小説喫茶・メル

小説喫茶・メル




町から少し離れた所にある山道。

と言っても緑はあまりなく、岩山と言った方が妥当であろう。

そこの山頂に、一軒の民家があった。

中には2つのベットと机、一つのタンスとキッチンだけという寂しいものだ。

ベットの上に、先程までスイ達の元にいた

「・・・・・・ふぅ~……」

ヤイバと、少年サヤの姿があった。

窓を開け煙草を吸うその姿は実に落ち着いている。

そしてその隣でベットでは、一人の少女が眠っていた。

少女は少しずつその目を開け

「ヤイバ・・・様?」

自分の主の姿を確認した。

「やっと起きたかツルギ」

ヤイバは頭がボォーとしている少女、ツルギの方を見やる。

その間ツルギは何が起こったのかを思い出すために脳裏を検索していた。

「・・・・・・はっ!?そういえばあの男は!?私服乱れてないですか!?」

慌てて自分の体を調べ、異常がないか確かめる。

「安心しろ、そういうことは後10年は先だ」

少し苦笑しながら、煙草を灰皿へ置いた。

それを聞いたツルギは

「ぷぅ~!そんなに子供じゃないのです!!」

頬を膨らませ顔を赤らめた。

「へっ、夜一人でトイレ行けないようじゃまだ子供だぜ!!」

ヤイバのすぐ側で座っているサヤが、鼻を軽く鳴らし叫んだ。

見た感じは二人とも同年代に見える。

「うるさいのです!!おねしょする奴に言われたくないのです!!」

「なんだとこの貧乳!!」

「ムキィー!!いちいち気に障ること言うなですぅ!!」

まるでただの子供の喧嘩、毎度のことなのだろうか、ヤイバは微笑しながらそれを見ていた。

しかしその空気を

「ヤイバ様、この二人は放っておいて本題に移りましょう」

サヤと同じぐらいの、幼い声が破った。

みるといつの間にか、二人の間に同じ背丈の少年がいる。

さらっとした灰色の髪にツルギ達と同じパッチリとした目。

しかしそれを生かさず細めている。

眼鏡がそれをよりいっそう強めており、研究者のような羽織物も似合っていた。

「ジュン!一人だけ大人びたこと言ってんじゃねぇよ!?」

「そうだです!私より年下のくせに生意気ですぅ!!」

サヤにジュンと呼ばれたその少年は、顔だけ二人に向け返す

「実践能力も知力も僕の方が上だよ、年だって数ヶ月の差じゃないか」

その言葉がサヤとツルギ、二人の感に触ったのか

「おまえ絶対いつか晩飯のご飯おかゆにしてやるからな!!」

「お風呂毎回最後に入らすです!!」

そんな幼稚なことを言っていた。

「ジュン、ツルギのフォローすまなかったな」

3人のやりとりを流すように、ヤイバは話始める。

彼が話始めたことにより、3人の表情が急に変わった。

「元々そういう作戦でしたから、問題ありません」

「ふんだです!!私一人でなんとかなったのです!」

頬を膨らましそっぽ向くツルギに

「その割には随分気絶していたようだがな」

さらっと言い放つ彼女の主。

「うっ・・・あっあれは油断したからですぅ!最初から気をつけていればあんな男!!」

と言い訳まで完璧子供の彼女を見て、一同は『ぷっ』っと笑った。

しかしジュンだけすぐに戻り、話も戻す。

「後は奴等が来るのを待つだけですね」

彼がそう言ったと同時に、3人は一点の方を見た。

そこには、手足を鎖に繋がれぐったりと眠っている

「・・・早く来るんだな・・・・・・不知火……」

神楽がいた。





宿、皆が泊まる一室で

「・・・・・・」

不知火を始め一同呆然となっていた。

「・・・・・・まさか俺の分身がやられるとはな……」

ベットの周りに、まだわずかに残っている水を触り確認するスイ。

彼自身予想外だったのか、険しい表情のままだ。

「・・・とりあえずレイミ、マルシアを任せて良いか?」

「うん、任せて」

彼に言われ、レイミは空いたベットにマルシアを寝かせてあげる。

