勝手に最遊記

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Comouflage ―3―



「・・・途中から人間を一人、同行させている。」三蔵の言葉に、桃花が黙って頭を下げる。

「ほう・・人間ですか。いやいや見かけによらず、腕が相当立つのでしょうな。」僧正が桃花を手招きする。

『はぁ?何言ってンの、このオッサン?』良く判らないが、とりあえず前に進み出る桃花。


進み出た桃花の前に、並んでいた僧の一人が近づく。「ぜひ、お手合わせを。」

「・・・えっ?っってわあっ!!」

いきなり襟首を締め上げられ、足払いを掛けられる。体勢を崩したところを、思いっきり投げられた―――――・・


バアアッッンッ!! 壁に体を叩きつけられる。


「・・・っかっ・・。」
一瞬、息が出来ない。背中を強打し、目に涙が滲むのを覚えた。軽く脳震とうを起こしたのか、頭がグラグラする。

『このっ・・いきなりっ・・・』

「大丈夫かっ!もっ・・・。」
悟浄と悟空が走り寄ってきた。思わず桃花と呼びそうになるのを堪える。

「てめー・・ナニしやがんだっ!」桃花の体を助け起こし、僧を睨み付ける悟浄。

「コレは失礼。妖怪でもない人間が同行していると聞いて、三蔵様のお役に立つぐらい、強い方だと思った物ですから・・。」
僧は一向に悪びれない。

クスクスと僧達の間から、嘲笑の笑いが起こる。


「お前ら・・・っ!」悟空が唇を噛む。

「では、僕と手合わせして頂けますか?・・・手加減しませんけど。」スッと前に立った八戒の顔を見て、桃花は青ざめた。

『ヤバッ・・八戒ちゃん、キレてるっ!?』
三蔵達と違って、普段、怒りを露わにしない八戒がマジギレすると一番恐いのは桃花も判っている。


「・・・っ!!」
歯を食いしばって、桃花が立ち上がった。

「・・・大丈夫ですか?」
助けようとする八戒達を押しやり、桃花は毅然と前に進みでた。

「・・・俺は、戦闘要員ではありません。ある事情の為、三蔵様ご一行に同行させて頂いております。妖怪との戦闘ではお役に立てないので、主に三蔵様の身の回りのお世話をさせて頂いております。」

静かに、ゆっくりと言い、その場に正座した。


「脆弱たる者故、皆様にご迷惑をお掛けするやも知れませんが、何とぞお許し頂きますよう、宜しくお願い申し上げます・・・。」



両手をつき、深々と頭を下げた。

「なっ・・!なんで頭なんか・・・。」
「シッ!悟空、黙って・・。」八戒が制止させる。



――――――――――広間に集まっている僧達から、嘲りの笑いが消えた。


「・・・左様か。いや、こちらも無粋な真似をした。お疲れになったでしょう。小坊主に部屋へ案内させます。彗(ほう)!」

小柄な少年が僧達の間から出てくる。

「彗と申します。・・どうぞ、此方へ・・。」




広間から出て行く三蔵達を、見送っている人物が居た。
「面白くなりそうだ・・。」






三蔵達は大きい部屋へ案内された。
見た目はボロ寺の金剛寺だが、中は・・・まぁ何とかマシだった。彗という少年・・小坊主が出て行った途端、桃花はベッドに突っ伏した。

「~~~~っったい・・・。」

「大丈夫ですか?今、気功で・・。」言い終わらないうちに、治癒を始めた八戒。

「・・・ゴメンね。我慢させて。」ピクッと八戒が反応する。

「あ?我慢したのは桃花だろ?」
「そーそー。俺も悟浄もキレるのを我慢したけどさっ。」

「・・・僕がキレてたの、バレてました?」八戒が苦笑する。
八戒の言葉に悟空と悟浄がゲッと言う顔をする。二人とも、八戒のマジぎれの怖さを知っているためだ。
「まーねー・・。」具合が良くなった桃花が体を起こす。

「でも、三蔵もキレてましたよ?懐に手を入れてましたからねぇ。」八戒の言葉に桃花が目を丸くした。



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