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本日は、「木材のクリープ現象」についてのお話です。冒頭の写真のような棚を見たことがありませんか?「荷重でたわんだ棚」です。タイヤ交換に行ったガソリンスタンドの待合室の本棚を撮ったものです。でも、おそらく、最初からこれだけたわんではいなかったと思いますね。木材に限らず、ほとんどのモノには「復元力」というのがあります。ベンチに人が座るとたわみます。でも、人が立ち上がるともとに戻ります。これが「復元力」ですが、許容範囲を超えた荷重をかけ続けた場合、木材が復元力を失い、たわみが固定化され、さらにたわみが進んでいく現象を「クリープ現象」「クリープ変形」といいます。冒頭の写真の棚の本をなくしても、おそらく棚はもとには戻りませんね。一般的に、木材の無垢材は復元力が高いのですが、組み立て家具に多い「繊維板」は復元力が弱く、クリープ現象が起こりやすいようです。「木材の耐荷重」について聞かれることがあるのですが、これも、用途によって変わってきます。ベンチのように、人が時々座る使い方(短期荷重)と、重い水槽をずっと乗せておく(長期荷重)では明らかに変わってきます。この長期荷重の際に問題になってくるのが「クリープ現象」です。極端に言えば、短期荷重の場合は「折れなければいい」ということになりますが、長期荷重の場合は、前述の「木材の復元力を損なわない範囲」であることが重要になってきます。木造住宅の梁のたわみの許容値は、スパンの1/300までとされていますので、1M(1000mm)であれば3mm程度。2M(2000mm)であれば6mm程度、ということになります。本棚の耐荷重を考える際には、このあたりを目安にすればいいと思います。同じ荷重をかけても、木材の種類によった変わってきますし、人が座ったときのように集中してかかる荷重の場合と、本棚に均一に本を並べたときのような分散荷重によっても変わってきますし、使用する材料の節の位置や大きさによっても変わってきます。ということで、ややこしい計算式はあるのですが、一つの目安として、巾200mm、厚み35mmの「杉足場板」の場合、スパン1000mm・・・長期荷重 40キロ 短期荷重はその倍として 80キロ。くらいでしょうか。ちなみに、杉足場板を「足場板」として使用する場合には、スパン1000mmで、150キロくらいまでOKって感じですが、仮設材でもあり「折れない」前提の耐荷重ですね。
2021/12/14
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本日は、「校倉造り」についてのお話です。「東大寺正倉院の校倉造り」というのは、必ず教科書にも載っていますね。いうなれば、「和式ログハウス」といったところでしょうか。かれこれ40年以上も前の話になるのですが、当時先生から教わったのは、「木材は、乾燥すると収縮し、湿度が高いと膨張するので、天気のいい日には収縮によって隙間ができて風通しがよく、雨が降ると気が膨張して隙間がなくなり、湿気をシャットアウトする構造」ということ。そのように教わった人も多いかと思いますが、どうも、これは大間違いのようです。この建物の説明板にも「風通しがよく」と書いてありましたが、これも嘘だと思われます。校倉造りの基本は「柱がなく」木材を横にして組み上げて、その壁面で建物を支えるというもの。コーナー部分はそれぞれに欠き込みを入れて組み上げます。そのため、湿気で材料が膨張すると全体の高さがアップします。乾燥で収縮すると、全体の高さが低くなるだけで、隙間はできません。実は、校倉造りが優れているのは、通気性がいいからではなく、通気性が悪いからともいえます。「木材」というのは、湿気が多いと水分を吸って膨張し、乾燥すると水分を吐き出して収縮します。実は、木材が水分を吸ったり吐いたりするポイントは、湿度50%前後で、これが「宝物」の保存に最も適した湿度であり、人間にとっても暮らしやすい湿度。校倉造りの一番のポイントは「倉庫内を一年中50%前後の湿度に保つこと」なのです。木造軸組み構造と言われる柱のある日本住宅では、木材の縦横の収縮率の違いによって必ず「隙間」ができます。「通気」という意味では、一般的な木造住宅の方が優れています。組み上げてある木材はこの建物では六角形に加工したものを使ってありますが、多いのは5角形タイプのようですね。そのあたりの説明が案内板にも書いてあります。「通気性がよく」としっかり書いてありますね。明治7年に、広島城内にあったものを移築したものだそうです。六角形のタイプは例が少ないとのことですが、材料の断面を見てみると、すべて「芯持ち材」であることが分かります。六角の断面の中心付近に年輪の中心がありますね。おそらく、5角形のタイプというのは、複数本の材料を取る場合には、リンゴを割るように木を割って製材するので、三角形に近い5角形になるのではないかと思います。床は高床式で、湿気の多い地面から距離を取ってありますが、これが「通気性がよい」という点。校倉造りに限らず、日本家屋の多くはこういった構造が基本ですね。今でも、建物を長持ちさせる基本は「換気」です。さて、ここで、この校倉造りの建物のある多家神社について、少し説明しておきます。広島県西半分は「安芸」の国ですが、安芸の国で格式の高い三つの神社としては、宮島の「厳島神社」 廿日市市の「速谷神社」 そして、府中町の「多家神社」ですね。主祭神は初代天皇である神武天皇。古事記にある「神武の東征」の際、宮崎を発した船に乗られた神武天皇は、安芸の国に上陸され、それから7年間ここにおられたとのことですが、その「皇居」の場所こそが、この多家神社の場所です。江戸時代には一時、かなり衰退していたとのことですが、明治維新後、初代天皇ゆかりの場所ということもあったと思いますが、再興し現在を迎えているとのことです。実は、私も、今回初めて参拝いたしました。akig
2021/10/28
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ここ数年、キャンプが大きなブームとなっていますね。薪が燃える映像がずっと写されている映像が「癒し」として人気だとか。デジタルなものに囲まれて、現代人は疲れてるんだなあ~、と思ったりします。さて、今日は、「薪」の形について考えてみます。冒頭の写真を見て、形について気づくことはないでしょうか?薪というのは、それを燃やして、煮炊きに使ったり、風呂を沸かしたりするために使うものです。100年ほど前には、日本でも、最もポピュラーな燃料でした。当然、利用価値の少ない材料が使われますので、比較的小径のもので、火持ちのよいのは、ナラなどの広葉樹になります。ここから、薪割りをイメージしていただくようになります。薪の材料は、木を30センチほどの長さで輪切りにしたもにですね。それを縦に置いて、上から斧を振り下ろします。切る、というのではなく、「割る」わけです。「割る」際には、割れやすい方向というのがあります。「裂けやすい方向」です。これは、木材の「ヒビが入る方向」と一致します。木の断面をイメージしてみてください。同心円状に年輪が並んだ断面です。そこに、そのように切れるができるかというと、中心から放射状の方向に割れてきます。表現を替えれば、年輪と直行方向が割れやすい方向になります。斧を丸太の木口に打ちこむと、丸太が裂けます。結果的に、丸太の中心から放射線状に割れやすということで、結果的に薪は、三角形になりやすいということになります。逆に、輪切りにした丸太に斧を打ち込んで、四角くすつことの方が至難の業なんですね。実は、この「薪」の写真は、山口県和木町の「蜂が峯公園」内に最近オープンした[ZONA ITARIA]という、広島で人気のイタリア料理店の鉢が峯店で撮ったものです。おそらく、ピザ窯用に使っているのでしょうね。山口県和木町は、広島県と隣接し、山口県岩国市に挟まれた小さな町ですが、コンビナートからの収入が大きく、昔から福祉の充実した町として知られています。実は「蜂が峯公園」に行った主目的は、この公園の新しい施設に納品した、OLD ASHIBAのテーブルを見に行くこと。これは、日を改めて書きたいと思います。
2021/06/07
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最近ニュースでも取り上げられ始めましたが、現在、木材が高騰中で、物によっては入手も困難になっています。1割とか2割とかの話ではなく、2倍といったレベルの、過去例を見ない値上がりの仕方です。発端は「輸入材が入らない」ということでしたが、それが国産材にも飛び火して、暴騰が始まっています。WOODPROとしても、現在、影響度を検討中ですが、さすがに企業努力だけで対応することは困難で、こおそらく近い将来に、商品価格を2割~3割上げざるを得ないと思われます。。とはいえ、木材業界にいない方には、あまり実感のない話だと思いますので、少しまとめてみます。・世界的なコロナの影響で、市場縮小。さらに、生産も縮小。・コロナの影響もあって、世界的な物流の停滞発生。⇒この状況が長く続きました。そして今年に入って・中国、アメリカのコロナ鎮静化の見込みで、抑えられていた住宅需要急増・世界的な物流遅延と木材減産の影響で、供給不足のため、木材高騰・輸入材が日本に入ってきにくくなり、日本国内の木材不足、木材高騰発生・輸入材の代替材として、国産材の需要が高まるも、急激な供給力アップはできず、国産材も品不足&高騰。・輸入材の供給の見通しは立たず、木材は不足し、短期間で「値上げ」が繰り返されている状況アメリカでは、「仕事のリモート化」が進んで、都心から郊外に家を建てて移住する人が急増し、住宅需要が増加、なんて話もありますね。現在のところ、「天井」が見えません。そのため、WOODPROが仕入れている製材会社も、夏以降の価格は「確定」できず、すでに、国産材についても、5割アップは確実ではないか、といった状況になっています。それでも、WOODPRO前年の場合は、実績に基づいた木材の確保ができるのでまだいいのですが、輸入材から国産材に切り替えようする業者の場合は、「売ってもらえない」という状況になっています。売ってもらえなければ、相場以上にお金を払って手に入れるか、工事を延期するかしかありません。ということで、現在、住宅業界では「ウッドショック」と言われている状況になっているわけです。なにしろ、家を建てようにも、材料が手に入らない。手に入れるためには高いお金を払わざるを得ない。予算も工期も決まっている、これからの家の受注はいくらで受けたらいいの?なんてことで、パニックなんですね。日本の山には、たくさんの木があるにも関わらず、「ニーズがない」から放置されてきました。そこに突然「ニーズ」が発生。しかし、そこから「木を伐りだせる人」の数も決まっていますので、急には増やせません。現在、この状況がいつまで続くのか、業界全体が考えているわけです。この流れが続くと読めば、国産材は高値で安定し、これまで不採算の代表であった林業にも光があたって、「儲かる」仕事になるかもしれません。山林、林業への投資も増えて、林業も活性化。そうなれば、国土の荒廃も防げるし、長い目で見ればいいことでしょう。しかし、現状、業界全体が疑心暗鬼に陥って、国産材の増産もままならないという話です。相場が大きく上がるということは、大きく下がるというリスクも抱えています。今日買ったものを今日売るのであればいいのですが、買ってから売り切るまでには時間がかかります。高いものを大量に買って、それが残っているうちに暴落したら大損です。産地では、製材所が年間契約で原木を押さえています。そのため、おそらく、今流通している材料は、「安く仕入れたものが高く売れている」という状況だと思われます。ただ、「次の手当て」は、高いものでするようになります。高い原木を年間契約したりすると、暴落した際には大損。そのため、「この際、どんどん高い材料を買っておけ!」とも行かないらしい。山主は高く売りたい。「もっと上がるかもしれない、でも、暴落するかもしれない・・・」そんなせめぎあいが、産地である山では起こっているのでしょう。しかし、建築の現場では「すぐに材料をくれ!」という状況なのですから、「ウッドショック」なんですね。コロナが流行り始めたころには、中国製の便器が入ってこないから工期が遅れる、なんて話がありましたが、今は、工期は遅れるし予算にもあわない、というダブルパンチになっています。当然、WOODPROも他人事ではありません。私がWOODPROに入って20年余りですが、20年間に上がった杉の価格は、せいぜい2割ほど。それが、今回、それをはるかに上回る価格アップとなっています。相場があるものは、波が大きいほど、儲かる可能性がある代わりに、損失を被るリスクも大きくなります。これは、「相場師」の仕事であって、まっとうな製造メーカーとしてはありがたくないことですね。さて、この先どうなるのか見えませんが、とりあえず、近い将来に値上げを行わざるを得ない状況であることだけ、ご理解いただければと思います。
2021/05/22
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「パーケット」というデザインをご存じだろうか?略して「パーケ」とも言われますが、木片を集めて作った床材のことを「パーケット」といいます。50年も前の、私が小学校のころ、木造の校舎から一気に鉄筋コンクリートの校舎に変わってきました。そして、その床に多用されたのが、このパーケットです。パーケットは、小さな木片を生かすことができるので、魚でいえば、「中落」で作れます。広葉樹の林を伐採し、家具材などの価値ある身を取った残りを有効に使えた、というのが多用された理由でしょうね。鉄筋コンクリートのフラットな床面に接着するにはもってこいです。木目の美しさというよりは、ランダムな色合いの違いそのものがデザインになっていました。一般家庭用の安価なフロアーには無垢材の木片を接着して塊にしたものを、さらにスライスして薄くし、ベニア板の上に張り付けて使用した「1×6パーケットフロアー」というものが一般化しました。デザインは、写真のようなライン状のものと、市松模様が普通です。私が木質建材メーカー「ウッドワン(当時 住建産業)に入社したころが、ナラやサクラのパーケットフロアーから、カラーフロアーに移り変わる境目の時代ですね。築40年くらいの家には、まず、パーケットフロアーが張ってある、といってもいいくらいでした。ただ、一般家庭に使われたパーケットフロアーは表面が薄いので、長く使うと、すり減ってきて下地のベニアが出てしまう場合もあります。一方、無垢材の木片を寄せ集めたパーケットフロアーは、すり減って下地が出てしまうことはありませんが、収縮率の違いや、摩耗の仕方の違いで「段差」が生まれてきます。この写真は、近所の古い喫茶店で撮ったものですが、これはこれで味わいがありますね。そこでモーニングをいただきました。
