小説喫茶・メル

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裏口なだけあってしばらく階段ばかり続き、30階まで上るとようやく大きなフロアに出た。

警報が鳴り響いていたせいか、誰一人姿はなかった。

中央にある噴水の水の音がよく聞こえる。

周りにはベンチや自動販売機、そしてさらに上へと進む階段がある。

「・・・行くか」

そう言い、二人は階段へと足を進める。

「・・・・・・ヘスティア・・・」

小さな、しかもどこか悲しそうな声が、フロア中に響いた。

そして二人の目の前を、黒い影が通り過ぎた。

バサバサと、羽根を羽ばたかせる音が聞こえる。

「あれは・・・・・・悪魔の・・・羽根?」

噴水の真上にその影が向かったので見てみると、黒い羽根に包まれた何かがいた。

それはミハエル達悪魔が持つ羽根とほとんど同じだった。

「ようやく目覚めたんだね・・・ヘスティア」

羽根がしゃべったかと思うと、それが徐々に開いていきそこから

「数百年ぶりだね・・・」

優しい表情を持つ、美青年が現れた。

ヘスティアと同じような黒い服装に灰色の髪、男だがセミロングといった感じであろう。

「・・・ヘスティア、知り合い・・・か?」

「・・・・・・いや・・・記憶が戻っておらぬからなんとも言えぬが・・・・・・知っている・・・気がする・・・」

初めて会ったはずなのに、ヘスティアはそんな気がしなかった。

無意識のうちに、体が教えてくれている。

自分は、この者を知っていると。

「・・・・・・ミハエル君と言ったね?」

青年、と言っても立派な大人にも見える彼は、ミハエルの方を見て優しく微笑んだ。

「あぁ・・・」

警戒しながら曖昧な返事をする。

ここで自分達の前に現れたと言う事は少なくとも味方ではない。

「悪いけど・・・席を外してくれないかな?」

「えっ?」

「ヘスティアと・・・二人っきりにさせて欲しい・・・・・・彼女を傷つけるようなことはしないよ」

一瞬、何を言っていると言った気分になったが、彼の目を見て、嘘は言っていないと感じ取った。

数百年生きているミハエルにとって、これぐらいの判断は容易だった。

「・・・ヘスティア・・・」

だが自分だけの判断で進めるわけにはいかない、彼女の反応を求める。

「・・・先に行ってくれ・・・どうやらこの男・・・・・・・・・私にとって何か特別な気がする・・・」

彼女の表情は真剣だった。

ただ一点、黒い彼の方を見つめている。

「おまえがそう言うなら・・・でも・・・無茶はするなよ?」

「心配してくれてありがとう・・・おまえは、メル達を助けることだけに集中するが良い」

「・・・あぁ、じゃあ行くよ」

ミハエルは二人のことを少し気にかけつつ、階段を上って行く。

それを黒い彼は横目でチラっと見、上りきったのを確認するとヘスティアに向き合った。

「・・・最初に教えて欲しい・・・おまえは・・・・・・誰だ?」

真っ先に聞きたいことを尋ねる。

それを聞いた彼は少し沈黙し、ゆっくりと口を開く。

「ヘスティア、君は僕が好き・・・愛している女性だ・・・そして僕は・・・」

そこまでの時点でヘスティア自身驚いたが、彼はそのまま続ける。

「君が愛していた男・・・アルセウスだよ・・・」

彼のその言葉に、彼女は頭の中が真っ白になった。





ミハエルはそれから10階さらに上った。

そこはまた似たようなフロアだった。

噴水がないぐらいである。

ここが最上階なのか、階段が見当たらない。

代わって奥に扉が見える。

だがその扉の前に

「・・・やっぱりあんたか・・・」

以前ミハエルと戦い、アリアを連れさらった男。

「・・・・・・来たか・・・カオスが目をつけている青年・・・」

カオスの方翼、シグマが待ち構えていた。
















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