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小説喫茶・メル
8
どこかもわからない、というよりこの世に有りえないと思われる空間。
ただ真っ白が広がるばかりで何もない。
そこに
「・・・・・・ここ・・・どこ?」
一人の少女がいた。
周りを見渡すが、白があるだけで何も見えてこない。
それ故まず恐怖感が生まれた。
「私・・・・・・死んだのかな?」
それから出た答えは死の世界だ。
途方に暮れ呆然とする彼女の前に
「・・・誰?」
二つの人影が現れた。
それは、彼女が良く知る人物。
それは、彼女にとって大切な人物。
「ママ・・・パパ……」
藤林すずとカムル・シェルだった(旧姓)。
しかし二人は彼女の前に現れるとすぐに
「あっ・・・待って……」
去るように、少女の前より煙のように消えていく。
少女は必死に、走れるかもわからない空間を走った。
だが二人は容赦なく彼女の前より
「待って!ママ!パパ!!」
消えた。
「ッ!?」
目を覚ますと、自分がベットに寝ていることに気付いた。
周りにはベットを覆うレース、洋服を入れるクローゼット、食事などをとるためのテーブル。
窓からは爽やかな風が吹いている。
そして自分の頭を置いている枕、それが大量の涙で濡らしていたことにも気付く。
そんな彼女の耳に
「起きたのメル?」
綺麗で、優しい声が入った。
視線を声の主へとやると、そこには、料理をしていたのだろうか、エプロンをしているルミスの姿があった。
彼女の奥に見えるキッチンには、様々な食材が見える。
「ルミス・・・おばさん……」
おずおずと言葉を発し、どうして自分が寝ていたのかを思い出す。
「・・・!?」
真っ先に思い浮かんだのは、自分とそっくりな少女の姿だった。
その為、再び恐怖で身が強張りベットの中に蹲る。
恐怖で震えているメルの側、ベットに静かに腰かけるルミス。
「メル」
彼女の声を聞き、メルは少しだけ彼女へと顔を向けた。
それを確認したルミスは、口をゆっくりと開く。
「すずとカムルさんのこと、好き?」
唐突な、しかし以前のメルならあっさりと答えられるはずの質問に、今回は戸惑う。
しかし、彼女の脳裏に今までの、自分が両親、特にすずと暮らしていた記憶が蘇える。
それほどにまでずずのインパクトはでかかった。
「私は……」
震えている体を起こし、ルミスに向かって
「ママもパパもやっぱり大好き!!!」
大粒の涙を流しながらそう叫んだ。
その表情はいつもの元気で明るい少女のものではなかった。
それを聞いたルミスは
「だったらそれで良いと思うな、例えどんな生まれだったとしても、大切なのはその人を想う心、貴方には、それがちゃんとあるよ♪」
優しく微笑んだ。
柔らかなその笑顔を見て、メルはさらに涙を流しそうになった。
そこに
「そういうことだ」
少し幼く、だがはっきりとした声が聞こえた。
「えっ?」
メルは思わず声を上げ、視線を向ける。
誰かは、既にわかっていた。
「ミハ・・・エル……」
「もう起きて良いの?」
まだ声が震えているメルに、落ち着いた様子で尋ねる母親ルミス。
「あぁ、おかげさまでな」
そう言い体を動かし、大丈夫な所をアピールする。
そして、何を思ったのかゆっくりとメルの元へ歩み寄り
「!?」
彼女を驚かせた。
メルの唇が、彼のによって塞がれているのである。
ルミスも少し驚く光景。
彼等にとって初めての、口と口とのキス。
ミハエルは静かに彼女より離れ
「どんな生まれでも、どんな姿になってもメルはメルだ、それは俺が良く知ってる」
そう言い放った。
それを聞いたメルは
「・・・うん、ありがとうミハエル♪」
いつものように、明るく笑顔で返した。
ここにきてようやく彼女は元に戻ったようだ。
そしてルミスは
「やっと、メルとしてくれたね」
と含みのある言葉を放ちゆっくりとミハエルの元へ行くと
「・・・!?」
今度は彼が驚かされた。
ルミスが、母親がいきなり口付けをしてきたのだから。
しかしその驚きは
「えっ?」
瞬時に別のものへと変わった。
ルミスがゆっくりと離れると、驚くメルを余所に彼は自分の体の変化に驚いている。
奥底から、何か凄いものが溢れ出てくるような、そんな気分だった。
「今ので、貴方の中に眠っている水の力が、完全に目を覚ましたはずよ」
「・・・そうか、この溢れてくるのはそれだったんだ……」
彼自身、良くわからない状態であったが、母親がはっきりとそう言ったので信じるしかなかった。
自分の実力が、一気に上がったようで。
「これの解放の条件、キスっていうのが難点だったから・・・・・・貴方がメルとしてくれるまでずっと待ってたの……」
「・・・・・・なんでまた?」
「ファーストキスが母親じゃ、お互い嫌でしょ?」
ルミスのその言葉に、ミハエルとメルは少し照れながら頭をかいた。
「でもこれで、二人とも大丈夫そうだね」
「あぁ、急いで行ってみんなを助けてくるよ」
「ルミス・・・
お母さん
、本当にありがとうございました」
それぞれ言い、ミハエルとメルは、ルミスの部屋の窓から外へと飛び出した。
そして残されたルミスは
「・・・・・・さてと、行きましょうか」
一人、ゆっくりと部屋を出た。
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