2021/03/02
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無垢の一枚板というのは、当然のことながら、木の直径よりも広い材料は取れません。そのため、木材というのは、幅が広く、長くなればなるほど価値が高くなります。そのため、一枚板の天板などが高額になるのはしかたありません。その問題の解決法の一つとして昔から行われてきたのが、「幅はぎ」という加工です。板を幅方向に貼り合わせることで、幅の狭い板から、幅の広い板を作ります。冒頭の写真は、杉材の幅はぎ材です。一枚の板の幅は広くありませんが、それをつなぐことで、幅の広い材料が生まれます。一定の幅の材料の場合もありますし、バラバラの幅の材料をつないでいる場合もあります。家具屋さんでダイニングテーブルを見てみると、その多くが「幅はぎ材」です。完全な一枚板というのは、「一点もの」になりますので、規格商品としては流通しません。幅はぎ材から、さらに細かな材料を寄せ集めて接着したものが「集成材」です。集成材は、長さの方向もジョイントしているので、節などの欠点はすべて除去してしまえるため、見た目がきれいなのが特徴です。その分、使用されている材料一枚ずつの木目は生かされず、どちらかというと、「集成」されたパーケット状態そのものがデザインといったイメージです。幅はぎ材は、単純に幅方向に並べて接着しただけのものなので、家具の職人さんたちが昔から行ってきた加工ですが、「集成材」は、木材加工の工業化の中で生まれてきたもの。例えば、縦方向のジョイントは、「フィンガージョイント」といって、ギザギザを組み合わせたものとなっています。こうすることで、接着面積を増やして、強度の安定性、信頼性を高めています。そのため、木材の合わせ目が、「あみだくじ」のような感じになります。実際、集成材を使って、あみだくじをすることもできますね。さて、この杉の幅はぎ材ですが、奥行の広いボックスや棚板に使うには、とっても便利で、これまで販売していた「◇国産杉DIY素材」との相性は当然いいです。DIY素材の場合、一枚板だけだったので、幅広の棚板などは対応できませんでしたが、「幅はぎ材」を使うことで、棚板も簡単にご用意できますね。ということで、「杉幅はぎ材 DIY素材」近日発売予定です。
2021/02/25
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写真は、宮崎県都城に本社を置く、外山木材で撮ったもの。まるで木でできたモンスターのようですが、オブジェでもなんでもなく、ただ、丸太を重ねて保管している場所です。横から見ると、こんな感じ。丸太が崩れないように積んであるんですね。宮崎県は、杉の生産日本一ですが、山林で伐採されて長さカットされたらこの状態です。丸太というのは、私が説明するまでもなく、成長した木を切ったもの。皮をはげば写真の状態になります。極端な話、丸太のままでも柱にしたり、ログハウスを作ったりして使用できます。が、通常は、使いやすいように、決まったサイズに「製材」します。昔は人力で行っていましたが、今は当然電動です。そして、もう商品の出来上がり。鉄や樹脂だと、大きな高炉や、コンビナートが必要になりますが、木材というのは、すでに鉄の鉱石を「鉄」として使えるようにする工程や、石油を分離して合成樹脂にする工程などはすべて、「木」として成長している間に完了しており、人間は、それにちょこっと加工を加えて使っているにすぎません。木以外の素材であれば、その生産過程で、多くのエネルギーを使い、環境にも負荷をかけるのですが、「木」の場合は、成長過程で二酸化炭素を固定化し、なおかつ、大気中に酸素を放出し、地表を守り、環境を整える、という大きな役割も果たしています。極論でいいますと「木で賄えるものは木を使うべきだ!」とことですね。本来であれば、鋼製の足場板など使わずに木を使え!と言いたいところですが・・・・・
2020/12/18
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丁度1週間前の、1月25日。先日、丸太の山をモンスターとして紹介した、宮崎県都城の外山木材さんの工場見学をさせていただきました。冒頭のトラックは、都城にある本社の前にとまっていたもの。壊れた荷台のあおりを、ロープで固定してあったりするという、使い込みよう。近場の材料移動に使っているだけとのことですが、このコスト意識が大事だな、と、まず実感。外山木材さんは、創業107年。都城でも、一番古い製材所だそうです。外山木材さんの本社は現在、主に足場板を作っているとのことですが、すでに生産の拠点の主力は他の工場に移っています。宮崎県都城の本社から、車で、鹿児島県志布志の、志布志工場に移動。もともと都城は、薩摩藩の一部なので、どちらかというと、鹿児島への利便性の方が優れていたりしますね。都城と志布志を結ぶ道路も整備されて、志布志港から海外への輸出も視野に入れているとか。志布志工場で、外山常務から、工場概要の説明を受けました。この工場への投資金額は約45億円(補助金含む)。今の木材業界で、これだけの投資力のある会社は少ないでしょう。工場事務所入り口上には、社長の筆による標語の数々。●機械は安易に止めるな!!止めるは最大のムダだ!●不良品を作るな!金をドブに捨てると同じ!●高品質こそがわが社の生命線だ●お役に立ててありがとう●人を育てた企業だけが発展する●労働安全は全てにおいて優先する流石です。会社の考え方がしっかりしていて、地に足がついた経営理念だと思いました。志布志工場の敷地は、70000坪。広さを現す「東京ドーム」という単位でいうと、5個分くらい。とにかく広くて、現在使用しているのは、その半分とのことですが、それでもはるか彼方まで広がっています。生産設備も当然最新鋭。オペレーション室で、制御された機械の動きを監視している、というイメージです。1本の丸太を製材する時間を2秒縮めたという言葉もありましたが、コストを突き詰めれば、そういうことになるのでしょう。量が量だけに、2秒が大きな違いになりますね。工場各所に設置されたカメラをモニターしていますが、これは工場のラインを作ったメーカーもの直結していて、遠隔からトラブルへの対処がすぐに行えるようになっているとのこと。丸太の投入もほぼ自動。丸太の径や状態を見て、機械が数種類の製材パターンから、最前なものを選んで、自動で製材するとか。広大な工場ですが、人の数はほんとに少ない、自動化された工場です。機械を見ながら説明を聞く、WOODPROのスタッフ。工場はとにかく大きく、最初の丸太の製材から、ラインでつながって、それぞれの商品特性にあわせて、再加工されていきます。無節の杉の山。中には、きれいな材料も出てきますが、そういう材料は当然高く売れるので、しっかり別管理。大量の丸太を製材するということは、「商品」にならないものも大量に出てくるということですね。こちら、丸いものから、四角なものを取ると、必ず出てくる側部分。工場はとにかく広い・・・・。いろんな商品を取って、最後にこんな垂木状のものも取ります。木材を乾燥させる桟木になったり、下地になったりします。高温乾燥機で乾燥させた角材。よく乾燥するように、上下左右に隙間を作って並べてあります。高温で乾燥させることで、柱表面の割れを防ぐので、昔の柱ような「背割り」がありません。乾燥させた柱材は、自動で投入され、4面をプレーナーがけされます。表面がきれいになった杉柱の山。乾燥材なので、後の反りも少なく、乾燥による割れも少ないので、壁面のゆがみが起こりにくいですね。大きな工場から出てくる木屑などは、この背の高い建物に集まってきます。使えない部分はチップなどにして、製紙工場に販売するそうです。丸太を製材するということは、そこから出てくるすべてを、商品にするだけでなく、残った部分の用途まで確保しておくことが大事ですね。そして、記念撮影。外山木材の皆様、ありがとうございました。「現状維持は停滞なり」そう実感した工場見学でした。
2019/02/01
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巨大な口を持つモンスター。そんな風に見えませんか?これは、杉の丸太を重ねたもの。丸太の切り口の丸い模様も、まるで巨大な鱗のようです。延々とかなた遠くまで伸びていて、このモンスターはドラゴンさながら。さらに恐ろしいことに、このモンスターが、何頭も頭を並べていました。ますで「八岐大蛇(やまたのおろち)」です。圧倒される迫力です。モンスターの前で、記念撮影。外山木材さんとWOODPROの見学者一行。実は、先週の金曜日、WOODPROの工場の主要スタッフとともに、新しくできた、宮崎県都城市の外山木材の「志布志工場」を見学に行ってきました。「志布志工場」は、宮崎から県境を越えて、鹿児島県になりますね。お世話になった、外山木材のスタッフのみなさん、ありがとうございます!モンスターの住む工場のレポートは、追ってブログでまとめたいと思っていますが、まずは、杉の巨大なモンスターのご紹介でした。これから戦いに臨むモンスターの群れ。宮崎駿のアニメにも出てきそうじゃありませんか?
2019/01/29
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本日は、先週の13日(土)に行われた、「WOODPRO次世代の会」の山林見学についてのレポートです。次世代の会というのは、WOODPROの次世代を担う人材を育成するための会で、見識を広げるために、これまでにも、カルビーや、ウッドワンなどの工場見学や、新しい商品について議論したりしてきました。で、今回は、山林の見学です。最初の写真は、廿日市市吉和にある、ウッドワングループが運営する、「クヴェーレ吉和」の前。背後の大きな木は、ニュージーランドの「ガウリ」という木の根元を、ニュージーランドから運んできたものです。そこで、きのこの栽培などを見学して、お弁当を受け取り、いざ、山中へ。場所は、私も紅葉の撮影に何度か行ったことのある、国道(酷道488号線)沿いの中津谷渓谷エリア。山口県、島根県と接する、広島県の北西の隅にあたります。国道488号線は、国道とは名ばかりで、「酷道」と呼ばれている道です。以前、掲載したブログはこちら。⇒渓流の紅葉⇒錦秋の中津谷渓谷さて、紅葉にはまだ早かったのですが、「次世代の会」一行は、案内の「もみのき」さんについて山中へ。この山は、ウッドワングループの中本造林が管理する山で、所有は、ウッドワンの創業家である中本家です。20分程あるいてたどり着いたのは、天然の八郎杉の林です。もともと、中国山地のこのあたりには、ブナなどと一緒に杉が自生しており、天然の杉が今でも天然林の中に残っている、珍しいエリアだとのこと。案内していただいた「もみのき」さんは、元中本造林におられて、ずっと山の管理をされ、現在は定年退職しておられますが、山のプロフェッショナルです。この八郎杉の枝を水につけておくと根が出てきて、それを地挿し木して植林するとのこと。挿し木でできた木は「花粉」を飛ばさないのだとか。吉和の山中は、冬は雪に閉ざされますが、その際、木の幹が凍って裂けてしまう、という現象が起こる場合があるとのこと。それを「凍裂」といい、避けた部分は使い物にならない、と説明いただいているところ。この杉の木の縦に走った裂け目が「凍裂」です。WOODPRO社長、FB用写真撮影中。杉の天然林の前で、記念撮影です。そこから移動して、最近間伐を行ったという場所へ。これで50年くらいだとか。切株の年輪を数えてみると、確認できるだけでも50年以上ありました。山林見学のあと、景色のいい林道の脇でお弁当。クヴェーレ吉和の登山弁当ですが、マイタケと、アワビタケの天むすが絶品す。紅葉にはもう少しかかりそうですが、杉林は緑のままで、周囲の天然林が赤く染まって鮮やかに色分けされ、パッチワークのようになって美しいです。おそらく、今月末あたりからが見ごろですね。戦後、国家のすすめで大量に日本列島に植えられた杉ですが、今では使い道も少なく、放置されている山も多いとか。実は、我が家も田舎の出身なので、少しばかりの山をもっているらしいのですが、すでに、一体どこであったかも分からない程。そのくらい資産価値のないものになってしまいました。ウッドワンの創業家である中本家は、この中国山地に広大な山林を所有しているのですが、基本的に伐採は行わず、木の価値を高めることに専念しているとか。杉材が安いため、今切っても利益が出ない、というのが大きな理由のようですが、100年を超える樹齢の杉材ができたとしても、その時に需要があるかどうかも定かではありません。世の中の進歩が遅い時代であれば、おそらく、50年後、100年後には、この森の木々が育って、自分の子孫を助けてくれるはずだ!と信じられたものと思います。それが、今、苗を植える原動力にもなっていたのでしょう。今の時代、世の中の移り変わりが激しすぎて、杉の木の将来がどうなってしまうのか、まったく読めません。それでも、こうして森を守っていかなければ、日本の国土を守ることもできないのでしょう。まずは杉を使うこと、使い道を考えることが大事ですね。
2018/10/15
