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小説喫茶・メル
9
足を広げ両手で刀を握る。
力を込め一気に
「はあっ!!」
朱雀を振り下ろした。
剣先より炎の塊が放出され、それが進むと同時に形作っていく。
炎の鳥、まるでフェニックスのように。
「くっ!!」
メル?は向かってくるそれを上空へ飛ぶ事により回避した。
だが
「!?」
炎の鳥は急上昇し彼女を追ってくる。
「くそっ・・・こんなもの!!」
右手に握っている息吹で防ぐ。
あまりのスピードと重さのため、じりじりと押されていくが、彼女は踏ん張った。
そして刀を上へと振り上げることにより、炎の鳥は天井へと直撃。
頑丈なのか、パラパラと少しくずが落ちてくるだけで壊れてはいない。
「それぐらい・・・僕にだって出来る!!」
息吹の先より同じように、炎を放出した。
しかし形は整っていない。
ただの炎の塊。
「・・・・・・」
メルは静かに、空いている左手を前に出した。
バーンと、手に当たった音が鳴り響く。
そのまま炎は勢いを無くし、消えた。
「なっ!?素手で!?」
自分は息吹を使いようやく弾いたというのに、彼女は片手で消滅させた。
それが信じられない。
そのため
「ッ・・・何故だ・・・・・・何故おまえに出来て僕に出来ない!?」
感情が、今まで以上に高ぶった。
我を忘れ叫ぶ。
「おまえの【コピー】の僕だって出来るはず!!・・・・・・ッ!?」
「・・・・・・」
言ってしまった。
言ってはならなかったこと、認めたくなかった事実。
「やっぱり君は・・・私の……」
メルの、コピー。
彼女はここに来るまでに、様々な考えを巡らせていた。
その一つがこれである。
この考えは、母親、すず達の親友であるルークの事から出てきたものだった。
本物のアッシュ、レプリカのルーク。
もしかしたら彼女もこれと同じものではないかと。
あまり利口でない彼女なりの精一杯の結論だった。
「・・・・・・僕は・・・・」
愕然と立ち尽くしていたメル?。
もはや理性が完全に飛んでしまったのか、息吹を両手で握り、突きの構えにした。
「藤林メルだぁーーーーーー!!!!」
そのまま一直線、神速とも思えるスピードでメルへと迫る。
閃・光・之・彼・方
「!?」
突き放った先に、メルがいない。
そこにあったのは、静かにユラユラと漂う
「
奥義
」
無数の火の粉。
「・・・ははっ・・・これがコピーの結末か・・・・・・」
決意した。
確実にやられると。
不思議と、抵抗する気にはならなかった。
そんな彼女に、火の粉が一斉に
「【
蛍火
】」
襲い、爆発した。
「コピーには存在理由がない」
存在理由が・・・ない?
「だったら、奪えば良いんだよ、本物を殺してね」
本物・・・藤林メルを殺すってこと?
「そうすれば君は、彼女のいる場所に立つ事が出来る」
・・・メルの居場所に・・・
「コピーは独りぼっちだからね、そうでもしないとずっと独りだよ」
だからメルを殺す?違う・・・僕は彼女の居場所が欲しいんじゃない・・・
カオスの実験で無理矢理生み出された僕は、確かに独りだった
存在理由が欲しくないって言ったら、少しは嘘になるかもしれない
でも・・・そんな凄いものは求めない・・・
僕はただ・・・
「痛みを分かち合える家族が欲しかったんだ」
「・・・・・・?」
目を開けると広がる空間。
ただの天井。
しかし先程メルの炎で焦げた部分が見える。
自分は、死んでいない。
その証拠に、後頭部に温もりがあった。
「目が覚めた?」
その距離数十センチ。
メルの顔がほぼ目の前にあった。
状況を察するに、彼女に膝枕をされているようだ。
「・・・何故まだここにいる?」
自分を殺さなかっただけでも驚きだというのに、今の彼女はまるで自分を看病しているようにも見える。
それが不思議でならなかった。
「妹を放っていけないよ」
メルはあっさりと答える。
それが、求めたいたものと重なった。
「・・・仲間を助けに行かなくて良いのかい?」
どうしてか、皮肉を言ってしまう。
口が勝手に動いているように。
「みんななら大丈夫、そう簡単にやられないって、信じてるから」
「・・・・・・」
自分の記憶ではない、メルの記憶。
その中にある彼女の母親、藤林すずの姿が思い浮かんだ。
彼女に、本当にそっくりだと。
まだ幼くとも、自分と仲間を信じ続ける。
それが彼女本来の姿だった。
「・・・・・・僕も・・・」
「??」
「君みたいに・・・家族が欲しかった・・・」
自然と流れ行く涙。
気がついてはいない。
ポロポロと流れていく雫。
「こんな風に・・・生まれたくなかった・・・・・・こんな・・・こんな体で!!」
勢いよくメルへと顔を向けた瞬間
「!?」
彼女に、抱かれた。
自分と同じ、小さな両腕で包まれた。
心臓の音が聞こえる。
そして何より、温かい。
「独りじゃない、例え全世界の人がわからなくても・・・・・・」
優しく、母親のように
「私は・・・君の痛みがわかるから」
呟いた。
「うっ・・・・・・うわぁああああ!!!」
いくら彼女でも、わかるはずがなかった。
コピー、レプリカ、クローンの痛みは、同じ者にしかわからない。
そう、思っていた。
だが今の彼女の言葉が、心に響き渡る。
わからなくとも、必死にわかろうとしてくれていることが、心から伝わってきた。
今まで誰一人、分かち合おうともしてくれない。
だからこそいつも求めた。
「辛いことも悲しいことも・・・大切な仲間と分かち合うことが出来るんだよ」
この言葉を、家族を。
「一緒に行こう、
マナ
」
「・・・へっ?」
「君の名前、パパが私につけようと思ってた名前なんだって」
藤林マナ
メルのコピーだった彼女には名前がなかった。
だが今ついた。
「・・・もう少しこのままで良いかな?姉さん」
涙がついた顔で、笑った。
心からの笑顔。
「・・・良いよ、マナ」
メルも同じく笑った。
本当の姉妹のように、マナはメルに包まれた。
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