平井長三(長さん)との出会い


平井長三(長さん)との出会い

 昭和36年4月、四日市市立中部中学校に入学しました。

 後輩に岡田克也さんもいました。

 13歳の私は父の勧めもたぶんにあり、剣道部への入部の申し込みに職員室を訪れました。

 「剣道部に入れてください」と大声でどなった私に、不思議そうに目をぱちくりさせた長さんは、こうアドバイスしてくれました。

 「富士スポーツ店に行って竹刀を買っておいで。サブロクていって三尺六寸の長さのものを中学校では使うから。置いてある竹刀の中で、一番重いのを買ってきなさい。」

 そして富士スポーツ店の地図を書いてくれました。

 私は拍子抜けしました。中学校で一番有名で、鬼のように怖れられているという評判でしたから。入門依頼に大声を出したのも、ぼそぼそ声で言って「なんじゃーあ、」と怒鳴りつけられたという話を聞いていたからです。

 「剣道部に入れてください。」と言ったとき、うれしそうに、「にこ」、としたのが引っかかりましたが。

 後に川端康成がノーベル文学賞受賞記念講演で「仏界入り易く魔界出で難し」という古言を引用しましたが、私が入ったのはどちらの世界だったのでしょうか。(


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