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お盆休みに、子どもたち&孫たちがやってきて、私は「孫三昧」の日々となりました。「三昧(ざんまい)」とは、我を忘れてそれだけに集中することですが、ほぼそれに近い状況でしたね(笑)。パソコンのある部屋も、次男坊一家の居室となっていたため、写真の整理もままならず、ひたすら、孫写真を撮り続けたといっても過言ではないでしょう。と言っても、せっかくブログをご覧いただいた方に孫写真を大量に並べるわけにもいかないので、本日は、ウッドデッキと絡めてご紹介。我が家には、中古でこの家を買った翌年に作ったウッドデッキがあります。かれこれ、19年目。先日補修したという記事も掲載しました。⇒19年目のウッドデッキを補修補修の甲斐あって、ウッドデッキの上に、3年も前に買ったくまもんのプールを設置。大きすぎたか、と思いましたが、だんだんと孫たちも大きくなって、遊ぶにはちょうどよかったかな、というサイズ。孫たちも盛り上がってもくれて、よかったですね。ウッドデッキというのは、夏の日差しを受けても、鉄や石程には熱くなりません。炎天下でも、木のベンチに座ってやけどする、ということはあまりないでしょう。足ざわりもいいし、転んでも怪我しにくいし、子どもたちにはとっても優しい素材です。長かったお休みも終わって、プールもお片付け。ちょっとした「祭のあと」ですね。
2018/08/22
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もう1週間前になりますが、6月21日(木)の、金堀先生の「ツリーハウス&エコモデル住宅見学」の続きです。ツリーハウスのある山の入り口に、三角形の小屋が建っていて、これは、広島の建築家とともに実験的に建ててみたという「三角形ハウス」。もちろん、これはご自宅ではありません。(笑)阪神大震災のあと、地震にもつよい三角形の建物、ということで立ててみて、キットとして売り出すという計画もあったようですが、それは実現しなかったとのこと。間伐材の60mm角ひのき材を利用してできています。三角ハウスとは別に、先生の作業小屋もあります。ブドウや野菜も栽培されていて、自然派建築家の面目躍如といった趣です。中には、昔の大工道具や、古民家から出てきたと思われる古い道具などが並んでいて、ちょっとした「民俗資料館」の風情・・・。そこから歩いて数分の場所に、先生のご自宅。いろいろ実験してみたといわれるリビングルームに腰を下ろして、お話を伺いました。金堀先生は、新建材で覆い尽くされた現代の住宅を嘆かれていて、そのアンチテーゼとしてご自宅を設計されました。新建材というのは、ベニア板や繊維版といった寸法安定性の高い工業製品の上に、薄くスライスした木や、ビニールシート、紙を貼って仕上げたもので、「木」のようではあっても、実際に人間が接しているのは、ビニールだったり、表面の樹脂の塗膜であったりします。そのため、日本の住宅では当たり前に機能してきた、木の調質作用や、快適な肌触りが失われています。ということで、金堀先生のお宅では、基本的に新建材を使ってないそうです。無垢の梁を化粧にして、壁紙は、タイの和紙を奥様がパッチワークのように張られたとか。仕上げも、オイル仕上げです。あまりに細かい話になりますので、詳細はカットしますが、部屋には、有名な作家の椅子などの家具がさりげなく置いてあったり、古い調度品が素敵に飾ってありました。調度品には埃ひとつなく、これはきっと、奥様の日頃のご努力のたまものかと思われます。座布団の代わりに敷かれた、昔ながらの「どてら」がいい感じ。壁はタイの和紙。タイなのに「和紙」とはこれいかに?という感じですが、薬品を使って機械的に作る紙を「洋紙」と定義して、木材の成分だけを使って手すきで作られた紙を「和紙」と定義されるので、タイでつくられても「和紙」なのです。手すきならではの繊維感や凹凸に心が和みます。和紙が貼られた壁面の下には、福山の古い寺院の床に使われていた栂材を腰壁に。木目が細かく美しいです。栗の木の無垢フローロング。カーペットの下は日に焼けていないので、当時の色のまま。リビング全体の雰囲気からすると、ちょっと違和感もある照明は、有名な建築家だったか、デザイナーだったかがの作品とか。玄関を隔てた茶の間は、なぜか坂本竜馬の写真が・・・。気になりましたが、その理由は確認できていません。この部屋には、いろんな民芸品や古い和家具が並んでいて、一つ一つが素敵です。そういった古い調度品にあわせて、ジョリパットを塗布した上に、グレーっぽいワックスをかけて、あえてくすんだ感じに。確かに、真っ白な漆喰では、この趣はでませんね。二階の寝室は、金堀先生の遊び場の風情です。梯子を上ると、天井裏の小さな空間があるようです。私も登ってみましたが、ほんとに狭い空間に、枕と茣蓙。きっと、先生の憩いの場所なのでしょうね。屋根裏なのに、ぜんぜん暑くないのが不思議。リビングの外側には、腰壁に使った床材を譲ってもらった福山のお寺の瓦を四つに割ってタイルに。2001という文字になっていますが、ご自宅が竣工された年だそうです。芝生の庭のベンチは、岩国の錦帯橋の架け替えの際に出てきた材料の一部。丁度アーチの下側を受けていた部材のようですね。さりげなく置かれた石のオブジェは、イサム・ノグチと一緒に創作活動を行っていた人の作品だとか。庭から見える山に、先ほど訪れたツリーハウスがあるのですが、下からは見えません。ということで、暮らしの中に「自然」を取り入れることを大切さを学んだ研修となりました。金堀一郎先生、本当にありがとうございました。
2018/06/28
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先週の21日(木)、「WOODPRO次世代の会」のメンバーとともに、会社から1時間程の場所にある、建築家の金堀一郎先生の作られたツリーハウスを見学してきました。最初の写真は、先生から説明を受けている面々。⇒金堀一郎先生のFB場所は、住宅街に隣接する傾斜の急な山。急な山道を登っていくと、ツリーハウスの足元らしきものが見えてきます。そして、ツリーハウスが見えてきました。実は、この日は、WOODPRO shop&cafeが定休日であるため、ショップのスタッフは午前中からお邪魔して、ピザパーティ。それが丁度終わったころに、本社から「次世代の会」メンバーが到着、という段取りです。到着すると、先生のご自宅でできたという、「すもも」のおもてなし。酸味の中に、しっかりと甘みがあって、おいしかったです。「種はその辺に投げといて」と先生。自然の中で生まれたものは自然に返ります。急な斜面には、いくつもツリーハウスがあり、ちょっとしたパラダイス。眼下に見えるのは、安田女子大学で、金堀先生はこの大学で教鞭をとっておられました。なんと、このツリーハウスも、安田女子大学の女子学生が中心となって作ったものだとか。構造としては、一本の木の上に家を作る独立したハウスではなく、急傾斜を利用して、地面から桁を伸ばして木で支えたデッキ構造。これで、比較的労力が少なく、女子学生でも作ることができるようになったとのことでした。空に向かって飛び出すようなブランコ。ツリーハウスの裏側。独立した一本の木に立てるツリーハウスですと、バランスを取るのもかなり難しいと思いますが、このツリーハウスはデッキ式で、一方の面をしっかり支えてあればいいので、これなら初心者でもチャレンジしたくなりますね。急な山の傾斜をうまく利用してあって、全体としては、ステップハウスの機能性があります。一方を木で支え、一方を地面で支えているということで、「木の生長」で家が傾かないかを心配しましたが、木というのは、先端は伸びても、下の方は高さが変わらないのだとか。木の見極めが大事です。建具には、解体した古民家から譲り受けたガラス戸をそのまま利用。開口部を建具にあわせて作られたとのこと。取付は、もちろん、安田女子大学の先生の教え子のみなさん。手すりについている飾りも、もちろん、古民家にあったもの。なんだか、古い旅館のよう風情もありますね。安田女子大学の学生が作った、「癒しの丘」の表札。セーラー服姿のフィギアが「私たちが作りました!」と主張しているようですね。金堀先生がこの山を購入されたときには、普通に小さな山だったそうなのですが、その後、この山の頂上から向こう側の谷が埋められ、現在、団地になっていました。山の頂上から見つかったお地蔵さんが、「癒しの丘」の頂上に置かれていて、「癒しの丘」を見下ろしている感じなのですが、表情がとっても優しいですね。ツリーハウスを見学しまして、このあとは、先生のご自宅で、エコ住宅の実例見学となりました。そのレポートはあらためて。
2018/06/25
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日本の国内で、最もリーズナブルな価格で、もっとも手に入りやすい材料はおそらく杉でしょう。ただ、以外にも、一般の方はその姿を見にすることは少ないのです。なぜなら、「見えるところにはあまり使われていない」からです。ホームセンターに行くと、いろんな木材が並んでいます。それでも、化粧材(見えるところに使用する材料)として置いてあるものには、杉はありません。あるとすれば「下地材」として置いてあるくらいです。下地材とは、化粧材の下に使われる見えなくなる材料です。ではなぜ、杉がホームセンターに「化粧材」として置いてないのか?おそらく、その一番の理由は「反るから」だと思います。杉に限らず、直径の小さい木から製材すると、必ず「板目挽き」という挽き方になります。こんな感じで、切り口から見ると、木目が山なりになってます。表面はこんな感じ。いわゆる「木目」らしい木目ですが、木に反ると書いて「板」となるくらい、反りの出やすい挽き方です。また、木は、切り口からの湿気の出入りが一番大きいので、短い程、環境の影響も受けやすくなります。ホームセンターのように、短尺材で販売すると、置いている間に反ってしまって、売れなくなります。なおかつ、輸入材の方が安かったりしますので、ホームセンターでは敬遠されやすいのでしょう。日本国中、どこでも、山を見えれば杉の木が生えており(意識しなくても)、春先には花粉によって「杉」の存在を意識する・・・。そんな杉の木は一体どこに使われているのでしょう?戦前はというと、「焼き杉」などの壁面用材に多用されていましたが、今ではほとんど見ませんね。せいぜい、民芸居酒屋くらいでしょう。用途として一番多いのはおそらく「柱」です。壁材の下に隠れてしまう「管柱」という柱に使われます。比較的小径の丸太から取るので、必ず年輪の中心が入る「芯持ち」という材料になります。足場板を取る場合は、柱用の材料よりももう少し大き目の材料を使って製材します。足場板は建築現場の仮設材ですので、もちろん目に付くところには使われませんね。使われるところが限定されてしまう上に、山にはいっぱい生えているので、どうしても杉材(一部の銘木の杉を除く)の地位は低空飛行を続けたままです。日本の固有種であり、神話の中にも登場し、スサノオの髭から生まれ、「船にするとよい」とされた木としては、不本意なことでしょう。WOODPROは、「杉」を前面に押し出し、見える場所に使う商品でもって「杉」の地位アップに貢献したいと思っております。よろしく~※写真は宮崎県都城の外山木材さんにて撮影したものです。
2017/12/08
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4月になって、いよいよ、春ですね。ということで、春はガーデニングシーズンでもありますが、寒い冬が終わって、外に出る機会も増えてくるので、ウッドデッキなどのウッドエクステリアの再塗装に適した季節でもあります。最初の写真は、途中まで再塗装したウッドデッキを2階のベランダから写したところ。我が家です。おそらく、5年近く再塗装をしていなかったので、塗装は剥げて、木そのものが無防備に紫外線を受けている状態ですね。アップにしてみると、こんな感じ。塗装が劣化すると、紫外線で木の表面が劣化してパサパサしてしまうので、雨が降った際も乾きにくくなります。ということは、腐りやすくもなりますね。再塗装しますと、劣化した木の表面に塗料がしみ込んで、撥水効果を出てきますので、雨が降っても乾きやすくなりますので、その分、長持ちもしやすくなります。本当は、ここまで塗装がなくなるまでに再塗装した方がいいですね。再塗装すると、ぐっとよみがえってきます。この通り。これから、屋外で過ごすにはいい季節なので、これで気持ちよく過ごせますね。また、梅雨前に再塗装しておくのも、タイミングとしてはグッド。最近は、樹脂製のデッキやフェンスも増えてきて、これらは、「メンテナンスフリー」が売りですね。メンテナンスの手間はかかりますが、それでも天然の木のぬくもりにこだわるか、それとも、機能の方に特化して、樹脂を選ぶかはお好みや、生活スタイルにもよるでしょうね。私個人的には、木の方が味わいもあり、ぬくもりもあり、いいと思うのですが、世に中、樹脂製が増えているのも事実。きっと、使用する人以上に、業者が楽できる、というものあるんでしょうね。木というのは個体差も激しいので、ちゃんと理解してもらわないとクレームになりやすい。樹脂は工業製品なので、均一で腐ることもなく、クレームにもなりにくい。最近では、木質建材メーカーの営業マンであっても、木を語れないものが増えてますからね。少々残念な世の中ではありますが、それでも、木の良さをわかっていただける人もたくさんいて、なんとか、今日も頑張って頑張っております。やっぱり、木はいいですよね。
2017/04/07
