小説喫茶・メル

小説喫茶・メル



二人は不知火達が泊まっている宿に到着していた。

時刻は夜、綺麗な月が夜空を照らしている。

宿の中に入り、眠そうな受付人に話し、部屋に案内してもらう。

あまり音をたてないように静かにドアを開けた。

中では

「スー・・・スー・・・・・・」

不知火や神楽、皆疲れたのかすやすやと眠っている。

ヘスティアだけあまり疲れていないせいか、壁にもたれて休んでいた。

そして閉め忘れていたドアより

「ミハエル、メル、来ていたのか」

毒で倒れていた女性、マルシアが静かに入ってきた。

すっかり良くなったのか、落ち着いた表情を保っている。

「ついさっきな」

「神楽はまだ眠ったままなの?」

彼等はヤイバ達の一件を知らない、そのためどこから説明しようか迷うマルシアだが

「俺が説明してやるよ」

レイミが眠っているベットの側で寝ていた、スイが起き上がった。

ちゃんと寝付けてないせいか、目はまだパッチリとしている。

皆を起こすわけにもいかないので、4人は外へと出た。





「こうやってこの4人で揃うのも久しぶりだな」

久方ぶりに4人で集まったので思わず頬が緩むミハエル。

「そうだね、気がついたらたくさん仲間が出来たもんね」

同じく微笑するメル。

夜風が彼女の髪を静かに撫でる。

「まぁとりあえず、お前等がいない間に起きた事を話しておく」

そうしてスイが話すこと数分

「カオスの方翼ヤイバか・・・あのおっさんと同等の奴と戦ってたなんてな……」

最初に口を開いたミハエルが、珍しく驚いていた。

シグマと直接対決した彼だからこそなのか。

「でも一応なんとかなったんだよね、神楽も目を覚ましてくれたみたいだし」

「そうだな、まっこれで俺の役目は終了だな」

羽根を伸ばすように体を捻る。

こんな彼でもやはり少しは疲れたのであろう。

「兄貴帰るのか?」

「あぁ、元々おまえとメルの代わりだったんだ、戻ってきた以上もう必要ねぇだろ?」

そんなことは、と言おうとしたミハエルだったが、兄の性格上、レイミがお願いでもしない限り無理だろうと判断した。

「ってなわけで、後のお守りは頼んだぜマルシア」

「任せておけ、もうあんなドジは踏まぬ」

毒をくらって倒れていたことを、まだ悔いているようだ。

そんな姉だが、やはり頼りになることに変わりはない。

そしてポケットに手を入れ、そこより金色に輝く鍵を取り出した。

即席の異界の門を作り出す鍵、マスターキーである。

「あれ?もう帰っちゃうの?」

あまりに急なので疑問に思うメル。

「悪いな、それとミハエル」

「なんだ?」

「直に会ったわけじゃねぇからはっきりとは言えねぇが・・・・」

険しい顔つきとなり声色が強張る。

「カオスの力、今まで以上にヤバイもんだと思っとけ」

「・・・・・・あぁ、わかってる」

スイは彼の言葉を聞くと、門を開けた。

ゆっくりと足を進め入っていく。

「じゃあな、みんなにはよろしく言っといてくれ」

そう言い残し、彼は門の中へ吸い込まれていった。

3人は門が完全に消えるのを確認し、宿へと戻る。

外と宿の中は、あまり温度差がなかった。





バトルタワー・西

静かで綺麗な夜空を、窓から見つめる一人の女性がいた。

「あと少しで・・・この世界の人達全員ね……」

バトルカンパニー副社長、ルシアンである。

黒いスーツを着こなしているその姿は、とても凛々しく美しかった。

彼女のいるフロアは広く、中央には噴水が見える。

後はエレベーターと階段だけであった。

「エネルギー集め、ご苦労様」

「!?」

突然聞こえた声に振り向く。

聞き覚えがありすぎる、馴染みのある声。

振り向くと、既にわかっている人物がいた。

「カオス・・・貴方一体どころから・・・・?」

あまり驚いた素振りは見せず、平然を装う。

そんな彼女を見透かしたように彼は苦笑する。

「ふふっ・・・相変わらずの警戒心だね、姉弟とは思えないよ」

カオスの言葉に黙るルシアン。

それは彼自身という圧に押されているからなのか。

彼女にとって彼は、とても特別で重いものだった。

「・・・カオス・・・お願いだからもうやめて・・・・」

「・・・何をだい?」

「貴方のしていることよ!」

つい、叫んでしまった。

「貴方のしてきた事は凄いと思う、人が成せないことをいくつも成し遂げてきた」

彼女の切羽詰ったような発言、声を険しい表情で聞くカオス。

無言で、何も返さない。

「でも・・・そのために今までどれだけの命が犠牲になったと思っているの!?」

姉の叫び、それに対して閉じていて口を

「・・・黙れ・・・・」

ゆっくりと、怒りを込めたように開いた。

「あの時・・・・僕とエリスを見捨てたあんたに・・・・・・そんな事を言われる筋合いはない!!」

「ッ・・・・・・」

彼の久しぶりに聞く本気の怒声。

怯み、思考が停止してしまった。

「アルセウス、メル」

「!?」

黒き羽根を生やした二人が、ルシアンの両腕を捕らえた。

突然の事に止まっていた思考が動き出し、叫ぶ。

「カオス!!」

「連れていけ・・・ここの人達は僕が連れて行く」

彼の目に、もはや彼女は映っていなかった。

ただ目的を達する為に動く。

「待ってカオス!!」

「悪いねルシアンさん、もう何もかも手遅れなんだよ」

メル?がそう言って彼女の首を叩くと、彼女は気絶した。

ぐったりとしたルシアンを二人で抱え飛び立つ。

「もうすぐ・・・もうすぐだよエリス・・・・・・」

カオスは腰に下げてある剣を見つめながら、そう呟いた。
















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