚き、何事かとメル達の方を見た。
「・・・大丈夫?」
凄いリアクションでむせているため、背中をさすってあげるメル。
黒姫は相変わらず落ち着いて、まだ飴を舐めていた。
「アッ・・・アリア・・・・・・自分ストレートに聞いてくるんやな・・・」
ようやく落ち着き、口の周りのジュースを拭く。
「ごっ・・・ごめんなさい・・・」
普段のようなおろおろしたアリアになった。
その幼く可愛い仕草に、近くを歩いていた何人かの少年が見惚れた。
「でまあ・・・その・・・・・・好きって聞かれると・・・好きなんかなぁ~・・・」
徐々に小さい声になるので、最後の方は独り言にしか聞こえない。
「なんていうかな・・・」
しかし今度は一定の声で、話始める。
「メルと黒姫にもゆうたんやけど、不知火はうちの恩人やし、うちにいろんな世界を見せてくれた・・・」
「・・・・・・」
前に話してもらった内容を再び聞くのを、どこか申し訳なく思うメル。
「まだ出会って1年ぐらいやけど・・・うちは不知火の側にずっといたい・・・・・・やっぱり・・・好きやからかな・・・」
そんな健気な彼女の言葉を聞き
「・・・素敵ですね・・・とっても」
アリアは心を打たれた。
そして黒姫は険しい顔つきで黙っており、メルの方も同じような感じであった。
「それじゃあ」
アリアは視点をメルへと移した。
「メルさんはミハエルさんが好きですか?」
「うん!だ~いすき!!」
神楽と違い、即答したメルを見て
「ふぁ~・・・そっ・・・そうですか・・・・・・」
逆に驚かされたアリアだった。
「ホンマメルが羨ましいわ・・・」
神楽は心底そう思っていた。
「腐れ縁みたいに最初は思とったけど・・・今では神楽が隣におるのが当たり前になっとるからな・・・」
カップの中のコーヒーを見つめながら、不知火はそう言った。
その声は普段の明るいものではなく、暗い雰囲気の彼だ。
「・・・・・・」
それをミハエルはコーヒーを飲みながら黙って聞く。
「そやけど・・・」
不知火の声のトーンがさらに低くなった。
「どうせなら・・・もっと昔から出会いたかった・・・・・・」
「・・・・・・どういう意味だ?」
カップを置き、下を向いている彼に尋ねる。
「ミハエル」
「なんだ?」
不知火は下げていた顔をようやく上げた。
「運命って、ホンマに変えられると思うか?」
いつも見ている、明るくも暗くもないその表情からは、寂しさのようなものを感じた。
それに驚きながらも、真剣な顔つきで口を開く。
「・・・そりゃ・・・変えれるんじゃないか?」
住んでいた環境が環境なので、その手のことを疑ったことはないミハエルだが
「変えた先に待ってる未来は・・・自分が望んだものになるんか?」
不知火の、彼のとてつもない含みがこもった言葉を聞き、複雑になった。
「・・・・・・」
答えることなく、ただ彼の話を聞く。
「どんだけ変えても、どんだけ抗っても・・・結局は終わりのない螺旋階段を回り続けてるだけ・・・そんな気がするんや・・・」
「・・・不知火・・・おまえ・・・・・・」
そこまで言って、次に何を言えば良いかわからなかった。
「救いの手が・・・・・・
まやかし
ってのも良くある話やで・・・」
不知火はコーヒーを飲み干し、席を立った。
そして一人先に、出口へと向かった。
「・・・・・・どこの世界でも・・・辛い思いをするのは俺達子供ばかりなのかな・・・母さん・・・」
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