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板を屋外で保管するときは、「桟積み」しておくのが鉄則ですね。なぜなら、木材を乾かすためです。洗濯ものだって、洗濯かごに入れたままでは乾きませんよね。放置しておくと、乾かないうえにカビもはえて、雑菌も繁殖して、気づいた時にはもう遅い、というようなことになってしまいます。理屈は木材も同じこと。ものを乾かすには、・湿気が抜けるように、外気に接していること・風通しがあることが大事になります。空気というのは、その中に持てる水蒸気の量というのが決まっていて、その量は気温に比例します。空気が冷たいものに触れると、冷やされて、持っていた水蒸気が持ちきれなくなって「水」になってしまうのが「結露」ですよね。ということで、空気が動かないと、空気中の水蒸気量が増えすぎると、湿気を吸うことができなくなってしまうので、乾かなくなってしまいます。洗濯で考えてみると分かりやすいですね。雨の日に洗濯物が乾かないのは、日差しがないからではなくて、空気中の水蒸気量が多くなっているので、洗濯物の湿気まで面倒見きれないからです。そういうわけで、外気に接することの次に大事なのは、その湿気を取ってくれた空気がとどまらずに動いてくれること。常に新しい空気が補充されて、湿気を取ってくれる、という状況が大事なわけです。そのためには、木と木の間に、桟を入れて、空気の通り道を作ってやらなければなりません。一般に、木材の含水率が20%以下であれば、木材は腐朽しにくい、とされているので、ごく普通の状態であれば木は腐りません。屋内にある木が腐らないのは、含水率が20%以上にならないからです。木材を放置した状態で安定する含水率を平衡含水率といいますが、これは、屋内で10~15%程度。屋外では15~20%程度なので、屋外で天然乾燥しても20%くらいまでは含水率が下がります。ただし、屋外で問題なのは、雨が降ると、ガーンと湿度が上がるうえに、雨自体が材料を濡らすので、表面的には含水率が高くなるうえ、湿気自体が表面に残ります。この状態で放置すると、腐朽菌が繁殖し、腐ります。そこで、濡れても、速やかに乾かすことが大切で、それが「通風」。通風を確保するための作業が「桟積み」。だから、桟積みを怠ってしまうと、せっかくいったんは乾いた材料であっても、山の内部が腐ってしまいます。足場板の場合、もともとが仮設材であるということもあり、現場では結構そのまま積み重ねられて放置されてしまうこともしばしば。まして、古くなって「あとは捨てるだけ」となったものに「桟積み」の手間はかけてもらえない。そのため、うちで古い足場板を引き受けた際には、結構内部が腐っていたりするものが多くて、その選別が大変。山をばらして選別し、使えないものは廃棄。使えそうなものは水洗いして、桟積みします。上下だけでなく、横方向にも隙間をあけておくのもポイントですね。隙間から雨もたまらずに抜けていきますし、足場板のような厚い材料では、6面すべてを空気にさらすことが大事です。そんなわけで、製品になるまで、こういった地道な作業を日々行っております。
2017/03/31
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先週の土曜日のことになりますが、高校時代の同窓会の関係で、広島県廿日市市吉和にある、「女鹿平温泉クヴェーレ吉和」に宿泊しました。昨年、廿日市高校の同窓会総会の幹事をつとめた仲間たちが、ゴルフパックで予約したのですが、ゴルフをしない私は、夜からの参加。あいにく土曜日は午後から雨が降り、ゴルフ組は雨に降られたようす。この施設は、私がかつて働いていたウッドワンの関係の広島リゾートが経営しています。冬場はスキー場もあり、夏は避暑地として人気があり、ウッドワン美術館も併設して、吉和地域お観光の中心にもなっています。年間の平均気温が軽井沢と同じ(事実かどうかは未確認)ということで、「西の軽井沢」というキャッチフレーズで、別荘の分譲もされており、これからの季節は、さわやかな気候のなか、ゴルフ脚が増えてくるらしいですね。さて、女鹿平温泉、というくらいで、水着をつけて入る「ウアハウス」という施設もあって、これからの季節は、山里で遊んで、家族で温泉につかって帰るのもオススメですね。露天風呂もあります。さて、冒頭の写真の話。杉の切株で、後ろ側が背もたれのように残して加工してあります。早朝、クヴェーレ吉和の周りを散策していて見つけたものです。木は、最後にはこうして人を休ませる椅子になる、といった童話があったようにも思いますが、まさに、椅子ですね。で、本日注目したいのは、表面に生えたカビです。緑にカビの生えたところと、生えてないところがあります。よく見ると、外側寄りにカビが生えて、ほぼ年輪に沿って境界ができているのが分かりますが、これが、「赤身」と「シラタ」の境界でもあります。木というのは、樹皮の下に新らしい層を作りながら成長していくのですが、中心に近い古い層はどんどん仮死状態になっていきます。その際に抗菌作用のある成分とか、殺虫成分とか、そういったいろいろな成分が出来てきて色も赤っぽく変わります。仮死状態になる際に、自分を守るすべとして、そういった成分を組織内に生成するのだと思いますが、それが木の耐朽性に直結します。木の周囲にある白い部分は、まだまだ活発に働いている若造なのですが、その分、身を守るすべを持たず、カビやムシに弱くなります。屋内で使用する分にはシラタもいいのですが、屋外だと耐朽性に大きな差ができてきますね。赤身の部分には、カビも生えにくく、腐朽菌も活動が抑制されます。とまあ、そんなことを考えながら、避暑地の朝を散策してみました。吉和の田園風景宿泊棟。土曜の雨と打って変わって、さわやかな青空が広がりました。風にそよぐ花・・・。 このあと、私は、吉和の家で、父の野良仕事を手伝って帰りました。女鹿平温泉の由来となった、女鹿平山(めがひら山)この山の頂上付近から麓までスキーのコースになってます。
2015/06/05
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ん会社の周りも、いよいよ本格的な冬がやってきました。これから2月まで、厳しい時期になります。沿岸部から20分程度で会社のある場所に着くのですが、途中、結構急な峠を越えてくるので、気温も3℃くらい低く、天気予報も「山間部」の方が近いです。冒頭の写真は、桟積みした板にうっすらとかかった雪です。板と板の間に桟木を入れて隙間を確保して、木材を乾燥させる方法を「桟積み乾燥」といいます。隙間の間を空気が流れて、徐々に含水率を下げていきます。製材した時には含水率100%を超えた状態(木材組織の重さよりも、含まれる水分の方が多い状態)から、削り直すことができる含水率20%くらいまで落とすためには3ヶ月以上の期間が必要になります。そして重要なのが、トタンでつくられた屋根。これがないと、雪が直接木材につもったり、雨のたびに雨水が木の間に溜まったりします。木材というのはなかなかデリケートなもので、「湿気」がこもった状態になると、思いのほか簡単に腐り始めます。板を桟積みせずに重ねて放置しておくと、板と板の間には、常に水がたかった状態でジメジメします。適度に空気のある端寄りの部分では、活発に腐朽菌も繁殖します。板をめくるといろんな虫がぞろぞろ出てくるような環境というのは、当然腐朽菌にとっても素敵な環境になります。ウッドデッキの上に直接プランターなどを置いたりするのも、同様です。ということで、花の枯れたウッドプランターなども、この時期一度土を出して乾燥させてから、春のガーデニングシーズンに備えますと、長持ちしやすいですね。新しい工場もかなりできてきました。屋根も外壁も終わって、内装工事に入っています。完成は1月下旬の予定です。今のところ、遅れはないようです。
2014/12/05
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先週末に、紅葉を探して、山間部をうろうろしていた時に見つけた木の橋です。小さな川を越えて、向こう側ににある家に渡るための個人の橋だと思うのですが、珍しいですね。今どきですと、鉄で作ったり、コンクリーとで作ったりするのがほとんどだと思うのですが。もっとしっかり見てくればよかったと家に帰って後悔しましたが、写真で見た感じででは、橋に使ってある板は栗かな、という印象です。田舎の家の柱が栗なのですが、その木目ととても似ているのでそう思ったのですが、定かではありません。栗の木は、硬く、耐朽性に優れているので、昔の家の柱などによく使われていたようです。本日もご訪問、ありがとうございます。
2014/11/06
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台風が近づいています。昨日の夜のニュースは、沖縄の台風情報がトップ。猛烈な台風はこれから北上して、さらに進路を東にとって、日本列島に沿って進む予定。私の住む広島は明日あたりが風雨のピーク。被害が大きくならないことを願います。さて、今朝リビングの窓を開けてみると、昨日降った雨に湿ったウッドデッキが緑がかっていました。苔なのか、カビなのか。デッキを作ったのは、もう13年くらい前。幕板など、一部の材料は取り換えましたが、まだまだ現役です。ただ、再塗装はもう4年くらいしてないかもしれないですね。そのせいもあって、痛んだ表面は水分がしみこみやすくなり、その分、湿気も抜けにくくなります。塗装を定期的にしっかりとしておけば、表面の劣化も少ないし、塗装がしっかりしている分、水分のしみこみも少ないので、乾きやすくなりますね。本当は、梅雨の前、気候のいい春先の再塗装がお勧めです・・・。それでは、皆様、台風に備えて、飛びそうなものは片付けておいた方がいいですよ。我が家も、鉢の類は、全部おろして、置いてあるだけのフェンスは倒しました。
2014/07/09
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今でこそ、アルミの柱を地面に埋めて、セメント固めてしまうという支柱の立て方が一般的ですが、アルミのない時代というのは、直接地面に埋め込んでしまうというのはタブーだったと思います。なぜなら、柱が腐ると、全体をやり直さなくてはいけなくなり、補修ができず、長持ちしないから。そこで、昔の人は、まず土台を作って、その上にフェンスを組むようにしました。そうすれば、痛んだ部分だけを取り換えながら、長く使うことができるからです。その際の基本的な構造が、冒頭の写真です。実際、このフェンスも痛みが見受けられますが、その部分だけを交換することが可能でしょう。一列にフェンスを立てただけだと、風などで簡単に倒れます。そこで、フェンスと直行する方向から支えます。この支えを「控え」といいます。このスペースがもったいないと言えばもったいないのですが、丈夫なフェンスを立てるには必要なものですね。十分に支柱を埋められないとか、支柱そのものが弱い場合、背の高いフェンスを立てたい場合などにはとても有効です。このフェンスの立っている住宅は、神戸北野町の「萌黄の館」です。洋館なのですが、さすがに日本の大工さんらしい和洋折衷のデザインですね。本日もご訪問、ありがとうございます。
2013/07/23
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杉足場板の古材をOLD ASHIBAとして販売していますが、実際のところ、かなり難しい作業です。足場板として使えなくなって現役引退となった足場板は、水洗いして、腐っている部分とか、折れている部分とかいったどうしても使えない部分を切り落として、桟積みして乾かします。乾いた後、こんな風に並べて「選別」を行います。これは特別悪いものだけを集めたわけではありません。ただ、その時々によっても足場板の傾向は変わってきます。ペンキの多い山、錆跡の多い山、目だったダメージの少ない山・・・。さらにその中には、傷も、割れも、反りも、釘のあとも・・・・。まあ、想像を絶する幅広さで入ってきます。材料のほうはかなり個性豊かなわけです。一方、これを使うお客様の好みも相当幅が広い。「ペンキ大歓迎」「できるだけダメージの大きいもの」といった希望がある一方で、「ペンキの少ないもの」「できるだけきれいなもの」というご要望もあります。中には、「古材感があって、反りや傷やペンキや錆跡がないもの」といったプレミアムとしか言いようのないものを希望される方もおられます。最近、お客様から苦情をいただくことが増えています。・前の色と違う・今回届いたものは使い込んだ味わいが少ない・錆跡が気になる・節穴がささくれて、子供が触ると心配なので、交換して欲しい・・・。足場板古材というのは、いわば、劣化という「欠点」を味わいとして評価する商品なので、相当幅広く許容せざるを得ません。大きな欠けがあったとして、それがカフェのテーブルであれば「お洒落ねえ」「味わいがあるねえ」であったものが、自分の生活の中に持ち込まれると、「もっときれいなもの」とか「錆跡が見苦しい」とかいった不満になってきます。非日常では許されたことが、日常では許せなくなるんですね。ただ、足場板を扱う側からすると、限られた材料を、できるだけ購入しやすい価格で提供しようとすれば、「このくらいまでの欠点はどうしても入りますから、それでもいいという方に買っていただければいい」ということにせざるを得ません。本来、「古材」というのは、マニアックなものです。足場板古材が認知され、お客様の裾野が広がってくるにつれて、「いいところ」だけしか認識しておられないお客様が増えてきて、結果として、クレームも増えてきます。それまでマニアックだったものが、マニア外の人にも使われ始めると必ず起こる問題ですね。資材もかなり不足してきましたし、足場板の悪いところももっとアピールしてブレーキを掛けないと・・・。と思う今日この頃です。
2013/05/21
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カメラを持って杉足場板を置いてある構内を歩いていたら、足場事業部の滝口さんに呼び止められました。「これを撮っときんさい」(これを撮っておきなさい)何かと思って近寄ってみると、足場板の山の端に鳥の巣があって、卵がありました。鳥の名前は分かりませんが、ちょっとかわいそうな感じ。どこかに移動してあげても、もう親鳥は戻ってこないかもしれませんね。が、それもまた、自然の中の営みのひとつなのでしょう。通常の足場板の場合は、長さが揃っているのですが、古材販売用の場合は長さもバラバラですので、切り口側も不ぞろいとなります。その隙間にもぐりこんで鳥や蜂などが巣をつくってしまうわけです。適度に雨風がよけられて、目立ちにくいということで、巣作りにはもってこいなのでしょう。ただ、山をそのまま置いておいては湿気がこもって腐ってしまいますので、順次この山をばらして、選別し、水洗いし、桟積みしなければなりません。木材を屋外で保管する場合は、桟積みして、通風の確保することが鉄則です。こうして桟積みして乾燥したら、再度選別されて、商品化されていきます。鳥たちには少々不運なことですが、私たちの仕事と、鳥たちの営みの接点が図らずも表面化したということですね。本日も、ご訪問、ありがとうございます!
