小説喫茶・メル

小説喫茶・メル



お互いかなりのダメージを受けていた為、話し込んでいたとは言えその傷は癒えない。

だからこそ、次で決めようと言うのだ。

(・・・風水裂破はさっき一発放っちまったから、残りは後一発……)

修得した時より修行を積んだので、自分一人でコントロールは出来るようになったものの、それでも二発撃つとすべての力を使い切る。

強い技ほど当然そのリスクも大きかった。

(けどおっさんを倒すにはこれしかねぇ、体ぶっ壊れてでもやってやる)

覚悟を決め、右手に水を、左手に風を集め始める。

その間じっと佇んでいたシグマは

「・・・・・・」

無言で、ゆっくりと右腕に風を纏わせる。

それは徐々に大きな渦となり、その先端、彼の右手付近が

【龍風拳】

龍の顔となった。

「俺が唯一、名前をつけた技だ」

自分の最高の技と遠回しに言ったのを、ミハエルは当然理解した。

渦巻いている風から、とてつもないエネルギーを感じ取っているからでもある。

(凄い風だ・・・・・・あれをまともにくらったら、体がえぐられちまうな……)

そう考えるが、不思議と恐怖はなかった。

強い者と戦うことを望んでいる彼にとって、相手がより強い程、その炎は大きく燃え上がる。

そんな彼に恐怖心など皆無に等しかった。

(父さん・・・母さん……)

ハルとルミス、二人の姿を思い浮かべる。

「俺に力を!!」

叫んだ矢先、シグマが動いた。

真っ直ぐと風に乗り猛スピードで迫ってくる。

「いくぞーーーー!!!!」

迎え打つように、同じく突っ込む。

そしてミハエルは両手に合わさった水と風の玉を、シグマは風の龍を放った。

それらがぶつかり合うと

ドーンと、まず激しい地響きが起こり、次に彼等の周りが水と風によって渦巻いた嵐となり、さらに最上階なせいか屋根が吹き飛びそうになり、残っていた窓ガラスはすべて

吹き飛んだ。





その時下では

「なに!?この揺れ!?」

戦闘を終えたレイミが、激しい揺れのため尻餅をついた。

「これは・・・・・・ミハエル……」

すぐに察したマルシアは、ゆっくりと真上を見上げる。

そして上空より降って来るガラスの破片を、シレーヌを纏う事によりレイミと共に防いだ。





最上階の奥の部屋

ミハエルとシグマが戦闘を行っている中、二人の少女が向き合っていた。

「・・・あなた今・・・なんて言ったの?」

メルは目の前の少女が発した言葉を、理解したくなかったのか信じられなかったのか、思わず聞き返した。

「ふふふっ・・・聞こえなかったの?僕は、藤林メルだよ?」

自らをメルと名乗る少女は、不敵に微笑みそう言った。

その表情と口調は冷たく、見るものを凍りつかせそうなものだ。

「なっなに言ってるのよ!?藤林メルは私だよ!?変なこと言わないでよ!!」

最初はただの変体かと思っていたメルだが、容姿だけでなく声まで一緒なので、気味が悪いと感じる。

どうして自分そっくりの者がいるのか?それが気になって仕方がなかった。

そんな彼女に向かって

「・・・君は本当に、藤林すずの娘だと言い切れるの?」

メル?は今度は怖い表情で言い放った。

「・・・えっ?」

彼女の言葉に、メルはポカンとなる。

彼女はミハエルやマルシアのように感が鋭い訳ではない、その為後の事を考えたり予想するのは苦手だ。

「本当の娘である僕が、ある理由で両親の元から離れることになり、その穴埋めとして、どこの誰かもわからない君が、藤林すずとカムルの子供となった」

そのまま間をおかず、メル?は続ける。

「子供が欲しかった二人にとって、子供ならば誰でも良かった、そうは思わないかい?」

彼女のその発言をすぐに理解したメルは

「ふざけないでよ!!ママとパパは私を大事に育ててくれた!血だってちゃんと繋がってる!適当なことしゃべるな!!」

激しい怒声を上げた。

部屋中に彼女の声が響き渡る。

だがメル?はそれに怯むことなく、それどころかクスッと笑った。

「仮に二人が君を育ててくれてたとしても、それは仮初(かりそめ)で血だって君自信が確認したわけじゃないだろう?」

そう言われメルは

「そっ・・・それは……」

言葉に詰まってしまった。

頭が良い方でない彼女にとって、このような事を言われるとしばらく考え込んでしまう。

それを狙ったかのようにメル?はさらに口を進める。

「本当の娘の僕が君の前に現れた時点で、君の居場所はもうないよ」

「・・・ッ!?」

メルは思わず唇を噛みそうになり驚いた。

「あっそうだ」

何を思ったのか、突然また不敵に笑い始める。

そしてメルの方を向き

ふふっ・・・ミハエルは、僕がもらっちゃおうかな~?

はっきりと、言い放った。

数秒間沈黙が訪れ

「そっ・・・それだけはダメーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

メルが再び大声を上げ、右手に炎の短刀【息吹】を出現させ彼女に向かって行く。

しかし、メル?の笑い声がまた聞こえたかと思うと

「!?」

「遅いよ」

メルの首元に、彼女が背後よりクナイを添えていた。

「あっ・・・・・・あっ・・・あぁ……」

声にならない声を上げ、ボロボロと涙が両目より零れ落ちていく。

「はははっ、可愛いね~・・・・・・どこかの誰かさん」

「うっ・・・・・・うわぁああああああーーーーーーーーーーーー!!!」

メルはただ、叫ぶしかなかった。

頭の中がパニックになり、体を赤ん坊のように丸め蹲る。

そんな彼女を、メル?は不敵に微笑み見下ろしていた。
















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