カルビ家の日常

カルビ家の日常

その2



パレスラウンジ1


早朝からラフティングを予定。

昨夜ヌサドゥアのギャラリアで購入したビッキーニを着て浮かれるさち。
迎えのバスに乗り、アユン川を目指す。

ラフティングは、山の中のウブド地区付近で行われる。
ウブド地区にはモンキーフォレストというサル公園があるらしい。

途中、
『モンキーチェンジャー』
という看板が目についた。

『モンキーチェンジャー』
『モンキーチェンジャー』
『モンキーチェンジャー』

至るところにそれは置いてある。


さ「ねぇ、チエろん。モンキーチェンジャーって何だろうね?」

チ「さぁ?」


きっと、ここではサルの売買が行われているのだろう。

悲しそうな目をした子ザルが、荷馬車に揺られ売られていく。
そんな光景が目に浮かんだ。


『MONEY CHANGER』
『MONEY CHANGER』
『MONEY CHANGER』

その看板は、どこまでも続いている…

= = = = = = = = =

私は、どちらかというと声は大きい方だ。
おそらくさっきの会話は同乗の日本人達にも聞こえていただろう。


さ「ねぇ、チエろん(かなり小声)」

チ「なに?」

さ「モンキーチェンジャーじゃなくて、マネーチェンジャーだった…(更に小声)」

チ「えぇぇ?」


同乗の日本人達は、
「そうじゃなくて、両替屋ですよ」
と、ずっと言いたかったに違いない。
きっと。

つーか、チエろんも気付けよ!!



景気付けに一恥かいて、アユン川に到着。

ヘルメットとライフジャケットとオールを渡され、みんなで坂道を川へ向かって下ってゆく。
階段を下り、坂を下り、30分近く歩いた…ような気がする。

見慣れない熱帯の森に、
「これが熱帯雨林だ~!!」
と、はしゃいで写真を撮りまくっていた私達も、いいかげん無口になってきた。

精も根も尽き果てようとした頃、やっとスタート地点に到着。
日本人、台湾人、白人(ヨーロッパ、オーストラリア)がひしめき合っていた。


ここで、ボートに乗る上での重要な説明を受ける。

「前漕ぎ」(前に進むように漕ぐ)
「後ろ漕ぎ」(後ろに進むように漕ぐ。スピードを落とす)
「ブンブン」(姿勢を低くする)
この3つだ。

これで私達の命は保障された。


* * * * * *

私達のボートには、
・私達を含めた日本人4人
・オーストラリアから来たという老人夫婦
・ガイド
合計7名が乗船していた。

私達のボートは、軽やかに渓流を下り始めた…。


と、思いきや突然の濁流。

「キャー!!」

「後ろ漕ぎ!!」
「後ろ漕ぎ!!」
ガイドが大声で私達に命令する。

必死で漕ぐ6人。

岩にぶつかった瞬間、その衝撃で私は川に落ち…


そうになったところ、
間一髪でチエろんの手が私を掴み、ことなきを得た。

彼女は命の恩人だ。


その後も、緩やかな流れと急な流れを繰り返し、ボートはアユン川を下っていった。

ラフティングで。


そして、

「キャッホー!!」

私達は、他社のゴムボートに乗ったハイテンションな台湾人観光客の団体に囲まれた。
彼らは満面の笑みで容赦なく水をかけてくる。
ボートにもザブザブ水が溜まる。

「キャー、やめてー!!」
「海賊だー!!」(←ウソ)


ひとしきり暴れた彼らは、ハイテンションのまま去っていった。
彼らのガイドは
「ゴメンネ」
と、すまなそうな顔をしていた。


ゴール地点に着くと、昼食が用意されていた。
シャワーを浴びて昼食を食べ、着替えた。

帰り道にバスの待機場所へ向かっていく途中、同乗していたガイドがハイビスカスの花を私の耳に挿してくれた。

その時、さちはフローネになった。




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