2013/04/25
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古材の味わいが手軽に入手できる商品として、杉足場板古材(OLD ASHIBA)がかなり認知されてきました。もともと古材といえば、バーンウッドとよばれる、古い納屋を解体した際にでてきた材料(主に北米産)や、日本の古民家を解体した際に出てきた材料です。人間の営みや自然そのものが長い年月をかけて刻み付けてきた、いわゆる「劣化」が、「味わい」という付加価値として評価されました。。ただ、納屋や古民家を解体して出てくる材料というのは限りがあり、それだけに価格も高く、簡単には手に入りません。そこで、フェイクが登場してきます。新しい材料に、わざわざエイジングを施して「古材風」に仕上げて、「味わい」を演出しようという商品です。お湯に化学調味料をぶち込んで、即席のスープを作るようなものですね。さて、足場板古材はというと、・杉という比較的柔らかい材料(傷がつきやすい)・作業者による絶え間ないダメージと、さらに屋外という苛酷な自然環境にさらされる「足場板」の使用環境この二つがあいまって、比較的短期間に「劣化」が材料に刻み込まれたものです。最近、OLD ASHIBAについてのお客様からの苦情が増えつつあります。割れがある、表面がでこぼこだ、色が前と違う、穴がある・・・・。古材なのだから当たり前と考えていたことが、ユーザーの裾野が広がるにつれ、当たり前ではなくなってきたということでしょう。「味わい」=木材の劣化なのです。人間の顔に刻まれた皺と同じです。「皺だけならまだしも、シミがあったので、気に入らない」と言われても、年を取れば、相応にいろんな欠点も出てきます。そういうものです。分かっていただけた方にこそ、使っていただきたい材料です。なにしろ、限りのある材料なので。本日も、ご訪問、ありがとうございます。
2013/04/23
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分かりやすく一枚だけ色を変えてみました。上の写真と下の写真で、何が違うでしょうか?間違い探しみたいですが、違うのは、板の裏表ですね。年輪を見ると分かりやすいと思います。上側は、年輪が山なり【∩】になっています。下側は逆に、谷【∪】のようになっています。木材用語では、年輪から遠い面、すなわち、外側に向いている面を「木表」といい、逆に、年輪に近い面を「木裏」といいます。ということで、上側を「木表使い」。下側を「木裏使い」といいます。木材というのは、製材時の水浸し状態から乾燥していく過程で、収縮して、それにともなって変形します。一般的に、木表を上にしたときに、∪状に反ってきます。写真を見ても、上側が全体に∪状に、下側は∩状に反っていることが分かると思います。足場板の場合には、最初の出荷は「生」の状態で、それから、建築現場で使われながらだんだんと乾燥し、こんな感じで反ってきます。なので、極端な話、足場板の古材を使うからには、反ってない材料などありません。普通の材料ですと、乾燥して反った状態のものから、削ってきれいな四角形の材料を取ります。でも、足場板古材の場合には、削ったら「終わり」ですから、それはできません。結果として、OLD ASHIBAは、宿命的に「反ってる」のです。では、OLD ASHIBAは、木表、木裏、どちらを優先して使えばいいのか?ということが問題になります。結論からいいますと、古材であり、表情も表裏で違いますし、個体差も激しいので、「お好みの方を使ってください」ということになります。とはいえ、一般論として解説いたしますと、・欠き込みなどを行わず、そのまま板同士をあわせてビスなどで固定する場合には、木裏の方が楽です。木表を上にした上側の写真を見てもらうと、板の中央一点で下の台と接しています。これは、安定しにくいので、合わせ目の段差も大きくなりやすいです。一方、下側の木裏使いの場合には、板の両端で台と接していますから安定しやすいという理屈です。板の合わせ目も段違いになりにくいですね。ということで、組立てが楽で、失敗しにくいのは、下側の「木裏使い」です。・にも関わらず、WOODPROの工場で組み立てている製品は木表使いが多いです。なぜかというと、工場で組み立てられる製品のほとんどは、「板の合わせ目」に溝加工などの欠き込みを行っているからです。溝加工を行う場合、材料を安定させるために、木裏を表にして材料を置いて、木裏側に溝加工を行います。結果として、木表側が表面側になる、という理屈です。溝加工する刃物は、足場板を置いてある面からの高さを決めて加工されますので、基準面から30ミリに設定すると、厚い材料は深く、薄い材料は浅い溝ができます。さらに、反って山なりになった部分は深く、端の方では浅くなります。これが結果的に、材料の厚みに影響されない精度を実現し、板同士をぴったりにくっつきやすくします。なんだか、だんだんと難しい話になってきたので、今日はこの辺でやめましょう。いやー、説明するのって、難しいですね。
2013/04/11
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会社から20分ほど車を走らせると、渡之瀬ダムというダムがあります。ダムの水が減ってくると、水面下に隠れていたものが見えてくるわけですが、道路から降りてみると、たくさんの切り株が並んでいました。逆光なので、砂地の上に黒く見えている塊が、切り株です。ほとんどのダムがそうであったように、ここの森の一部だったのでしょう。調べてみると、渡之瀬ダムは、1956年の竣工のようなので、かれこれ56年。この切り株が当時水没したものだとすれば、結構きれいに残っているものです。ここで余談になりますが、水面下にある木というのは、空気の量が少ないので、なかなか腐りません。水の都ベネチアを支えているのは、縦に並べて水面下に立てられた木の杭ですが、これも同じ理屈です。地面深くから古い木が掘り出されるのも同じで、空気が乏しいから。地表に近い部分、特に地面の際の部分では、空気も湿気も豊富にあるので、腐朽菌が大活躍します。木が腐るには、空気と水分と温度の条件が揃うことが不可欠。杭などは、空気の影響を受けない場所に使えば長持ちします。地上であれば、できるだけ地面との間の縁を切って、地面の湿気の影響をうけないようにすることが大切ですね。木製のプランターも、地面に直接置くと、地面からいろんな菌が上がってくる上に、湿気も豊富ですからすぐに腐りやすくなります。他愛もない記事で失礼しました。
2013/03/15
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OLD ASHIBAのフリー板を並べて、切り口側から見たものです。∪状に板が反っているのが分かるかと思います。切り口の木目を見てみると、年輪が重なって弧を描いているのが分かるかと思いますが、切り口から見て、弧を描く年輪が見えるとき、表面は「板目」という木目になり、乾燥の過程でこんな風に∪状に反ります。∪状に反ったものを、まっすぐにしようとすると、割れが入ります。通常の木材加工の場合には、この状態から削って表面を平らにします。が、残念ながら、古材を削ってしまうと、古材ではなくなるので、それはできません。そのため、OLD ASHIBAという商品群は、こういった反りのある材料の組み合わせで成り立っています。さらに、一般の住宅では、工場内よりもよほど空調が効いているので、工場内で作られた状態から、さらにもう一段、2段乾燥が進み、収縮します。結果として、・反りがさらに進む・材料に割れが出てくる・材料どうしの合わせ目に隙間ができるという現象が出てきます。これは杉足場板の古材を使う限り、程度の差はあっても不可避的に起こります。OLD ASHIBAシリーズは、古材の味わいをリーズナブルな価格で利用していただける、という特徴がある代わりに、それなりのデメリットも内在していて、それを許容していただくことが大前提になります。残念ながら、素材である「国産杉」そのものが、柔らかく、反りやすく、割れやすいという欠点があって、家具には適さない材料です。その証拠に、家具屋さんに、杉の家具はありません。もし、反らない、割れない、隙間の出ない、古材の家具をご希望であれば、それは、本物のアンティークか、家具に適した材料を使って、わざわざ「エイジング加工」を施して、古材風に仕上げたものになるので、お値段もかなり高いものになってきます。OLD ASHIBAシリーズもだんだんと認知されてきましたが、古材の「いいとこ」にばかりがに目がいって、「悪いとこ」を理解が不十分で、結果として「ものが悪い」といった評価をされるケースも出てきます。断言できることは、OLD ASHIBAシリーズは、100人の人がいれば、100人に評価してもらうために企画された商品ではありません。古材の味わいと、そのデメリットを天稟にかけて、それでもやっぱり、市販の家具より、このほうがいいよね、と言っていただける10人のお客様にお買い上げいただければ十分です。残念ながら、資材には限りがあります。限られた資材であれば、より喜んでいいただけるお客様にご提供するべきですね。ということで、OLD ASHIBAの「不都合な真実」をもっと分かりやすくご説明する必要性を感じている今日この頃です。この写真は、板に亀裂が入った様子です。繊維方向に沿った亀裂は強度の大きな低下にはなりませんが、見た目は決してよくありません。商品の製作時には、ここまでの亀裂のあるものは除外しますが、お客様がご利用されている間に、こういった亀裂や、あるいは材料のあわせめの隙間というのは発生してきます。そういう可能性も含めて、商品の選定をしていただく必要があります。
2013/03/07
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2月はじめの社員旅行の際、清水寺からの帰りに、あまり意識せずに下から撮った写真なのですが、もっとちゃんと撮っておけばと後悔した一枚です。手前に葉を落とした木々の枝があり、清水の舞台の骨組が見えにくいのですが、それでもこれは冬だから見える、ということでもあります。これから、春になってくれば青葉が茂って、このアングルから骨組みを見ることは難しくなるでしょう。縦には丸太の柱が等間隔にたくさん立っています。高さは13m。林立する柱を、縦横に桁を組んで支えてあります。筋交い(すじかい)といわれる斜めの材がないのが特徴です。筋交いというのは、水平、垂直の材料の間に斜めの材料を入れることで、三角形を形成し、壁面の変形を防ぐものです。四角の枠組みは変形すると平行四辺形になりますが、辺の長さが決められた三角形は変形しません。では、なぜ、清水寺など、日本の伝統建築においては筋交いがほとんど入っていないのか?三角形というのは、材料強度、接合部の強度を超えて力がかかればその先には「破損」しかありません。縦横だけで構成された構造体はゆれに対して「しなって」対応します。本当に強烈な地震がくれば崩壊の危険がありますが、そうでなければ、全体がしなることでゆれを吸収し、地震が終われば元に戻ります。そのために、金具を使わずに「くさび」で締めて固定してあります。その様子は、上からみるとよく分かります。雨の影響を受けにくいように、桁の上には雨よけの笠が取り付けてあります。その桁は、柱に差し込んであるのですが、その隙間を傾斜のついた材料を差し込んで締めてあります。これが「くさび」です。柔をもって、剛を制す、というところでしょうか。日本人の知恵って、すばらしいですね。
2013/03/01
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METASEKOIAメタセコイアという木をご存知でしょうか?針葉樹としては例外的に、黄葉し、落葉します。すーっとまっすぐに伸びて、姿も美しく、色づきもいいし、冬には落葉して日差しを妨げないので、日本でも公園などに植えられたり、並木になったりして、人気があるようです。幹の表面は、侵食されたように深い凹凸がありますね。葉を見ると、確かに針葉樹です。このメタセコイアという木は洋風な感じに見えますが、原産地は中国の四川省のようですね。この木を撮影したのは、我が家から10分くらいのところにある「チチヤス」の本社の脇の牧場です。昔は、チチヤスハイパークとい小さな公園で、園内を乗り物などが走っていましたが、今は敷地の大半を中国新聞に売却され、プールがチューピーパークという名までで残っています。途切れた線路が物悲しいですね。------------------------------------実は、このメタセコイアと似た名前の「セコイア」「ジャイアントセコイア」という木があります。こちらは、北米原産で、紅葉も落葉もしません。セコイアは、レッドウッド、セコイアメスギともよばれて、とにかく背が高く成長するようです。世界一高い木はセコイアの115.55M。一方、ジャイアントセコイアは、正式名 セコイアデンドロン。セコイアオスギと呼ばれます。こちらも巨木になりまして、世界一大きな木(体積・高さを総合的に判断して)は、こちらのジャイアントセコイアで、「シャーマン将軍の木」と名づけられています。いやー、ややこしいです。
2012/12/14
