旧い映画は書くも楽しい。「黄金」余話



 この映画は全ハリウッド映画のベストテンが選出されるときは「市民ケーン」や「捜索者」と並んで、必ず上位にランクインする作品であります。

 あらすじ等は、恐縮ながら伊勢新聞社のHPで、「社長室」をご覧になっていただくと詳しく出ています。www.isenp.co.jp/shacho2/2scr_00.htm

 「メイキングオブ『黄金』」とも題すべき番組の入ったDVDを入手しましたので僭越ながらご案内します。

 原題は「ディスカバリー・トレジャー」です。

 これは映画「黄金」の原題が「ザ・トレジャーオブ・ザ・シエラ・マドレ」から由来していることはご承知のとおりです。

 新人監督だったジョン・ヒューストンが「シエラマドレの黄金」を読んで感動し、映画化を企画しました。そしてメキシコに住むハル・クローブスという男から権利を買い取り、映画化しました。

 ハル・クローブスは、原作者である謎の覆面作家B・トレヴンの代理人と称していました。

8年ほど前からのお約束ですから、連休を利用してトレヴンのことを書いてみます。この機会を逃しては、もう書く時間がないと思われます。

 毎日のように「就職試験の面接」、「株主がたずねてきた。」うんぬんで、時が砂のように流れて行っているのです。そして失った時間は二度と戻らないのもご案内のとおりです。

 さて、トレヴンの話に戻ります。
 1926年、ドイツで出版された「死の船」と名づけられた本が読書人の間で話題になりました。
 ベルギーの港アントワープで、財布と身分証明書を盗られたアメリカ人船員が、再発行まで3ヶ月かかるのを待ちきれずに、死の船と称されるわけありの証明書なしの船員ばかりの船に、食わんがために乗り込み、悲惨な逃げ場のない世界に入っていくという、文字通り暗い物語です。

 村上春樹氏の「海辺のカフカ」がドイツで売れている、との外電が今日入っていたようです。やはりドイツ人はカフカ的な実存の不安と虚無を扱ったものがすきなのでしょうか。

 「死の船」が話題になり、出版業界の関心は作家のほうにいったのですが、発行した出版社も「メキシコにいる作者の代理人と称する人物から原稿が送られてきただけだ。作者には会ったことがない」という始末でした。

 そして1927年に「シエラマドレの黄金」が出版されました。(つづく)



© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: