内科から紹介された、初めて足を運ぶ神経内科。
行ってみると、階の一番端っこ。しかも、待合所、狭い。
しかも・・・お年寄りばっか。33歳の自分が、一番若そう。
内科や他の科は、待合所ももっと広いのに。
その独特の雰囲気と、向けられる視線に圧倒されつつ、受付を済ませた。
また、診察前の書類に同じようなこと書くんだよねー。
内科でも書いたよ。
しばらく順番を待って、名前を呼ばれた。
初めて診察室に入った瞬間のこと、今でもハッキリ覚えてる。
ノックをしてドアを開けると、先生の目は一瞬私の顔を見て、すぐに視線は足に向かった。
ドアを開けて、閉めて、ちょっと歩いて椅子に座るまで、先生の視線はずっと私の足。
先生は、事前に書いた問診表を見ながら、「歩きにくいの?」と切り出した。
内科と同じように、一通りのことを説明する。
階段を下りる時、足が突っ張って落ちそうになること。
夜中に何度も足が攣ること。
体のあらゆる所がピクピクすること。
つま先が上がらなくて、よくつまづくこと。
座ってから立ち上がる時、とっても重いこと。
信号待ちして、青に変わった時なんかに、とっさの一歩が出ないこと・・・
などなど。
たぶん、他にもたくさん言ったと思う。
先生は私に、病歴などを聞いたあと、小さいハンマーを取り出した。
膝・かかと・肘・あご・・・とにかくいろんな個所をポンポン。
「脚気検査?」って思った。
先生に押さえられ、いろんな力くらべ。
自分の人差し指を、自分の鼻と先生の指に行ったり来たり。
目だけで先生の指を追う。
そして次に、診察台へ。
足の裏をグイィ~っとなぞられたり、力を抜いてる状態で急に膝を持ち上げられたり、
逆に、急に押さえ込まれたり。
何の検査か、その時はサッパリわからなかったけど、
自分の足がガクガク揺れたり、過剰な反応を示してることが不思議だった。
その度、先生と助手らしき人が、「○○○(専門用語)、出てるね・・・」って言うの。
でも、何のことかちっともわかんない。
一通りの検査を終え、家族や近い親類に似たような症状の人はいないか、両親の出身はドコか聞かれた。
そしてポツポツと話し始める先生。
「今のあなたの足の症状は、痙性対麻痺、という症状ね。でも、これ自体が病気、ってことじゃない。
そのバックグラウンドに何かあって、こういう症状が出てる。
だから、これからそれが一体何なのか、しっかり検査をしないといけないのね。
たぶん、筋肉か神経の病気だと思う。
でも、頭が痛い、ハイ風邪でした、というような簡単なものじゃないかもしれない。
ちょっと・・・厄介なものかもしれないんだ。」
この時はまだ、自分の病気云々より、「仕事どーしよー!」が真っ先に浮かんだ。
検査とか言ったら、レッスンどうしよう。代行探さなきゃ・・・。穴開ける訳にいかないし。
「先生、私ダンスが仕事なんですけど・・・」
と言うと、先生は、「うーん」と黙り込んだ。
ちょっとしてすぐ、
「検査はなるべく通院で済むようにするけど、もしかして入院して時間かけて検査になるね」
そして、
「今、(体がこんな状態なのに)まだダンスやってるの?」とビックリされた。
自分でもわかってた。
この時点でもう既に、ダンスをやるような体じゃなくなってるって。
でも、どうしても認めたくないというか、この不調は治るんだって信じたかったし。
面と向かって、初めてそんなこと言われてちょっと戸惑ってる私に、先生は、
「・・・・・・・ちょっと、レッスン減らしたほうがいいね」と言った。
よかった。辞めろって言われなかった。
その後MRIや、再度詳しい血液検査。
約2週間後、また先生の元へ。
「やっぱり、検査入院しよう。大体、2週間くらい。」
え・・・・
困った。仕事2週間も休めるかな・・・