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私がWOODPROに入社した14年前ころには、用済みとなった足場板は「産業廃棄物」。まだまだ「木」としては使えそうであるのに、足場板としては使えないから「ごみ」になってしまいます。そこで、古くなった足場板の表裏を削って「プランター」として再生して使いました。それが、実は、ウッドプロのプランターの始まりです。そのときに「リサイクルウッド」という名前をつけたもので、後々、樹脂と木粉を混ぜた「エコ木材」と勘違いされたりもしました。今にして思えば、削るという加工は入るものの、リサイクルではなくて、リユースですね。その後、足場板の古材をそのまま「古材」として使うことが、カフェやお洒落なアパレルショップなどではやり始め、今ではそちらが主力となりました。ダメージを受けやすい木の質や、粗い木目、足場板ならではのペンキの後、釘のあと、パイプの跡までが「味わい」と呼ばれるようになり、「カフェのような空間」といえば、「足場板」を使った空間が思い浮かぶくらいになってきました。お客様が「限定的な時間」をすごすカフェなどの店舗で使われるには、ペンキがついてるとか、釘の跡があるとか、反っているとか、欠けているとかいったことが「非日常」の象徴でした。しかし、「日常」の中にそれを持ち込むと、いろいろな問題が生まれます。「使うには、それなりの覚悟が必要ですよ」という提言こそが、私がこれまで書いてきた「OLD ASHIBAに関するネガティブな話」です。傷つきやすい、反りやすい、割れやすい、弱い・・・・。どれもこれも家具に適さない性質です。ただ、不思議なことに、「それでも、やっぱり本物の木がいいね」と思う人が確実に増えてきました。繊維版の上に木目柄のシートを貼った「機能的な家具」よりも、いろいろ問題はあるけど、杉のほうがいい、と言っていただけるようになりました。もちろん、すべての人がそう思う必要はありません。世の中の1割の人が、「やっぱりプリントなんかより杉がいいよ」と思ってもらえれば、WOODPROは存続できます。だから、みんなに買ってもらおうとは思わないんです。分かる人、覚悟を決めた人(笑)にだけ買って頂ければOK。決して分かる人、覚悟を決めた人が偉い、といっているわけではありません。あくまでも好みの問題です。杉足場板の古材が、でこぼこな表面や、傷つきやすさや、あるいは傷そのものも「味である」という新しい境地を切り開いてくれたおかげで、「杉」そのものにも「家具」になる可能性が大きく広がってきましたね。これまで完全なデメリットであった部分を逆手にとって「味」に変える。無垢=高級 ということではなく、リーズナブルに、ずーっと長く使ってもらえる家具を作らねばなりません。だから、ブームだからといって、足場板は高級品になってはなりません。それをすると、「杉」の息の根を止めることになります。ブームではなく、「文化」にしたい。ブームの後に、文化を残す。私は本気でそう思っております。本日も、ご訪問ありがとうございます。
2012/09/27
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いまさらながら、足場板というのは、建築現場で、作業をするために歩く仮設材。建築物が完成すれば用済みとなる、完全な脇役。そのため、必要な期間だけ借りるという「リース」が当たり前。もともとがどこにでもある「杉」の木なので、どこから借りたものかが分からなくなりやすい。そこで、各リース会社が足場板の木口にペンキを塗って、どこのものか分かるようにしている。これが識別色。最初の写真を見ると、いろんな色があって、カラフル。ということは、それぞれいろんな場所から集まってきた、ということでもあります。杉の木は柔らかく、傷もつきやすい。その分軽く、扱いやすい上に、粘りがあって折れにくい。足場板にはもってこいの材料なのだが、もともと傷がつきやすい材料の上を土足で歩いていくわけなので、使い方によっては、結構短期間で味わいが出る。それぞれの板が、いろんな経歴をもってWOODPROに集まってくる。ダメージの受け方もばらばらで、ペンキが付いていたり、釘が打ってあったり、焦げていたり・・・。大げさに言えば、それぞれが「歴史」を持っているわけです。よく、色を揃えてくださいとかいったご要望がありますが、これが結構、至難の業です。何しろ、建築現場から帰ってくるのですから、泥もいっぱいついています。これを高圧洗浄機でしっかりと洗って、から桟積み。天日乾燥でしっかりと乾燥させてから、サンディングして使うのですが、大きな割れがあったり、腐っている部分があったり、穴が開いていたり、折れていたり・・・。そんな部分を選別して、切って、割って、不要な部分は捨てて・・・。よく、リサイクルは、新しく作るよりもコストがかかる、なんていいますが、確かに手間がかかるし、場所も必要です。短いものは短いなりに、長いものは長いなりに、無駄なく使い切って、いろんなOLD ASHIBA商品になっています。小さな木片になっても、それはやっぱり「歴史」の一部なんですね。ネガティブな話もそろそろ出尽くして、そろそろ、「これから」のポジティブな話に移っていきますよ!本日も、ご訪問、ありがとうございます。
2012/09/12
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「お値段以上」のニトリは、飛ぶ鳥を落とす勢い。IKEAの北欧家具は、安くてセンスのいい。ニトリに行って値段を見ると、確かに安いし、それほど悪いものだとも思えない。「お値段以上」に偽りはないと思うし、だからこそ、伸びているのでしょう。我が家には二人の息子がいて、二人とも大学入学を機に家を出て行きましたが、家具類はニトリと、ナフコ系列の「21スタイル」にお世話になりました。IKEAは近所にないので、神戸のお店に行った一度きりですが、北欧らしいPOPなデザインと機能性に、手ごろなお値段で確かに魅力的でした。「無印良品」というのもコンセプトがはっきりしていて存在感がありますね。お値段は決して安くはない。機能的にもデザイン的にも洗練されていて、安心感があります。いわゆる「家具屋」さんというのは、かなり苦境に立たされている様子。安い家具であれば、ニトリやホームセンターのほうが安いので、そこそこのお値段以上の商品を買うつもりでないと、家具屋にはいきませんね。この不景気もあって、高級家具のニーズというのも減ってます。昔ながらに、ダイニングテーブルフロアに、だーっとダイニングテーブルが並んでいる、なんて光景を見たって、だれも購買意欲が湧きません。実は、家具屋さんからも、WOODPROで作っている家具を卸してほしい、というお話は結構あります。「古材ブーム」「うちカフェブーム」がありますが、意外にそのニーズにあった家具というのは世の中にありません。今、WOODPROのネットショップで5万円で売っているものだって、流通を通して店頭に並べば10万円くらいになるでしょう。「それでも売れる!」という声は確かにあります。でも、この「ネガティブな話」で何度もお伝えしたように、所詮「杉」なのです。ウオルナットや、チークや、オークには敵いません。決して卑下しているわけではありませんよ。そもそも、高級な材料を使うからには、そこに熟練した職人の技能が加わってこそ価値があります。ただ、その高級家具を誰もが使うこともできません。だから、ニトリやIKEAが流行っているのでしょう。・きれいな樹脂やシート張りで、機能的で、使いやすいのだけれど、だんだん飽きてきて、引越しのたびにリストラ対象になるような家具にするのか?(ちょっと偏見入ってますが・・・)・表面も平らじゃないし、色もそろってないし、傷もつきやすいし、隙間もできたりするけど、手になじんでやっぱりあったかくて、味わいがあって、いつまでもそばにおいておきたくなるような杉の家具にするか?そんな選択肢があってもいいと思うんですけど。そして、今、「捨てられない家具」にしていくために、いろいろ考えているわけです。杉という材料は、欠点も長所もすべて知ってもらった上で、「それでも」使ってもらえるようにしなければなりません。本日はこの辺で。
2012/09/06
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お客様のご要望で製作した、OLD ASHIBAのパネルです。お店の壁面に取り付けられるとのことでした。これにオイルやワックスを塗って仕上げれば、ぐっと雰囲気が出るんだろうなあ、と思います。ただ、それもやっぱり、全体の雰囲気の中での話。私や、このブログを見ていただいていた皆様は「好意的」に足場板を見ているので、「味がある」とか、「いい雰囲気が」とかいった評価になるのでしょうが、見ようによっては、梱包材のパネルのようにも見えます。当然といえば当然ですね。紫外線にさらされて表面の木の細胞が破壊されてねずみ色に日焼けした様子は、まさしく「梱包材」や荷物を載せるパレットと同じです。まあ、「足場板」ですから。「古いもの」といえば聞こえがいいのですが、いわば、「劣化したもの」であることは間違いありません。「劣化したものを」を「味がある」といいありがたがるのも不思議なものですね。町に住んでいると、「劣化した木」というのを見る機会があまりありません。そういう意味では、「劣化した木」は「非日常」です。カフェの隙間だらけの木の床。反ったテーブルの天板。角が大きく欠けた棚板・・・。一つ一つが非日常で、それがかえって「カフェらしさ」、を醸し出す要因になり、古材のブームにつながったのだろうと思います。そこから、その「非日常」が「日常」の中に移植され始めます。「まるでカフェのような空間」を我が家に、というわけです。カフェのような空間が、多くの家で生まれる頃には、カフェは新しい「非日常」を求めて、新しい形に変化していくのだと思います。カフェに限らず、美容室にしても、ショップにしてもそうでしょう。家と同じ空間がそこにあったのでは、流行りません。もうしばらく、日常の中に、カフェらしい「非日常」を取り入れる動きというのは続くと思いますが、「ブーム」としてはもうそれほど長くないのではないかと思います。ブームという波が押し寄せて去っていったあとに、一体何が残るのか?あるいは、何が残せるのか?それこそが「真価」なのだと思います。波が引いた後に、それでもそこに残っているために、今、WOODPROがすべきことは何なのか?そんなことを思いながら日々仕事をしています。本日もご訪問ありがとうございます。
2012/09/04
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前回のブログで、杉本来の使い方は、外壁や軽量の建具だということを書きました。軽く、通直な長い材料が取れる杉材は、比較的力のかかりにくい、外壁だとか、天井材だとかに重宝されました。裏返せば、力がかかる場所や家具には適さなかった、ということでもあります。杉の短所は、・軽く、柔らかい→弱く、傷がつきやすい・年輪が粗いものが多いので、割れやすく反りやすい・木目のきれいな高級材はあるものの、一般的に使われるものは決して美しい木目ではない。ということになります。一般的に家具に求められる木材の性能としては、・傷つきにくく、強い・そりにくく、平滑が確保される・収縮による「隙」「割れ」が起こりにくい・木目が美しいといったところですので、家具の世界では杉など「眼中にない」わけです。家具屋さんに行って「杉」の家具を見ることもほとんどないと思います。実際には、杉というよりも、針葉樹の家具そのものが少ないでしょう。なぜなら、針葉樹は全般に、柔らかい、割れやすい、といった短所があるからです。そのため、家具には、堅く強く割れにくい広葉樹が使われてきました。杉の箪笥も見たことがないと思いますが、ヒノキの箪笥というのもあまりみません。学校の椅子や机などには、地元産の杉やヒノキも使われるケースがあったと思いますが、簡単に穴があくので、悪童たちにコンパスの針などで穴をあけられ、ゴルフゲームをされたり、穴に消しゴムのカスを詰め込まれたり、ということに破目になります。家具デザイナーにとっても、弱い材料というのは不利です。一定の強度を確保するために、厚い材料を使わざるを得ず、デザインが制限されてしまいます。シャープなデザインなど、ほぼ不可能といっていいでしょう。DIY中の我が家の扉付きボックスです。傷もあるし、板の合わせ目には隙間もあります。それに、「ブライワックス」という魔法のワックスを塗ると、傷が「味わい」に変わります。隙も、傷も、割れも、反りも、まとめて「味わいだ!」と思っていただけるようなおおらかな方でないと杉の家具というのは使えません。DIYで作ったボックスを、OLD ASHIBAのテレビボードの横に配置してみました。本日もご訪問、ありがとうございます。
2012/08/23
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杉という木は日本書紀にも登場し、アマテラスの弟であるスサノオが自分の髭を抜いて「杉」の木にし、「船」にするように指示したとされています。この話は、以前にも書いたと思うのですが、実際にそういった指示があったかどうかが問題なのではなく、杉という材料が当時、船を作る材料として一般的であったということは間違いないでしょう。長く通直な材料が取れて、軽く、曲げやすく、湿気にもそこそこ強い。特に、宮崎県飫肥地方の飫肥杉(おびすぎ)は、腐りにくい赤味が多く、油分が多く水に強いということで、江戸時代から、船の材料として「ブランド」になっていました。そして、杉の用途として多かったのが「外壁」です。昔の家というのは、柱と柱の間に、竹を格子状に組み、そこに藁と一緒に練った土壁を塗って「土塀」としていました。なにしろ土の壁ですから、水には弱いでしょう。そこで、お金のある家は、その上に漆喰などを塗って白壁にしたのでしょうが、普通の家では、そこに杉板を張って土塀を守りました。長く、まっすぐで、軽い材料でないと、外壁に張りつけるわけにはいきません。その点、杉はそれに適した材料でした。その杉を焼いて、表面を炭化させることで湿気を防ぐ性能をアップしたものが「焼き杉」です。住宅の基本は六面体で、上が屋根で、下が床。あとの残る四面が壁面となりますので、量もたくさん必要です。杉の場合、外壁だけでなく、天井材や、雨戸や建具にも使われていましたので、かつては、とても使い勝手のいい材料だったんですね。ただし、何度も言いますように、外壁は不燃のモルタル→サイディングになりましたし、和室もほとんどなくなりましたので、もはや、使い道のない材料になってしまいました。そうしてみると、ウッドデッキや濡れ縁などには、どんどん使ってあげないと杉がかわいそうですよね。そう思いませんか?