まだ荒い息をしており、とても苦しそうだ。

「マルシア・・・すまぬ・・・・・・私がもう少し早く着けば……」

妹がぐったりして辛そうなのを見、ヘスティアは心痛めていた。

その隣ではアリアが困った様子でおろおろしている。

そして不知火は

「・・・・・・風呂入ってくるわ……」

皆にそう言い放ち、一人部屋を出た。

「・・・・・・」

その後を無言のまま、スイも続く。




風呂場は露天風呂のように広く、夜遅いせいか他のお客は見当たらない。

「・・・・・・」

湯船に一人ポツンとつかる不知火。

そこに

「いやぁ~やっぱ風呂は良いね~!」

さっきまでの雰囲気はいずこやら、明るい表情でスイが入ってきた。

だが湯船につかり、不知火の側に行った途端

「神楽のことは、すまなかった」

再び表情が戻った。

「油断してた、まさか複数、しかも俺の分身を壊すほどの使い手とは思わなかったんだ」

湯を顔にかけ、タオルを頭に置く。

そのまま話は続いた。

「不知火・・・・・・俺はおまえじゃねぇし、まだ出会って間もないからこんなこと言えた立場じゃないが」

そこまで言い、一旦間をおき口を開く。

「復讐なんてやめとけ」

「・・・・・・」

彼の言葉に、不知火はただ黙って聞いていた。

ほどけて女性のように長い髪が、ただ湯船でユラユラと揺れている。

女性ならタオルで巻くのだが、面倒なのか彼はしていない。

「復讐から生まれるのは、虚しさと新たな復讐だけだ」

無言で聞く不知火をチラっと見、ゆっくりと立ち上がった。

「さっきも言ったが、どうしても行きたいなら俺達は別に止めはしない、それはおまえが決めることだ」

タオルを腰に巻き、一人風呂場を出て行く。

残された不知火は

「・・・・・・一人のピンチは・・・・・・みんなのピンチ……」

女性のように綺麗な顔を、湯船につけた。





次の朝、まだ日も昇りきっていない時刻。

「・・・・・・ごめんな、みんな……」

不知火は宿の前で軽くお辞儀をし、その場を去ろうとしていた。

だが

「早起きとは気合入ってるじゃねぇか不知火!」

「はっ?って痛!?」

いきなり頭を平手で叩かれた。

叩いた男はもう誰かわかりきっている。

「スイ・・・はん……」

朝早いというのに目がパッチリ開いているハイテンション男スイ。

そして宿のドアより

「レイミさん・・・大丈夫ですか?」

「・・・徹夜でマルシアの看病をしてくれてすまなかったな・・・感謝する」

「いっいえ・・・これも医者の務めですから……」

アリア、ヘスティア、レイミと出てきた。

レイミだけとても眠そうにしており、今にも倒れそうだ。

「みんな・・・なんで……?」

呆然としている不知火に向かってスイは

「止めないとは言ったが、一緒に行かないとは言ってないだろ?」

そう言い放った。

後を続くように

「みんなわかっています、不知火さんは復讐のためでなく、神楽さんを助けに行くのだと」

アリアが優しい言葉で話す。

「記憶を失っていた私に、初めて声をかけてくれたのはおまえ達二人だ、ならばその恩を返すのは当然のこと」

軽く笑って言うヘスティアに、レイミが続く。

「仲間を助けるのに理由がいりますか?」

眠そうな顔を必死に耐え、笑顔を作った。

そして再びスイが皆を見渡しながら口を開く。

「よし、じゃあレイミとアリアはマルシアを頼む。神楽は、俺達で助ける」

そう言ったのを聞くと、アリアとレイミは宿へ戻り

「いくぜ不知火!」

「神楽を、必ず助け出そう」

スイとヘスティアは、先に行くように足を進めた。

不知火は

「・・・・・・おおきに・・・みんな……」

小声で、そう呟いた。
















© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: