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4
不知火達が泊まる予定の宿。
その真上、屋根に
「ふふふっ、私は知ってるです」
一人の小さな女の子の姿があった。
濃い目の紫のショートヘアーにパッチリとした目をしている可愛い顔。
その割りに服はジャージのような地味な物だ。
外見から察するに10歳そこら、いっていても12歳程度であろう。
少女は屋根の上で一人でぶつぶつしゃべっていた。
「奴等は男二人に女六人の集団です、その内男一人に女一人がぐったりとの報告も聞きましたです」
小声なので下にいる人達には聞こえないが、どう見ても怪しい姿である。
「そして赤髪の男、橙色の女、桃色に黄緑に黒い髪の女どもは皆外出中・・・・・・つまり!!」
急に立ち上がり、片腕を高く上げた。
「今宿にいるのは、倒れている神楽と言う女一人なのです!!」
その大きな声に、当然町人は気付き足を止める。
しかし子供が遊んでいると思い込み、特に気にもせず再び足を進め始めた。
それにニヤッと笑った少女は、ゆっくりと神楽が寝ている部屋の窓に手をかける。
キィーと窓を開け、中へと侵入した。
「潜入成功なのです!!」
満面の笑みで叫び、ガッツポーズを決めたが
「・・・・・・」
その様子を一人の男に見られていた。
ドアの隣の壁にもたれて座っている美形の容姿の男、スイに。
彼はマルシアが外出すると言うので、一人神楽の守りをしているのだ。
「・・・・・・部屋を間違えましたです~……」
「マテ」
忍び足で外に出ようとしたが、勿論のことスイに止められ、ビクッとなる。
そしてすぐに、まるでネズミのように部屋の隅に向かった。
「おっ・・・おかしいです・・・・・・仲間の数が合わないです~・・・誰ですかあの男は~……?」
不知火達が帰る際までのことしか知らないのか、スイの存在がわからなかったようだ。
「いやでも・・・侵入事態は成功したです・・・あんなすぐにエッチィことしそうな男一人ぐらい……」
「聞こえてるぞ」
「はにゃっ!?」
独り言を聞かれた驚きと、的確なツッコミに思わず飛び跳ねた。
どうにも忙しい少女である。
そんな彼女を半分おもしろがって見ていたスイだが、急に表情が強張った。
「君みたいな可愛いお嬢さんまで、バトルカンパニーのメンバーなんだな」
だが少女はその鋭い声に怯むことなく彼に向き合う。
「ふっ!その通りなのです!私はバトルカンパニー、ヤイバ様の側近のツルギと言う者なのです!!とは言え、あなたみたいな奴には名乗る名はないです!!」
そこまで言い、スイが無言なので脳裏を逆再生させる。
「・・・・・・!?」
「今名乗ったよな……?」
少女、ツルギは頭を両手で抱えその場に座り込んだ。
綺麗な髪をクシャクシャかきむしり、声にならない声を上げる。
(・・・・・・カンパニーってこんな奴等ばっかなのか?)
かなり警戒していたスイは、当然のこと呆然と頬をかいていた。
しかし
「ぷぅ~!さっきから私を小バカにして許さないです!表へ出ろですぅ!!」
彼女の雰囲気がガラッと変わったので、表情を戻した。
目つきが鋭くなり、わずかながらの、本当に彼にしかわからない程の水を発生させる。
これは彼の警戒信号のようなものである。
そして言われた通り表へと出、ツルギに案内されるまま町のはずれへ向かう。
また神楽を放置する訳にも行かない。
それをわかっているスイは、部屋に先程出した水を置いておいた。
水は徐々に、彼そっくりの姿となり神楽の側へつく。
これが彼なりの守りの技だった。
町外れなので人通りはないに等しい。
それを見透かしたように、ツルギは闘気を剥き出しにしていた。
「私を怒らしたら怖いのです!あんたなんかボッコボコのギッタンギッタンにしてやるです!!」
そう言い放つ彼女とは違い、スイは落ち着いている。
ミハエルとは違い、やはり熱血ではない。
「君のその様子からして、ヤイバって奴も相当な実力の持ち主みたいだな」
「あったり前です!ヤイバ様はカオスの方翼、あのシグマ様と同等!いやそれ以上の実力なのです!!」
勢いで叫び、また思考を逆回転させる。
「はぅわ~・・・・・・また秘密をしゃべってしまったですぅ~……」
(・・・・・・扱いやす~……)
今までこの手の女の子(メルも含む)と出会ってきたスイにとって、ツルギはとても扱いやすかった。
地面で頭を抱えゴロゴロしている彼女を、やや呆れ顔で眺める。
「どうせ一人になった神楽を狙いに来たんだろ?」
「はにゃ!?狙いまで読まれたです!?ってはぅわ!!また言っちゃったのです!!」
ツルギは叫んだり悩んだりと、闘気はあるがとても話に聞くヤイバの側近とは思えなかった。
その為、片手で頭を押さえ口を開く。
「悪いこと言わないから帰りな、俺は女性を傷付けたくないしな」
スイの険しく、しかし柔らかな声を聞いたツルギは
「隙ありですぅ~!!」
右手を彼へと向けた。
「!?」
気がつくと、スイの髪が少し焦げている。
クールな表情で焦げた部分をいじり、彼女へと視線を戻した。
「油断したのです!私の【花火剣】で黒焦げにしてやるです~!!」
ツルギはニヤッと笑い、指先にライター程の火を灯す。
そしてそれを一閃、彼の後ろのドラム缶に向けて放った。
するとドラム缶は鋭く切り裂かれ、裂かれた箇所がボッと発火。
「どうだです!?降参して大人しくやられるなら今の内なのです!!」
自信満々に微笑み叫ぶツルギ。
それを険しい顔つきで見つめていたスイは
「・・・・・・ガイさん直伝」
ゆっくりと重心を低くし、彼女に聞こえるかわからない程度の声で呟いた。
その瞬間
【弧月閃】
「・・・・・・えっ?」
ツルギは何が起こったか一瞬わからず、しかし徐々に体中、特に胸辺りに痛みを感じ
「う・・・・・・そ……」
静かに、血は流さず倒れた。
そのすぐ側でスイは
「峰打ちとは言え、女性を斬るのは気分が悪いぜ……」
黒い光を発している刀、黒刀を鞘へとしまった。
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