2012/08/21
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ウッドデッキは、樹脂と高耐久木材へ?ウッドデッキのブームは、ウエスタンレッドシダーから始まりました。しかし、形だけがウッドデッキであれば、とりあえずOKといった雰囲気もあり、2X4住宅用のランバー(SPF)が使われたりした結果、「木は腐るし、メンテが大変」という声も聞かれ始めました。ウッドデッキブームの初期では、天然の木を使っていた大手エクステリアメーカーでも、おそらくお客様からのクレーム(反った・割れた、腐った)が出てきて、アルミばかりを売っていた営業マンからも「木はクレームがつく」という声が出始めたのでしょう。10年くらい前から、大手エクステリアメーカーでは、一気に「人工木」という名の「樹脂デッキ」の販売に力を入れ始めます。「メンテナンスフリー」「反らない、割れない、腐らない」というのが、売りです。これだけ聞くと、「夢の木材」という印象ですが、実際の質感というのは、本物の木とは大きく違います。ただ、家の外側にデッキ状の場所を作って、家族がくつろぐ、という機能だけを樹脂すれば、それもまた選択肢の一つでしょう。ただ、それでも「本物の木がいい」と思う人が世の中の一割でも居れば、WOODPROのような小さな会社は十分成り立ちます。樹脂に半分以上の木粉を混ぜれば「木質」といってもいいらしいのですが、所詮は石油を原料とした樹脂です。その製造過程では多くのエネルギーを使いますし、リサイクルはできても、決して土に返ることはありません。大手のエクステリアメーカーが工業化された樹脂デッキに力を入れる一方で、木材関係の業者が力を入れてきたのが「高耐久ハードウッド」です。イペ、ジャラ、アイアンウッドといった、東南アジアやアマゾンのジャングルから出てくる、きわめて堅く腐りにくい材料です。あまりに堅いので、下穴を開けないとビスうちできません。その上重く、扱いも大変、ということで、インテリア材としては適しておらず、かつては利用価値が少なかったのですが、ベイエリアとかいって、港湾施設にウッドデッキを張ったり、公共施設にも多用されています。確かに、土足で、多くの人が歩く場所であれば、堅く強く、腐りにくい高耐久ハードウッドというのは非常に適しています。ウッドデッキを広く張った場所として、横浜の大桟橋が有名ですが、もしあれが樹脂のデッキであったなら、まぶしさも数倍、暑さも、もって激しかったと思います。木というのは、光を反射した際に、紫外線を吸収するという性質があるので、広い面積に張った場合も、照り返しがぜんぜん違うんですね。ということで、一体「杉」はどこにいったのか?という感じですが、結局それが「杉」の立場でもあります。メンテナンスしたくなければ「樹脂」になり、耐久性を重んじれば「高耐久ハードウッド」になる。それでもあえて「杉」にこだわるのは、一番身近にあるから、です。家族四人が、時々外に出てくつろく、家付きのウッドデッキに、不特定多数の人が土足であるくようなウッドデッキをつけることが、果たして正しいことなのでしょうか?ジャングルを伐採した際に、付属的に出てきた材料であるため、決して再植林されることはなく、需要の高まりとともに、逆に違法伐採も後を絶たないようです。日本にはたくさんの杉材があり、それも使い方次第では十分エクステリアに使えます。その「使い方」を工夫することで、もっと「杉」の需要を掘り起こすことの方が、安易に「樹脂」や「ハードウッド」を扱うよりも価値がある、というのがWOODPROの考え方でした。先にも書きましたが、世の中の1割、いや5%の人に支持されれば、それで会社は成り立ちます。逆に、樹脂やハードウッドも売っていたのでは、企業コンセプトも曖昧になりますし、多くの会社の中に埋もれてしまって、将来は会社そのものがなくなるでしょうね。なんてことを思いながら、今日も、杉にこだわった商品作りをしております。
2012/08/02
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エクステリア用材にとって大事なのは、もちろん耐朽性(くさりにくさ)です。それが、小~極小である、SPF 材を使うのは論外としても、◇国産杉のそれは「中」。決して適している、とは言えません。が、自ら施工もし、いろんなデッキを見る機会もあり、試行錯誤した結果の結論としては、・樹種による耐朽性の違いは大きいが、それ以上に、「腐らない工夫」が大事。・木には、赤味(心材部)とシラタ(辺材部)があり、杉が腐りやすいといわれるのは、シラタ部分の腐りやすさが主原因。というものでした。よく、「ウッドデッキの耐用年数はどのくらいですか?」と聞かれます。これは、使用環境と、施工方法によって大きく変わってくるので、一概には言えませんが、心情的には「10年は使えないと損した気分になるでしょう」ということ。そのためには、・デッキ面、デッキの床下の通風の確保が第一です。冒頭の写真は設置後12年の我が家のデッキですが、部分的に痛みの激しいが出てきたところがあり、実は2~3年くらい放置していましたが、今年やっと交換しました。天然の木の場合、個体差というものもあって、腐りやすいものとそうでないものもありますし、雨が降れば必ず雨だれが落ちる部分とか、水が溜まりやすい部分とかがあったりして、そういうところは早く駄目になってしまいます。そういう箇所を交換することで、10年といわず、長く使うことができます。自分で施工したものや、施工に深く関与したものであれば、部分的な交換はさほど難しいものではありません。WOODPROがDIYでデッキやフェンスを設置することをお勧めしているのも、そういう理由が大きいですね。他人任せにしたものは、少し問題が起こると「全損」になってしまいます。さて、問題は、「それが面倒くさいんだ」と思う方が多いということです。WOODPROのネットショップオープンの頃には、私も結構メルマガに記事を書いていましたので、そちらを読んでいただけると分かりやすいです。かなり前に書いたものですが、内容的には全く古くないな、と自負しております。店長くり坊のひとりごと バックナンバー次回は、「それが面倒くさいんだ!」というご意見を受けまして、それでも杉を使うわけ、について語りたいと思います。
2012/07/27
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WOODPROの始まりは、国産の杉を使ってものを作ることでした。ただ、それも、ポジティブな気持ちで杉を選択したのではなく、仕入れルートや、これまでの経緯からして、杉が最も手っ取り早く目の前にあった、という現実的な理由からの選択でした。かれこれ13年くらい前になるわけですが、「杉でできるものはなにか?」ということから商品を検討していくと、それがエクステリア材だったということでしょう。背景には、ウッドデッキブームとか、ラティスブームがありました。分譲住宅の多くにはウッドデッキがついていましたし、ホームセンターには「ラティス」と呼ばれる、斜め格子のフェンスがデザイン性の高いガーデニングアイテムとして認知され始めていました。私がウッドワン(当時 住建産業)をやめ、WOODPRO(当時住建リース)に入社したときの時代背景はそんな感じです。これまで説明してきたように、杉材というのは、ほとんど使い道がなくなっていましたが、ウッドデッキやフェンスであれば、内装材ほどの精度も必要ないし、いけるのはないか、と考えたわけです。まずは、「ラティス」作りに挑戦しましたが、試作している間にM市場価格が暴落をはじめ、畳サイズで5000円であったものが、半年くらいで1800円になってしまいました。その間、桟の厚みも薄くなり、作りは明らかに劣化していましたが、もともと「雰囲気重視のガーデニングアイテム」ということで、ホームセンターには安いものばかりが並ぶようになりました。結果、ラティスを主力にして量産することは断念して、ウッドデッキや、ベランダデッキ、ウッドフェンス、プランターあたりに商品の幅を広げての試行錯誤の始まりです。エクステリア材で一番問題になるのは、「腐りにくさ」でしょう。それを「耐朽性」といいますが、そのランクでいえば、杉は「中」です。レッドシダーやヒノキは「大」。アイアンウッドやジャラといった公共施設でも使われるデッキ材は「極大」。杉の立場はというと、決してエクステリア材に適している、というものではありません。が、一方で、「SPF」と呼ばれる2X4住宅用のランバーが、ホームセンターの店先で「ウッドデッキに最適」と書かれて売られていたりしていました。この材料の耐朽性は「小~極小」です。ウッドデッキブームの始まりは、東洋エクステリアのレッドシダーを使ったシリーズから始まりました。ブームになるといろんな便乗商品が出始めます。先頭を走るメーカーの代替商品として出てくるのは、「似ているけれども安い」商品で、多くの場合、価格を下げることが優先されて、品質が大幅に劣るものです。その最たるものが「SPF」で、とにかく安くウッドデッキが作れるけれども、腐りやすいので、早ければ2年~3年で駄目になるものもありました。「木はすぐに腐る」という悪い評判も、こういった劣悪なデッキがたくさん作られたことが原因のように思います。※写真は、広島市西区商工センターにあった展示場で使ってもらったパーゴラとウッドデッキです。仕事のない暇な時期でしたね。施工ももちろん私自身でしました。人も少なかったので、私が親方で、社長が助手、なんて感じです。12年くらい前に施工したものですが、すでに撤去され、今ではこの場所には商業施設である「アルパーク北棟」が建っています。
2012/07/24
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[WOODPRO]という社名に変えたのは去年のことで、それまでは「住建リース」という名前でした。その名の通り、もともとは「リース業」が本業です。リース業といっても幅が広いのですが、住建リースは、「足場板」専門のリース会社でした。冒頭の写真数年前に作ってもらった、会社の敷地の角に立つ看板ですが、「SINCE 1987」とあります。私がWOODPROに入社したのは1998年ですから、それよりも11年前。もちろん当時のことはよく知りませんが、ごくごく簡単にいいますと、住建産業(現ウッドワン)の生産する「合板足場板」のリースを行う会社として発足。ただ、西日本においては、合板足場は普及せず、杉足場板が強かったため、主力のリース品も杉足場板となりました。それから、宮崎に工場を建設し、そこでは、杉足場板の生産のみならず、焼き杉などの生産も行いました。今も宮崎の製材会社と付き合いが深いのは、こういった背景があります。が、そこに予期せぬ問題が発生。宮崎の工場が台風の洪水のために水没し、工場閉鎖に追い込まれました。これは私が WOODPROに入社する前の話ですので、当事者ではありませんが、最終的には、宮崎から撤退し、杉足場板のリース業だけを残して、他の事業は整理することになりました。生産品目である「焼き杉」は、住宅の外壁に使用するものですが、将来性に乏しく、工場を再建しても伸びる可能性は少ない、という判断だったようです。WOODPRO(当時 住建リース)は、会社発足のときから、杉と深い関わりを持っていました。私が入社して、「さて、これから何をするか?」ということを考えていく上で「杉」をどう使っていくか?ということが大きなテーマとなっていったことも、必然的な流れであったような気がします。
2012/07/12
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「杉の木のこと」のまとめ「杉の木のこと」もそろそろまとめに入りましょう。結論からいいますと、戦後植林されて日本中の山にある大量の杉材には、今のところ、あまり使い道がありません。戦前の用途は、ほぼすべてベニア板などの「新建材」に置き換わってしまい、元に戻ることはないでしょう。その中で、かろうじて使われてきた用途が「管柱(くだばしら)-壁に隠れて見えない場所に使う柱」と、足場板です。細かなものでは、羽柄材と呼ばれる、垂木や、胴ぶちとか、ヌキなどの補助的な材料にも使われますが、こういったものは、マグロの中オチみたいなもので、メインを取った残材からとるものです。「杉」という木は、日本を代表する木でありながら、完全に日陰の存在であることがわかります。使い道が少ないので、価格も上がらない。価格が上がらないから、お金を掛けて管理することはおろか、伐採して市場に出す費用の捻出さえままならないのが実情です。ただ、最近は、環境保護の観点から、「無理してでも、国産材を使おう」という風潮も生まれてきています。杉の合板や、杉の無垢の床材なども増えつつありますが、やはり「無理して」使っているレベルなので、まだまだ、大きな広がりには至っていないようです。それはやはり、強度が弱い、傷つきやすい、節があり化粧材(見える場所に使うもの)にしにくい、割れやすい、反りやすい(全体に小径のものが多く、年輪があらいため)などなどの欠点があるためでしょう。WOODPROが材料を仕入れているのは、主に宮崎の製材業者さんですが、こちらは、杉専門の工場なので、「杉」に「付加価値」をつけるということで、相当苦労もしておられるようです。反り、割れ、収縮を抑えるために、今では人口乾燥をした上で、さらに削ってサイズをあわせた柱材が主力とのこと。杉の産地では、日々、「杉材」に付加価値を与えるべく、努力しておられます。何を隠そう、WOODPROそのものも、国産の杉にこだわった商品構成ですから、他人事ではないですね。では、続いて、WOODPROと杉との関わりについてご説明することにします。※写真は、宮崎の製材工場で撮影した、杉の柱の切り口です。年輪の中心が見えると思いますが、木の中心が入った材料は「芯持ち材」と言われ、大きな割れが起こりやすいのが欠点です。小さい径の材料から製材すれば、必ず、この「芯持ち材」が入ります。
2012/07/11
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足場板と家具・・・。この写真は、二年位前に社員研修で訪問した、宮崎の製材会社で撮ったものです。昨日のブログで載せた「天然秋田杉」の年輪と比べるとその違いは明らかでしょう。どちらも「木」「杉」ということでは一くくりにできますが、それは乱暴なように思いますよね。同じ杉であっても、木の価値というのはこんなに違います。「もったいない」と言う言葉がありますが、たとえば、天然秋田杉を「足場板」に使うなら、「もったいない」と言われるでしょう。でも、冒頭の杉材を足場板に使うなら「適切」なのです。「足場板」というのは、建築の本体になるのではなく、建築物を作るための「仮設材」です。建物が完成すれば撤去されます。要は、「足場板」としての機能を果たせればそれで十分。もっとも付加価値の低い材料だと言っても過言ではありません。その足場板を「家具」として使うわけですから、家具屋さんで売っている美しい家具ができるわけがありません。「家具用材」というのは、本来「厳選」された材料から作られるべきものです。家具展などを見学に行くと、その美しさに圧倒されますね。使っている材料に注目してみると、「ウォルナット」「チーク」「オーク」「チェリー」「ケヤキ」「タモ」・・・・・。それぞれに特徴ある美しい木目を持っていますが、長い歴史の中でそういった材料が選ばれてきたのにもちゃんと理由があります。・美しい木目・堅くて、傷つきにくい・反りや割れが起こりにくいという点が大きいのでしょう。そうすると、やわらかい針葉樹ではなくて、硬い「広葉樹」が主体になってきます。広葉樹は一般的に、まっすぐ上に伸びるのではなく、枝葉を横に広げて成長します。そのため、まっすぐで長い材料というのは取りにくい。建築用材としてまっすぐで長い材料が取りやすい針葉樹が大切にされ、長いものが取れない代わりに、堅く、強い材料が取れる広葉樹が家具材として使われたというのも自然な流れです。ちゃんと、ここにも役割の分担があったんですね。つづく。
2012/07/10
