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8
スイとツルギも、不知火達より少し離れた場所にいた。
森の中なのであまり周りの景色は変わらない。
「あぁ~もう!後で遊んでやるからあっち行くですぅ!!」
足元でウロチョロしている一匹のウサギ。
それをなんとか追い返そうとツルギは必死だ。
その仕草や表情がまさに子供。
ようやくウサギが向こうへ行ったのを確認すると
「お嬢ちゃん」
スイが静かに、彼女に話し始めた。
ツルギの方は『なんですか!?』といった感じで睨み付けてくる。
出会い以来、スイの事を毛嫌いしているようだ。
それをわかっているつもりでも、スイの声色は変わらない。
「君もサヤって子も、俺の見る限りそんなにひどい子だとは思わない、なのにどうしてカオスの命令なんかに素直に従う?」
彼の疑問、問い掛けに対してツルギは
「勘違いするなです!!」
大きな、少し怒りがこもったような叫び声を上げた。
「私達はヤイバ様に従うだけです!カオスなんて知ったこっちゃないですぅ!!」
「・・・・・・じゃあ、なんでヤイバの、人殺しの命令を受けるんだ?」
スイは尋ねながらも、あまり間をおかず続ける。
「人を殺すことって最悪なもんだ、例え自分が生きるためとはいえ、良い気分じゃないだろ?」
少なからず、彼も経験しているのだろうか。
「ましてや君等みたいな子供じゃ・・・とても正気じゃいられな……」
「勝手なこと言うなです!!」
黙って聞いていたツルギだが、急に大声でそう叫んだ。
先程までウサギで困っていた可愛い表情が、怒りが込められた鋭い目つきに変わる。
「おまえなんかに何がわかるですか!?
何も知らないくせに
・・・知ったような事言うなです!!!」
その怒声を最後に、彼女の全身から闘気が発せられた。
周りの空気がピリピリとなり、木々が揺れる。
「・・・訳あり・・・か」
スイの方はただ静かに、怒りに身を震わす彼女を見つめていた。
「ヤイバ様と私達の苦しみが・・・・・・おまえなんかに・・・」
「・・・・・・」
「わかってたまるかですー!!」
血相抱えたツルギは、走って彼に突撃していく。
「私はヤイバ様の【剣】!おまえを倒すですぅ!!」
森に響き渡るような声を聞いたスイは、腰に下げてある黒刀に手をかけた。
だが以前のように、峰打ち一発で決めるつもりはない。
否、決めれないと思ったからだ。
それほどまでに彼女は
「くらえです!!」
以前と違った。
「鼠花火!!!」
指先の小さな火を、スイの足元に振るう。
すると彼のいる場所に小さな爆発が無数に巻き起こった。
「ちっ……」
舌打ちし、バックステップでその場より飛び退く。
その際に背中より悪魔の羽根を生やし、臨戦態勢となった。
「逃がさないです!」
今度は彼女の両手の指に火が灯り
「ロケット花火!!」
それらがすべて一直線にスイ目掛けて発射された。
10本の炎の矢、すべて同じスピードで向かってくる。
「リッドさん直伝・・・」
黒刀に力を集中し、居合い斬りのように抜いた。
【魔神連牙斬】
居合いにより放たれた一つの衝撃破が、一番先頭にあった炎の矢を打ち落とす。
続いて各方向、三方向より放った三つの大きな衝撃破が、残りの矢と相殺した。
「くっ・・・煙が……」
自分の火とスイの攻撃で起こった煙により、視界が悪くなる。
そしてそれが晴れたと思うと
「ルークさん直伝」
スイが、自分の目の前にいた。
「!?」
【双牙斬】
切り下ろしは間一髪反応して、横にずれることによってかわしたが、その後の切り上げはまともにくらってしまった。
「くっ!!」
刃を返しているため、痛みだけで血は出ないが、無防備に宙に打ち上げられる。
「クロエさん直伝!!」
その間スイは、黒刀を彼女目掛けて投げた。
クルクル周るそれはツルギの顎に、柄の部分が当たり彼女の少し上で留まる。
そしてスイは
「虎牙破斬!!」
空中で黒刀をキャッチし、降りる勢いを混ぜて、彼女の右肩目掛けて刀を振り下ろした。
「あぐっ!!」
ザンと鈍い音が鳴り、ツルギは地面に叩きつけられる。
ゆっくりと羽根で降り立ったスイは、闘気を解かずに彼女を見つめていた。
「少しやりすぎちまったかな・・・?」
初めて会った時に比べてかなり本気でやったので、当然の事を今更思う。
しかしこうでもしないと、倒せない気がしたのだ。
だからこそ今も警戒は解かない。
「・・・私を・・・・・・」
ツルギは彼の言葉に反応し
「なめるなですぅーー!!!!!」
立ち上がり、激しい火花を巻き起こした。
彼女の周りより発せられたそれには、まだ戦えるという闘志が込められている。
そんな気がした。
そのため
「ったくよ~……」
トドメをするために、重心を低くする。
だが今回は
「トンボ花火!!」
彼女の方が速く動いた。
たくさんの炎の玉が、無差別に彼を襲う。
「うおっ!あぶね……」
「弾けろです!!」
回避したと思った矢先、ツルギの声をスイッチに炎の玉が一斉に爆発した。
「なっ!?」
さすがのスイも驚き、激しい爆風により上空に打ち上げられる。
「私の奥義、受けてみろですぅ!!!」
ツルギは両手を重ね、彼の方向へと標準を合わせた。
そして凝縮されていく炎の塊を
「
【打ち上げ花火】!!!
」
大砲のように、勢いよく放った。
ドーンと轟音が鳴り響き、スイはそれを
「・・・・・・」
まともにくらった。
激しい爆発が起こり、辺りは暴風に襲われる。
鳥達が一斉に逃げ、たくさんの木が倒れそうなのを必死に耐えていた。
「はぁ・・・・・・これなら……」
勝った、そう確信したツルギ。
「
奥義
」
「えっ!?」
スイの声が聞こえた瞬間、戸惑いと疑問に襲われた。
自分の最高の技をまともに食らったはずなのに、と。
しかしそれらは
「
【三日月】
」
一瞬で、痛みへと変わった。
自分の体が三日月状に切られている。
だがそれでもやはり、血は出ていない。
「どっ・・・どうしてさっき・・・から・・・」
痛みのあまり声が小さくなるが、彼にわかるように言葉を発する。
「真剣で・・・私を殺さないのです!?」
叫んだつもりだが、実際は小さな声。
それでもスイには十分に届いていた。
「・・・俺が一番見たくないのは、女の子の血と・・・・・・涙なんだよ」
彼もあまり大きな声ではないが、ツルギは聞こえている。
だが今の彼女にはそれが辛かった。
本気でやっていたら絶対に殺されていた、自分の本気が通じない。
それらを痛感したツルギは
「うっ・・・・・・くぅ~・・・ヤイバしゃま~・・・・・・」
瞳より、大粒の涙をポロポロと流し
「ごふぇんな・・・しゃ~い……」
ゆっくりと、スイに向かって力無く倒れこんだ。
彼は優しく、彼女を支えてやる。
「・・・・・・ったく・・・言ったそばから見ちまった……」
幼く、小さな彼女の頭を撫でてあげ、スイは空を見上げた。
「あぁ~あ・・・なんで俺って・・・・・・こうなっちまうんだろうな~……?」
自分の体を頼りに泣いている少女を見、ただ呆然としていた。
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