だっておんなのこだもんっ!(一応)

祭りのあと(2005.7.28)


【祭りのあと】




それは偶然、ううん、必然の出会いだった。
















今日は大好きな彼のGIG。

スポットライトに反射して、光る汗がトゥウィンクル。

あぁ、あたしってばやっぱり、スーパースターに恋しちゃったんだな。

もう…、叶わぬ恋に焦がれてしまうなんて、一生の不覚だ。





GIGは本当に最高。

踊り狂う彼とあたし。

他には何にも見えない。

何もいらない。

グラスの奥の鋭い瞳には、きっとあたしも映っているはず。

そう思うと、振り上げる腕にも力がこもる。

あ、ごめん、後頭部どついちゃった☆

それでも誰も気にしない。

みんな、彼のことしか見えてないんだ。

少ししゃがれた声と、サラシの似合う細い体。

彼が握るマイクになりたいと、どれだけの人が思っているんだろう。






2回のアンコールが終わり、

彼はステージを去っていく。

何度も何度も「ありがとう!」と叫ぶ彼の笑顔。

「お前ら最高!!」って、顔をくしゃくしゃにして。

「あなたが一番最高なのよ!」と、微笑み返しで、

あたしは思い切り手を振った。



ねぇ、見えてる?

あたしの結婚線、ちゃんと見えてる?

薄いのが何本もあるの、見えてるの!?

そう問いかけた瞬間、彼があたしに笑いかけてくれた。



…気がした。



あたしがチャレンジ精神旺盛だってこと、わかってくれたのかな。

ふふ。いいの、勘違いでもいいの。

あたし、がんばるね。







彼がステージを去り、みんなも会場を後にする。

あたしはひとり、何だかまだ帰る気になれなくて、

叫びすぎて乾いたノドを、六甲の天然水で潤す。

体中に染み渡る大自然の恵み。

GIGのあとって、なんでこうもすべてが新鮮なんだろう。





漆黒の床には、無造作に散らばるパンフレット。

ステージの上は、ギターやアンプが次々と片付けられてく。



ほんとに、ほんとに終わっちゃったんだな。

また来年まで待たなきゃいけないのかな。。。。



そんなことを思ってボーっとステージを見てた。

ふと我にかえって周りを見渡してみると、

人っこひとりいなくなってしまっていた。

気が付けば、GIGが終わってから3時間も経っている。

さっきまで、人と熱気でごった返していた場所とは思えないほど、

静かで、あっけらかんとした空間。

あたしは結構この空間が好きだったりする。

ここでしんみりと感傷に浸るのが、

あたしのGIGの締めくくり方なのだ。

だけど、今回はちょっと浸りすぎちゃったかな。

えへへ。




柵に体を預け、天井を見上げた。

照明器具がいっぱいだな。

彼、輝いてたな…。




もう1度だけでいいから、会いたいな…。































「まだ、いたのか?」










急に話しかけられてびっくりしたあたしはつい、

「ご、ごめんなさい!暴れすぎて腰が…」

なんてウソをついた。

「なんでこんな無駄なウソを…」

と思った瞬間、あたしの黒目に飛び込んできたのは、



























「彼」。

















さっきまで、そこのステージでキラキラと輝いていた、




あたしの大好きな「彼」。











「腰が、痛いのか?」






彼が何か言っている。

あたしは、とにかくパニくってしまって何にも聞き取れず、

ただ小さくうなずいた。





「しょうがないいちごちゃんだな…。よっと。」

次の瞬間、私の体が宙に浮いた。



え…?

私、彼の腕の中にいる…??









「今夜最後まで俺を求めてくれたお前を、

もう1度ピリオドの向こうへ連れてってやるよ」









えぇぇぇぇぇぇぇ?????????











あたしはとにかく、わけがわからなかった。

何で?彼が?どうして?あたし???







「お前のこと、ずっと見てたんだぜ」




「な、なんで…ですか…??」




「俺にもよくわかんねぇ。

けど、今夜はお前しか見えてなかった」












あぁ、神様、夢なら覚めな井出。ラッキョ。

彼は私をお姫様だっこしながら、どんどん歩いていく。

たくましい腕。

あんなにスレンダーなのに、力あるんだ。











「ちょっとだけ、目ェ閉じてくんねぇか」













このまま、このまま…。

心地いい揺れに身を任せて、

あたしはこのまま彼の腕の中で溶けてなくなってしまってもよかった。

ううん、そうなりたかった。

こんなに幸せなこと、きっともう2度とないんだから。











「目ェ、開けてみな」






こくり、とうなずき、おそるおそる目を開けた。







そこは、海。




「ここなら、誰も来やしねェ」




潮の香りに包まれながら、

あたしたちは何も話さず、

ただあたしは指の先っぽで、彼のぬくもりを感じていた。




何も、何も話してくれなくてもいいの。

ただそばにいたい。

今は、あたしのことだけ、見てほしい。




「風邪、ひくぞ」

思いが通じたのか、彼はあたしの肩を抱き寄せた。

「意外と、イカリ肩なんだな」

「そうよ、イカリ肩の女は、一途で純粋なの」

「はっ、自分で言うなって、コイツ」



そんな冗談も交わしながら、

あたしたちは静かで満たされた時間を過ごした。

だんだん空が明るくなってくる。




「朝日が、昇るね…」

あたしがつぶやいた瞬間だった。












「俺、もう行かなきゃ…」




「え…?」





「また会えるさ、今夜また夢で会おうぜ」




そう言って彼は私の頬に、やさしくキスをした。




走り去る彼。小さくなる後姿。


頬にひとすじの滴が流れるのを感じた。





























「お客さん、お客さんてば、どうした!?大丈夫か!?」




「んんんー、…ん???」

気が付くとあたしは、まだ会場の中に居た。


「あれ…」



どうやら床に倒れたまま、眠ってしまっていたらしい。












やっぱり、夢だったのか…。そうだよね…。




「ごめんなさい、すぐ出ます」



あたしは立ち上がって、会場を後にした。


なんだか幸せな夢だったな。

彼が言ったみたいに、また夢で会えるといいな。

ねっ!










「お客さん、忘れ物ー!!あぁ、行っちゃったか。


きれいな貝殻なんだけど、この辺に置いとくか」





―――――END―――――



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