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ブランド杉と非ブランド杉秋田杉の年輪です。(秋田杉.com のhpより転載)「使い道がない」とか「厄介もの」だとか、杉に対して失礼なことを書いてきましたが、実は、杉という木は、「高い」ものから「安い」ものまでの開きが最も大きな材料です。「高い」杉の代表格は「天然秋田杉」です。・木目は均一にして、細かいこと・木目は強く美しいこと・色は優雅な淡紅色・ほのかな木の香り・・・・・これが日本人の美意識にぐっと来るんですね。主な用途は、和室の天井材、柱、長押(なげし)、鴨居などの建築材料から、曲げわっぱなどの工芸品まで幅広い。ただし、最高級の秋田杉となると、二百年以上という歳月を掛けて育てられるので、簡単な話ではありません。戦後、不足していた高級材「秋田杉」の代替品として輸入が始まったのが、ウエスタンレッドシダーです。レッドシダーのことを「米杉」と呼ぶのはこのため。北米の原生林に、何百年ものというレッドシダーがあって、その木目の細かさや均一さが秋田杉に似ていたことから輸入が開始されました。WOODPROの価格設定が、◇国産杉よりも、◆米杉の方が高いということに「?」と思われる方もおられるでしょうが、米杉はあくまでも最高級材である「天然秋田杉」の代替品だったからなんですね。「屋久杉」なんてのもありますね。世界遺産に指定された屋久島の杉なんですが、樹齢1000年を超える巨木も残っていますが、これもかつては乱伐され、現存するものはわずか。今では伐採禁止されています。そのため、100万円を超えるような「屋久杉」のテーブルとかいうものは、基本的に、かつて伐採された木の根っことか、かつて地中に埋まってしまったものでしか作れません。ということで、杉と一口に言っても、天然秋田杉とか、屋久杉とか、杉の頂点に君臨するものもあれば、年輪もあらく、節も多く、「杉」というほか表現のしようのない「非ブランド杉」まで幅広いんですね。戦後、日本の山林に植えられた杉のほとんどは、名も無き、「非ブランド杉」です。
2012/07/09
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杉の使い道現代のおいては、杉の木はとんだ厄介者になってしまった、ということを書きましたが、杉という木は本当に価値のない木なのでしょうか?杉の木のことは、日本の神話の中にも出てきます。天照大神の弟のスサノオという神様が地上に降り立ちましたが、舟を作る木もない。そこで、身体に生えた毛を抜いて撒きますと、髭は「杉」に、胸毛は「ヒノキ」、尻毛が「槙(まき)」、眉毛が「樟・楠(くすのき)」になりました。さらに、スサノオは、「杉と樟は船に、ヒノキはお宮に、槙は棺に」と、用途まで指定されました。海を越えて文化が入ってくる時代においては、「舟」というのはとても大事なものでした。舟なしでは、文化も入らず、物資も運べません。「杉」という木は、神様から、文化と物資を運ぶ「舟を作る木」として選ばれた木だったのです。にも関わらず、現在の杉の立場の凋落ぶりはすさまじいです。しかも、それは、「戦後」から始まりました。神話の時代から重宝されてきた杉が、戦後の50年で「滝」のようば大暴落。事実、杉材の価格というのは、戦後ほとんど変わっていません。私の生まれたのは1961年ですが、そのときからすると、大卒初任給は10倍以上になっているものの、杉の価格はほとんど変わりません。ということは、相対的に、十分の一の価格になってしまったということです。それでも売れない・・・。杉の立場、ご理解いただけますでしょうか?※写真は、去年参拝しました、宮崎県の高千穂神社の境内です。杉のご神木がたくさん立っていました。昔から、天に向かって垂直に立つ杉の木は神様が地上に降り立つ目印にもなっていたんですね。
2012/07/05
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広島県廿日市市吉和の杉の植林地の写真です。戦後、荒廃した日本の山野に、大量に植林された杉ですが、いったい何に使おうと思って植えられたのでしょうか?今、杉の用途として思い浮かぶものをあげてください、というと、皆さんは何を思いつかれるでしょう?「足場板」というのは、流石に思いつかれるかと思いますが、足場板にするために植えられたわけではありません。日本復興のための「住宅用材」として植えられました。木造住宅を要素で分けていくと、・柱、梁、桁などの骨組みになる構造材・間柱、根太、垂木、胴縁などの「面」を作るための補助的な部材・外壁、内壁、床、天井などの「面」となる床壁材・ドアの枠、窓の枠、敷居、鴨居などの造作材に分けられます。戦前までに建てられた、在来の木造住宅の中での杉の用途としては、一部柱に使われるケースがあったかと思いますが、主には「焼き杉」などの外壁用材。天井材、たたみの下地、建具材、鴨居、長押などの造作材などです。特に、「壁面」用材としては、長く、通直なものが取りやすい杉材は重宝されました。急いで家を建てることを考えると、成長の早い杉を植えて、柱にして、壁材にしなければ!と考えたのも分かります。が、植林された杉が伐採できるようになるまでの20年間の間に、杉をめぐる環境が全く変わってしまいました。外壁は板から、モルタルに内壁はベニア張りに、造作材も東南アジアの材料に・・・・。いつしか、杉の用途は、もっと使いやすい材料に置き換わっていたのです。もしも、杉が、圧倒的な品質を誇る優れた材料であれば、いかに代替品が普及していようとも、その地位を盛り返したのでしょうが、残念ながら、杉は決して扱いやすい材料ではありませんでした。「使い道がない」これが杉の置かれた悲しい立場です。だから、誰も、植えた杉のことを考えなくなりました。私の実家も田舎ですので、山も少しは持っているようですが、うちの父親でもその場所をよく知りませんし、私などは全く知りません。こうして、所有者は居るはずなのに、まったく見向きもされない山が日本中に存在しています。その見向きもされない山も、春先になると花粉を撒き散らして、自分の存在を日本中に訴えかけます。つづく。
2012/07/04
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おかげさまで、足場板の古材も、一般住宅への利用が広がり、かなり認知されてきました。が、一方で、「雰囲気」だけで選ばれた結果、「こんなものだとは思っていなかった」というお客様の不満の声も出ています。ここにブームの怖さがあります。よくわからないけど、「よさそう」なので買った、という人には、十分な「悪い情報」が伝わっていません。結果、商品コンセプトから外れたところで「不満」を持たれてしまう、というお互いにメリットのない状況に陥りやすくなります。ということで、少し、ネガティブなお話をしていきたいと思います。ネガティブな話といえども、簡単に語りつくせる話でもありませんので、数回に分けて、ロングランでいくつもりです。お付き合い、よろしくお願いします。さて、そもそも、足場板の材料となる「杉」という木は、どんな木なのでしょうか?簡単に箇条書きにしてみましょう。・日本で一番植林されている木です。・スギ花粉を撒き散らすので、嫌われています。・安いものと、高いものとの開きが、とにかく大きな木です。・現代の住宅の中では、使われる場所が極めて「限定的」です。・杉の家具というのは、ほとんどありません。まだまだいろいろあると思いますが、このあたりの情報を元に、杉というものを考えて見ましょう。●日本一植林されているのはなぜか?戦争で日本の山林は過度な伐採により荒廃したため、戦後の復興を支えるだけの建築材の供給ができなかったため、「成長の早い」杉材が荒廃した山に大量に植林されることになりました。杉材の成長が早いといっても、柱1本取れる木になるにも、20年~30年はかかるでしょう。とても戦後復興には間に合わず、結果的に、戦後の復興は、東南アジアからの輸入材、ベニアなどの輸入材で成し遂げられました。結果として、日本の山々には、使い道のなくなった杉だけが残り、季節になると、スギ花粉を撒き散らして、多くの人に嫌われることになりました。日本を救うはずだった「杉」は、今となっては、とんだ「お荷物」に成り下がってしまったわけです。夢と希望を旨に、荒廃した山野に苗木を植えた先達の方々のことを思うと、ほんとに悲しい限りですね。本日、ここまで。
2012/07/03
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これは12年くらい前に作ったラティスです。当時はまだ油性のステイン塗料を使っていた頃で、それ以後一度も再塗装をしていないため、塗装もまだらになって、木の表面も風化して木目が浮き立ってきています。古い神社仏閣などに行って柱を見てみると、ブラッシングをしたように木目が浮き上がったりしていますが、あれがいわゆる風化です。雨風や砂塵にさらされて、表面がブラシを掛けられたようになります。塗装がはげたところがグレーに変色していますが、これが「日焼け」です。紫外線を浴びることによって、木の表面組織が破壊されて色が抜け、グレーに変色します。ただ、これは紫外線が入り込む表層だけなので、数ミリ削ると木らしい、赤味を帯びた色が出てきます。ということで、時間の経過とともに、それなりに変化しているものの、それでも、木の形としてはしっかりしていて、もう一度塗装すれば十分よみがえるレベルを保っています。ただし、フェンスの下側はどうでしょう。下枠は取れ、ラティスフェンスの格子の下側は朽ちたような状態になっています。こうなってしまった一番の原因は、直接地面に置いていたからです。家の表側で使わなくなったので、家の裏側に立てかけて放置していたらこうなってしまいました。フェンスの上部と下部での決定的な条件の違いは何かというと「湿気」です。木が腐るには、三つの要素が必要です。「温度・空気・水分」そのどれかが欠けても木は腐りません。温度というのは、人間が普通に暮らせる環境であればそれが、腐朽菌にとっても活動しやすい温度になります。空気を無くすことも、海中や宇宙空間でなければ難しいこと。となると、人間がコントロールできるのは「水分」だけになります。一般的な腐朽菌やシロアリなども、木が乾燥した状態では活動しにくいのですが、いつもジメジメしたような環境や、どんどん水分が補給されてしまう「地面」に接していると、休む間もなく腐朽が進んでしまいます。木と付き合う、一番大事なことは「通風確保」。濡れても、晴れればすぐに乾く環境を作ることです。そうすれば、木は長持ちします。濡れ縁の下に煉瓦を敷いてくださいとか、ラティスにわざわざ「ゴム付き」を用意しているのも、そういうわけです。
2010/09/17
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宮島にある千畳閣の内部の様子です。確かに、「千畳」の名にふさわしい見事な空間ですが、実はこの建物は未完成。建立を指示したのは豊臣秀吉。戦没者の慰霊のために建てたといわれています。その指示を受けて建築の指揮をとったのは、安国寺恵瓊です。安国寺恵瓊は、毛利氏の外交僧でしたが、本能寺の変後の秀吉と毛利氏の交渉の中心人物として活躍し、それが評価されて、毛利氏の配下にありながら、秀吉の側近でもあったという、ちょっと生臭いお坊さん。 ということで、この千畳閣は、秀吉在世中に着工されたものの、その死去とともに中断され、未完成のまま現在に至っています。そのため、壁もないし、建具もない。広い空間に太い柱が整然と並んでいます。 この様子を見ていると、よく整備された山に巨木が林立する様を連想しないでしょうか?木は、森の中で、すでにほとんど完成に近いまで作られています。人間がしていることといえば、それを切り出して、枝を落とし、製材し、削り、くみ上げているだけ。考えてみると、木製品の多くは、丸太を削って形を作り出す、チェーンソーアートとさほど変わりません。木そのものを一から作り出す労力を考えれば、最後の加工など、わずかなものです。99パーセントは大自然の力で作り上げたものと言っても過言ではないでしょう。だからこそ、環境への負荷も少ないし、人にも優しいのだと思います。
2010/09/02
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中国自動車道 戸河内ICを下りて、吉和方面に向かうと、旧筒賀村です。その道路沿いに一際大きな銀杏の木が立っています。大歳神社の境内にあるその銀杏は、樹高48M 樹齢1100年と言われています。枝の広がりを見ても、相当広いことが想像できるでしょう。おそらく来週くらいには一気に落葉をはじめ、境内が黄色い絨毯に埋め尽くされます。
2009/11/11
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宮島で知り合いの個展がありまして、その帰りにライトアップされた鳥居を撮ってみました。黄昏をバックに、なかなか堂々たる佇まいです。ちなみに、この大鳥居のデータ。高さ、16.59M。鳥居の支柱は、地面深く埋められているかといえば、そうではないらしい。自らの重みで、どっしりと腰をすえている。満潮でも、地震でも、台風にもびくともしない。その秘密は、鳥居上部の島木といわれる部分は箱型になっており、この中にこぶし大の石が7トン入っているらしい。(別に秘密でもなんでもないです、観光協会のHPに書いてありました)また、これだけのものを支えるのだから、基礎もしかりしていないと倒れる。この鳥居の下には、松の杭を打ち込んで地盤を強化した上で、布石を並べて基礎としているようです。松の杭が腐らないのは、それが常水面下(常に水のある層より下の層)となるまで深く打ち込まれているため、木材腐朽の三要素のひとつ、空気が絶たれているためです。湿地帯の軟弱地盤の補強には、この方法が有効で、かの有名なベネチアも、同様に、湿地帯の常水面下に打ち込まれた杭の上に、石版を敷いて作り上げた人工島です。鳥居のライトアップだけでは、あまりに観光気分すぎると思い、ちょっと木のお勉強も兼ねてみました。
2009/10/26
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木の欠点に「ヒビ」「割れ」というのがありますね。ウッドデッキのような屋外に使った木は、ほぼ例外なく割れが入ります。この写真は会社の前に設置してあるウッドデッキの床材を撮影したもの。設置後3年。再塗装後2年くらいです。割れの大小はありますが、どの板にもほぼ例外なく割れが入ってます。色褪せもして、部分的に塗装もはげてきて、そろそろ再塗装も必要な時期ですね。なぜ木に割れが入るのかというと、理屈は「お餅のひび割れ」と同じです。お持ちになぜヒビが入るのかというと、中は乾いていないのに、表面ばかりが乾いて収縮するため、それがヒビになります。もし、全体が均一に乾燥し、収縮すれば小さくはなってもヒビは入りません。屋外に設置された木と、屋内で使用されている木の環境の違いを想像してみてください。朝夕、昼夜、晴雨、四季の差・・。それは屋内にも屋外にもあることですが、その振幅は全然違います。日光の直射を受ける床材表面温度は、真夏では60度。ほとんどからから状態になりますし、雨が降ればびしょびしょで湿度もぐっとあがります。これは相当過酷な環境ですね。木は常に周囲の湿度にあわせて水分を吸収、あるいは排出しており、そのたびに収縮、膨張を繰り返します。屋外の場合、その変化は急激に起こるため、表面に近い部分だけが伸縮膨張するため、それが「割れ」となった現れるわけです。昔は屋外の壁も板壁であったり、いろんな農機具が木製であったりしたので、感覚的に木がどういった性質のものかを誰もが知っていたと思います。しかし、現代では、屋内の家具や、合板の上に薄い板、あるいは紙を張った「新建材」としか付き合いがありません。そのため、木が反るということや、割れるという実感がないと思います。大手サッシメーカーが「ウッドデッキ」から半ば撤退し、「木樹脂」に力を入れている理由。それは、営業マン教育の困難さとクレームの多発です。大手サッシメーカーの営業マン自身が木を知りません。お客様に「割れた」と言われればクレームとして受け付けてくる。あるいは、十分な説明もせずに「クレームではありません」とマニュアルの通りに突っぱねる。「木」はトラブルの「元凶」なのです。木は欠点も多い分、長所もすごく多い。欠点を気にしすぎると、長所も生かすことができない。何事もそういうものです。そのあたりをよく理解して木と付き合うと、すごーく愛着が湧いてきます。木の割れだって、歴史の一部です。その分、自分も生きてきたし、年を取ってるわけですし・・。
2008/07/29
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